8 初めての防具つくり。
あのあと、私は防壁魔法のことについて考えながらギルドに向かっていた。
気になること?そりゃぁ防壁の強度とかもなんだけど、それよりこの世界では何種類も魔法を使える人は少ないのです。
端的にいうとあまり目立ちたくないので人前では使いたくないなーと。
そんなことを考えながら私はギルドで終了書を渡し、報酬を受け取っている時であった。
「おい、嬢ちゃん。手前ぇみてぇなガキが冒険者なんてやってけるわけねぇだろ。俺が、やっていけるノウハウうってやつを教えてやるよ。…その代わり、その金よこせや。」
と、大柄な男が声をかけてきた。
いわゆるカツアゲってやつ?
ギルドのテーブルからは「おい、またあいつやってるよ」「あんな子供まで絡むのか」「あいつ…かわいそうに」などといった声が聞こえてくる。
えっ?誰も仲裁に入ってくれないの?と思ってギルドの職員の顔を見てみるが、みんな気まずそうに顔をそらす始末。
あー、終わった…。
「えっ…と。どういうことですか?」
私はとりあえず、声をかけてきた男にそう返してみる。
「あん?聞いてなかったってのか?まぁいい、もう一度言ってやる。手前ぇみてぇなガキがやってくためのノウハウを教えてやるから金よこせって言ってんだよ。」
あ、これは何言っても覆らないやつだ。
私はあきらめた。
「んーと。すみません。これがないと生活できないのでお断りさせてもらいます。」
私はやんわりと断る。
「嬢ちゃんの生活なんざ知らねぇ。新入りは俺に金を渡しときゃいいんだよ。」
と言って、私がまだ手に持っていたお金を奪い取ろうとする。
が、簡単に渡すわけにはいかない。私はとっさにポケットにお金をしまい込む。
すると、突っかかってきた男は
「おい、嬢ちゃん。まさか力量差が分かんねぇってんじゃねぇだろうな。素直に渡し解けば痛い目見ずに済んだってのに。」
と言いながら男が殴りかかってきた。
えっ!?マジで来るの?私まだ9歳の子供だよ!?
などと思いながら咄嗟に先ほど覚えた防壁魔法を展開した。
ガン!という音を立てながら私に殴りかかってきた男の拳が止まった。男を見ると、すごく痛そうな顔をしながら「てめぇ…」などと言っている。あ、これ完全に怒らせたわ。
「ぜってぇ許さねぇ!」
男がまた殴りかかってきた。私は咄嗟にもう一度防壁魔法を展開する。男は次々と殴り掛かってくるが、さすがに疲れてきたのか少し動きが緩くなってきた。
そこを逃すわけにはいかないと、私は男の急所に蹴りを入れた。それも、魔力で威力を少し上げた状態でだ。子供だから少し強化しないと大の大人には効かないかなと思ってやったことなのだが…痛そう。私は前世の男だった時の記憶もあるので痛みが分かってしまう。最も、今は女で考えも女よりなのでそこまで気にはならないが。
男は股間を抑えながら倒れこんでしまった。すごく痛そうだ、この様子なら男として再起できないかも?…いや、私のせいじゃないからね!?こいつが勝手に突っかかってきたのが悪いだけで私は正当防衛だからね!?
私は一抹の後悔を残しながらなぜか自分の股間を抑え込んでいる男たちをかき分け、ギルドを後にするのであった。
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「すみませーん。」
「ん?だれ…って嬢ちゃんか。ちょうどいい今準備が終わったところだ。」
私はいま、鍛冶屋のタントのところに来ている。
私はタントに促されるがまま奥に入っていく。
「ところで嬢ちゃん。今回見せるのは武器鍛冶だけでいいのか?」
「あ、それのことなんですけど。先に鍛冶魔法のことについて伺ってもいいですか?」
私はここに来るまでに気になていたことを聞く。
「あぁ、いいぜ。鍛冶魔法だな?そうだな、嬢ちゃん鍛冶魔法の種類について知っているか?」
「いや、知りませんね。」
「鍛冶魔法ってのは、防具鍛冶、武器鍛冶、生活鍛冶に分かれている。防具鍛冶は文字通り防具を作ったときにいいものが出来上がる魔法だ。武器鍛冶はそれの武器版だな。で、生活鍛冶だ。これは…そうだな、フライパンや鍋。その他の鉄製品を作るときに使う魔法だ。」
「ということは防具鍛冶しかない人でも武器を作ることは可能っていうことですか?」
「作るだけ、ならな。大抵は出来の悪いものにしかならない。」
なるほど、つまり全部見ないと当初の目的は達成できない可能性が高いのか。
「タントさんは全部扱えるのですか?」
「おうよ、もちろんだとも。」
「なら、すべて見せてもらってもいいですか?」
「お、全部見たいのか。まぁ、嬢ちゃんにならいいか。ついてきな。」
といって、タントが奥に消えていく。
それからというもの、私は地球での常識はことごとく覆っていくのであった。
まず初めに、鍛冶というと高温に熱した窯や鉄をたたくためのハンマーを想像するのであろうが、この世界ではキッチンのようなところでタントが鉄に手をかざしているだけなのであった。もっとも、形を作り出すために集中しなければならず。一度話しかけたときに注意されてしまった。
でも、見てみて分かったことがあった。まず、製法こそ違うが作る過程は似ていて、まず赤くなった鉄を好きな形に創造していくというものだった。タント曰く。一旦熱した鉄を想像しそこから形を創造していくのだそうだ。
私は一通り見終え、タントに礼を言っった後、宿屋に帰って早速試してみようと思っていた。まず分かったことだが、武器以外も製法は全く同じだった。それから、武器に属性をつける際つけられる属性は自分の使える魔法の属性だけのようだ。タントの場合火と土のようだ。私は全属性使えるので問題ない。ということで早速宿屋に帰った私は試してみた。素材?まぁ自分の身を守るものだから出し惜しみせずにマダガスカル銅とか使いますよ。それと少しわかったことなのだけど、創造魔法はすごく魔力の消費が悪いみたい。まぁ、私の魔力は文字通り底が無いので関係ないのだが。なぜわかったかって?「創造魔法」を「解析」してみた所そう書いてあった。
ということでとりあえず武器を作ってみる。まずは金属を熱するところからだ。マダガスカル銅が真っ赤になっているところを想像する。しばらくすると目の前にあるマダガスカル銅が赤くなってきた。私は次に形を作っていく。形は直剣か曲刀でどうしようか迷ったが、戦うときはほとんど魔法なので実用性はあまり考えず、曲刀…いわゆる日本刀のような形にした。もちろん子供が腰に差して抜ける程度の長さだ。鍔をつけ持ち手は布を巻いていく。出来上がった武器は初心者が到底作れないと思われるほどに立派だった。
属性だが、どうやら創造魔法をつけることができるらしかった。最もつける気はないが。それで付けた属性だが。詠唱中断と雷属性、防御力上昇極大に耐久力極大をつけてみた。
え?つけすぎじゃないかって?いいんだよ自分を守るためのものだし他人に見せるものでもないし。
とりあえず持ち手の防御力そして刀の耐久力を上げてあとは、咄嗟に詠唱されたときに中断できる仕組みを入れておいた。雷属性はおまけ程度で、切った相手がまれに麻痺して動きが鈍る程度。
防具も作ろうと思ったがあまりに重いと動けなくなるしどうしようかと考えた結果こちらも自重せずに作ることにした。
革の胴当て スキル 不干渉 Lv.12
革の籠手 スキル 不干渉 Lv.12
革の腰当て スキル 不干渉 Lv.12
靴 スキル 不干渉 Lv.12
不干渉:魔法の場合Lv以下の敵の攻撃を受け付けず、物理攻撃においてはその持ち主の魔力を消費し防御する。
という感じの壊れ具合だった。魔法攻撃はまず受けつけず、物理攻撃においても魔力の無尽蔵なティアにおいては攻撃を受けることはないだろう。たとえ防具の隙間を縫って攻撃しても、防具が魔力を使って防御してくれる。これ以上ないほどの防具だった。
それに籠手や胴当て、腰当てといっても少女が普段着として着用していて、それを防具だと気づくような作りではなく、普通の服そっくりなのだ。
普段着にしようと思うティアなのであった。