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死にたがり騎士アル

 パチパチと火の粉が爆ぜる音にユーストマが目を覚ますと自身の傍らには焚火がたかれ、粗末ながらも毛布が掛けられていた。


『目、覚めたか』


 ユーストマが身を起こしたのを確認して鎧が声をかける。


「貴方がこれを?」


『あぁ、そこらへん探したらあったんでな。ないよりはましだろう』


「ありがとうございます」


『素直にしてれば可愛いところもあるんだな』


 ふっと笑う真紅の鎧にユーストマは抗議の声を上げた。


「何でそういうこと言うんですか」


 プリプリ怒るユーストマを真紅の鎧は楽し気に眺めている。


『それだけ元気そうなら、まだ大丈夫そうだな』


 鎧の漏らした苦笑には少しばかり影が差していた。影に気づいたユーストマが恐る恐る尋ねる。


「気づいていたんですか?」


『まあ、何となくな。嫌程そういうのを見せられたからな』


 真紅の鎧はユーストマの身に何が起こっているのか理解していた。ユーストマは呪いに侵されている。その呪いも徐々に生命力を奪い死に至らしめるという質の悪いもの。呪いを解く方法は術者を倒すことのみ。


「あたし、まだ死にたくない。みんなの分も生きなきゃダメなんです。お願い、勇者アルレッキーノ。あたしを助けて」


 掛けられていた毛布を握りしめ、涙ながらに助けをこうユーストマに真紅の鎧は困ったように肩をすくめた。


『悪いな。勇者アルレッキーノは死んだんだよ』


 そう言い、真紅の鎧は兜のバイザーを上げると、ぽっかりと広がる闇の中に蒼と紫の光が浮かんでいた。


「そんな……」


 絶望に打ちひしがれ蹲るユーストマの肩を真紅の鎧はぽんと優しく叩くと


『アルレッキーノはいない。ま、代わりと言っちゃなんだが、その思念の宿った鎧ならいるけどな』


 アルレッキーノが笑いかけるとユーストマはがばりと起き上がると涙でぐしゃぐしゃの顔でその腰にひしとしがみついた。


「アルレッキーノ様ぁぁぁ」


『だからもう、俺はアルレッキーノじゃない。呼ぶならアルにでもしてくれ』


「アル様ぁぁぁ。ありがとうございます」


『あぁ、もう。わかったから。いい加減泣き止んでくれ』


 困り果てた声を出すアルを全く意に介せずユーストマは気のすむまで泣き続けるのであった。

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