教え14 省略ですか?
「あらぁ~。あなたが例の、リセス様の供回りさんですの?」
「ええ。初めまして。フェルルと申します」
金髪で、所謂ロールと言われるモノをいくつも作っておられる方が、冷たい目をしながら話しかけてこられました。冷たい目と言うより、見下したような視線と言った方が近いかも知れませんね。口に浮かべている笑みが。まさしく人を馬鹿にするモノに似ています。
「私、リガード伯爵家三女のエレーナ・グリュブス・リガードですわ。以後お見知りおきを」
「はい。宜しくお願いします」
何が目的で話しかけられたのかは分かりませんが、エリーナさんが私のことを歓迎されていないのはよく分かります。何かしらの嫌がらせなりをしに来た、と考えた方が良いでしょう。身長差的に10歳は超えられておりますので、嫌がらせのレベルもそこそこ高い可能性があります。
「さて。まずは新しくここにいらっしゃったあなたへ、この私が色々と教えて差し上げますわ!」
「それはご丁寧にありがとうございます。どういったことを教えて頂けるのでしょうか?」
厳しいルールがあったりするのでしょうか?
とりあえず、ゲームで得た知識にないことを知りたいですね。新しい刺激が何も無いとつまらないので。
「まずはこの学校の歴史から。………本日は省略ですわぁ!」
「本日はって、普段はやられてるんですか?」
「と、とととと、当然ですわぁ!」
おそらく、いや、絶対と言って良いほど嘘ですね。視線も泳ぎすぎです。
というか、なぜ歴史を語ろうとしたのかも謎ですね。知識マウントと言われるモノをとろうとしたんでしょうか?わざとやってるのかも知れませんね。
「そして、現在の学園長の解説。こちらも省略ですわぁ」
「普段やられてるんですか?」
「当然ですわぁ。そして、担任の紹介。こちらも省略ですわぁ。こちらは普段もしておりませんわぁ」
私は、視線を動かし、先生らしき人を見ます。悲しそうな顔をしながら視線をそらされました。
可哀想に。かなりひどい扱いを受けているんでしょうね。心の底から同情します。私が勧誘して、神のお導きを伝えなければ!
「……で、その他も沢山省略しまして、最後に重要なことをしますわ」
「重要なこと、ですか?」
重要なことと言うと、ゲームのアレくらいしか思いつきませんね。
そう。アレです。ゲームで、主人公が貴族様との争いで使用した、
「賭け、ですわぁ!」
賭け。つまりギャンブル。………言い換えと言うより、ただ言語を変えただけですね。
ゲームでも何度かありました。運要素が強いこれで、何度もゲームオーバーになった人がいたと聞きます。私は魔王様たちのご加護がありますので、1度も負けることはありませんでしたが。
「これは説明するより実際に体験した方が早いでしょうし、……今からやりますわぁ!」
「……はぁ。そうですか」
今からやると言った辺りで、教室の雰囲気が変わりました。どこか楽しみにするような、見下すような。そんな雰囲気に。
見世物にされるようであまり気乗りはしませんが、やるしかないのでしょう。
「今回は、簡単なゲームを致しますわ。その名も、『協力と裏切り』」
有名なパラドックスみたいなゲームですね。ゲームには出てこなかったゲームです。
……ゲームがいくつも出てきてややこしいですね。
私が前世でやった、この世界のことを示していると思われるゲームはそのまま名前を変えずにゲーム。賭けで行うゲームは、遊技と呼ぶことにしましょうか。
「ルール説明を行いますわ。まず、このゲームは3ターン制ですの。1ターンは最長10回のラウンドで構成されておりますわ」
最長が10回。それが3ターンと言うことは、最長30回ですか?長いですね。
ということは、1回の時間は短いのだと思われます。色々と予想できてきましたよ。続きも聞いていきましょう。
「では、具体的なゲームのルールですが、非常に簡単なモノですわ。私たちは、裏切りか協力かを選ぶだけ。ね?簡単でしょう?」
「そうですね。選ぶだけなら簡単です。……でそれ、勝敗などはどうなるのですか?」
「そう焦らないでくださいまし。勝敗もまた、簡単に決まりますわ。勝敗が決まるのは、協力と裏切りが両方出たとき。その時に、裏切りを出した方が勝ちですわ」
ふむ。なるほど。勝敗の決定はシンプルですね。ただ、これだけだと簡単すぎます。賭けとしては面白みに欠けますね。
「それだと、お互い裏切りを続けるだけだと思われるのですが」
「そうですわよねぇ。ですから、そこも考えられているのですわ。私たちの最初の掛け金は金貨10枚なのですが、お互いに協力をすると支払う金額が5倍になっていきますの。因みに、協力同士の時は2倍ですわ。そして、それが影響するのは、1ターンが経過したとき。1ターン経過しても勝負が決まらなかった場合は、…………掛け金がお互いに、全て学園側へとられますわ」




