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消えない感覚

いつも嫌になる。

完璧な愛情表現なのに。

芸術に近しいものを作っているのに。


貴方が恐ろしいと(ゆが)む顔。

懇願する顔。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔。

切り裂いた時の痛烈な表情。声。汗。涙。鼻水。

そして血。

生臭い匂いが部屋に充満する。


これは好きだ。

でも。


切り裂く時の感覚。

皮膚を裂き。肉を断ち、骨まで達する。

この時の。この時の刃が骨をかすめる、骨を削る感覚がいつまでも(てのひら)に残って!!

そう。まるで。

骨付きの鶏肉をナイフとフォークで食べているとき、フォークで誤って骨を切っているような不快な感覚。

石鹸が爪と指の間に入るような不快な感覚。

チョークが爪と指の間に入る感覚。

自分で黒板やガラス板をぎいーぎいーと、背中に寒気が走り、鳥肌が立つほど爪や指で音を立てるような感覚。

吐き気がする。



皮膚を裂くことも、肉を切ることも、血管をぶつりと無理やり断つことも。苦にはならない。顔や服、至る所に生暖かいものが飛び散ることだっていやじゃない。

痛みや恐怖に耐えられずに吐瀉(としゃ)してしまったその匂いも、その処理も嫌じゃない。


なのに!

あの感覚は!

あの感覚だけが!

ずっと、ずっと嫌な感じに残っているんだ!!!


ごりごりと骨を削るあの感覚が!

刃先から持ち手、手へと伝わる。そして脳髄まで手響いて、まるで頭蓋骨をも震わせるようなあの感覚!

吐き気がする。



まるで拒絶されているみたいだ。

世界のすべてに。


まるで否定されているみたいだ。

自分という存在が。


だから欲しい。見つけたい。


自分だけの最高の理解者を。


そしたらきっとこの感覚はきれいさっぱり消えるはずなんだ。

いや。

消えるんだ。



ああ。

ところで、ずっと見つめている君。

そう、

こっそりと、もしくは堂々と。

それとも恐る恐るかい?

いや、わくわくしながらかな?


まあ。なんでもいい。

とにかくずっと熱い視線で見つめてきているのに気づいていたよ。


気になるんだろ?

だからずっと見つめてくれていたんだよね?


見つめられるのも、覗かれるのも趣味じゃないけれど。

君にならいいよ。


だって最高に興奮したんだもの。

こんなこと初めてだよ!


もしかして君は人生で二番目の運命の人なのかな!!!


そうか。

いや、そうだ!!そうに決まっている!!


君は最高の理解者になってくれるかい?



いや、君こそが最高の理解者だ!!

絶対にそうに決まっている。


今までもそう思って思いをぶつけていたけれど、君は段違い!!



だから、こっちに。

さあ、早くこっちに。


何をしているの?

恥ずかしがらないで。こっちに。

ね、早く。

なに?

心配しないで。大丈夫。今までで一番の愛を君に。

だから今までの“モノ”に嫉妬しないで。


ね?


こっちに来て。


早く隣に。




愛しているよ。

君は今までで一番の…


いや。



最高の理解者だ。


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