教え19 私のスキルではないのですか?
「少し色々、ですの?しかしその能力、あなたのモノでは無いのでなくて?」
「えっ!?な、なんですか!?」
後ろから焦るような声が聞こえます。振り返ってみると、リセスさんの周りに数人の生徒が集まっていました。囲まれていて、身動きが取れなくなっているようです。ただ、何か応力を振るおうというわけではなさそうです。
「私のセットしたカードを見るなどということをされては困りますからね。少し動けないようにさせて頂きましたわ」
「そうですか。因みに、それは不敬罪には当たらないので?」
「ええ。当たりませんわ。だって」
クロリアさんはそこまで言って、視線を移しました。その先にいるのは、1名の女子生徒。他の貴族の方達より更に豪華な服を着ており、いかにも王族という雰囲気です。
あの方は確か、ゲームの中だと悪役令嬢というポジションの方だったはずですね。身分としては、第1王女とかそれくらいだったと思いますけど。
「第2王女の、ハルフ様がお許しになっているんですもの」
「ほぅ。なるほど」
ハルフさん。第1王女では無くて、第2王女でしたね。印象が薄くて、あまり覚えていませんでした。
……こんなことを言ったら、確実に私の方が不敬罪で首が飛びますね。口を滑らせないように気をつけるとしましょう。
「では、第2セットへ移りましょうか」
「そうですね」
第2セット。私たちはまたカードをセットします。今回も、当然協力です。
お互いセットし終われば、カードがオープンされ、
「また、ですの」
「ああ。負けてしまいましたかぁ~」
「……よく言いますわね」
私の言葉に、クロリアさんはあきれた顔をされています。私としては、本心から言ったつもりだったんですけどね。信用されていないようで悲しいです。
しっかりと教義に則った行動を行い、これから信用を勝ち取っていけるようにしましょう。そのためにも今回は教義に従い、クロリアさんには私の掌の上で踊って頂きます。
「ただ、とりあえず保留で無いことは分かりましたわ」
「なるほど。リセス様を囲まれたのは、そういった意図もおありでしたか」
保留というのは、スキルの1つですね。1度だけ指示といったスキルの影響を先延ばしに出来るという内容だったはずです。
ただ、1度だけしか効果は出ないので2ターン続けて協力を出した私の行動は、保留と合致しないということになります。そのため、保留のスキルが使われたわけでは無いというのが分かったわけですね。
今、クロリアさんの頭の中では、どのスキルを使われた可能性があるのか。そして、どう対応すれば良いのか。そんな考えが渦巻いていることでしょう。
「さて、では第3セットへいきますか?」
「落ち着いてやらせて頂きますわ。急かさないでくださいまし」
深い思考を必要とするクロリアさんをあえて急かします。集中力が乱れて、あまり良い考えが浮かばないでしょうから。
教義にも、相手が万全な状態で戦わないようにという教えがありますからね。私はそれに従ってるだけで、特にクロリアさんをいじめたいといった意図などはありませんよ。
「……セットしましたわ」
クロリアさんが、数秒経ってからカードをセットされました。最初に指示のスキルを使ったときとは違い、その表情は真剣そのもの。負けたところで家への被害は無いも同然だというのに、よくここまで真剣になりますね。私が何かいけないところの火でも付けてしまったのでしょうか?
そんな風に私がちょっと怖がっている間に、カードがオープンされます。
「……あら?今回は裏切りではないんですね?」
「ええ。当然ですわ。………だってあなたのスキルは、拒否だと理解しましたから!」
満面の笑みで宣言されます。
拒否というのは、これもまた指示に対抗できるスキルの1つです。効果は、指示などといったスキルによって指定されたこと以外の行動を行う、というモノです。つまり拒否だった場合、私が指示に逆らい続け、ずっとこの勝負では協力し続けることになるわけですね。
「制限拒否とどちらか迷いましたが、制限拒否の場合、最初に確認するなどあり得ないですわ」
制限拒否というのは、指定した条件に合う場合に拒否が行えるというスキルです。例えば、3回拒否すると指定しておけば、今回のように3回連続で協力して4回目で指示通りに裏切ると言うことになります。
ただ、私の発言を覚えられていたようでその可能性は排除されたようですが。言ったのは小さな声の1回だけで、しかも最初の方だったんですけどね。それを覚えているなんてなかなかの記憶力です。
「さあ、金貨20枚。これくらいならまだまだ余裕ですわよね?」
「……ええ。そうですね」
ただし、それは掛け金が20枚の間の話です。それが少しずつ大きくなっていって、3ターン目の10ラウンドまで進んだらどうなるでしょうか。先ほどエリーナさんとの遊戯で手に入れた枚数よりも圧倒的に多い金額を取られてしまいますよね。それはできるだけ避けたいです。
しかし、だからといって、




