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巨砲突貫、スエズ制圧

 英独海軍の大規模な海戦が終わり、欧州では潜水艦と護衛船団との間の戦いを除けば静かな物だったが、インド洋では10月5日に英東洋艦隊がマダガスカル侵攻を開始。


 イタリアはこれを受けエジプト方面に戦力を投入。


 とは言ってもジュリオ・チェーザレがスエズ運河に回航された他は本国に配備、戦力化され始めたマッキ202に押し出される形でマッキ200が転用されて来た位で、それ以外に目を引くのは全損判定を受けたダンテ・アリギエーリから撤去した30.5㌢砲を列車砲に転用した物だろう。


 参戦当初の仏海軍によるジェノヴァ砲撃以降本国植民地問わず港湾防御の必要性が叫ばれていた為、魚雷攻撃で着底し無傷だった同艦及びカブールの各種砲が防備に充てられこれまで攻勢に回す余裕がなかったのである。


 復旧したエル・アラメインからカイロを経由して副砲共々スエズに到着した30.5㌢砲の最大射程は艦載時の24㎞から51.7㎞に伸びた。


 付属する観測機器の限界から有効射程は30㎞だったが、紅海方面で対峙するクイーンエリザベス級戦艦の38.1㌢砲の最大/有効射程は27.4㎞で、艦載時と異なり隣接する砲身は無いので相互干渉による散布界拡大もなく、機動制限や投射量と引き換えに射程と精度では勝っていた。


 北中部までの制空/制海権及び現地住民の支持も得ていた事からスエズ運河の掃海は艦砲の届く南端を除き順調に進んでおり、敵の主力はイランやマダガスカルに居たのでジュリオ・チェーザレが触雷した事を除けばイタリア艦隊はさほど妨害を受ける事なく通過に成功。


 丁字有利を取り火力の局所的優勢を保っていた軽巡以下しか居ない英の紅海艦隊を、探知性能で勝るレーダーを搭載した警戒艦からの観測データを元に、有効射程を延ばした各種列車砲で撃退。


 ラミリーズが動いた時には趨勢は決していた。


 だが鉄道を敷設したのは英国である。


 射程こそ掴めなかったものの大口径砲の発射弾数や射撃間隔、艦と至近弾の位置、角度から列車砲による物と判断するのにそう時間はかからなかった。


 ただ上述の通り鉄道はカイロ──内陸に延びている為艦砲射撃が届く範囲が限られ、増派された戦闘機及び前後に連結されたレーダー、高射砲を掻い潜り直接攻撃するのは危険だった為、置き石で対抗した。


 英軍は列車砲に副砲以下も存在する事を知らなかったが効果的な反撃を行ったと言える。


 滞留したスエズ駅に砲爆撃も行ったが反英感情も高まったのは言うまでもない。

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