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拠り所、不意な騒ぎ

2020,9/25 添削

「ふげぇ」


 そんな声を残して後方へと吹き飛ばされた。 そのまま後ろの木に勢い良くぶつかったハイドは、見事なまでに気絶してしまった。 ほんの一瞬の出来事。


「何だぁ今の…… げ。」


「何が、げ。だって?」


「ね、(ねえ)さん……! お戻りになら…… ごふっ。」


「ひぃ……。」


「私がいない間に何を暴れているんだい! あれ程静かにしていろと言ったのに。」


 さっきまで騒がしかった宿屋が一瞬にして静寂さを取り戻した。 そして何より、腹パンを食らった筋肉質の男の仲間達(と思われる)が顔を真っ青にしている。


「す、すいやせん姐さん…… こいつがいきなり……。」


「おいお前、嘘はいけねぇ。悪いのはこいつだ姐さん!」


「どっちでも変わらないよ。 お前達、今日の飯は抜きだね。」


「「そ、そんな……っ」」


 男達が騒いでいる(かたわら)、ハイドが意識を取り戻した。


「う、うぅ……」


「ああそうだ。 うちの奴が失礼したね。 大丈夫だったかい?」


「な、なんとか……。」


 ハイドの事などすっかり忘れていたカレンが、苦笑いで近づいてくる。


「えっと…… 何が起きたんですか……?」


「うちのバカが宿で馬鹿やってたんだよ。」


「バカがバカ……」


 宿内を見ると()ねた様子の何人かと目が合った。 あ、()らした。


「さぁ宿に入ろう。 (わび)びも()ねて私が()()すよ。」


 そう言うとバカ達(?)を押し退()けて先に入って行った。 ……この殴られたバカは放置で良いのだろうか。


 〓

 元気な挨拶と共に迎えてくれたのは、ハイドと同じくらいの少女だった。 綺麗な三つ編みを2つぶら下げたベージュの髪、赤を基調とした服にデニムサロペットを着ている。 なんとも可愛らしい少女だ。 散らかった店内を(せわ)しなく走りながら大声で呼びかけた。


「やっほー! 拠り所(よりどころ)へようこそ! ちょっと今忙しいから奥の空いてる席で待っててねー!」


 店の散らかり様に呆然(ぼうぜん)としていたハイドだが、カレンに席まで引き()られながら連行されていった。


 カレンは、席まで連れて()ぐに片付けの手伝いに戻ってしまったが、(ほとん)ど入れ替わりで大男が話し掛けてきた。


「よう坊主、さっきは悪かったな。 俺はライストーングのリーダー、ダロット=シュバッハだ。 よろしくな。」


 ガハハと笑うこの人は、いつの間にか意識を取り戻していたバカだ。 まさかリーダーをしているとは。 (ちな)みにチーム名は聞いた事がない。


「ハイド=エイズです。 宜しくお願いします。 その… お腹の方は大丈夫ですか?」


「あれにはもう慣れてしまったな。 心配は要らんぞ。 あと、そんなに固くならないでくれよ。 お互い気楽に行こうぜ。」


 あれに慣れとかあるんだ。 あれには一生慣れたくない。 絶対に。 それは()(かく)、ダロットさんが気さくな人で良かった。 緊張しなくて済むしね。 まだ怖いけど……。


「ところで坊主。 ここらでは見ない顔だな。 そのちっこい体で旅でもしてるのか?」


「この間旅を始めたばかりです。 出身はシュメルツ村です。」


 名前は呼んで貰えなかったし、ちっこいとか言われたが興味深そうに聞いてくれていた。


「私もお話ししたいなぁ。」


 ダロットさんと話していると、先程の少女が近づいて来た。


「あ、アリスちゃんっ……。 お、お疲れ様デス……。」


「……自分で片付けするんだよ?」


「……。」


「はい行った!」


「はいっ。」


 そう言うと、勢い良く立ち上がってばたばた走って行ってしまった。 怖いぞこの子。


「はい走らないっ、はぁ。 っと、お待たせ。 君はハイド君だよね? カレンさんから聞いたよ。 改めまして… やっほー! 拠り所へ! まず先にお部屋に案内するよ。 あ、代金はもう貰ってるからねー。」


 凄い一人で喋るし先行っちゃうし……。 ここには似た人しかいないのかな?


「早くおいでよっ。」


「は、はいっ。」


 彼女には逆らわないほうがいい。 本能がそう伝えてくる。


 〓

「さ、君の部屋はここだよ。 二階の右端、しっかり覚えておいてねー。」


「案内ありがとうございます。 中は…… 意外と広いんですね。」


「カレンさんからのお願いとなると気合も入るからねっ。 当たり前だよっ。」


「えっと、因みにカレンさんはどの様な方なんですか?」


 初めて会った時から気になっていた事だ。 魔物は一発で倒すし、チームを従えているし、宿で贔屓(ひいき)にされているし……。


「えぇ、知らないの!? この町で、というかこの地方で知らない人はいないよ?」


 ここにいるんだけどね。


「しょうがないなぁ、カレンさんはここらで一番強いって言われてるよっ。 二つ名も持ってて、『神速ノ流星(メテオーラー)』って言うんだよっ。 かっこいいよねぇ。」


 二つ名があることも知らなかった。 もしかしなくても村に(こも)り過ぎていたのかもしれない。 それにしても、カレンさんの事を話している時のアリスさんは、目をとてもキラキラさせている。 彼女の事を大好きなのが伝わる。


「凄く有名な方だったんですね。 そんな凄い方に助けられたとは思いませんでした。」


「助けてもらったの!? 良いなぁ、私も助けられたいなぁ。」


 そんな呑気(のんき)に言ってられる状況じゃ無かったけどね。 死ぬところだったんだから。


「あ、旅の(いや)しに長居は邪魔(じゃま)だったね。 それじゃ、ごゆっくりっ。」


 そう言うとさっさといなくなってしまった。


「なんか… 急がしい子だったなぁ。」


 そんな事を(つぶや)やきつつ改めて部屋を見る。 一般的なウッドカラーの部屋に家具がベット、机、椅子、クローゼットとだいたいは(そろ)っている。 とても過ごしやすい空間になっている。


「自分には勿体(もったい)無いくらいの部屋だな……。」


 来て早々に言うのはあれだけどとても気に入った。 この町での生活がとても楽しみだ。


ドゴオオオオオオ


 大きな音と振動が突如(とつじょ)として起きた。


「な、なんだ!?」


 外では多くの悲鳴が聞こえる。 何やら下の階も騒がしくなってきたぞ。


「お前達っ、仕事だよっ。 場所はフォイヒティ広場、すぐ行くよっ。」


「「「おうよっ」」」


 掛け声と同時にドタドタと外に出ていく音。 この時ハイドは、無意識に窓から飛び出していた。 広場があると思われる方向はすぐに分かった。 空が赤くなり、黒い煙が上がっていた。


 手を付かずに着地し広場の方を向く。


「……яранакя」


 魔導書は(かす)かに光を放っている。


 〓

 んっ。 なんだこの感じは……。 嫌な予感がする……。 まさか…… いや、あり得ない。 封印は完璧、(そもそも)血は途絶(とだ)えている。 ならばこれは……。

どうもどうも、赤水捺南です。

2ヶ月ぶりくらいでしょうか。


第5話をご覧いただきありがとうございます。 今回は宿屋『拠り所』でのお話です。 初登場が沢山です。その中でもイチ押しはアリスちゃんです。 かわいいアリスちゃんです。 だいぶせっかちさんです。 一応魔導書は持っていますが、本人は使いたくないらしく持ち歩いていません。 因みにフライアーテを持っています。

これからも登場させて行く予定なのでお楽しみに。

そして今回は、神様も登場しました。 どこで登場したかわかりましたか? そうです、一番最後で登場です。 久しぶりに出しましたが書く事がなかった…… わけではないので大丈夫です。 ええ本当ですとも。


さて皆様、気になっている事がありますね? あるんですよ。 そうです、最後の方に変な事が書いてあったと思います。 え? 変な事しか書いてないって? 面白い冗談を言いますね。……冗談ですよね? そんなことは置いておいて。

あれはハイドが発したものです。 何を言ったのか、何を意味するのかは後々分かってきます。 でも、頭の良い皆様なら一発で分かってしまいますね。 流石です。 違う文字にすれば良かったかな。


今回はこれくらいにしておきましょう。 相変わらずの語彙力で何も伝わらなかったと思いますが…。

次はいつになるかな、楽しみにしてくださると嬉しいです。そして、評価、感想等お待ちしております。


それではまた、いつかお会いしましょう。



赤水捺南

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