Flandre The World
数分前
「…!?ふ、フランドールが……」
「!?閻魔様、妹様がどうしたのですか!?」
「……フランドールが……殺されました」
「…えっ…」
「…?」
「…は、はい?」
その言葉に、そこにいる誰もが唖然とした。
「…こいしを庇って……霊夢に……」
「……嘘…でしょ…」
咲夜が涙目で言った。
「……フラン…ドール様……そんな……そんなぁ……」
美鈴が頭を抱えて地面に蹲った。
「……!」
「……フランが……やられただと…?……嘘をつけ……あまり笑えない冗談はやめろ、閻魔」
正邪が言った。
「…事実です。……が……」
「…が…?」
「…こいしに……力を託したようです」
「…!」
「…私、紅魔館に行きます。お嬢様がそこにいらしているはずです」
「…わ、私も…!」
「美鈴、私一人で充分よ。それにこの事実を伝えるのは私が一番適任よ」
「…わかりました。お気をつけて」
「ええ」
ドオォーーンッ
「…きえた」
「時を止めたんでしょうね」
「……」
そしてそれから数分が立ち……
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現在
「……霊夢が倒されました。フランドールの力を受け継いだこいしによって、霊夢は消滅したと思われます」
「……思われます?…どういうことですか?」
「霊夢はスキマに逃げていきました。しかし、もう既に破壊はだいぶ進行していましたし消滅したかと」
「……こいしに、お礼を言わなきゃね」
その時だった。
ドクンッ
『!?』
そこにいる全員が、一瞬心臓を握りつぶされるような苦しみを感じた。
「な、何だ今のは…!?」
「い、嫌な予感がする…!」
「…こ、この感覚は……!」
映姫だけ何かに気付いていた。
「まずいです!!皆さんどこか建物かどこかへ避難してください!!魂を抜き取られ…!!」
ドクンッ
「がっ…!」
「うぐっ…!」
全員が一斉に倒れた。
そして、全員の体から何かの球体のようなものが出てくる。
それが、最終決戦の平原へと飛んでいった。
「『The World』私だけの時間だよ」
「フラン!?」
死んだはずのフランがそこにいた。
その容姿は髪が右側だけ少し長いだけで、他は何ら変わりはなかった。
解放状態のレーヴァテインを手にしていた。
いや、本来の姿のレーヴァテインを手にしてした。
ドオォーーンッ
「…ふん」
−この世界の古明地こいしか……あっちと何ら変わりはないようだが……
「強いて言えばこの世界の私の力を手に入れているというところか」
「……」
−『…騒がしいと思ったら……何やってるの?霊夢。酷い傷……』
−『!!この世界の…フランか…!丁度いいところに……一つ貴女に頼みたいことがあるの…!!』
−『…?』
−『…信じられないくらい突拍子のない話ね。私にそれを信じろと?』
−『信じて…!私が消えるまでもう時間がない……!!ここからが本題よ…!』
−『奴の破壊の弾丸…!あれはどうやっても防げない…!』
−『あれさえなければ、多分勝てた……この混玉は敵の能力を知り、吸い取り自身の力にする……だからいずれ私は勝つことが出来たはずだ…!あれさえなければ…!』
−『…で?霊夢。貴女は私に何をさせたい?』
−『倒してくれ、奴を……!』
−『…そんなことだろうと思った……そっちの世界の事情でしょう?私には関係……』
−『倒してくれればあの世界を支配できるわ…!』
−『…ほう?』
−『貴女が勝てばあの世界は貴女のものよ……どう?』
−『……いいよ、乗った。その取引』
−『……ところで、この世界の紅魔館は随分と暗いのね』
−『……』
−『…?何かあったの…?』
−『話してる場合なの?早く私をその世界に連れて行ってよ』
−『……わかったわ。貴女に混玉とこの私の世界移動の力を貴女に託す。頼んだわよ…!』
「……さてと」
ブンッ
フランは大量のナイフをこいしの周りにバラまいた。
「私の能力は『自分以外の全てのものの時間を5秒間止められる』……そして時は動き出す」
ブウゥンッ
「…!?」
間一髪でナイフを躱した。
「な、何だ……!?今のは…!!」
「へえ、よく避けた……さすがはこの世界最強」
「…フランだよね…!?だったら……!私がわかるでしょ!?」
「……ああ、わかる」
「…!」
「……私は私の世界で、貴女と出会いはした。けど友達にはならなかった。私の世界では……」
「…?」
「……いや、何でもない。今は戦いに集中しようか」
「……何かあるんだね、フラン…!」
「…貴女が知れば悲しむだろうから、口には出さないよ」
「…どこの世界でも貴女は優しいんだね、フラン…」(……決心がついた)
−こいつは私の知るフランじゃない……偽物だ。
壊す……壊す…壊す、壊す 壊す
壊 す 。
ドンッ
「……それが破壊の弾丸、か」
こいしの指先から、破壊の弾丸が放たれた。
「……」すっ
フランが右手を上げる。
「…『The…
…World』!」
フランが掛け声と共に手を下げる。
「!!」
ドオォーーンッ
能力が発動し、辺りの時間が止まった。
「……特に変わった弾幕でもないな」
破壊の弾丸を観察し終えた後こいしのすぐ近くにいき……
「さて!敵がどれだけ早く動けようが関係のない方法を思いついたから……早速試してみよう」
フランの左手には、ガソリンの入ったバケツがあった。
ブンッ
それをこいしに向けて投げた。
「お楽しみはこれからだ…」ブンッ
さらに右手から、火炎系の魔法の玉を数十個投げた。
「……」
ザッ ザッ ザッ ザッ
「…時は動き出す」
ブウゥンッ
「なっ!?」
ドオオオオオオオンッ!!
「……」
すると、煙の間から破壊の弾丸が現れる。
「!?」
フランはそれを、飛び上がって躱す。
「…!なるほど、話しで聞いた通りだ……壊すという明確な意思があればどこまでも追ってくるな……」
−時止めまでにあと三秒のインターバルがいる。それまでどうやって逃げるか……いや
「試してみるか。…おっと、これは外させてもらうよ。お姉様の形見だ」
リストバンドを外した。そして、ポケットにしまう。
そして、自分の右腕をレーヴァテインで切り、それを破壊の弾丸に向けて投げた。そしてもう一つ何かを手に当てる。
「さっき仕掛けたナイフの内の一つ。さてどうなる」
ドンッ
パァンッ
「!」
被弾した直後、ナイフごと爆裂して消えた。
「…へえ」
−なるほど、意思が強ければ強いほど……そして破壊する面積が小さければ小さいほど破壊するスピードは速いってことか。そして、他のものも破壊対象に触れていれば一緒に破壊される……。
「この世界の私は何故この技を使わなかったのか……もしかすると使えなかったのかもしれないけどね」
−古明地こいしとこの世界の私の力が合わさってできた最強の技…か。
「面白いじゃん」
フランが笑みを浮かべる。
「ぐはっ…!」
「私の火炎魔法にガソリン引火での大爆発をまともにくらって、まだ立ってられるのか……タフだね」
「…!」(くっ…!!このフラン……知力タイプなのか…!?この世界のように接近戦で戦うタイプじゃない…)
−冷静に分析するところは一緒だけど、このフランは色んな方法で攻撃してくる…!下手したら一撃で死ぬレベルの技がある……!それに、何故かいきなり物が現れる。フランの位置も消えるようにいつの間にか変わっているし…………?消えるように…?
「……咲夜さんの能力と……!…これ以上させたらやばい!!」ドンッ
こいしが破壊の弾丸を放った。
「もう遅い!!『The World』!!」
ドオオォーーンッ
「時は止まった……五秒前!」
「……咲夜の能力を引き継いだわけじゃない。私は生まれつきこの能力を持っていた」
「お姉様は運命を操る事ができる。そして私は時を支配できる」
「私達姉妹は……無敵だったはずだ」
「……あの時私がもっとしっかりしていれば、あんな事にはならなかったんだ」
「…もう、あんな事を繰り返させはしない。私は成長したんだ」
フランが何かのスペルカードを発動させた。光で当たりが見えなくなる。
すると、フランがいつの間にかこいしの斜め横に立ち、自身の胸元から拳銃を取り出して、魔力を大量に込めて撃った。そしてフランが拳銃を手から放す。
音だけがなり、拳銃と弾丸が宙に浮いた。
その後背後に回り、長い棒を二本少し間を空けて突き刺し、その間に何かを指で広げて張った後に、その張った何かの隣に立って言った。
「『時は動き出す』……」
ブウゥンッ
「!!」
ダンッ
こいしが弾丸をバックステップで躱した。
しかし……
ズバァンッ
「うぐっ!?」
全身から血が吹き出た。
「斜め横から撃てば、視界に入ってすぐに避けようとする。生き物というのは、何かから逃れる時大抵後ろに下がろうとする。防衛本能ってやつだね」
そしてこいしは、何かに絡まれて動けない状態になっていた。
「なっ…!?」
「貴女の真後ろにワイヤーを張った。とても切れ味のある鋭利なワイヤーをね」
フランが横目で何かを見ながら言った。
「…!?」
「…破壊の力は…」
ドンッ
フランが自身の右腕を盾にして、破壊の弾丸を受けた。
「お前自身がくらえ!!」
ドスッ
「うぅ!?」
フランが右腕をこいしに突き刺した。
そして……
ズバァンッ
空から別のフランがレーヴァテインでフランの右腕を切った。
「これも実験だ。さて、くらった分身はどうなる」
「…もう既に腕の感覚がないよ」
「そりゃあ怖い。…悪いね」
「ああ、構わないよ。どうせ分身でしょ?本体の貴女が生き残るなら別に」
「…ええ」
「おっと…」
分身のフランが体勢を崩した。
「…もう足をやられたか」
「破壊スピードはやはり速いね」
「うぎゃあぁああ…!!」
こいしが、破壊の力で苦しんでいた。
「……おやおや、そちらも片足を持って行かれたか」
「…やはり直せつくらった方が効果は高いようだね」
「そうみたいね」
「…うぐぐ…ぐぐあぁあ…!!」
「…思ったより苦しいもんだな…」
「…別に叫んでもいいんだよ?私」
「いや別に…叫けぶほどでもない」
「…そう」
「…ごめん、もう消えそう」
分身のフランは既に上半身しか残っていなかった。
「…実験してさせてくれて、ありがとう」
パァンッ
分身が消えた。
「…いやまて、何だ今のは。自演か?私は今自演をしたのか?」
「うぐぐ…!!」
「…もう貴女は助かりそうにないね。悪いけど用済みだから…わたしはもう行くよ」
フランがこいしの首にあるネックレスを取りながら言った。
「ま、待て…!!」
「待たない。じゃあね」
−さて、あとは……紅魔館に残っているこの世界のお姉様を排除するのみ。
「……混玉を使えば楽勝なんだろうけどね。私は使わないけど」
フランがゆっくりと飛んでいった。
「……」
パリィーーンッ
こいしは、自身に掛けられた破壊の力を破壊した。
「…はぁっ…!!はぁっ…!!」
−くそっ…!!手足が回復するのには少し時間がかかるか…!!それにもう、私も…!
「レミリア…!…後は…お願い」
こいしが意識を失った。
「…!奴らの魂……」
「……まあ、取り込むのなら勝手に取り込めばいいさ」
そうフランが言うと、混玉は全ての魂を吸収した。
「……」
フランが紅魔館の門前に立っていた。
「……ここの紅魔館は、まだ随分真新しくみえるな」
「…整備されてるってことか」
ギギィーー……
寂しそうにそう言うと、フランは門を開けて紅魔館へ入っていった。
「…嬢様!お嬢様!!」
「…ん…ん?」
「あ、起きた…!よかった。私です、咲夜です」
「…咲夜……?…!!」
−『…ありがとう』
「フランは!?」
レミリアが思い出したかのように聞いた。
「…い、妹、様は…」
「…!?」
「……」
「…そう、なのね……」
レミリアが、涙を必死に堪えている。
「…何故かしら。狂いそうなほど悲しいのに……今はやらなきゃいけないことがあるからかしらね」
「……はい」
「…咲夜。私は今運命を見ることが出来た。これから私達は別の世界の”あの子”と戦うことになるわ」
「…!」
「……ついてきてくれる?」
「当たり前です」
「!」
「私は貴女に忠誠を誓ったのです……全ては貴女の意のままに」
「……ふふ」
「共に行きましょう、どこへでも」
「ありがとう、咲夜」
ギギィーー……
二人が、遊戯場の扉を開けて出ていった。
To be continue…




