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東方人気投票の裏話(?)  作者: アブナ
並行世界篇
72/123

正体

「…前から気になってたんだけどさ」


「?」


「貴女の目が変わるあの状態……一体何なの?」


「……私の中にいるもう一人の私……そのもう一人の私の力を借りてる状態かな」


「ふーん……そんなこともあるのね」


「うん、あるみたい。ちょっと代わる?」


「え、代われるの?」


「うん。それじゃあちょっと待っててね」


「……うん」


こいしが目を閉じて、じっと瞑想している。


「……さっき、説明した通りだ……フラン」


こいしの目が、白黒反転して眼球は黄色になっている。


「……何か、変わったの?」


「ええ…今の私はこいしであってこいしじゃない」


「…確かに雰囲気は違うね……」


「グラン…こいしは私をそう呼んでくれる。だから私の名前はグランだ」


「…そっか。グラン……一つ聞きたいことがあるの」


「何だ?」


「私は貴女から……この世界の古明地こいしに近いものを感じる」


「!」


「奴が言っていた事が、ずっと気になっていたんだ」


フランがグランの目を見ながら言った。


「貴女が撃った嫌われ者のフィロソフィー……あれを見た瞬間今まで笑いっぱなしだった古明地こいしが顔を歪ませた」


フランはグランの隣にある岩に、交差しながら飛んでいく弾幕を放った。


「!!そ、それって……」(嫌われ者のフィロソフィー…!)


「貴女の撃ったスペルカードを見て奴は”私の使い方そっくり”と言った……けど、実はそれだけじゃない」


フランが放った弾幕に被弾した岩が、何かの形を成していた。


「私の使い方にも…そっくりだったんだ」


「…なっ…」


「貴女がこいしの精神に現れたのは……この世界が影響なのかもしれない」


それは、一人の人間のようなものがもう一人の人間の中に侵入していく図だった。


「…それも、古明地こいしの力を一番多く現れた」


「……奴が……いや、私が奴だって言いたいのか…!?」


「……言い難いけど、そうだよ」


「……そ、そんなわけ…あるか…!私は……こいしの……」


そこでグランが、ある時の事を思い出した。


−『お前の正体を説明してやるよ。俺が今ここでな……』


−『お前にとって邪魔でしかない事を今から説明してやるよ』


「……いや…そんな、わけ…」


「……」


「…私は……」


「……確かに、私が言ったことはありえないことだったね」


「……!」


「今の話は忘れて。貴女は貴女だよ。この世界の古明地こいしとは何の関係もないな」


「……!」


「それじゃあ帰ろうか。……大丈夫?ごめんね」


「…うん。全然平気だよ……こちらこそ気を使わせてしまったよ。ごめん」


「……うん」


そしてそのまま、紅魔館へと帰った。








「……」


こいしは、グランの正体が本当にそうだとしたら…という考察をずっとしていた。


−もし…もし本当にそうだとしたら……今までのフランの面影は一体……。


「あ、あの…!」


「ん?」


話しかけてきた人物を見て、驚いた。


「…霊夢……」


「は、初めまして!私博麗霊夢って言います!」


「……あ、ああ…」


「よろしくお願いします!」


「う、うん」


−へ、へえ……ここの霊夢はあんまり強気じゃないんだな……。


「?どうかしましたか?」


「ん?いや何でも」


−どうしてフランがここの世界のリーダーだったのかわかった気がする。

まず、紅魔館の主の妹だからここの構造はよーく把握しているだろうし……それにとてつもなく強い。さらに何かと魅かれるカリスマ性もある。


「…貴女達のリーダーのフランって、いい人だね」


「そうでしょう?あの人…と言っても人間ではありませんが…フランさんはあんなに小さいのにとてもしっかりしていて、優しくてかっこよくて…けどどことなく可愛くて……私の憧れなんです!あの人なら、絶対古明地こいしにも勝てる!貴女もそう思いませんか?」


「……ふふ、そうだね」


−フランはみんなに慕われてるんだな……


「こいし、これから会議っぽい何かするから参加してよ」


フランが話しかけてきた。


「か、会議っぽい何か?なにそれ」


「そのままの意味。みんな真面目に会議なんてしないよ……私含めてね」


「そ、それってどういう……」


「会議にならないんだよ、勝つ事を諦めてしまっているからね」


「…なる、ほど……」







バンッ


「と!いうわけで!こいしが新しく私達の仲間に加わったわけだ!」


フランが大きな机を叩いて大声で言った。


「こいしは、一対一なら私でさえ苦戦するほどの猛者だ。大きな戦力アップになるよ」


「ふーん、で?どうやってあいつら倒すの?」


「倒せるわけないだろー?どうやってここを死守するかだよ」


「それならいっそ紅魔館の周りに私達全員の力で強力な結界でも張ります?そうすれば奴らが攻めてくることもありませんよ!」


「そりゃあいい!」


周りの者が勝手に話を進め出した。


「……!」(何なんだ、この希望の欠片もない人達は……)


しかし、そんな中……


「で、私が古明地こいしとやる。他の敵を魔理沙や妹紅達が倒してくれれば…」


「だな。でもそれだとフラン、お前が危険な目にあうぞ?いいのか」


「大丈夫よ。必ず勝つと約束する」


「よし、ならこの作戦で行ってみるか?」


「もう少し細かいところまで考えてから提案しよう。何か穴があるかもしれない」


「ここから地底に侵入して、バラけて……」


フランと魔理沙、それに妹紅や霊夢達が真剣に話をしていた。

人間達は、完全に戦う事を放棄しているのだ。


「……」(世界を守るのが妖怪だなんて……)


−現実世界で忘れ去られた者達が世界を守る、か……


皮肉なものだ、とこいしは思ったのだった。


「フラン!その話、私も戦力に入れて進めてよ」


「!…わかった。ならこいしは……」


その後も、少しの間話し合いは続いた。







「…だから、こいしは私以外の人達の援護に回ってほしいの」


「OK!」


「魔理沙、アリス、ぬえは燐を、霊夢と妹紅、それから早苗と正邪は空をお願い」


「おう!」


「はい!」


「私が古明地こいしと一騎打ち。そしてこいしが私達全員の支援」


「うん」


「あと数日後にこの作戦を決行する。みんな、各自自分の役目を理解してそれのシュミレーションをしておくように」


『了解!』







「今日は珍しく会議が成立したな……」


「普段はどんな感じなの?」


「誰か一人が諦めて愚痴を零す人間に怒鳴る。それからは想像に任せるよ」


「……大体わかった」


−今私は、フランの隣に座っている。

色々と質問するつもりである。


「…で?どうかしたの?」


「うん。あの時フランが言っていたことがやはり気になって仕方ないんだ」


「……グランの正体のこと?」


「うん」


「…あれは勝手な憶測に過ぎない…だから間に受ける必要はないんだよ?」


「けど、私は納得が行ってるの。性格だってあいつとグランは似ていた」


「……なら、考察の続きを話すよ」


「うん」


「まず、私がどうしてそう思ったのか……貴女のあの時の目を見た時、奴と同じ雰囲気を感じたからだ」


「!」


「実は前に奴と戦って私も同じことを言われたことがあってね……」


「同じこと?」


「そう……使い方が似ている…ってね」


「そ、それがどう関係あるの?」


「グランにその使い方を教えてもらったんでしょ?」


「?うん」


「……グランから、私の面影を感じたことはない?」


「…!!」


「あるのね……なら多分、私の予想は当たってる」


フランは、言いにくいけど、と言ってこいしを真剣な表情で見つめた。


「グランは、混玉によって無理矢理こっち側の世界に連れてこられた古明地こいしだ。けど、失敗してその中で最も近い力を持つ私の精神まで混ざっちゃったんだと思う」


「……それはあいつが時止めを持っている前提として?」


「…うん」


「……ねえ、それってさ…もしかしたら私も時間停止ができる可能性があるってこと?」


「……そうともとれるね」


「なら、受け入れるよ。それが事実でも」


「…どういう意味?」


「力さえあればいい。私は……みんなを守れる力が欲しい。ただ、それだけ」


「……それがたとえ、自分自身の力じゃないとしても?」


「ええ」


「……そう」


そういうとフランは、席を立った。そして、読んでいた本を大きな本棚の方へ直しに行く。


「一つだけ、良いことを教えてあげるよ」


「!」


「力ばかり求めれば、いずれその力に飲まれるよ


この世界の貴女のようにね」


「…!」


フランがそう言って、去っていった。








「……この世界のフランなら…わかってくれると思ったけど」


こいしは紅魔館の屋上で涼んでいた。


「……力だ……今は……力さえあれば……それでいい……」


「…今だけは……最強でありたい。もう、誰も失わないように……誰も悲しまないように……」


−たとえグランがあいつだったとしても……それも受け入れてあいつの力を得てやる……時間停止を……覚えてやる……。

いずれは……フランさえも越えて……。


「……」


そこでこいしは思考を止めた。


「…駄目だな……フランの言う通りだ……力に飲まれてる」


−私の目的は力を得ることだけじゃない……みんなを守るんだ……私が……。


こいしは、首に掛けているネックレスを見つめた。


この戦いこそは、誰も死なないでと祈ったのだった。





To be continue…


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