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エピローグ

 誰もいなくなった王城を後にした二人は森の中を当てもなく進んでいた。アルの肩の上にはちょこんとユートが座り高めの景色を楽しんでいる。


『なあ、ユート』


 少しばかり陰の籠った声でアルはユートに呼びかける。そんなアルの呼びかけにユートは笑顔で応えた。


「なあにアル?」


『俺は……いや、何でもない』


 笑顔で問われ、言い辛くなったのかアルは途中で言葉を止める。日の光に手をかざしながらユートはアルに聞かせるように独り言を呟いた。


「あたしはみんなの分まで生きて幸せにならなきゃいけないの。それがあたしを生かしてくれた人たちへの最大のお礼だから。あたしだけ生き残ってしまったって罪を感じることなんてしないわ」


『俺は……俺を庇って、父さんも母さんも死んだ。俺なんか構わず二人だけでも逃げていたら助かったんだ。それなのに。二人を殺した俺に生きる資格なんてないんだ』


 項垂れるアルの頭をユートは優しく抱きしめるとそっと耳元で囁いた。


「ねえ、アル、思い出して。貴方のお父さんとお母さんは最後に何て言ってた?」


『俺の両親は……』


 アルの脳内に惨劇の日が蘇る。

 突如、現れた魔物の群れにアルの住む小さな村は成す術もなく蹂躙された。多くの村人が魔物の牙や爪で引き裂かれ、村は血の海と化す。村のはずれのアルの家にも魔物は襲い掛かかってきた。妻と子を守るため父は斧を手に魔物の立ち向かい、母はアルの手を引いて村から離れようとした。

 村の水源の湖まで逃げ延びたと安堵したのもつかの間、どこからか現れた魔物が二人に襲い掛かる。ずらりと牙の並んだ大きな口が二人に噛みつこうとした瞬間、母はアルを湖に向かって突き飛ばした。

 湖に落ちるまでの僅かな間に見えた母の顔は微笑んでいた。


『二人は何も言わなかった。ただ……』


「ただ?」


『二人とも微笑んでいたよ』


「なら、答えはもうわかっているんじゃないの?」


 優し気に微笑むユートを前に眼帯に覆われていないアルの右目が瞬く。


『答えはずっと前に出てたんだな』


 深く息を吐くアルに「そうね」とユートは空を見上げながら応えた。


「色々、気持ちの整理とか時間はかかると思うけど、まずはご飯よね。お腹すいたー」


 切なそうに腹を押さえるユートにアルは思わず狼狽える。


『あ、すまない。自分が腹が減らないから忘れてた』


「それはあたしが言うからいいわ。この先にそれなりに大きい街があるはずだから、まずはそこに行きましょう」


『了解した』


 頷き、アルはユートの指示した方向へ走り出した。

 こうして始まった二人旅。二人の生きる旅はまだまだ続く。


 ー終わりー

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