表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

ユレル “モノ”

目を開けると友人がいた。

 暗い部屋の中、たくさんの蠟燭(ろうそく)(とも)っていた。()に照らされてできた影がゆらゆらと(うごめ)き、まるで動物のようだった。

 そして友人は意味のわからないことをずっと、ずっと話していた。

 意味が分からない。

 怖い。寒い。助けて。誰か。助けて。

 涙を流しても無駄。

 首を振っても無駄。

 友人なのに友人ではない誰かが苦しめてくる。

 言葉を発したいのに許してくれない。

 どうしようもなかった。

 悔しかった。辛かった。

 自由を奪われ、ただ。ただ、恐怖の中で(おび)えるしかなかった。

 友人の後ろでは(おぞ)ましいものが揺れていた。

 古いにおいも、新しいにおいもした。

 ゆらゆら揺れる“モノ”からぽたり、と、きらめく何かが滴った。

 残念そうに友人は言った。

 「あれは昨晩、理解者になれなかった“モノ”だ。」

 と。

 「でも、君は最高の理解者になってくれるよね。」

と。

ゆらゆらと揺れる蠟燭(ろうそく)の灯に照らされた友人の顔は恍惚としていた。

顔にできる影が恐ろしかった。壁に移る影が恐ろしかった。

「父も、母も、妹も、兄も、見知らぬ誰かも。運命の人にも。誰にもなれなかった存在に。最高の理解者に君はなってくれるよね?」

 期待の表情。いつもと違う彼の表情。笑っているのに笑っていない目。紅潮した頬。その全てが恐ろしかった。怖かった。忌まわしかった。(おぞ)ましかった。気持ち悪いと思った。


狂っていると思った。



思った。それだけなのに…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ