第3話 魔法
ソータとクロムは住む場所を探していた。
街を歩いていると色々な店が目に入る。
食べ物、服、武器、宿...
宿に泊まろうと思っても、なぜか相手にされない。
「なあ、なぜにどこも泊まらせてくれないの。」
ソータが歩きながらクロムに聞いた。
「話してもいいけど、引かないでね。」
「ああ、いいよ全然オーケー」
「僕は、最近無免許に魔法を使用したんだ。でもぉ、自分が無免許なのに魔法を使えたのは教習所の授業を盗み聞きしていたからなんだ。」
「え、なにそれ。魔法?」
ソータは驚いて足を止めて聞いてみた。
「え?魔法を知らないのぉ!? 小さい子でも知ってることだよ」
「おかしいねぇ。お兄さんのところでは魔法はないのぉ?」
結構興奮気味のクロムが聞いてくる
「ああ、ないよ。魔法なんて夢物語だろ」
クロムは腕を組んで下を向いた。
「そうだねぇ。魔法のことから話した方がいいねぇ。」
「魔法とは、自分自身の心が思ったことが現実になるものなんだ。まあ、簡単にはいかないけど。
昔はみんな使えたんだ。例えばぁ、お兄さん」
クロムがソータの目をじっとみて少し口ずさむ。
「発動。フリーズ」
あれ、なんかおかしい。言葉に出そうと思っても口が動かない。
というか体が動かない。でも、目は動くし、呼吸はできる。もちろん心臓も動いているが、なんでだ。
「うわっ!」
ソータが前に倒れた。
なんだったんだ今のは。急に動き出した
「まぁ、僕ではこんなものだねぇ。どうだった。驚いたでしょ。」
クロムが自慢げそうにみてくる。
「え、今のが魔法?」
「ああ、そうだよぉ。今のは静止魔法。効果時間はそんなに長くない」
これが魔法なのか。自分でもできるのかな。ちょっと試してみるか。
ソータはクロムと同じようにクロムの目を見つめて、
「発動、フリーズ」
しかし、クロムには変わったところはない。
「...ふふ。.....ははは。」
クロムは笑いをこらえようとしているがバレバレだ。
「お兄さん。発音違うしぃ、まず普通の人じゃぁできないよぉ。」
やっぱダメか。そういえばさっき免許と言ってたが、免許を取らないと魔法は使えないのだろう。
いやしかし、クロムは 無免許だと言ってた。じゃあ、なぜに魔法を使ったのか。
ソータが考えていると
「僕は、免許を取ってないけど、使える。なぜならそういう体質だからだ。」
「体質?」
「さっき言ったように普通、魔法はみんな使えるんだよぉ。けど、近い昔にそれを禁止したんだ。
ある偉い人が窓を開けないようにしたんだ。
窓とは、心で思ったことを現実にするための通り道だね。昔は開いていたんだけどぉ、それを閉じたんだ。」
「けれどねぇ。全世界の窓を閉じたのはいいんだけどぉ、それに当てはまらない人がおよそ全人口の0.5%いるんだぁ。その一人が僕なのぉ」
ソータは手を叩いて、
「あ、そうなのか。でも生まれつきなら仕方ないんじゃない?」
クロムはまた興奮して、
「そこなんだよぉ。僕が指名手配された理由はぁ。」
一瞬ソータは凍り付いいた。
『指名手配』という言葉を聞いて驚かない人はいないだろう。
それだけ悪いことをしたのかと思ったが、いきなりクロムが叫ぶように言った。
「あ!僕のこと引いただろぉ。引くなと言ったのにぃ。」
「そりゃそうだろ。目の前で話している相手が指名手配犯なんだから」
ソータは一歩下がった。
「ちょっと待って、お兄さん。指名手配されたのは、仕方がないことなんだ」
「街でいつものように歩いていたらスリにあってぇ、財布をすられたんだよぉ。
まあ、運良く気づいて捕まえようとしたけどさぁ、相手は大の大人で走るのが速かったんだよぉ。
仕方なく。仕方なくだよぉ。本当に仕方なく静止魔法を使ったんだ。」
あ、さっきのやつか
「そしたら偶然騒ぎを聞きつけた衛兵に見つかって、スリを捕まえてくれやのはいいんだけどぉ、向こうが『ちょっと免許見せて』と言ってきて、とっさに逃げたんだぁ。」
クロムは全て説明終えて少しホッとしていた。
「うーん。仕方ないっちゃあ、仕方ないね。で、どうなったの?」
興味が出てきたのかソータが聞く
「もちろん顔を見られたから手配されたよ。無免許魔法使用は大罪でね。死刑にはならないが、1000モルの罰金または5年以下の懲役そして魔法免許資格を失う」
まあ、モルは通貨だろう。しかし、そこまで大罪のようには聞こえないが。
「で、どうするの?これから。」
クロムは腕を組んで下を向いた。
「まあ、記憶消去すれば済むんだけどぉ」
「待って、記憶消去なんてできるの?やればいいじゃん。」
「そうだけどねぇ。そんな大魔法僕じゃ使えないよぉ」
クロムは頭を抱えて揺らしている。
「だったら協力者でも見つければ?」
だって、魔法が使える人に頼んで消して貰えばいいだけじゃん。
さっきの話をすればいいはずだ。そうすればわかってくれるだろう。
「いやぁ、お兄さん。魔法使える人って全人口の何%か知ってる?」
「70%くらい?」
「5%だよぉ」
嘘だろ、少なすぎ。
魔法って本当に誰でも使えるわけじゃないんだ。
これじゃあ、終わったな。
「まぁ、これからしなきゃいけないのは、大魔法を使える人を探すのとぉ、そして泊まる場所だねぇ。」
「大魔法使える人って何%くらいなの?」
「うーんとぉ、魔法使える人の中でぇ、10%。全人口では0.5%」
あ、終わったわ。
ただでさえ魔法使える人少ないのに、その中の10%を探さなきゃいけない。
「寝床はぁ、ちょっときてぇ。お兄さん」
クロムに連れられるまま、広い原っぱに連れていかれた
「発動、ヒ・スペース」
クロムが唱えると地面の一部が白くなった。
「お兄さんきてぇ。」
その白いとこに立つと、場所が一気に変わった。周りが灰色の壁になる。
なんだこれ!
一瞬で部屋になった大きさは、ホテルのツインルームくらいだ。
「これはねぇ、中魔法の空間出現魔法だよぉ。空間ができて、外からは見えないようになってる。
ここが寝床だ」
「僕は、中魔法の簡単なのまでなら使える。」
魔法にも便利なものがあるんだなぁ。
「今日はもう遅くなるからぁ、ひとまず部屋を作ろうかぁ。」
クロムが地面に腰を下ろして言うと、
「そうだね。」
「まあ、クロム、これからよろしくな。」
「うん、よろしくねぇ、お兄さん。」
ここから、長い協力者探しが始まる。
この時はまだソータはこのパワレル異世界の怖いところを知る由もなかった。