表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/42

教え16 負けるが勝ちですか?

「それでは2回目。行きますわよ。………オープン!」


結果は両方協力。これで金貨40枚。勝ちを譲ってくださるのかと思って3回目は裏切りを選べば、向こうも裏切り。裏切り同士で掛け金は5倍ですからこれで200枚。

4回目は双方協力。400枚。少し増えてきましたね。このくらいで終わらせたいところで、5回目。


「オープン!!」


お互いの手札が開けられます。今度は、お互い裏切り。

掛け金が5倍で、2000枚となります。このレベルだと、家の経営に支障が出てきますね。困ったところです。


「あらぁ。早く終わらせて、フェルルさんの被害を減らして差し上げようと思いましたのにぃ~。……もしどうしても払えないというのであれば、我が家からお貸ししてもよろしくてよ」


「あまりにも掛け金が膨れ上がったときは、お願いするかも知れませんね」


そうして話をしている間に、私はカードをセットしておきます。選択は協力、という風に後ろから見ている方々からは見えているでしょう。イカサマ対策で、見せているモノとは逆の裏切りが実際はセットされています。

カードのすり替えの技術を前世で覚えていたのが役に立ちました。いつ役に立つのかと思っていましたが、こういう機会があるのなら覚えていて良かったです。何でも使いようですね。


「それでは、オープンですわ!」


笑みを浮かべられながら、エリーナさんが叫びます。今まで通りの行動をして、気が緩んでいるんでしょう。だからこそ、結果の画面へなかなか目を向けません。それどころか、


「さぁ。次々行きますわよ」


「……そうですか」


このままだと、エリーナさんが負けたことに気付かないまま第2セットへと進むことになりますね。

と、呆れと心配を感じましたが、流石にそうはなりませんでした。またゲームを始めようとするエリーナさんに、お仲間らしき方が、


「エ、エリーナさん。負けてますわよ!」


「……え?」


何言ってるんだコイツ。みたいな目をしてエリーナさんはお仲間を見ていますね。まあ、そこまで口は悪くないでしょうけど。

そんな顔をされているエリーナさんですが、上のパネルを見て表情を変えられました。私は裏切り。そして、エリーナさんは協力。第1セットは、私の勝利として終わったわけです。


「ど、どういうことですの!?……ティアさん!」


責めるような言葉と共に、エリーナさんの視線は私。ではなく、その後ろへ。

視線と共に振り返ると、そこには茶髪を伸ばしたエリーナさんより少しお若い、9歳くらいなのでは無いかと思われる方がいらっしゃいました。


「あっ。えっ。ち、違うんです!私が見たときは確かに」


「………そうなんですの?」


慌てて言い訳をする茶髪の方に、エリーナさんは疑うような目を向けられます。お可哀想に。もしお話をする機会があれば、我が教団をご紹介してお導きして差し上げたいところです。

ああ。そう考えると、こんな賭け事をしている場合ではない気がしてきました。神のお導きで勝利している状態ですし、早く終わらせて祈りを捧げるとしましょう。


「それで?第2セットをするのですか?」


「そ、そうですわね。セットしてくださいませ」


自分ではセットせずに、私にセットを促してきます。さりげなく手鏡で後ろを確認すると、じっとこちらへ注目されている茶髪の方が移りました。のぞき見されるのは間違いないでしょうね。

ですが、先ほどのがバレなかったのですし、今回同じ事をしてもバレはしないでしょう。すり替えてセットして、


「それでは、………オープンですわ!!」


カードがオープンされます。エリーナさんは裏切り。そして、私は協力。エリーナさんは訝しげな顔をされてますね。


「え?あ。……え?」


茶髪の方は心底困惑されているご様子。それもそうでしょう。自分の見たものが真実で無くなってしまっているのですから。自分が信じられなくなるというのは、とても怖くて仕方ないことですし。

困惑されているのは茶髪の方だけではありません。エリーナさんもです。カードが逆だったのはともかく、それで勝ててしまったことに大きく困惑しているようですね。確かに、これで私が協力のフリをして裏切りを選んでいたら勝てていた可能性はありますから、気持ちは分かります。みすみす私が勝利を手放したことが納得できないのでしょう。しかし、これは今後の布石。


「どうかされましたか?エリーナ様の勝ちなのですから、もう少しお喜びになっては?」


「あ、そ、そうですわね?……オホホホッ!私の勝ちですわぁ!!」


困惑が拭えないまま、勝利の宣言をするエリーナさん。その光景を見た周りの方々は、複雑そうな表情をしていますね。私がなぜ負けたか分からないのでしょう。

エリーナさんの行っているイカサマを皆さんはご存じな用ですし、第2セットも私が勝つことが出来る可能性はあると思っているのでしょう。だからこそ、理由が分からない。私がわざと負けたのか、それとも、それにすら考えが及ばないほど私がバカなのか。どちらにしても皆さんとしてはひっかかりを憶えるのでしょう。


「では、次は第3セットですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ