元の世界へ
暇潰しに書いてたら書き上がってた。
酷い出来の挿絵もあります
あの決戦から三日後の事。
皆は紅魔館へと帰っていた。
「こいしの容体は?」
「酷い怪我だったからね……しばらく目が覚めないかもしれない」
「……そうか……」
並行フランと魔理沙が話していた。
「……なあ、その……聞くのはよくないんだと思うけどさ」
「ん?」
「何で…生きてるんだ?フラン」
「……ヒロトの魂にだけ……上手く攻撃してくれてたんだ……あの二人はね」
「…そうか」
「……早く、こいしが目を覚ましてくれないかな。そしたらお礼をいっぱいしたい」
「……そうだな」
二人共、こいしの心境をわかっているからこそ、基本世界のフランの名前は会話には出さなかった。
「……こいし……」
並行フランは、あの時もっと自分が警戒していれば、こんなことにはならなかったのではないか、と深く後悔していた。
「……こいしに一言だけ、言いたい……まだ希望は残ってるって……たった一言でいいから……」
「……そうだな」
「……なあ」
「ん?」
「この戦いでさ……私達は平和を勝ち取ったんだよな」
「……うん」
「なのに……何でこんなに気分が悪いんだろうな」
「……私がわかるわけないよ…そんなの」
ぬえと正邪が、二人用の部屋で話していた。
正邪はベッドの上に座っている。
ぬえは椅子に座り、机に肘をついて不機嫌そうにしていた。
「……はあ」
正邪は、ため息を付いた。
「…どこ行くんだよ?」
「ちょっと、あいつの見舞い」
ガチャ バタンッ
「ねえ、霊夢。私達って巫女だよね?」
「…うん」
「……今の世界の巫女って、何なのかな……」
「……」
「神社に居もしないのに……布教もしてないのに……妖怪を助けて、自分が生き残るために戦う……」
「……早苗…」
「……私……何のために今まで戦ってきたかわからないよ…」
「……ねえ、早苗」
「…?」
「貴女の言う通り……私達は神社に居もしないし布教もしていないし自分が生き残るために戦ってきた。けどね」
「?」
「それでいいのよ……私達は何も間違ってない」
「え…」
「神社に居るから巫女?それは違う。布教をしているから巫女?それも違う……
自分の大切な者を守るため、自分を大切にしてくれている者達を悲しませないため……必死に生きて生きて、生き抜いて…最後にまた、みんなで笑い合えるように戦う。それこそが、私は本当の幻想郷の巫女だと思うの」
「…霊夢…」
「だから今のままでいいの!私達が笑って過ごせる平和な世界を、これからずっとずっと守っていくんだ!」
「…うん!そうね!」
この世界の二人は同い年で、同じ人里からの出身であった。
それぞれ同じ夢を持って、幼少の頃からずっと共に歩んできた旧知の仲だった。
その二人の絆は、とても硬かった。
まるで、こいしとフランのように。
「……」
私は見覚えのある場所で目が覚めた。
とてもいい寝心地だった。このまま、また二度寝をしたいほどに。
「……」
辺りは西洋風の家具や装飾で、シャンデリアが部屋を照らしていた。窓からは、草原が見える。
ここは、紅魔館の一室だった。
私は、ベッドで寝ていたようだ。
「……」
しかし、妙に頭がぼんやりしている。何があったのか……何をしたのか、よくわからなかった。
記憶が曖昧だったんだ。私は、何があったのかを忘れていた。
「……何が、あったんだっけ……」
−……確か……ヒロト…?だったかな……あいつと戦って……
……あれ…?その後…どうしたんだっけ……?
ガチャ
「!」
「こいし……起きた?」
この世界のお姉ちゃん…?……この世界…って……あれ?何で……。
「貴女、酷い怪我をしていたのよ……自分のことなんか全く気にしてなかったようだけど」
「……え……?」
「……貴女は友達思いだものね……必至になって当たり前だわ」
「……友…達……」
「ずっと走り続けて、足が酷い状態だったわ。見つかった時は……死んでしまっているんじゃないかって心配したのよ」
「……友達……死……」
「…?こいし?」
「………!!!」
ドクンッ
その時、こいしの脳裏にはとある記憶が蘇っていた。
友 必 怪 心 死
達 死 我 配 ぬ
−『大好き』
フランが……死ん……
「…あ……あぁあ……」
「…こいし?」
「あぁああぁあああぁあぁぁあ!!!」
「こいし!?」
「嫌ぁあぁぁあぁぁあ!!!」
私は部屋を勢いよく出て行った。
−『ねえ、こいし……もしもだよ……?もし……貴女が私のお姉様だったら……もっともっと好きになってたと思うの……』
「うわぁあぁあああぁああぁあああ!!!」
ドゴォンッ!!
私は手当たり次第周りの物を頭突きで壊していた。
正確には、頭を打ち付けていた。
−『何だろうなぁ、これ……こいしやぬえ……お姉ちゃんや咲夜達……幻想郷のみんなとの思い出が……脳裏に浮かんでくるんだ……』
「あぁああぁあああぁあぁぁあ!!!」
−『私ね……こいしと一緒にいる時ね……すっごく気持ちが安らぐの……』
「やめろ……やめろおおぉおお!!!」
ドガァンッ!!
壁に穴が空いた。
−『今まで本当に……ありがとう……私のこと……忘れないでいてくれたら……嬉しいな……』
「あぁああぁあああぁあぁぁあ!!!」
開けた穴から、私は外へと飛び出した。
「おい!!どうしたんだよこいしは!」
「わ、わかりません!突然あのように暴れ出して…!」
「とりあえず止めろ!今のあいつは瀕死なんだ…てきとうに攻撃当てるだけで…!」
「待って」
「「!」」
並行フランがこいしが出て行った方へと向かっていく。
「私が行くよ」
バサッ
「はあっ!はあっ!…ゼェッ…!はぁっ…!」
私はいつの間にか、湖まで来ていた。
「……あぁああ……!!ああぁぁああぁああぁあああ!!!」
世界が違うとはいえ、形は全く同じ。
フランと遊んだ記憶が鮮明に蘇ってくる。
そして、私の背中で死にゆくフランの姿も。
−消えろ……消えろ消えろ消えろきえろきえろキエロキエロ!!
「消えろォォォ!!」
私が湖を消し飛ばそうとしたその時だった。
「こいし!」
「……!?」
−フランの声!?
私は勢いよく振り返った。
「早まっちゃダメよ」
……。
「……あんた誰?」
「…え?」
「何でフランの姿にそんなに似てるの?誰?誰なの?答えてよ」
目の前にいる奴はフランじゃない。私の知ってるフランじゃない。
偽者だ。偽者…偽ものにせものニセモノニセモノニセモノ
「ニセモノ…殺す」
「…こいし…!」
「ニセモノが喋るなァァァ!!」
殺す!!殺す殺すころすころすコロスコロス!!
「こいし!落ち着いて!!」
「喋るなって言ってるでしょ!!」
「…仕方ない、か」
「…!!?」
気付くと私は岩に叩きつけられていた。
そして、同時に我に返った。
「……フ、フラン……?」
「……よかった、気が付いたみたいね」
「……その腕の傷……どうしたの…?」
並行フランの右腕に、爪で抉られたような傷があった。
並行フランは、そこを左腕で抑えている。
「……何でもないよ。それより、落ち着いた?」
「ま、まさか私に…!?ごめんなさい!!」
「……気にしないで。落ち着いてくれたみたいでよかったよ」
フランが木にもたれかかる。
そうとうきついようだった。
「フラン…!大丈夫な……」
私が立ち上がって並行フランの下に向かおうとするが……。
「……!?」
立ち上がれなかった。
どうやら、体の疲労が限界に達しているようだった。
「動いちゃダメよこいし。傷がまた開いちゃったんだから」
フランがこちらまで歩いてきてくれた。
「……どこから話せばいいか……」
「……わかってる……私は自分で思い出してるんだから……じゃなきゃこんな風に暴れたりなんかしなかった」
「……」
「フランは……私の大親友の…!掛け替えのない、大切な大切な友達のフランは……!!」
「……!」
「フランは!!死んだんでしょ!?」
「……!!」
私は、この時も泣いてしまっていた。
「……生きてる」
「…え?」
並行フランから返ってきた言葉を聞いて驚いた。
「……フランは……生きてるよ。今は、紅魔館でゆっくりと休んでるはずだ」
「……えっ……え?本当に…?」
「嘘をつく理由がないよ」
「……」
ザッ
「……行っておいで。こいし」
−……私は少し、ここで休んで行こうかな……。
その時、並行フランの背中は血まみれの傷だらけの状態だったことを私は知らない。
だが、私の攻撃は再生可能だったため死んでしまうようなことはなかった。
数分前
「……!!」
ここは、フランが眠っていた病室である。
正邪は、フランの見舞いに来ていた。
しかし、ベッドにフランの姿はなかった。
窓が開いていた。
「……フラン…!!まさか…目覚めたのか!」
喜びと同時に、少し不安になった。
どこへ行ってしまったのか……。
「……おいみんなァ!!フランが目を覚ましたぞー!!でも病室からどっか行っちゃったみたいだから、探してくれないかぁ!!」
私は急いで紅魔館へと向かった。
早く会いたかった。本当に生きているのだとしたら、一度会って謝りたかった。そして、話したかった。
「フラン……フラン…!」
必死に走っているうちに紅魔館へと辿り着いた。
しかし、何故か紅魔館内が騒がしい。
「フランを探せ!本当にどこに行ったんだよ…!」
「手分けして探そう!館の何処かにいるのは間違いない!」
「そうとは限らないよ。今は八時半だから……あと八時間くらいはずっと日は落ちたままだし……外の可能性もある」
「とりあえず館内を散策するぞ!」
「…!?」
フランがいなくなったの…?つまり、紅魔館でフランは寝ていたってこと…?
私が暴れていた時はまだ起きていなかったのか……。
「……」
タンッ
私は何となく、フランは時計台にいる気がした。
何故かはわからない。けど、そんな気がしたんだ。
「…フラン……」
屋上に降り立ち、時計台の方を見る。
しかし、フランはいなかった。
「……いない……」
しかし、その時だった。
「おはよう、こいし」
「!!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
そう、以前は毎日のように聞いていた声。
私の大切な、大好きで大好きでたまらない存在。
「よく眠れた?」
フランドール・スカーレットが、紅魔館の屋根の上にいた。
「……フラン…!!」
「……」にこっ
フランは笑顔でこちらを見ている。
思わず、涙が溢れてしまった。
「…うぅ……ううぁあ…!!」
「…!」
「フラァァーーーン!!!」
私はフランに飛び付いた。
「おっとっと…!」
その勢いで、少しフランが体勢を崩した。
「よがった……よかったぁぁ……!!」
「…心配かけて、ごめんね」
「ほんとだよぉ…!もうっ…!!」
「…ふふっ」
しばらく私は、そのまま泣いていた。
そんな私を、フランはずっと優しく包んでくれた。
……あったかい……フランの体……吸血鬼だなんて思えない……。
「……フラン……」
「……」(眠ちゃったか…)
−……お疲れ様、こいし。
「……元の世界に帰ったら……いーっぱい、遊ぼうね」
…あれ、また私寝ちゃったのかな……。
「…ん…」
体を起こして、周囲を見回す。
「…ここって確か……私の……」
仮の私の部屋。ここに住まう際に、部屋がなくては困るだろうという事で並行フランが用意してくれた部屋である。
ガチャ
「!」
「ん、こいし。おはよう」
フランが手に料理や紅茶やお菓子など、色んな物も持っていた。
持っていたというよりは、魔法で浮かせて持ってきていた。
「おはよう。それ、私のために?」
「ええ。こいし、長い戦いで疲れたでしょ?しばらくここでゆっくりと休んでから元の世界に戻ろう」
フランが紅茶を淹れてくれた。
ベッドのすぐ隣まで机を持ってきてくれた。
そして、椅子を持ってきて私のすぐ隣に座る。
「傷の具合はどう?一応、治癒魔法をかけ直したけど」
「バッチリだよ!もう全身完治した!」
「それはよかった。なら…少ししたら久しぶりにお風呂にでも入らない?」
「おお、いいね!」
私とフランは、料理やお菓子を食べながら他愛のない話をたくさんした。
「それでさー、聖さんにお母様って言ったことがよっぽど恥ずかしかったみたいでね!ものすごい形相でぬえが私に向かってきたのよ!」
「ぬえらしい…ふふっ。そうそう、わたしも似たようなことが向こうであったんだ。諏訪子が賭けに負けて、正邪をお姉ちゃん呼びするっていうのがあってね」
「うんうん」
前の頃の私達に戻った。いつもと何にも変わらない。
他愛のない話で盛り上がって、一緒に笑い合う。
いつもの日常が、やっとやっと帰ってきたんだ。
これからはもうきっと、惨劇が起きることもない。
「それじゃあお別れだね、二人共」
「うん!色々と、お世話になったよ。フラン」
「ううん。こちらこそ助けてくれてありがとう。私達はもう、友達だね」
「うん!またいつか、私達の世界に遊びに来てよ!」
「ええ!いつか必ず行くよ!」
「それじゃあね、別世界のフラン……貴女の昔の友人さん、もう二度と現れないといいんだけど……」
「心配ありがとう。けど、大丈夫。もう魂は消えていったから」
並行世界のフランの力で元の世界に戻してもらうのだ。
「また会おうね……二人とも」
「うん!」
「ええ」
私達の周りが、突然輝き出す。
ここに来た時と同じだった。
そして、光で前が見えなくなった。
……この世界では、色んな事があったな。
みんなの性格が違ったり……私がみんなの敵だったり……。
フランが駆け付けてくれた時は、ほんっとうに嬉しかったよ。ありがとう。
この世界であったことは一生忘れることはないだろう。
世の中にはこんな言葉がある。
「終わり良ければすべて良し!」
並行世界篇 ~fin~
「……元の世界の……博麗神社?」
「…帰ってきたんだね、元の世界に」
「……」
私はつい、博麗神社の鳥居の上に登って辺りを見回した。
「……!」
懐かしい景色だった。何故か、またこの景色を見ることができたことがこの上ないほど嬉しかった。
「……帰って、きたんだ……」
私が感傷に浸っている時だった。
「……!!」
「…?フラン?」
フランが博麗神社の、霊夢がいつもいる部屋の壁に貼られている何かを見て驚いていた。
「……こいし」
「ん?」
「……これ」
「なになに?」
私が急いでそこまで来て見てみると……。
「…!?」
そこに貼られていたのは……。
これから幻想郷に住まう全ての者達でサバイバルゲームをしてもらいます。
本気の殺し合いです。この世界に一人殺人鬼が存在します。その殺人鬼から二ヶ月間逃げ切る又は最後の一人になるまでこのゲームは続きます。
特殊ルールとして、支配者から命令が下されます。
ルール1.原則として能力の使用は禁止。使用した場合は罰を与える。
ルール2.支配者の命令は絶対。逆らった場合は罰を与える。
ルール3.妖怪達は再生ができなくなっている。
殺人鬼を殺すことでゲームを終わらせることもできます。では、ゲームスタートです。
命令1……紅魔館の主、レミリア・スカーレットは博麗霊夢と接触する。
ーーー支配者より
「……だから霊夢がいなかったんだ……」
「ちょ、ちょっと待ってよ!こんなの信じられるわけないじゃん!第一、支配者って誰よ!?」
「…とにかく、1度紅魔館に向かおう。そうすれば話が聞けるかもしれない」
「フランはこの貼り紙の内容を信じてるの!?」
「信じる信じないじゃなく、本当か嘘かを確かめに行かないと……もし、これでお姉様と霊夢が接触して、その後ここの貼り紙が変わっていたら……」
「……わかった、行こう」
こいし達はまだ、知らなかった。
これが、絶望の始まりであることを……。
第二幕 世界崩壊への序曲 終幕
第三幕 開演、世界崩壊への導曲
To be continue…
フラン「私何回死ぬの?」
こいし「何か今回の話でも死んじゃいそうで心配だよ…」
作者「フランちゃんが死ぬ場面の二番煎じ感ね…」
フラン「そんな二番煎じやだなぁ……」
こいし「今度こそ!今度こそぜっったいに死なせないからね!フラン!」
フラン「ふふっ、私も死なないようにしなきゃね」
作者「全ては俺の手の上だけどね」ボソッ
並行フラン「お楽しみはこれからだ…」
作者「待って!ガソリン引火爆破はやめて!」
次幕で最終幕かもなぁ…




