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東方人気投票の裏話(?)  作者: アブナ
第三幕 開演、世界崩壊への導曲 第一章 再来のサバイバルゲーム
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「フラン、行くわよ」


「…ちょっと待ってもらえる?」


「え?」


「レミリア、私からもお願い。少し待って」


「霊夢…?」


「…わかったわ。少し待つ」


「ありがとう。すぐに終わるから」


「フラン、何処か心当たりは?」


「多分、あの森の中に……」


私と霊夢は、近くの森に入っていった。







「……」


「…あんなに強い貴女が、殺られるなんてね」


私達は、諏訪子の死体を探していた。

死体は無残な姿だった。見るに堪えないほど、悲惨な状態だった。


「……」


目に涙が浮かんでくる。ハロウィンパーティーの時に、私は諏訪子と親しくなっていた。

それに、夢幻館でも……。


少し性格は荒っぽかったけど、とても明るくて、優しくて……けど何処となく大人っぽくて。まるでお姉様と同じように感じた。

けど、お姉様よりもいい意味で甘いのだ。口調といい性格といい……。


「…貴女、二つの意味で泣いてるでしょう?」


「…!」


「諏訪子が死んでしまった事と、こいしが変わってしまったことの二つよ」


「……諏訪子はね……すっごく優しい人だったんだ……」


「…ええ、よく知ってるわ」


「…諏訪子ともっと……色んな話を……したかったなぁ……!」


「……そうね…」


私達は、諏訪子の遺体を魔法で元通りの姿に戻した。守矢神社に、この事実を知らせる為に。


「行き先は守矢神社ね」


「…そういう事かよ。それならそうと先に言ってくれ。私にも手伝わせてほしかったよ」


「……」


私達は暗い雰囲気のまま、守矢神社へと向かっていった。










「……諏訪子様……」


諏訪子の遺体を早苗さんに見せ、それまでの経緯も話した。早苗さんは、しばらくの間悲しみに暮れていた。しかし……。


「…私も、ついて行っていいですか?」


その時の早苗さんの目は、怒りと復讐の炎に燃えているように見えた。

……気持ちはよく理解できる。私も復讐の為だけに強くなったようなものだから。

それとは別に、私には一つ気になっている事があった。


「…ねえ、罰って結局どうなるのかな」


「さあね……もしかするとまたこいしが来るのかも……」


「何度も何度も返り討ちにしなきゃならないのか……次現れた時は絶対に捕まえようぜ」


「こんな事なら咲夜を連れてくるんだったわ……」


「……」


「…フランさん、こいしさんは確か、貴女のお友達でしたよね」


「…!…うん。それがどうかしたの?早苗さん」


「…ごめんなさい。こんな事を言うのは私も嫌なのですが……貴女の友達を殺す事になっても、いいでしょうか…?」


「構わないよ」


「…!」


「…けど、一つだけお願いがあるの」


「……はい?」


私は今まで、こいしの事を邪魔者扱いし、巻き込むまいと自分から遠ざけてきた。

しかし今度は、私の前からだけでなく幻想郷のみんなから遠ざけて行っている。


「…こいしの事は……私に任せてくれないかな」


「…!」


ならばせめて、自分だけでも最後までこいしの味方でいよう。

だって私達は、友達だから。

…あんな酷い事を言ったんだ。もう友達である資格はないのかもしれない。

けどそれでも、こいしは私の大切な人だから…私はこいしの味方であり続ける。


「…わかった。こいしの事は貴女に任せるわ」


「ありがとう」


…それはそうと……。


「霊夢と魔理沙はまだ罰を受けてないわけだけど……どうなるのかな?」


「さっき言ったろ?毎晩毎晩こいしが襲ってくるんじゃないか?」


「だとしたらこいしを救うチャンスも増えるわ。フラン、貴女にとっても嬉しいはず…」

「そうじゃない」


「え?」


「新しい命令…来るのかなって」


「……なーるほどね」


「来たら嫌だな……早々にこいしを倒して終わらせたいところだが……」


「まあ何にせよ、こいしは探さなくちゃならないみたいね」


「……ねえみんな、少し休んでいかない?こんなくっらい雰囲気なのも嫌だし。何とかなるわよ!それに、色んなことが起こりすぎてみんな疲れてるでしょう」


「…霊夢らしい考えだわ……まったく、休んでる暇なんてないんだけどね……」


「ははっ、しょうがねえ、ちょこっと休んで行こうぜ?」


「そうだね。お姉様も、疲れてるでしょ?」


「…まあね」


守矢神社は火の海と化してしまっている。だから、比の届かない所で休む事になった。神奈子もそこにいるとの事。


「…ここは…」


そこは、妖怪の山の麓だった。


「……」


「どうした?フラン」


「…いや、何でも」


”あの時”はルーミアちゃん達が死ぬなんて想像もしていなかった。

遅かれ早かれみんな巻き込まれる事になってはいたのだろうが。

私はやはり間違っていたようだ。

初めからこいし達と協力していれば……。


「…ちょっと、水飲んでくる」


「…?ああ。フラン、大丈夫なのか?」


「うん。心配しないで」


そう言って私は近くの川に行った。


「……」


「…?おい、霊夢までどうした?」


「早苗、この辺に鐘かなんか出来た?」


「?いえ、出来てませんよ?どうしてですか?」


「いや…妙に鐘の音がうるさくて……聞こえない?」


「聞こえないけどなぁ……」


「…とりあえず、私も水飲んでくるわ」





「……」


私は人生に悔いは残さないと決めていた。

なのに……後悔だらけだ。

こいしを悲しませる結果になってばかりだった。

お姉ちゃんに迷惑をかけてばかりだった。

私は一体、何の為に頑張ってきたのだろう。

私はみんなに必要とされているのだろうか。


「お悩みね、紅魔の妹君」


「…!霊夢…」


霊夢が私の隣に座る。


「何があったの」


「…別に。霊夢には関係ないよ」


「冷たいわねぇ〜、人が心配してきてやったってのに……」


「何で霊夢が私の心配なんかするの」


「…そうねぇ…仲間だから…いや、友達だから、かしら」


「…!」


霊夢は本来、こういう性格だったのか。

私の知ってる霊夢は極悪非道の奴だった。

これが、ヒロト君に性格を捻じ曲げられなかった本当の霊夢。……何て優しい人なんだろう。


「…霊夢は、優しいね」


「はあ?」


「私の事を心配してくれたんでしょ?」


「なーに言ってんのよ。心配するのは当然でしょ?普段あんなに明るいあんたがあんな辛そうな顔してたんだから……私じゃなくったって心配するわ」


「……やっぱり優しいや。ふふっ」


「……優しいって話をするのなら、あんたの右に出る者は私は知らないけどね」


「え?」


「あんたは大切な者のためなら何でもするし、争いごとを好まないし、いつもいつも笑顔でいるわ。あんたがいるだけで、その場は平和になる」


「……!」


「もっと自信持ちなさい。あんたはみんなに求められてんのよ、フラン」


「……霊夢は、人を泣かせるのも得意なの…?」


「…ええ、得意よ。現にあんたが泣いてるわ」


「……霊夢…ありがとね…」


「気にしなさんな、お嬢さん」


「…何かおじさんっぽいわね。ふふふ」


「おじっ…!何でよ!」


「ふふふふ…」












「お、おかえり二人共。水はどうだったよ」


「最高の味よ。とっても冷たくて美味しかったから、水筒でもあれば嬉しいわね」


「水筒に入れてたらその内温くなると思うよ?」


「はっ…!そうだったわ」


「よーしこいしのついでにチルノも探そうぜ!そうすりゃ常に涼しいぞ!」


「お、いいですね!この時期、涼しいに越したことはありません!」


「立ち直り早いわね…ちょっと尊敬するわ」


「お姉様、皮肉みたいに言わないの」


「そ、そんなつもりは…!」


「ひっどいぜレミリア!なあ霊夢?」


「お嬢様は無情様、なーんてね!ぷはははっ!」


……。


「ちょっと何か反応してよ!」


「だっはははは!スベっちまったなーおい!」


「ま、魔理沙!あんたねえ!」


「ふふふふ…」


「あんたら仲良いわねえほんと」



ベキャッ



……!?


「……れ、霊夢…?その腕……どうしたの?」


「…え?」


「……!?」


霊夢の左腕がありえない方向に曲がっている。


「れっ…霊夢さん!?」


「霊夢!?どうした!?なにが……!」


「……!?」


霊夢は声こそあげずにいるが、何が起きているかわからず冷や汗をかいている。


「こ、攻撃か!?だとしたらどこから!?」


「そんなわけないでしよう!?どんな技よ!」


「霊夢!とりあえずその腕治すからこっちに…!」


ボトッ


すると、霊夢の左腕が地面に落ちる。


「……これ、私死んだかも」


霊夢の意思でやった様子ではない。


ブシャアァッ


血が噴き出した。


「霊夢!!」


「…一体何が…!?」


「お姉様!急いで霊夢に血をあげよう!!また後で魔法で人間に戻せるから!!急いで!!」


「…!わかったわ!」


「待ちなさい。もういいわ」


「なっ…!何言ってるの!!」


「いい見せしめじゃない……これが、支配者の罰のようね」


「…えっ…!」


「殺人鬼が殺せなかった場合、惨殺処刑をどういう理屈かはしらないけどその場で行えるようだわ」


「……!!」


「恐らく吸血鬼になったところで無駄でしょうね……再生ができない上にバラバラにされるんだろうから」


「…れ、霊夢…!お前まさか、死んじまうのかよ…!?」


「そうなるわね……残念だけど」


「ふざけんな!!なに死のうとしてんだ!!諦めんなよ!!」


「…魔理沙。みんなのこと……幻想郷のことよろしくね」


「だから何を言ってんだ!!」


「私が死んでも博麗大結界は残るから、安心なさい。ただ、管理は頼むわよ」


「…霊夢…!」


「フラン、あんたはもっと自信を持ちなさい。そうすればもっと強くなれるわ」


「……!!」


「れ、霊夢さん…!!」


「早苗…あんたに結界の管理にお願いできるかしら?」


「…自分でしてくださいよ!!私がその罰とやらを奇跡の力で…!」


早苗さんが奇跡の力を使おうとするも……。


「…あ、あれ?起きない…?」


しかし、使えなかったようだ。


「……!」


「…フラン、あんた随分と訳ありね。私達と関係のある事だけど、今回の異変とは関係のない話で……何か大きな悩みがあったんじゃない?」


「……そんなこと言ってる場合なの…!?」


「……ま、とやかく言うつもりはないわ。…あとは任せたわ」


霊夢は空を見上げながら、こう続けた。


「鐘の音の意味が……やっとわかったわ。こういう事だったのね」


「……霊夢…!」


「……頼んだわよ、みんな」


その時、霊夢が何処かへと転移結界で消えていった。


「なっ!?霊夢!!」


「ど、何処に…!?」


ドッパァーーンッ


その時、遠くで柔らかい物が爆発するかのような生々しい音が聞こえた。


「…!!」


「……まさか…!!おい!!霊夢!!近くにいるなら返事しろ!!おい!!」


しかし、辺りは静寂が続くだけ。

魔理沙は悲痛の叫びがこだまする。


「霊夢!!霊夢!!悪ふざけも大概にしとけ!!お前……!お前が死ぬわけがないぜ!!霊夢!返事しろよ!!」


「……あ、あああ、あ……」


早苗さんは、頭を抱えて泣きじゃくっている。


「……!!」


お姉様は、未だに目の前で起きた事が信じられずにいるようだ。霊夢の左腕をじっと見つめている。


「……霊夢……!」


一人、幻想郷の中心となる人物が命を落とした。

これが、地獄の始まりだったんだ。






To be continue…



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