第1話
「あらあー。ほんとアルドの髪はサラサラで綺麗ね~。羨ましいわ~」
「お姉様。この二の腕も素晴らしいですよ。がっちりした筋肉が最高です」
「分かるわあ。彼の筋肉って、ついつい触りたくなっちゃうのよねえ」
現在、俺は2人のお嬢様にもみくちゃにされていた。髪を触っているのはマリア。腕を触っているのはルリアである。彼女たちは俺の幼馴染であり、親友だ。
「おい。俺は仕事を紹介してほしくてここに来たんだが」
「いやん。そんなのどうでも良いじゃないのお。私たちと一緒に良い夜過ごしましょ。良い夢見せてあげるわよ~」
「お姉様の言う通りですわ。あなたはもう働く必要はありません。私たちが一生かけて養ってあげます」
この2人の元に来るといつもこうだ。基本的にもみくちゃにされ、いつの間にか夜になったら泊まることになり、既成事実を作らされそうになる。俺が実力者だからこういうハニトラをしてるんだろうが、好きでもない男と夜を過ごすのは良いのだろうか。
「お姉様。彼、またくだらないことを考えてますよ。恐らく、私たちの愛が伝わってないのだと思われます」
「そうね。ここはいっちょ、彼を抱くというのはどうかしら。そうすれば、私たちの愛も伝わると思うわ」
「名案ですわ! さっそくベッドを持ってきますね!」
「んなことせんでええわあああああ!」
俺は大声を上げながら2人の拘束を振りほどく。
「やん! お姉様。彼にいじめられてしまいましたあ」
「私もよお。DVされちゃったああ」
「ふざけるのもいい加減にしてくれ。それより、仕事を紹介してほしいんだが」
「紹介してほしいなら~。この私の唇を」
奴が言い切る前に、俺は彼女の唇にキスをした。突然のことで驚いたのか、口をパクパクさせている。
「もうそれは慣れた。さっさと仕事を紹介してくれ」
「ずるいずるいーー! 私にもキスしてえええ!」
ルリアがうるさいので、同じようにキスをした。
「さっさと仕事をって」
2人は顔を真っ赤にし、完全に放心状態になっていた。
1時間経った頃、ようやく2人の意識が目覚めた。目覚めた後になぜか説教をかまされた。ムードが無いだのそのまま抱けだの。キスを迫ってきたのはそっちだというのに、随分と理不尽なものである。説教が終わると、ルリアが提案してくれた。
「仕事でしたら、ドラゴンブレイクはいかがかしら?」
「ドラゴンブレイク。確か、毎年1万人は応募するっていう超優秀ギルドじゃないか」
「ええ。しかもホワイトで時給も良い。確か、あなた追放した馬鹿ギルドの10倍の給料があったはずよ。何人か殉職して人が足りないと聞いてるし、良い所だと思うわよ」
確かに悪くないな。破格すぎるくらいだ。
「紹介は私たちの方でやっといてあげるわ。今からでも間に合うようにしてあげるから、行ってきなさい」
「助かる。ありがとう! 2人とも。2人がいてくれて本当に助かる。じゃあまたな!」
俺はそう言って、部屋を出る。ドラゴンブレイク。必ず受かって見せる!
「お姉様。彼に感謝されちゃいましたああ」
「ええ。やっぱり、彼に感謝されるのは最高の気分ね」
「「天国にいっちゃいそう~」」
そう言った2人の顔は恍惚としており、メイドたちは非常に不気味だと感じたとか。




