10話 パワーレベリング・その2
今日もアリスと一緒に街の外に出て魔物を倒す。
平和な時代なので、たくさんの魔物と遭遇することはなくて……
ほどよい具合にスキルの使用回数を回復させることができて、順調にステータスを盗むことができていた。
アリスも俺が弱体化させた魔物を倒して、レベルアップを重ねていた。
まだまだ求める域は遠いかもしれないが……
それでも、着実に前に進んでいるという実感を得ることができた。
「グルァッ!」
ハンターウルフが飛びかかってくるが……遅い。
最初はこの魔物に恐怖したものだけど、今では慣れたものだ。
恐怖を抱くことはなくて、スルリと攻撃を避ける。
そしてスキルを使い、ステータスを盗んで……
「あっ」
俺が避けたせいで、ハンターウルフは真正面から岩に突っ込んでしまう。
打ちどころが悪かったらしく、そのまま倒れて、二度と起き上がらないという事態に。
「まいったな。俺が倒してどうするんだ」
「いいんじゃない? ユウキくんも、いつまでもレベル3っていうわけにはいかないでしょ? 少しは上げておかないと」
「まあ……そう言われてみると、その通りか」
ちょうど、盗むの残り使用回数が減っていたところだ。
使用回数の回復を待つ間、普通に魔物を狩ることにしよう。
――――――――――
「ふう……こんなところか?」
アリスと一緒に、2時間ほど魔物を狩り続けた。
スキルの使用回数も回復しただろうから、また、元のサイクルに戻しても構わないだろう。
「っと……その前にステータスをチェックしておくか。ステータス、オープン」
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名前:ユウキ・アストラス
種族:人間
職業:盗賊
レベル:4
HP :37/37
MP :14/14
攻撃力:69(補正値+30)
防御力:47(補正値+30)
魔力 :13
精神 :3
速度 :58(補正値+30)
運 :21
<スキル>
『盗む:レベル2』『隠密:レベル1』『解錠:レベル1』
『分配:レベル1』
『剛力:レベル1』『敏捷:レベル1』
『跳躍:レベル1』
『魔力感知:レベル1』
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名前:アリス・スプリングガーデン
種族:人間
職業:鑑定士
レベル:7
HP :44/44
MP :29/29
攻撃力:16
防御力:19
魔力 :28
精神 :23
速度 :13
運 :8
<スキル>
『鑑定:レベル3』
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「おっ、盗むのスキルがレベルアップしてる」
「私は、鑑定がさらにレベルアップして3になったね」
「あとは……なんだ、これ?」
知らないスキルが増えていた。
「『分配』? 聞いたことのないスキルだな……?」
「盗んだもの?」
「いや、ステータスしか盗んでいないぞ」
「ということは、盗賊の固定スキルかな? レベルが上がったことで、新たに習得したんじゃないかな?」
「そうかもしれないな。しかし……『分配』か。名前だけ見ても、どんな効果があるのかさっぱりわからないな」
「安心してね。そういう時のために、私がいるんだから」
鑑定のスキルを持つアリスがいれば、こういう時は非常に助かる。
「視てくれないか?」
「うん。ちょっとの間、じっとしててね?」
アリスがじーっとこちらを見た。
「なるほどなるほど……これはまた、なんというか……」
効果がわかったのだろう。
驚いたような顔をしているが……
独り言はやめてほしい。
使えるスキルなのか使えないスキルなのか、判断に困る。
「どういうスキルなんだ?」
「とてもおもしろいスキルだね。『分配』……己のステータスを特定の対象に一定時間、貸し出すことができるみたい」
「ステータスを……貸し出す?」
「百聞は一見にしかず。とりあえず、やってみよう?」
「わかった」
スキル『分配:レベル1』発動。
対象はアリス。
貸し出すステータスは、攻撃力を10ポイント。
「ふぁ」
俺の体が光、線が伸びて、アリスに接触する。
次いで、アリスの体が光り……
ほどなくして収まる。
「これで成功……なのか?」
「ステータスを確認してみよう。ステータス、オープン」
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名前:ユウキ・アストラス
種族:人間
職業:盗賊
レベル:4
HP :37/37
MP :14/14
攻撃力:59(補正値+30)(分配中-10)
防御力:47(補正値+30)
魔力 :13
精神 :3
速度 :58(補正値+30)
運 :21
<スキル>
『盗む:レベル2』『隠密:レベル1』『解錠:レベル1』
『分配:レベル1』
『剛力:レベル1』『敏捷:レベル1』
『跳躍:レベル1』
『魔力感知:レベル1』
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==============================
名前:アリス・スプリングガーデン
種族:人間
職業:鑑定士
レベル:7
HP :44/44
MP :29/29
攻撃力:26(加算中+10)
防御力:19
魔力 :28
精神 :23
速度 :13
運 :8
<スキル>
『鑑定:レベル3』
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「おっ、成功しているな」
俺の攻撃力が10ポイントマイナスされて、アリスの攻撃力が10ポイントプラスされていた。
「盗賊……義賊であるユウキくんならではのスキルかな? 得た富を民に分け与える……そんなところから、『分配』というスキルを得たんじゃないかな?」
「なるほどな」
納得の説明だった。
「このスキルを使えば、さらに効率の良いレベル上げができるな」
まずは敵のステータスを盗み、己のものとする。
そして、それをアリスに貸し出す。
敵は弱体化されて、アリスは強化される。
今まで以上のペースで魔物を狩ることができるだろう。
『分配』の効果はすぐに切れることはないから、一度発動すれば、長い間戦うことができる。
その間にスキルの使用回数も回復して……
うん。
良いことずくめじゃないか?
これならいつまでもレベル上げをすることができそうだ。
「よし、がんばるとするか!」
「うん、そうだね。私もがんばるよ」
「おっ、やる気だな?」
「ここまで色々としてくれているのに、やる気を出さないわけにはいかないよ。ユウキくんに完全におんぶっていうのは心苦しいんだけど……その分、がんばって期待に応えないと!」
「その意気だ」
「わっ」
アリスの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「私のこと、小動物扱いしていない?」
「いや、そんなつもりは……悪い。気に触ったか?」
「ううん……ご主人さまが私に触れたいのなら、いくらでもいいよ? 私はご主人さまのものなんだから」
「……ご主人さまはやめてくれ」
「ふふっ」
くすくすと笑うアリス。
この穏やかな時間が、なんだかとても愛しい。
「それじゃあ、やるとするか」
「はい」
二人、気合を入れてレベル上げに挑む。
街に帰るのも忘れて、自給自足のサバイバルをしつつ……
一週間、がんばってレベルを上げて上げまくった。
その結果……
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名前:ユウキ・アストラス
種族:人間
職業:盗賊
レベル:14
HP :89/89
MP :32/32
攻撃力:133(補正値+50)
防御力:125(補正値+50)
魔力 :26
精神 :15
速度 :123(補正値+50)
運 :45
<スキル>
『盗む:レベル3』『隠密:レベル3』『解錠:レベル2』
『分配:レベル2』
『剛力:レベル3』『敏捷:レベル3』
『跳躍:レベル2』
『魔力感知:レベル2』
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名前:アリス・スプリングガーデン
種族:人間
職業:鑑定士
レベル:42
HP :186/186
MP :124/124
攻撃力:78
防御力:68
魔力 :108
精神 :117
速度 :59
運 :34
<スキル>
『鑑定:レベル5』『解析:レベル3』『空間分析:レベル2』
『天眼:レベル4』『心眼:レベル2』
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……こんな形になった。
ベテランの冒険者は、基本、レベル30でステータスが50前後と聞く。
そのことを考えると、俺はレベル14なのにベテラン冒険者の3倍近いステータスを有することになり……
アリスはアリスで、レベル30を遥かに越えて42に到達していた。
……ちょっと鍛えすぎたかもしれない。
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