教え15 ゲーム開始ですか?
「それだと、お互い裏切りを続けるだけだと思われるのですが」
「そうですわよねぇ。ですから、そこも考えられているのですわ。私たちの最初の掛け金は金貨10枚なのですが、お互いに協力をすると支払う金額が5倍になっていきますの。因みに、協力同士の時は2倍ですわ。そして、それが影響するのは、1ターンが経過したとき。1ターン経過しても勝負が決まらなかった場合は、…………掛け金がお互いに、全て学園側へとられますわ」
う、うわぁ~。学校側も、賭けで儲ける仕組みですねぇ。勝敗が決まれば得はないですが、勝敗が決まらなければ、非常に得をするんですか。
「私たちの場合は、お互いひたすら裏切りをし合うだけですわ。97656250枚の金貨を失うくらい、私たちにとっては痛手でも何でも無い。ですわよね?」
これは、かなり計画的にこの賭けを選ばれたようですね。97656250枚の金貨。これは、裏切りを行った場合の5倍を10回繰り返して、それに最初の掛け金である10枚の金貨をかけたモノだと思われます。更にこれを3ラーン行うのですから、とてつもない金額が失われますね。
ただ、解説をしてくださってるエレーナさんが言うように、公爵家はもちろん、伯爵家にとっても痛手でも何でもない金額なのでしょう。
しかし、それは普通の公爵家などの話。まだ公爵家になったばかりで、大きな税収の入ってきていない我が家には、当てはまらないことなのです。
「……なるほど。全て最初に協力を選んで、金貨30枚で終わらせる方が痛手にならない、と」
「そうですわねぇ。まあ、あなたがそうしたいのなら、それでも構いませんわよぉ~。オホホホッ」
見下すような視線と笑みですね。私がそうせざるを得ない状況に追い込んで、ただただ我が家に負担をかけるのが狙いなのでしょう。
これが子供の考えることですか。最近の子供は侮れませんね。
「分かりました。掛け金は10枚ですね?」
「ええ。そうですわ。まずは、そこに立って下さいませ」
1つのテーブルに立つよう指示されました。私はエリーナさんの指示に従い、そこまで歩いて行きます。
そして、テーブルの端の方に立った瞬間、
ヒュッ!
目の前に何かが浮かび上がりました。青みの掛かった半透明のようなパネルのようなモノで、白い文字で10、0と書かれています。
「それは、現在の掛け金や、獲得したり失ったりする金額が移されるモノですわ。最初に10と書かれているのが掛け金で、次に0と書かれているのが、得た金額ですの。失う分が大きいときは、マイナス表示になりますわ」
「なるほど。……それで?裏切りと協力は、どのように選択するのですか?」
カードのようなモノもありません。この半透明のパネルに、選択するボタンのようなモノもあるのでしょうか?
と思ったのですが、
「ああ。それでしたら、そのパネルに手を入れてくださいませ」
「手を入れる?……こうですか?」
私はパネルと言われるモノに、右手を差し込みます。すると、ヌルヌルとした感触が伝わってきて、私の手は見えないどこかへと入り込み、
「おお。これが、そのカードですか」
2枚のカードが出てきました。裏面に同じ模様が描かれていて見分けが付きませんが、表面には分かりやすい絵と文字が書かれています。
1枚は「協力」で、天使が手を差し出す絵が。もう1枚は「裏切り」で、悪魔が人の骨を見下ろす絵が。それぞれ、タロットカードにでもありそうな絵柄で描かれています。
「それでは、早速始めていきますわよ。まずは、……こうやってカードをセットするんですの」
1枚のカードをテーブルの端にセット。私もセットするんですね。セットした方が選択されることになると思われます。
まずは、どれを選択するかが重要ですが、……これは、先ほど言ったように協力を洗濯するのが最適ですね。向こうが裏切りを選んで頂けるなら、被害は非常に少額で済むのですから。
「……はい。セットしました」
私は協力をセットします。これでお互いのカードが公開されたら、第1セットは終わるわけですね。
……本当に打ち合わせ道理に行くのなら。
「それでは、………オープンッ!」
元気の良いかけ声。それと共に、自動的にセットされたカードが裏返され、上にあったモニターにそれぞれの選択が映し出されます。その結果は、
「……なるほど。こうなりましたか」
「あらあら。折角勝ちを譲って差し上げようと思いましたのにぃ~」
結果は、お互い協力。掛け金が金貨10枚でしたから、負けた場合の損失は20枚になって2回目の勝負に移ります。これでお互い裏切り同士だったらマズかったですね。金貨50枚の損失を出すところでした。
「……では次は私が協力を出しますので、裏切りを選んで頂いて構いませんよ」
「あらあら。そうですのぉ?それでは、遠慮無くやらせて貰いますわぁ~」
一応裏切りを選ぶように促しておきます。これでもし協力を選ばれていたら、確実に狙ってきていることが分かります。
私の家を潰すことを狙っている、ということが。
「それでは2回目。行きますわよ。………オープン!」




