第1話 街A
手持ちは衣服、食事、ipad、時計、ライトのみだ。
もちろん、充電器も持ってきている。
ソータはここはどこなのかと叫びたかったが、自制心がそれを抑えていた。
ーーーーーーーーーー
遡ること1時間前ーー
ソータ(16)は旅行のため新幹線に乗ろうとしていた。
親兄弟と...いや
友達...違う
一人でだ。
なぜなら、
ソータの性格なのか、なんなのか大抵いつもやらかしてしまうのだ。
というか、巻き込まれるのだ
そういえば 、1週間前にやっとあのいざこざに決着をつけたばかりだ。
まあ、それらは単なる言い訳だが、ただ単に一人旅が好きなのだ。
この開放感。縛られず、一日中好きにいられる。周りに自分を知っているものは誰一人いず 、
何かやらかしても明日には違う場所へ移動するのだ。
周りからは 寂しくないの?とか 辛くない? とか言われるが、集団で行った方が何倍も辛い。
そういうわけで1時間前には新幹線に乗ったのだ。
しかし、それが問題なのではない。
一番の問題は、寝ている間に変な場所にいたことだ。
起きたら今座ってる椅子に座っていたのだ。
周りを見渡してみると、
.
.
.
街だ
この印象がソータの頭をよぎった。
また、今いる街
ま、Aとでも名付けよう
改め、街Aは日本風ではないのだ。というか、日本じゃないだろ。
どちらかというとヨーロッパ系な感じがする。
歩いている人はほぼ日本人だ。
ソータが観察をしていると、
「どうしたの。そんな顔してぇ。なんかなくしたのぉ?」
すぐ隣から聞こえてくる。
衝動的に左を向くと、自分より少し低いくらいの少年が座っていた。
「お兄さんずっとここでキョロキョロしてるけどぉ、周りから見たら怪しすぎるよぉ。特にその背中についてるやつ」
少年が指差したのはソータのリュックサックだった
「え、なにが怪しいの。普通のリュックサックだろ。安ものだけど...」
ソータは不思議に思ったが、少年も倍不思議に思ってたのだろう。
なぜなのかは後ほど気づくことになる。
「呑気にお話ししるねェ僕ゥ」
目の前に立っている男がいた。見たらわかる。とても威厳..いや、いかつい顔している。
「やべ」
少年がソータの腕を引っ張って道を駆け抜ける。
少年の力は相当なものだった。
見た目は自分より1,2歳しただろう。
まあ、永久文化部の自分にとっては中1にも体力では負けるだろうが...
考えてる暇も与えず猛スピードで少年は走って遠くまで連れていかれた。
5分くらい走っただろうか。景色も微妙だが変わってきた
「何やってんだ、....なんかあったのか?」
息切れをしているが、残った10%ほどの体力でソータは問う。
「あ、ちょっとね。うん。まあまあ、」
なぜかしっくりこないような答え方をする。
これを答えと言っていいのかもわからないがひとまず良しとしよう。
「あそうだ。自分はソータっていう。君の名は?」
動揺していたのか最近のとある映画の題名のような言い方になってしまった。
少し、いや相当恥ずかしかったがすぐに答えは帰ってきた。
「僕の名前は、クロム。ここの少し先のとこに住んでたんだよぉ」
へぇーなんか、クロムウェルって人が世界史に出てたような感じがしたが、ソータにとっては世界史は天敵なのでこれ以上は考えなかった。
ん?まて、過去形??
「あーー、うん。そう言われるとそうだねぇ。 僕はすんでいて、今は街頭警備員をしてる!」
あ、なるほど要は家を追い出されたとてもお若いNEETか。
そうソータは理解した。
「お兄さん、絶対僕のことを卑下しただろぉ」
クロムは怒りっぽい口調で言ったが、ソータの言葉にかき消されてしまう。
「なあ、卑下って、自分を低めにしてるんだぞ。意味が違うけど」
とても長い沈黙が走った