4 異世界といえばやはり人助けですよね?
前回よりは、おおい…?
さて、旅に出て稼ごうと思っても、私みたいな子供が稼げる方法というのは少ない。稼ぐにしても街のほうが稼ぎはいいので街に行こうと思う。
どうしようか…。などと考えながら街:アンタルに向かって歩いていると、道の先のほうから何やら喧騒が聞こえてきた。
少し様子見をしよう…。そう思い、少し進み隠れれそうな草むらを探す。
少し様子見して見て分かったことなのだが、どうやら商人が盗賊に襲われていたところらしい。
この世界では盗賊は大抵は職にありつけなかった貧困者や、大罪人がなるもので、金目のものを渡せば見逃してくれることが多い。しかし、喧噪は収まりそうにない。
しばらく見ていると、交渉は決裂したのか、盗賊の頭みたいな人が後ろで待っている仲間たちのところに戻っていこうとしているところだった。
商人は護衛と一緒にすでに馬車を守れるように剣を抜いている。しかし盗賊は20人はいるのに対し、商人側は護衛も合わせ合計4人だ。多勢に無勢、徐々に押されてきてしまう。
私は助けに入ろうかとも考えたが、こんな子供が大の大人相手に何かできるわけでもない。しかし、私には魔法がある、それも申し分のないほどの威力のある。
私はまず、土魔法を使って大人のこぶしサイズの石を作った。そして、創造魔法でパチンコのようなものを創造する。
…創造して、私…右手で石をもって、左手に持っているはずのパチンコに引っ掛ける。ゴムの強度はこれ位?
私は腕を引き絞る。べつに本当のパチンコを引き絞っているわけではない。創造でのパチンコだ。だが、私の創造魔法によって創造の威力は本物になる。
私は、まず盗賊の頭に向けて照準した。最初に交渉しに来たやつだ。
右手の石から手を放す。すると石は放物線を描いて盗賊に向かって飛んで行った。石は盗賊の頭のこめかみに当たった、その場で盗賊が倒れる。
護衛たちと盗賊が少し驚くがそんなことは気にしていられない。
次に私は斧のようなものを持った、一番大きな盗賊に向けて石を放つ。またもや放物線を描いて飛んで行った石は、盗賊の膝にヒットする。痛みで少しよろめいた。そこを逃す護衛ではなかった。鋭い突きを入れる。咄嗟のことで対処できなかったのだろう。盗賊の喉元には剣が突き付けられた。
次に私は相手の動きを鈍らせようと、呪魔法にある、麻痺魔法を放った。
盗賊たちの動きが少し鈍る。指揮官に大物を失い、さらに動きの鈍った盗賊を切り伏せるのはそう時間はかからなかった。
私は終わったと思ってへたり込んでしまった。
そして、私は思う。盗賊の頭は死んでないのだろうかと。この世界ではこういう生と死はよくあることではあるが、日本人の記憶が戻った私はそのことが気になってしまい、私のほうに近寄ってくる護衛の一人と商人に気が付かずいきなり声をかけられてしまう。
「さっきの魔法はあなたですか?」
咄嗟に声をかけられて身構える。
「安心してください。私たちはお礼を言いに来ただけなのです。」
どうやら、石を放つ場所を考えなかったせいで居場所がばれていたらしい。
「私は商人のハンスです。先ほどは助けていただきありがとうございます。」
「俺からも礼を言うぜ。俺は、ハル。冒険者をやっている。最近この辺で盗賊にあった噂がなかったから油断していたよ。それにあいつら、連れを奴隷商に売ると言ってきかなくてどうしようかと思っていたんだ。」
どうやらお連れさんがいるらしい。たまに殺戮を楽しんだりする盗賊がいる。さっきの連中はそういうやつらだったのだろう。
「お嬢さんは旅の途中でしょうか?私たちはアンタルに居を構えようと移動中でして。」
なるほど、彼らは街に居を構えるために移動してる最中に襲われたらしい。
「よければ一緒に来ていただけませんでしょうか?あんな大規模な盗賊はギルドへの報告が義務図けられていまして、できれば一緒に来てほしいのですが。」
ギルドへの報告はよくわからないが、目的地が一緒なのでの申し出をありがたく受けて同行させてもらうことになった。
馬車にお邪魔してから分かったことなのだが、馬車の中にはハンスさんの息子さんと奥さんが乗っていたのだ。
彼らはとてもいい人で、私を快く迎え入れてくれた。盗賊はこんな人たちを奴隷に売ろうとしていたのか、と私は少し怒りを覚えたが、生きていたので良しとしよう。
それから、私のやった頭と盗賊のうち一人は生きていて今は荷馬車の中で縛られて放置されている。ギルドに報告したときに突き出すのだという。
ちなみに、その二人の装備は私が倒したということで私がもらうことになった。
解析で彼らの装備を見てみる。
盗賊の戦斧 レア度 ★6:盗賊の持っていた戦斧。それなりの筋力がないと扱うことは難しい。
属性:異常状態
予知の魔剣 レア度 ★10:未来予知の魔剣。魔力を消費することで数秒後の相手の動きが見える。なお、何秒後が見えるかは魔力の消費量によって違う。
何かすごいものを見た気がする…。とりあえず私はストレージにしまっておくことにした。
しまうところを商人に見られびっくりされたが、アイテムボックスだと言い張ることで事なきを得た。