設定三
主人公:宮廷魔術師兼王家魔術指南役 エー(仮) 23歳 男 属性 水、土、闇
アスタルテ王国内の獣牙の森で倒れているところをアスタルテ王国宮廷魔術師長アーナイゼ・ダンラッド58歳に発見され保護される。主人公当時8歳。
目覚めた主人公は記憶喪失であり、自分の名前を覚えていなかったためアーナイゼはエーと名付けた。記憶はないが文字の読み書きが問題なくできていた。さらに魔術の適性を調べたところ水、土、闇の三属性をもっており、さらに魔力も子どもにしてはあり得ないほどの魔力を感じさせていたのでアーナイゼは自身の弟子として向かい入れることにした。
アーナイゼの魔術関係の知識や技術、一般教養、宮廷作法、魔物の知識などの指導を受けながら生活していたエーは1年でそれぞれの属性の初級基礎魔術を修得、それ以上に家事スキルが身についた。
エーが10歳になったばかりの頃、5日間発熱に悩まされ寝込んだ。治癒魔術や魔法薬、薬も効かなかった。6日目の朝には寝込んでいたのが嘘のように回復していた。アーナイゼはエーを心配だったため1日ゆっくりするように言いつけた。
おとなしく従ったエーは寝込んでいた間に鈍ってしまった身体をほぐすために訓練前と同じ体操をした。30分ほどかけて体操をこなした後、目を閉じ身体の魔力を意識しながら体中に巡らせ魔力回路が鈍っていないか身体と同じように確認をする。すると異変に気付いた。当然、5日も魔力を身体に巡らせていなかった影響でそれなりに鈍っていることは承知していたが、自分で感じ取れる魔力量が寝込む前と比べて、倍近くになっていた。
魔力は20歳を過ぎたころから成長が緩やかになり年を取るにしたがって変化しなくなる。すでに60歳を迎えたアーナイゼは少しずつだが未だに魔力が増えている規格外な魔術師だ。エーは現在魔力成長期真っ只中ではあるが数日で倍になるなんてことは通常ありえない。
エーは魔力量が増えた原因が前日まで熱で寝込んでいたことかそれとも、寝込んだ原因が急激な魔力上昇にあるのではないかと考えた。
魔力が増えることは魔術師として喜ぶべきものだが手放しで喜べるものではない。昔、魔力を人工的に増やす実験を行っていったことがあり、研究者であり被験者でもあった者たちの大半が死亡するという結果になっている。それも、研究施設の大爆発によって。その原因は体の限界を超える魔力を保有したことで体内の魔力が暴走し魔力爆発を起こしたと調査の結果判明した。このような経緯から素直に喜べず背筋に冷たいものを感じた。
魔力の少ない者たちの魔力爆発で研究所が吹き飛ぶのなら、魔力が増える前の時点で宮廷魔術師に匹敵する魔力をもっていたエーが魔力爆発を起こしたら王都全域が吹き飛んでいたかもしれないのだ。
エーはそんな危険を知らなかったとはいえ無事に乗り越えれていたことに胸を撫で下ろした。
魔力の増加に対する考察を一段落させたエーは再び目を閉じ、魔力を身体に巡らせる続きを始めた。左手、左脚、右脚、右手、胴、そして頭と魔力を巡らせ、深呼吸をしながらゆっくりと目を開けた。そこには自分の部屋なのにいつもと違う景色が広がっていた。雪など見たこともないエーにはわからなかったが見たことのあるものならその景色はダイヤモンドダストのように光り輝く幻想的なものだったと言っただろう。
きれいだと自然と言葉が口から漏れた。エー自身がそのことに気づかないほどその光に魅了されていた。そしてその光の正体を幼いながらに魔術師としての才能あふれるエーには直感的に理解できた。空気中に含まれる魔素と呼ばれるものだ。