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面子と主権と欲しい物

 ユーゴスラビアでクーデターが発生した事は勝利が間近とは言えイタリア、ブルガリア同盟軍がギリシャで戦っている中枢軸陣営の崩壊を招きかねず、参加した国々にとって到底許せる事ではなかった。


 ヒトラーはクーデターの報に接した時最初は質の悪い冗談かと思い、後に激怒したが外務省や大島大使から以前から予想されていた日ソ中立条約が近々成立しつつあるとの情報を掴んでいた為、兵力を抽出、ユーゴスラビアに投入するか悩んでいた。


 極東の圧力が減ればそこの兵力がヨーロッパ・ロシアの防衛に転用される筈で、その分ソ連崩壊が遠退くのである。


 元々ドイツはアドリア海を自国の庭と考えるイタリアに配慮してバルカン半島は放置する予定で、既にバルバロッサ作戦に影響が出ない範囲で二個機甲師団を北アフリカ戦線に派遣済みで農業、重工業地帯であるウクライナを抑える予定の南方軍から兵力を割く訳にはいかなかった。


 極東の情勢変化を知るまでは、自国に次ぐ兵力を動員予定で南方軍の一翼を担う世界有数の農業国であるルーマニアには派兵ではなく穀物と原油生産に励んで欲しかったが、ルーマニアと領土問題を抱えるハンガリーも派兵を止めると反発していた。


 おまけに枢軸寄りのイランから齎された情報では旧植民地の隣国イラクで反英クーデターが発生、その支援策も講じなければならなかった。


 他国に弱みを見せる訳にもいかず、自陣営にトルコを引き込めなかった事を後悔しながらヒトラーは関係各国を招集、バルバロッサ作戦を1ヶ月延期して対ユーゴスラビア侵攻を4月6日に行う事を決定。


 他にはバトル・オブ・ブリテンで子飼いの部下と面目を喪ったゲーリングがイタリアに対しグラーフ・ツェッペリンの各種装備と引き換えにリビア又はイタリア本土で搭乗員の育成を行いたいと要望を出した。


 搭乗員の技量低下に悩む中カリキュラム変更から始めなければならず、視界の悪い北海で敵戦艦と不意の遭遇戦になった時空母がどうなるかは対象が逆だが自らが証明していた事や潜水艦や陸戦兵器に資材を取られていた為、イタリアと異なりドイツ側は空母に対する関心が薄れていたのである。


 ヒトラー個人はイタリアの75/32野砲に関心を寄せていた。


 彼は2月に重戦車対策としてⅣ号戦車に60口径50㍉砲を搭載するよう兵器局に命じていたが、より高威力の砲に換装すべきとの答申を受けて当初は40口径、後に砲身が車体からはみ出さないように34.5口径75㍉砲の試作を改めて命じていた。


 この頃は未だバルバロッサ作戦が延期前だった為、間に合わないだろうと思いながら兵器局は各企業に試作を指示した所、Ⅳ号戦車の製造を担当していたクルップからイタリアの新型野砲、75/32の車載案が出て来たのである。


 1906年にクルップはイタリアの依頼でDa 75/27 modello06を製造、ライセンスを売却していたので、独伊接近後関係を再構築する際に同砲の性能を知ったのだ。


 提案を受けた兵器局はイタリアを教導していた砲兵将校からの聞き取りや北アフリカ戦線でマチルダⅡを撃破した火砲について調査を行い、適当と認めた為駐在武官を通してアンサルド社に製造を依頼。


 この頃アンサルド社はドイツ側の要求とほぼ同じ34口径戦車砲を試作中だった為、労力の分散を嫌ったがヒトラーの誕生日が近いドイツ側が現物さえ貰えれば後はこちらでやると言い切り必要な資材を提供する事で押し切った。


 原型の野砲や治具、試験の終わった32口径戦車砲、設計図と用済みになった木製モックアップ等がドイツに空輸され、バルカン半島本土の戦いが終わる中突貫作業で製作が急がれた。


 野砲の改修は間に合わなかったものの砲塔容積には余裕があった為32口径戦車砲の搭載に支障はなく、ヒトラーの誕生日である4月20日に行われた射撃試験では1000m先の垂直に置かれた80㍉装甲を貫通し、ヒトラーを満足させる事が出来た。


 Pak40の製造が軌道に乗るまでの間の繋ぎとして可能な限りイタリア野砲をⅣ号戦車に搭載せよとの命が下され、翌5月から輸入砲ではあったが34口径の75㍉砲を積んだⅣ号戦車がF2型と呼称され生産され始めた。

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