並行世界
並行世界篇スタート!
並行世界の過去とかはこの篇の中でやって並行世界の事は完全にこの篇で終わらせるぞ…笑
先延ばしにしすぎたせいでグダグダになってしまった基本世界の話はこれが終わってからにしよう。
「…うそ……」
「…お前が別世界のこいしだということはわかった。けど正直信じられないんだ」
「え……」
「さっきも言ったように、フランが負けるところなんて想像もできないんだ。例えそれが不意打ちであっても」
「……!」
「…だから……その……仲間に貴女のことを紹介することはできない」
「…いいよ。私は一人で行動する。色んな報告を聞かせてくれるだけで充分だから」
「…ああ」
「…ねえ、この世界のフランがいた部屋に……案内してくれない?」
「…わかった」
「おい、ぬえ。何故古明地こいしと共にいる」
「!?」
「せ、正邪!こ、これにはちゃんと訳があるんだ!それにこのこいしは…!」
「…おいおい、私がそんなすぐに攻撃するような奴に見えるか?話は聞く」
「…あ、ああ」
「なるほど…つまりそのこいしはこいしであって別人だと?」
「信じてくれる?」
「ああ、とりあえずはな」
「……」
「お前の面がまえが、この世界の奴とは違う。色々背負ってることがよーくわかる目だ」
「……」
「フランの部屋だな?案内する……ついてきな」
「…うん」
「…ここ?」
「……まさか…本当にいないとは思わなかった」
「……何度も言うけど……フランは……」
「……ああ、わかってる」
「…特に変わった部屋でもないな……」
「フランは一番部屋に対する拘りがなかったんだ。だから、ある程度必要なもの以外はみんなにあげたりもしていた」
「へぇ………ん…?」
こいしがフランの部屋を物色していると、何かを見つけた。
写真立てである。
「……」
こいしはその写真立てをしばらく見つめた後……
「……!!」ギリィッ
思い切り歯を食いしばった。
「…こいし?」
「ちょっと屋上に行ってくる……!」
「あ、ああ。ただ言っておくが暗いから気をつけろよ」
「うん」
−…この世界の私……!許せない……!!
バタンッ
こいしが部屋を出て行った。
「ど、どうしたんだ?こいしの奴」
「……」
正邪が写真立ての写真を見て悟った。
「……友達想いな奴だ」
「……」
二人が部屋を出て行った。
その写真立ての中の写真に写っていたのは、フランとレミリアを中心に紅魔館の住人全員で撮った写真。
フランは、今のこの世界のフランからは想像もできないとても明るい笑顔でその写真に写っていた。
こいしはそれをみて、この世界の自分に対しての怒りがこみ上げてきたのだ。
「…こいし?どうした」
こいしが屋上の扉の前で立ち止まっていた。
「…あれって……」
「?何だ?何が見えるの?」
「……!!」
こいしが勢いよく走っていった。
「うわっ!な、何だよ?」
「……おい、ぬえ…!あれってまさか…!!」
「?……!!」
ぬえが目にしたのは、赤い服を身につけた奇妙な羽を持つ金髪の少女が倒れている様子であった。
「まさか……!」
こいしとぬえと正邪の顔には、明るさが感じられた。とても輝いていた。
「フランだ!!フランがいるぞ!」
「何だよ、やっぱり嘘じゃないか!!」
「フラン!フラン!!しっかりして!起きて!」
「………」
しかしフランに返事はない。
「…ま、まさか……死んで……」
その時
「すー……すー……」
「……」
可愛らしい寝息が聞こえたのだった。
「…よかった、生きてる」
「部屋に運んで、ベッドで寝かせてやろう」
「うん」
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「…咲夜が…やられた……!」
「…嘘でしょ…!?……どうしてこんな事に……」
「に、逃げるわよフラン…!咲夜が命懸けで繋いでくれた…逃げなきゃ…」
「…咲夜……」
「フラン!」
ドオオオオオオオンッ
「うわぁ!?」
「逃がさないよ。お前達姉妹は」
「…なっ…!」
「……!!」
「特に姉の方。お前は精神的にも強いようだから…早目に始末しておきたいな」
「……どうやら、古明地こいしの目的は私達の始末のようね」
「…あ……ああ、あ……」
「落ち着きなさい、フラン。恐怖を感じてはダメよ」
「……は、はい…!」
「……私達って、本当運が悪いわよね」
「お、お姉様?」
「いっつもそうだった……あの時も、異変の時も…私といるとフランはいつも厄介ごとに巻き込まれちゃったわよね…ごめんなさい」
「…な、何を言って…!」
「…後のこと、お願いね」
「…!?待ってよお姉様!それって、どういう…!」
「貴女ならきっと、上手くやっていけるわ」バサッ
「ま、待ってよ!お姉様!全速力で逃げればきっと……!」
「世の中そう上手くはいかないわ…きっと追いつかれる」
「待って!いかないでお姉様!私を一人にしないでぇ!」
「フラン……貴女は私の希望だった。貴女が私の側に居てくれたから……私はここまで来れた」
「だったら!私だってそうだった!!お姉様は私の希望だった!!だからお願いお姉様!一緒に逃げよう!?」
「生きるのよ、フラン。貴女は生きなきゃいけない。貴女がこの世界の希望になるのよ」
「お姉様ァーー!!」
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「……フラン…!」
「……?」
フランが目を覚ますと、こいしが抱き付いた。
「……こいし…」
「フラン……!」
「…ぬえ……正邪……どういう状況?」
「お前が屋上で倒れてたんだ」
「……私は……」
「フラン…!よかった……また会えて、ほんとに嬉しい」
「……どうしてこいしがここに?」
「願い事だよ」
「……!何やってるの…!みんなを生き返らせれば…!」
「大丈夫、ちゃんと平和な幻想郷に戻ったよ」
「……そっか。ならよかった」
「私の願い事がまた一つ叶ったわ…ふふ」
「…?」
「また貴女と会いたかった…別世界の親友さん」
「……」
「……よしっ、みんなにこいしを紹介しに行こう!」
「それがいいな。動けるかフラン?無理して行かなくてもいいからな」
「ああ…大丈夫。行くよ」
立ち上がろうとした時、夢のことを思い出した。
「……」ぎゅうぅ…
フランは、ベッドのシーツを握りしめていた。
「……フラン……」
「……どうかした?こいし」
「…ううん、何でも」
「ねえ、みんなってどこに居るの?」
「この先の図書館よ。紅魔館自体は敵の格好の的だからね……地下の図書館でみんなで休んだり会議をしたりするんだ。部屋があるのは、プライベートの時間を作るためだけに用意しただけ」
「へえ……」
「それともう一つ」
パチンッ
フランが指を鳴らした。
「?」
ドシュッ!!
すると、壁から矢が飛んでくる。
「!?」
−避けられなっ…!
ドオォーーンッ
しかし、矢が次の瞬間には消えていた。
「こんな風に……トラップも仕掛けてある」
「…な、なるほど…」
フランは手に、飛んできた矢を持っていた。
時止めて矢を掴んだのだろう。
「正邪とぬえには先に話してもらうように言ってる……今からは私がこの世界の紅魔館の案内をするよ」
「わかった」
「…まあ、そっちの世界と変わってるのは多分……見た目だけだと思うよ。あとは武器倉庫がある。それくらいかな」
「うん。大体は一緒だったよ」
「こんな世界だけど……それでも私達が守り抜いてきた大切な場所なんだ。あの時は……あの世界を乗っ取ろうとして悪かった」
「いいよ………私も同じ立場ならきっと……」
「……まあ、図書館行こうか」
「!うん」
「ここの扉には、結界が施してあるんだ。敵の侵入を防いでくれる」
「へえ……」
「ここの結界を開ける方法を知っているのは私達だけ。中に入ったらこいしにも教えるよ」
「うん」
ガチャ
「あ、おかえりフラン!」
「ああ、ただいま。今日から仲間が一人加わるから……」
「正邪とぬえから聞いたよ!別の世界の古明地こいしでしょ?」
「ええ。そこにいるよ」
「……!」
フランが図書館の扉を開けた直後、見知らぬ子供と何人かの妖怪がフランを取り囲んだ。
−どこの世界でも、フランは仲間に大人気なんだな……
「貴女が別の世界のこいし?」
話しかけてきたのは小さな女の子だった。
「あ、ああ…うん。そうだよ」
「私、ルナって言うの!ルナ・チャイルド!よろしく!」
「……ルナ……チャイルド…!?」
その名を聞いて、驚いた。
見た目も雰囲気も何もかも変わっている。
しかしよく見てみると、確かにルナチャイルドなのだ。
「ほ、本当に?貴女、何者?」
「え?私は人間だけど……」
「……」
そうか……並行世界……フランの能力が違ったように……
「?どうかしたの?」
「いや、何でもないよ。よろしくね、ルナ」
「うん!」
「ルナ!あんまり近付いちゃいけないよ!そいつは別の世界でも古明地こいしなんだよ!?」
「でもフランお姉ちゃんが連れてきたんでしょ?なら大丈夫だよ!」
「…そうだけど…!こんな奴信用ならないよ!」
「こらこらそこ、喧嘩しない!」
そう言って止めに来たのは、今度は見知った顔だった。
というより、最も大切な人の一人だった。
「貴女が別世界のこいしね?」
「……なっ…!」
「よろしく」
「…お……お姉ちゃん!!」
それは、この世界のお姉ちゃんだった。
「あら、貴女の世界では私と貴女は仲がいいのね。羨ましいわ」
「……!」
「……」
フランがそんな様子の私達を横目で見ていた。
「貴女の気持ち、よくわかるわ……まさか自分が世界の支配者だなんて想像もできないだろうし」
「……お姉ちゃん。一つ聞きたいことがあるの」
「ん?」
「どうして……眼を閉じてるの?」
「……」
お姉ちゃんは、サードアイを閉じていた。
「こいしが幻想郷を支配しようと目論み出したのは……今から数年前のことよ」
「!」
「……こいしの心に急に……悪魔のような感情が生まれたの……」
お姉ちゃんが自分のサードアイを撫でながら言った。
「……あんなこいしの心は見たくなかった……」
「…!」
少し、涙声になっていた。
「私……もう、あの子のことが怖くなって……!逃げ出してしまって……!」
私は、お姉ちゃんに抱き付いた。
「……一時だけかもしれないけど……この世界の私だと思って……私のことを」
「……ああ……こいし……ごめんなさい……貴女のことを何一つわかってあげられなくて……逃げ出してしまって……ごめんなさい……」
「……」
周りにみんなが、それを静かに見ていた。
「…さとり、大丈夫か?」
「……ごめんなさい。もう大丈夫……」
「……」
……私自身をここまで憎んだのも……初めてかもしれない。
「私は藤原妹紅だ!そっちの世界について教えてくれよ!」
「…妹紅。いいよ、話聞きたい人はこっちにきてね」
「おー!行く行く」
妹紅の他にも、霊夢、魔理沙、アリス、橙、妖夢、早苗、てゐ、鈴仙、美鈴、スター、サニーなど、様々な者達の姿があった。
「……」
霊夢を見た時に込み上げてくる殺意を必死に抑えていた。
基本世界でもそうだ。今すぐにでも霊夢を殺してやりたいと心のうちでは思っていた。
「……」
しかしそれよりも、フランが横目で私の事を見ていることの方が気になっていた。
「…ねえフラン!さっきから私のこと横目で見てるけど…心配してくれてるのー?」
「!!」ギクッ
「んん〜?今ギクッとしたよねぇ〜…」
「フランは心配性だな!ははは」
「な、何よ!私が心配したら悪い!?」
「はは!フランらしくもない!何慌ててんだよ!」
「…まあ、打ち解けあえたのならよかったわ」
そう言ってフランは図書館の扉の前まで行った。
「?どこに行くんだ?」
「ちょっと部屋に」
そう言って、図書館を出て行った。
「何だ?いつものフランなら本読むんだけどな…」
「ねぇ…何かあったのかしら?フランが部屋に行くなんて」
周りの者達は、何やら騒ついていた。
「……」
一つ確信していることがあった。
この世界でも、フランはレミリアのことが大好きみたいだ……
心を読んでいたわけではない。しかし、あの写真立てを見てわかった。
「……ごめん、やっぱり話すのはまた今度。ちょっと私も気になるから行ってくる」
「…わかった。私達もフランが心配だから…頼んだよ」
「…うん」
−フランの部屋は確か……ここの廊下を真っ直ぐだったよね…
こいしがフランの部屋のドアの前に立った時
「うっ……ぐすっ……お姉様……うぅっ……」
「……!」
「……どうして死んじゃったの…?私を置いていかないでよ…!」
「……」
「またお姉様と遊びたいよ…!チェスでも、トランプでも、弾幕ごっこでも、ただのお茶会でも……何でもいいから……」
「……ッ」
「もう一度だけでいいから……また…お姉様と……遊びたいよぉ……!」
「…〜ッ…!!」ギリィッ
−……殺してやる……この世界の私…!!
「……誰かいるの?」
この世界のフランからは想像もできない一面を見たこいしは、急に話しかけられても驚くことはなかった。
ドアを開けて、フランの部屋に入った。
ガチャ
「……私」
フランの頬に涙が伝っていた。
ベッドに座って、膝に顔を埋めて泣いていたようだ。
スカートの膝の部分が濡れている。
「……こいし……ははっ、恥ずかしいところ見られちゃったね」
「…レミリアを殺したのは、私?」
「……うん。あんまり、言いたくないけどね」
「……フランは……レミリアのこと大好き?」
「……大好き。世界で一番大好きだったよ」
「……私を、許せない?」
「……ごめんこいし。もうこの話はやめ…」「許せないよね」
「…え?」
「私も手伝うよ……この世界の私に復讐するの」
「……ごめんねこいし。巻き込んじゃって」
「私は自分から来たんだよ?」
「それでも……私が現れたばかりにこの世界のことを知ってしまった。ごめんね」
「……相変わらず、超がつくほど優しいんだから……どこの世界でも」
「……図書館に戻ってなよ。私は落ち着いたら図書館に行くから」
「……もしかして、私とお姉ちゃんが話してたから?」
「……」
「…ごめん」
「いいよ、謝らなくて……思い出したのは私だし……私は精神面で弱いんだってこともわかったし」
「…私もここにいるよ」
「……そう」
しばらく私とフランは、色んな話をした。
私の世界であったこと、フランのいるこの世界であったこと……その中で私が一つ疑問に思ったのが……
「この世界のこいしは元々は人気者だったんだ。心を読もうとしないさとり妖怪としてね」
「心を読もうとしないさとり妖怪?」
「うん。人の心を読むのはあまり好きじゃないと言って、いつもサードアイを閉じて幻想郷を徘徊していたらしいよ」
「ふーん……」
「…疑問に思わない?」
「…うん」
「何故そんなこいしが急に世界を支配しようと目論みだしたのか……」
「…誰かに操られている?」
「そう思って私は一度奴と正面から対峙にしたことがある」
「!」
「けど、そういう風ではなかった。むしろ、生き生きとしていたんだ」
「……」
「あわよくば倒そうと思ってた。けど……駄目だった。味方がやられそうになってね……それで撤退したんだ」
「こいし以外にも敵がいるの?」
「貴女のよく知る二人よ」
「……そっか。お空とお燐も……」
「…奴も何か、私と似た力を持っているみたい。私が時を止めてもまるで見えているみたいだった」
「…入門者…」
「そうみたいだね」
「……じゃあ、時間関係の能力を持ってる可能性が高いってこと?」
「そうなるね。私の予想だけど……あいつも時を止められると思う」
「何で?」
「あいつはどこからともなく突然現れる。そして周りの人や物を満足するまで破壊し尽くすんだ」
「……」
「……私と戦った時はあいつは時を止めてくるような真似はしなかった。けど、嫌な予感がするんだ」
「……じゃあ、隠してるのかな?」
「そう見てよさそうだね。仮定だけど、奴は時を止められる。そしてその制限時間は無制限。しかし直接手を加えることはできない」
「……それって……」
「……咲夜と同じだね」
「なら対策の仕様はいくらでもある……よかった、フランと同じで無制限だとしたら本当に絶望しかなかったよ」
「……あくまで仮定だからね。もしかすると、能力を隠すために私達の前ではあえて使わなかった…なんてのもありえるよ」
「確かにね。けど、何故か確信があるんだ」
「…?」
「この世界の私とフランは、大きな運命という糸で結ばれている気がする。きっと貴女とこの世界の私は、一対一で戦うことになると思うんだ」
「……」
「……一度別世界の私と会いたいな」
「……行く?」
「…え?」
「この世界の古明地こいしのいる場所へ……」
「…うん」
「了解。けど…みんなに知られるのは嫌だからね……」
そう言ってフランが出したのは、一つのスペルカード。
幻世『ザ・ワールド』
ドオォーーンッ
「……ん?」
「周りの時は止まったままだよ。貴女以外を対象にしてスペルカードを発動させた」
辺りの時間は止まり、私とフラン以外のものは何も動いていなかった。
「…この時間停止には制限時間はない。けど、直接手を出すことはできない。咲夜のスペルカードだよ」
「……」
「行くよ」
「…うん」
しばらく歩いてわかったこと。
この世界は……紅魔館以外は完全に壊滅している。
かくいう紅魔館でさえ、半壊滅状態である。
フラン達がいなければ、この世界は完全に滅亡していた事になる。私の手によって。
「……フランは…こんな世界で生き残ったんだね……」
「……古明地こいしが一番最初に狙ったのは……言わずともわかると思うけど、地底だった」
フランが私の方へ向き直り言った。
「私はたまたま、お姉様と地底に来ていた。散歩をしている内に、地底の仲良し姉妹に挨拶していかないかって話になってね。あわよくば友達にでも…って、とっても盛り上がってた」
「……もう、その話はやめて」
「…ごめん」
しばらく無言で歩いた。行き先は大体わかっていた。
「……やっぱり、地底?」
「うん………ごめん、さっきの話の続きさせてもらってもいい?」
「……何でそんなに話したがるの?」
「貴女には知ってもらいたかったの。私のこと」
「!」
「貴女は信頼できるから」
フランが笑ってこっちを向いた。
「……ありがとう」
「どういたしまして。…私達姉妹が来た時はもう、さとりはいなかったんだ。既に逃げていた」
「…!」
「古明地こいしが、地底を壊滅させている最中だったよ」
「……」
「その光景に私達はびっくり。付き添いに来ていた咲夜が何者の仕業か確かめる為に地霊殿の方へ隠れながら行った。時を止めながら」
フランは前に向き直り、歩きながらその話を続けた。
「なのに、古明地こいしに見つかった」
「えっ…」
「入門者である私には見えた。古明地こいしが、咲夜の時間停止の中で顔を動かして咲夜の方をじっと見ていた光景が」
「…じゃあ…!」
「うん……古明地こいしも入門者だった。私は最初は信じられなかった。入門者は私と咲夜以外いないと思っていたから」
「……」
「……そして咲夜は……私達に大声で『逃げろ』と叫んで古明地こいしと戦った」
「……」
「私達は全力で逃げた。けど………咲夜が殺られたのが……見えた」
「…!!」
「私達は、それに驚いて、絶望して……足を止めてしまった。古明地こいしがすぐに私達が逃げていることに気付いた」
「……それで……」
「……私を逃がす為に……お姉様は古明地こいしと戦った」
「……」
「私も一緒に戦おうとした。けど……お姉様は、そんなことはさせなかった」
「…?」
「古明地こいしとお姉様の周りに、とても強力な結界を張ったんだ。私の攻撃でも割ることができない、強力な結界を」
フランが拳を握りしめているのがわかった。
「あの時私に力があれば……!あの結界を破れる力があれば……!!私がしっかりしていれば!!」
「…!!」
「…咲夜も……お姉様も……死ぬことはなかったんだ」
フランは、手から血がにじむほど強く右手を握りしめていた。
「……フラン……」
「……ごめん、話はこれで終わり。行こうか」
「……」
私は……ますます込み上げてくる怒りが強くなった。
「……ここの中に……奴が……」
「……ええ、いるわ」
「…この世界の、私……」
「……行くよ」
「うん」
To be continue…




