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東方人気投票の裏話(?)  作者: アブナ
並行世界篇
84/123

永き因縁に決着を

一ヶ月近く更新はしないと言ったな。

あれは嘘だ。

いや、嘘ではないんだけど、この話は番外作った時点で結構書き終えてたから……多分これからは遅くなるかな〜と……

「……ヒロト…!!」


並行フランを乗っ取ったヒロトが、建物の屋根の上に現れた。


「……まだ上手く…身体に馴染んでないんでな……しかし、フランドールの力は強大だな……これほどの力があるとはね」


「……!」


「…今回は面白く乗っ取ってみたんだ……フランドールと俺の魂を融合させてる……」


「…何…!?」


「つまり、だ。俺を殺せば一緒にフランドールも死ぬ」


「そ、そんな…!」


「お前らはフランドールを殺せるか?今まであれだけ助けてもらってきたというのに……」


ヒロトは、並行こいしの体に入っていた時までとは雰囲気が変わっていた。

冷静沈着になっていた。


「……!」


魔理沙は、並行フランと戦うことを躊躇っていた。


「…無理はしなくていいよ、魔理沙。ここは私が行く」


フランがそう言って一歩前に出る。


「フ、フラン…」


「大丈夫、私を信じてよ……ぜったいに負けたりなんかしないか…」「フラン、下がってて」


こいしがフランの前に立ちはだかった。


「…こいし…?」


「ここは私がやる」


こいしは、フランの事が大好きである。大好きなのだが、自分の事をいつも守ってばかりだ。自分は守られてばかりなのだ。

こいしはその事に、焦りと悔しさを感じていた。

フランに置いていかれている……前までのような対等な存在ではなくなっているのだと無意識に自覚してしまっていた。


「…こいし、いつから私をそんな怖い目で見るようになっちゃったの?」


「…え?」


こいしは、フランを睨みつけてしまっていたようだ。


「…ご、ごめん…そんなつもりは…」


「……ねえ、こいし。私ね、こいしの事を尊敬してるのよ」


「…え?」


「私は貴女のように真っ直ぐになれないの……何処か裏で何かを考えてしまう」


フランがこいしの右手を両手で握る。


「私は、貴女の生き様が見てみたい。私の事を救ってくれた、太陽のような存在を守りたい。だから私は貴女の事を助けるし、貴女は私の事を助けてほしい。仲間として…友達として、さ。


私達はずっとずっと、友達でいるって約束だもんね」


フランは笑顔で言った。


「……ごめん、フラン。今まで思ってたこと、全部言うよ」


こいしはフランの顔を見て言った。


「私ね、焦ってたの。フランは何をするにも冷静で、強くてかっこよくて……何でもできて……いつもいつも私の事を守ってくれる……だからさ、私って、フランにとって邪魔でしかないんじゃないかなって……置いていかれてるんじゃないかって思ってたんだ。


けど、それは私のひとりよがりで…全然そんなことなかったんだね……ごめんね、フラン……これからもずっとずっと、友達でいよう……本当にありがとう」


−愛してるよ、フラン。


こいしは、言い終えた後に心の中で思ったことを考えて赤面した。


「…ふふっ、こいし……ここは一つ共同戦線と行かない?」


「え?」


「私とこいし……二人であいつを倒すの」


「……うん、そうしよう。私達で、この長い中で因縁に終わりを迎えさせよう!」


「ええ!」


二人が同時にヒロトの方に向き直る。


「みんなは逃げてて!そこの別世界のこいしの体も一緒に連れて行ってよ」


「ここは私達に任せて!」


「あ、ああ!頑張れよ!」


魔理沙達が、地底の出口の方へ走っていった。


「初の共同戦線だね……フラン!」


「そういえばそうだね……楽しみだ」


こいしとフランが、少し楽しそうにそう言った。

そのあと、ヒロトの方を向き直り……


「…さて、と」


「やりますか……ヒロト!」


「……お前ら二人が相手か。厄介だな」


「やるよ、こいし」


「OKフラン!」


フランがレーヴァテインを構える。


こいしは帽子を拾い、手で砂を払って被った。


「やってやろう、フラン!ここでこいつを倒せば、全てが終わる」


「ええ…長く続いた私と貴方の戦いも終わりよ。ヒロト」


「…ふん、終わらせられるのなら終わらせてみせろ」


ヒロトの着ている黄色いローブのフードを取る。

並行フランの顔があらわとなった。


「……!」


「この顔を傷付けられるか?古明地こいし」


「……」


こいしは、並行フランと今まで過ごしてきた時間を思い出していた。


−私は……この世界のフランに色んなことをしてもらった。基本世界を救ったのは……本当は私じゃなくフランなんだ。

私がこの世界に来た時も、色んなことを教えてくれた。それに、助けてくれた。全てを話してくれた。私を心から信頼してくれた。


「…今度は、私が助ける番だ」


「…?」


「待ってて…フラン」


「……」


フランが、真剣な表情のこいしを見て複雑な気持ちになっていた。


−んー……私のこと言われてるみたいで変な気分になるな……はは。







「……何だ、顔を見た程度じゃ大した影響はないか。むしろ、やる気にさせちまったようだな」


ヒロトがフードをまた被る。


「さぁーて……遊んでやんよ……」ニヤァッ


ヒロトから紅色のオーラが発生する。


「禁忌!」

「本能!」


「!」


「クランベリートラップ!」

「イドの解放!!」


私とフランが同時にスペルカードを放つ。


「おっとっと…!」


ヒロトはそれを、物陰に隠れてやり過ごす。


「…弾幕で時間稼いでる間に策を……」


「ダメだよこいし。奴には時間停止がある」


「……!この世界フランの力を、あいつの力みたいに言うのはやめてよ…フラン」


「……ごめん。ただ、警戒はしておいて」


「うん。……ねえ、フラン」


「ん?」


「……さっき同じような事を言ったけど……いつもいつも、迷惑かけてごめんね」


「謝らないで……私が好きでやってる事だし。それに、迷惑だなんて感じた事はないわ」


フランが私を笑顔で見つめながら言う。


「さっきも言ったけど、私は貴女を守りたいの。だから、守らせて」


「……うん…!」


その時だった。


ドオォーーンッ


「「!!」」


時間停止だった。フランまでもが止まっている。


「これが『The World』か……強いな」


ヒロトがゆっくりとこちらに歩いてきている。


「『The World』を無効化出来るはずだがな。フランドールも、こいしも」


ヒロトは様子を伺うように私達の周りを歩いている。


「…残り四秒……」ブンッ


ヒロトが、大量のナイフを私を囲うように投げた。


「これで何もしないわけはないよな……なあ?フランドール」


ガガガガッ


「……」


フランが動いた。

さっきまでは止まったふりをしていたようだ。


「…ふん


あと三秒!」ブンッ


「!」ガッ


ヒロトが右手で突然フランに殴りかかる。

フランはそれを左手で抑えた。


「ふっ…!」ブンッ


今度は、フランが右手でヒロトに殴りかかる。


「ふんっ…!」ガッ


ヒロトも左手でそれを抑えた。

ヒロトとフランが互いの手を掴みあう状態となる。

そこで私も、グランの力を使って動く。


「はっ!」


飛び蹴りをヒロトに向かって繰り出す。


「ヒヒッ…」


ガッ


「!」


フランの右足を左足で引っ掛けて、フランの体勢を崩す。そしてそのまま私の方へフランを投げ飛ばした。


「!?」


私はこれに反応できず、フランはそのまま私の蹴りをくらいそうになるが……。


「いよっ…!」


バサァッ!


フランが体を少し右に捻らせて、羽の羽ばたきを利用して回転した。

そして、私の体をいなすように躱した。

その時に、私の足に一瞬触れて少しだけ魔力を送ってくれた。

私の足に、紅色のオーラが纏われる。


「行け、こいし!」ザザァッ


「ナイスフラン!」


「ほう…!」


これはさすがにヒロトも予想外だったようで、少し右足をあげて身構える。

おそらく、私を蹴り飛ばすつもりなのだろう。

しかし、そう上手くはいかせない。


「それっ!」


「!?」


私は、すんでのところで急停止した。正確には、また時間停止状態に戻った。

ヒロトは私の行動に驚き私を凝視する。

そして……


「こっちだよ」


「!!」


フランがヒロトの後ろに回った。

そして、時が動き出す。


ビュンッ!


「!!」


ヒロトは私の蹴りを躱して、フランにぶつけるつもりなのだろう。しかし……


「…何…!?」


すでに後ろにフランはいなかった。


「ちぃ…!」


ヒロトが私の蹴りを躱す。


「そぉれ!」


ドガァッ!


「ぐおっ…!」


フランがヒロトの背後に現れ、回し蹴りをくらわせる。


ドゴォンッ


ヒロトは、建物に吹っ飛んでいった。


「いい感じいい感じ〜♪」


「ナイス連携だったね、こいし♪」


私とフランがハイタッチをする。

こんなに戦いが楽しいのは久しぶりだった。

フランが一緒に戦ってくれているからだろう。


「ッあ〜……効いたぜ……」


ヒロトが建物の中から現れる。

ぱっぱっと手で服の埃を払っている。


「しっかしお前ら本当に仲がいいんだなぁ……」


「そりゃあ、ね?こいし」


「うん!にしし」


「…こんな時にまで楽しそうにしてるしな」


フランと私は、二人共笑っていた。

そりゃあそうだ。こんなに楽しいのは久しぶりだから。


「それじゃあ、ちゃっちゃと片付けますか。こいし」


「そうだね、フラン!」


私は魔力刀を、フランはレーヴァテインを構える。


「私が突っ込む……フランは援護をお願い」


「了解」


私はフランの前に移動する。

フランはレーヴァテインを刀の形状から解放状態にした。


「……突然真面目な面持ちになったな。さーて、そろそろ体の方も馴染んできたぜ……」


ヒロトがポケットの中に手を突っ込むと、ゆっくりとこちらに歩いてくる。


ザッ ザッ


「……」


ザッ ザッ


「……」


ザッ ザッ


「……」


ザッ!


ガキィンッ!


私はヒロトに突っ込んだ。しかし、防がれてしまった。

ヒロトはナイフを手に持っていた。

おそらく、ポケットに入れていたのだろう。


「……ぐッ…!」


「……ヒヒッ…!!」


ヒロトは笑っていた。やはりこいつは、戦いを楽しんでいるようだ。


「ふん…!」


フランが私の後ろからヒロトの後ろに回る。

そしてそのまま、レーヴァテインを振るう。


ガキィンッ!


「!」


「ふん…」


もう一方の手で、フランの攻撃を防いだ。


ガキィンッ!


私とフランは、奴から一旦距離を取った。

しかし次の瞬間……


「逃がすか!!」


「「!?」」


ヒロトが凄まじいスピードでこちらに斬りかかる。


−よ、避けられない…!


私は避けられず、攻撃をくらいそうになる。

しかし……


ザッ


「!?」


フランが私の前に立つ。


「フラン!!危ない!」


いつのまにかレーヴァテインは刀の形状に戻っていた。鞘にしまっている。


「”滅閃呀めっせんが”!!」


フランの前に何かの方陣のようなものが展開される。


ガキィンッ!


「!?」


その方陣に、ヒロトの攻撃が当たった。



「…!?」


瞬間、辺りの時が一瞬止まったように感じた。


「……」ガチャ


フランが鞘に手を伸ばす。

そして、つぎの瞬間……


ズバァンッ!!


フランがヒロトを一閃した。

まるで時が止まったような感覚だった。一瞬の出来事だ。


「…っ…!?」


ヒロトが、切られたところを抑えて動揺していた。


「俺の滅閃呀を…!!」


「甘いね…ヒロト君」


フランは余裕の表情である。


「フラン!凄いよ…何?今の」


虎空刃こくうじん紅風べにかぜ。簡単に言ったらカウンター技だよ」


「へえ……」


ドォォォォォォォォッ…


「!!」ゾクッ


「……!ヒロト君の、魔力?」


その時、ヒロトの方からおぞましい魔力を感じる。


「遊びは終わりだ……!!」


「…!!」


フランも冷や汗をかくほどの凄まじい魔力。


「俺はフランドールの体を乗っ取ったことにより……普通の妖怪には到達できない次元まで到達した…!!おそらく、この力はこの世のどんなものよりも強大な力だろう」


ヒロトから赤紫色のオーラが放たれている。

とても禍々しい感じだった。


「行くぞ…!!ヒヒヒヒッ」


ドォンッ!


「!」


ヒロトがフランに突っ込んでいく。


「…ちっ…!」


フランも少し動揺していた。

それほどまでに奴の力が上がったのだろうか?

何故か、私は大して上がっていないと感じていた。


「ヒャッハーッ!!」


ガキィンッ!!


フランは解放状態のレーヴァテインでヒロトの爪の攻撃を防いでいた。


−ようやく本性を現し始めたな…!


「くらえ!」


私はヒロトの右側から、奴の体に向けて斬りかかった。


「!駄目!!」


「え!?」


ガッ


「ばァァ〜かッ……」


ヒロトに攻撃は当たった。

が、ヒロトの周りには紅い鎖が纏われていた。

そして次の瞬間、ヒロトは私の視界から姿を消した。


「…えっ…」


「ヒッヒヒヒッ…!」


「!?」


スタッ


そして、私の頭上に現れ、背後に着地する。


私の周りにはいつのまにかヒロトに纏われていた鎖で覆われていた。

完全に囲まれたのだ。


「なっ…」


ヒロトの両手には、その鎖が握られていた。

ぐいっと、その鎖を引っ張る。


皇邪斬牢呀おうじゃざんろうが!!」


周りの鎖が、私を締め付けようとする。


「ッ!!」


締め付けられる、そう思い目を閉じた。

だが……


「禁忌……」


「…え?」


「クランベリートラップ」


フランがクランベリートラップで周りの鎖をせき止めてくれていたのだ。


「ちっ…!」


「禁弾!!」


フランが飛び上がり、ヒロトの真上に行く。


「!」


「スターボウブレイク!!」


巨大な青い弾が、ヒロトに向かって高速で飛んでいく。


「ヒャッハハッ!いいねぇ!」


ヒロトはそれを手に持つ紅いオーラを纏ったナイフで真っ二つに切り裂いた。

その切り裂いた弾の間から、フランが現れヒロトに攻撃する。


「ていっ…!」


「ヒャッハーッ!」


バキィンッ


「!!」


ヒロトの持つナイフが砕けた。


「…ちっ…!さすがにレーヴァテイン相手には無理があったか」


「禁忌!」


「!!」


「レーヴァテイン!!」


フランのレーヴァテインが紅い輝きを放つ。


ドオオオオオオオンッ!


そしてフランがそのレーヴァテインをヒロトに向かって振るった。

その振るった地面には、線状に切れ込みが入っていた。


「レーヴァテインに魔力を超圧縮させてるんだな……それを瞬時に解放して爆発的な火力を出してるわけだ」


「!」


ヒロトがフランの後ろに回った。


「行くぞォ!!」


ヒロトの左足が、紅いオーラを纏っている。


ドガァッっと鈍い音が鳴る。

フランが、ヒロトの踵蹴りで腹を蹴られて蹴り上げられていた。


ドゴォッ!


さらに、もう一撃フランの腹に重い蹴りが入れられた。


豪呀双天刃ごうがそうてんじん!!」


「ぐぁっ…!」


フランが高く打ち上げられた。


「フラァン!!」


「まだまだ行くぞオラァ!!」


ヒロトが飛び上がった。


邪境滅閃呀じゃきょうめっせんがァァァ!!」


ズバァンッ ズバァンッ!!


ヒロトが爪を伸ばし、その爪で二回空中でフランを切り裂いた。


「かはっ…!」


フランが口から血を吐いた。


「くっ…!やめろ!!」


私はヒロトに突撃していった。


「邪魔だってんだよこのゴミがッ!!」


ドゴォッ!


「ぐあぁっ!」


私はヒロトの左足の踵落としをくらった。


ドゴォンッ!


地面に叩き落とされてしまった。


「…こいし…!」


フランは、自分がやられているのにもかかわらず私の心配をしてくれていた。

ヒロトがフランの方へと戻ってしまった。


「さぁーて、甚振ってやるよフレアちゃーん…?」


「ぐっ…!やめろ!フラン!!逃げて!」


「落ちろォ!!」


ドガァッ


「ぐっ…!」


フランが踵落としをくらう。

そのまま、私と同じように地面に叩き落とされる。


「フラン!…この野郎…!もうやめろ!!」


私はヒロトに再度突っ込んだ。


「…うぜえんだよ…」


ヒロトが恐ろしい形相でこちらを睨んだ。


「!?」


ドゴォッ


瞬間、私は顎に蹴りを入れられていた。


邪蛇じゃづち!!」


ドガァッ


「がぁっ…!」


武鎌殲ぶれんせん!!」


今度は上から踵落としをもらう。

私は先ほど、似た技をくらった覚えがあった。


「死ね死ね死ね死ね死ねぇぇ!!」


ドガガガガガガガガガッ


しかし、先ほどの技よりも踏みつけるスピードが倍以上に速かった。


「うぅあっ…!」


ドガァッ


最後に、思い切り私の頭を踏みつけた。

ぐりぐりと私の頭に足を押し付けてくる。


「お友達ごっこは他所でやれや……」


「…ぐぅっ…!」(う、動けな、い……)


体を動かそうとしても、全く動かせなかった。


踏みつけられている間に、全身の骨をめちゃくちゃに踏み砕かれたのだろう。


「とどめだ…雑魚妖怪」


ヒロトの右手に、ナイフが握られていた。


ドスッ


邪縛じゃばく……」


私の右目にナイフで突き刺し、無理矢理体を起こした。

ナイフを上に押し上げたため、私の瞳孔を額まで切り裂いた。


「あがぁっ…!」


ズバァンッ


さらに左手のナイフで左目を切り裂く。

私は声にならない呻きをあげた。

そして奴はナイフを捨てて、私の首を両手で掴み私を持ち上げた。


封焉塵ふうえんじん!!」


ヒロトはとても楽しそうに笑っていた。

奴の手から、大蛇のようなオーラが現れ私の両肩に噛み付いた。

その大蛇から、小さな魔力の爆発のような衝撃が何度も連続で来た。


ドゴォンッ


三秒ほどその衝撃が続いた後、ヒロトは私を地面に叩きつけた。

そして、また私の頭を踏みつけた。


「てめえ……終わりだぜ……」


私は既に、意識が飛びかけていた。


「……ぁ……ぐ……」


「死ねよ!!」


ヒロトが私を蹴りあげようとしたその時


邪翼じゃよく…!」


「!?」


崩天刃ほうてんじん!!」


フランがヒロトの背後に現れ、ヒロトが振り向くと同時にヒロトの顎を回し蹴りのようなハイキックで蹴り上げた。


「ぐおぉああぁッ!?」


ヒロトは、とても高く打ち上げられた。

フランの足には、紅いオーラが纏われていた。


ドゴォッ!!


ヒロトがフランの目の前に落ちてくると同時に、思い切り蹴り飛ばした。


「グハァッ!!」


邪竜烈華斬じゃづちれっかざん!!」


さらに、蹴り飛ばしたところを魔法陣で捕まえた。

そのまま魔力の鎖を伸ばし奴に絡め、それを思い切り引っ張って打ち上げるように引き寄せる。


「……!?」


私は、その時フランが笑っていたのが見えた。

それも、とても楽しそうに。


「あっははは!!」


フランが笑い声をあげながらヒロトを連続で爪で攻撃していた。


「ぐおぉっ…!あがっ…!」


「死ねぇ!!」


フランが紅い竜のようなオーラを三つだし、それにヒロトに当てて、吹き飛ばした。


「があぁっ!!」


フランの帽子が、その勢いで脱げた。


「…フラ…ン…?」


「……大丈夫?こいし」


いつものフランに戻っていた。

傷を、癒してくれた。


「……フラン……」


「……ごめん、ちょっと取り乱しちゃった」


フランの体の傷は完全に癒えていた。


「……フラン、今のって……」


「たまに、私はあんな感じになるんだ。もう一人の私が、無意識に出てくる時があるの。……ごめんね」


事実、フランの目はあの時黒くなっていた。


「う、うん…」


”今”の基本世界のフランは、自分の狂気と戦ってるんだ。

過去に狂気が目覚めなかったから、今目覚めたんだ。


「…前の世界ではこいしが和解させてくれたんだけどね……どうやら、今の方は前よりももっとじゃじゃ馬みたい」


「…戦いが終わったら、色々と試してみよう」


「うん…」


「うがぁぁっ!!」


ヒロトが起き上がった。


「よくもやりやがったな…!」


「来るよフラン!」


「ええ!」


邪輪連衝呀じゃりんれんしょうが!!」


「「!?」」


ヒロトがいきなり蛇の頭が先についたような鎖を伸ばしてきた。

私もフランも飛び上がって躱す。

しかし、斜め上にも伸ばしていたようで、私は捕まりそうになった。


「こいし!」


「うわ!」


しかし、フランが私を押し飛ばして助けてくれた。

だが、フランが蛇の頭のようなものに捕まってしまった。


「ヒィャッハァァーーッ!!」


鎖を伝ってフランに突っ込んでいくヒロト。


「!」


ガキィンッ!!


レーヴァテインを盾にして、フランはそれを防いだ。


「やるじゃねえか…!」


「こいし!」


「うん!」


私はヒロトに向けて魔力刀を投げる。


「何だァ…?んなもんがこの俺に通じると…」


「DNAの瑕!」


「!?」


魔力刀の後ろから、ハート型の弾幕を連続で飛ばす。


「おぉっと!!危ねえ…」

「禁じられた遊び!」


「あぁ!?」


フランが鋭利な針が付いた車輪のような弾幕を飛ばす。


「ちぃ…うざってえな!」


ヒロトはそれをすべて躱している。


「もう飽きた……てめえら二人、惨殺処刑してやらぁ!!」


ヒロトが地面に着地した。


私達とヒロトは、五秒ほど互いに見つめ合っていた。


「…そろそろお前らも飽きてきたろ?終わりにしようぜ……」


「……」


「……」


私達は、ヒロトをじっと見つめた。





「『The World』!!」


「「!」」


ドオォーーンッ







「これで終わりにしてやるよぉ…!!」



「禁忌『クランベリートラップ』!」


「禁弾『スターボウブレイク』!」


「禁弾『カタディオプトリック』!」


「禁弾『過去を刻む時計』!」


「禁忌『フォービドゥンフルーツ』!」


「禁忌『禁じられた遊び』!」



「これだけの弾幕を一瞬で、しかも同時に破壊することは不可能だぜぇ…!!ヒッヒヒヒヒヒ…!!」


「これで終わりだァ!!時は動き出す!!」






「「ラストスペル!!」」


「QED『495年の波紋』!!」

「『サブタレイニアンローズ』!!」


私とフランが同時に最強にして最後のスペルカードを放った。


ドオオオオオオオオオ……


お互いの弾幕が激しくぶつかり合っている。


「無駄無駄無駄無駄ァァ!!死にやがれぇぇ!!」


「うおおおおおああああ!!!」


「はあああああああああ!!!」


ドオオオオオオオンッ


辺りが激しい光で包まれた。

















光が消え、煙も晴れ、辺りの様子が見えるようになった。

気がつくと私は座り込んでいた。


「……あれ……」


そして、フランが私の前に同じように座っていた。

こちらを向いていたので、少し違和感を感じた。


「…フラン?」


「……大丈夫…?こいし……」


フランの後ろの方に、並行フランが倒れていた。

ヒロトの魂は抜けているのだろうか?


「う、うん。どうなったの?ヒロトは倒せたの?」


「…多分、倒せてる……ヒロト君の魂は……感じない」


フランは、少し俯いている。前髪で顔がよく見えない状態だった。何故か、帽子は取れている。


「そっか…!よかった。勝ったんだね、私達…!」


「……うん……よかった…怪我はないみたいね……」


「……フラン?な、何か……元気ないね?」


「…疲れちゃって、さ……少し休みたいな」


「そっか……」


「…ねえ、こいし」


「ん?」


「……こいしはさ……元の世界に帰ったら……何がしたい…?」


「え?それは……フランやぬえと、また遊びたい!」


「そっか……私もまた、遊びたいな……」


「……フラン…?」


フランの様子がおかしい。


「またチェスをやって……弾幕ごっこをして……お菓子を食べて……色んなところを、散歩して……」


フランが顔を上げる。


「…フラン…!?」


フランの片目が、潰れていた。


「……ごめん、こいし……もう、遊べそうに……ないや……」


ドサッ


フランが、私にもたれかかるように倒れた。


「フラン!!……!?」


フランの背中は、傷だらけ、血塗れだった。


「フラン…!?どうしたのこの傷!!」


「はぁっ…はぁっ…」


フランは苦しそうにか細い息をしている。

傷がとても深いのだろう。


「……まさか……私を庇って……!?」


「…はぁ……はぁ……」


フランの息が、徐々に小さくなっていく。


「…!!だ、誰か!!誰かいないの!?」


「フランを……フランを助けて!!お願い!!誰か!!誰かぁ!!」


−どうすればいいの!?どうすれば…!


私は、目の前で友達が死にそうになっているのに何もしてやれない自分を呪った。憎かった。


「……こい…し……」


「!!フラン…!もう喋らないで!死んじゃうよ…!」


「……お…姉ちゃん……」


「…!!」


今のは、フランが意識的に言ったのではなかった。

意識を失っている。


「どう…しよう…!」


−今からならフランをおぶっていけばきっと誰かに会えるはず…!

あんだけ大きな爆発があったんだもん…!


「フラン…頑張って…!」


私はフランをおぶって、地上へと向かった。

今の時間帯は夜。だから外に出てもフランが焼けてしまう心配はない。






「はあっ…!はあっ…!」


私は必死に走った。親友を死なせないために。


「フラン…絶対死なせないから…!絶対…!」


「……はぁ……はぁ……」


フランは意識を取り戻さない。ずっと眠ったままだ。


「…フラン…!」


−何でよ…何で誰も戻ってきてないのよ…!!


私は地底の街をひたすら走っていた。

魔力がもう底をついてしまっているため、飛べないのだ。


「こんな時に何で飛べないのよ…!もう少しだけでもいいからちょうだいよ…!!」


「……こいし……」


「!!」


フランの声が聞こえる。


「フラン!起きたの?大丈夫!?」


「……こいし…ごめん……迷惑、かけて…」


「…いいよそんなこと…!それよりも自分の心配をしてよ!」


−地上までまだあんなに遠い…!お願いフラン…頑張って…!


「……覚えてる…?私が誤って川に落ちちゃった時も……こうやってこいし……私のこと…助けてくれたよね……」


「…!うん、覚えてるよ…あの時は本当に心配したんだからね!」


「あははっ……ごめんごめん……」


「フラン、もう喋らないで…!本当に死んじゃうよ…!」


「いいの……喋らせて……私は死なないから……再生があるんだし……」


ヒロトの攻撃が再生不能だってことぐらい、私はわかっていた。しかし、その時は自分にそう言い聞かせたのだ。フランが死ぬということを考えたくなかったから。


「…うん…でも、できる限り…!…はあっ…!喋らないで…!傷がひろがっちゃうよ…!」


「……息継ぎしなきゃいけないくらい……疲れてるんだね……ごめん」


「だから…!…はあっ…!自分の心配を…!…はあっ…!してよ…!」


−どうして誰もいないの…!!お願いだから…誰か……!


「…ねえ、こいし……」


「ん…?」


「……もしもだよ…?もし……貴女が私のお姉様だったらさ……」


「…!」


「……私……きっと今よりももっともっと好きになってたと思うんだ……」


「…私もだよ……フランが妹だなんて、レミリアが羨ましいなぁ…!」


「ははっ……ありが…とう……」


フランの声が、小さくなってきている。


「…フラン…!!お願い、頑張って…!!」


「…大丈夫よ……心配しないで……」


「……!」


「……何だろうなぁ、これ……こいしやぬえ……お姉ちゃんや咲夜達……幻想郷のみんなとの思い出が……脳裏に浮かんでくるんだ……」


「……フラン…!!」


「……今日の朝からずっと……鐘の音が、うるさくって…さぁ……何だか、この鐘の音って……すっごく眠くなるの……」


「フラン!!」


「………この鐘の音ね……心がとっても……落ち着くの……こいしやお姉ちゃんと……一緒にいる時みたいにさ……」


「フラン!!意識をしっかり持って!!」


「……私ね……こいしと一緒にいる時ね……すっごく気持ちが安らぐの……」


フランの涙が、私の肩に落ちた。


「……もっと……!もっとたくさん遊びたかった……!もっと一緒にいたかった……!もっと好きになりたかった……!」


「……!!」


「でももう……時間がないみたいなの……」


「……何、言ってるの……フラン…!!何死んじゃうみたいなこと言ってるの!!」


「……ごめん……ごめんね……」


「…何でよ…!!何で……!!」


私の顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。

走っている足がおぼつかない。


「誰かぁ!!誰かいないの!?お願いだよ!!フランを!!フランを助けてよ!!誰かぁ!!


どうして誰もいないの!?どうしてよ!!何でこんな時に限って誰も来ないの!!どうでもいい時はいるくせに!!」


私は必死に叫んだ。親友が私の背中で今死のうとしているのだ。

助けたい。なのに、助けられない。

悔しかった。無力な自分が憎くて憎くて仕方なかった。


「……何が親友よ…!!私なんか……わだしなんが……ただの邪魔者じゃない……足手まといでグズな……ただの邪魔者じゃない……!うぅっ……」


「……泣かないでよ……こいし……」


「……ゔぅ……!」


「……こいしは……邪魔者なんかじゃない……」


「…!!」


「私は……こいしがいたから頑張れた……こいしがいたから友達ができた……こいしがいたから、外の素晴らしさを知った……


こいしがいなかったら私……今頃地下の中で泣いてたよ……」


フランは優しくそう言ってくれた。


「……今まで本当に……ありがとう……私のこと……忘れないでいてくれたら……嬉しいな……」


「……だから…何で死んじゃうみたいなこと……言うの…!!フラァン…!!」


「……」


「おねがい……おねがいだがら……!!死なないでぇ…目の前でフランが死んじゃうのは……もう、もう嫌だぁ……!」


「……泣かないで……こいし……そうだ…モテバンドつけた時の話……覚えてる…?」


「…!!グスッ…うん、覚えてるよ…!あの時は大変だったんだ……」


「……あの時……私貴女にキスしたよね……」


「う、うん…!すっごく嬉しかったよ…!」


「……ふふっ……ありがと……実はね……あの時のキス……こんなメッセージも込めてたんだ……」


「…なぁに…?」


「……こいし……」








「大好き」






「……フラン?」


フランの声が……息が途切れた。


「……ねえ、フラン?……さっきの話の続きなんだけどさ……」


フランから返事はない。


「あの時はね?ぬえが私に無理矢理つけてきたんだ…!それでさ……ぬえったら無責任でね…解除の仕方も知らなかったの…!」


フランから、返事はない。


「だから、さ……フランならきっと…何とかしてくれるって……そう思って……」


返事はない。


「……紅魔館…に……むがっだ……んだ……!」


返事は……。


「…うぅああぁ……ぁあぁぁあ……


ああぁぁああぁああぁあああぁああぁあああ……!!!」


フランは、息を引き取っていた。

とても、穏やかな笑みを浮かべて……


「あぁああぁあああぁあぁぁああぁああぁあああ……うわぁあぁあああぁああぁあああ……!!!」


私はしばらく、ずっとその場で泣いていた。

ずっとずっと……意識を失うまで、ずっと。








物語は何も、ハッピーエンドとは限らない。




To be continue…





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