番外10 クリスマスSP 中篇
「…あのさ、紫」
「んん?」
「今の、本気で言った?」
「ええ、本気で。で?返事は?」
「ひとつだけ、質問させて」
「ん?」
「頭大丈夫?」
「おい」
「ごめん」
「いいじゃないクリスマスパーティー!たまには羽を伸ばしましょうよ!」
「その間に敵が攻めてきたらどうするつもり……」
「霊夢はそんな野暮な奴じゃないわよ。それに何だかんだ言ってあの子もこういうのは積極的に遊びにいくタイプだしね」
「…それなら、いいけど」
今頃フランは何をしているのだろう。
あのもう一人の私との戦いのあと、フランはこう言い残して消えていった。
「merry Xmas!」(⌒▽⌒)
びっくりした。もう敵同士だ、友達でも何でもないと言われたからてっきり攻撃してくると思っていたから。
「……」
でも残念なのには変わりない。フランはもう私の事を敵として見ているんだ。
「…クリスマスパーティー、別にいいけど準備はそっちでしてよ?私はみんなに言ってくるよ」
「了解よ〜」
そう言ってこいしは屋上を後にした。
「……思うに、紫ってあんな性格だったんだね……こういう時は真面目なのかと…」
「こんなものだよ。紫様はいつも」
急に後ろから話しかけられた。
「うわっ!?びっくりした…」
「ああ、悪い悪い。私だよ、藍だ」
「ああ、藍さん。紫っていつもはあんな感じなんだなー…霊夢に操られてた時の印象が強くて」
「まあそうだろうな。…しかし、これで紫様の豹変の真実が知れた。自身の意思ではないと聞いた時は安心したよ……」
「……」
−『どう捉えるかは貴女次第……少なくとも私は裏切ったつもりだよ』
「そうだね」
フランは、どうなんだろうか。
裏切ったつもりだと言っていた。
……もうフランの事を考えるのはやめよう。
フランは……私が倒す。
「こいしー、晩御飯らしいわ。行くわよ」
「あ、はーいお姉ちゃん。ちょっと待ってね」
「というわけで、クリスマスパーティーを開くことにしました!」
何という事でしょう。元々西洋風でお洒落な食堂が、たった二時間の間でクリスマスイルミネーションの楽園へと様変わり。
「紫…何で勝手に食堂を……」
いや突っ込むところそこじゃないでしょ?
「ちょっと待ってくださいよ!今の状況がわかっているのですか!?」
お、まともな反論か?
「今日はクリスマスイブですよ!」
そっちかーっ
「関係ないわ!後数時間でクリスマスよ!」
「よっしゃ!じゃあ一丁派手にやるか!!」
『『おおおー!!』』
私は念のために屋上で待機していた。
ご馳走とオレンジジュースを持ってきて。
「寒っ…!ニーソ履いてくればよかった…」
「こいし、また一人でいるの?」
「げっ…ぬえ」
「ん何だと?」
「げっ…ぬえ」「二回言わなくていいよぉ!」
「どうしたの?」
「一人じゃ寂しいでしょ。だから私が来てあげたぞ」
「…ありがと。素直に嬉しい」
「…どうかした?」
ぬえが心配そうにこちらを見つめている。
「…わかる?」
「うん」
「…やっぱり私ってさ。結構根に持つタイプみたい」
「…?」
「私は、友達を捨て切れないみたい」
「……」
「…しんみりするのも嫌だし、明るい話でもしよう」
「…うん」
その後、命蓮寺であった笑い話や地霊殿で起きたサプライズなど、色々な話をした。
悪い気はしなかった。けど、やっぱり今後の事を考えると心が沈む。
「…こいし、今日はパーティーなんだから……楽しみなよ」
「…そう、だね。楽しむよ」
暗い事ばかり考えたってしょうがない。今日は楽しもう。…楽しもう。
「やっぱりクリスマスと言えばプレゼントだろう」
「いいや、サンタだね!」
「ほぼほぼ同じようなものじゃんw」
「…思ったより賑わってるな…」
「さあこいしもあの輪に入ろう!」
「う、うん」
…たまにはこういうのも、いいかもな。
「よーし、それじゃあ撮影と行きましょう!」
「お、気が効くじゃないか文!」
「ふふん!」
「んじゃ、みんな並んで並んでー!ほらこいしも!」
「うん!」
「こらこら押すな……あんまり詰めると総崩れして大変な事になるぞ?」
「藍しゃまなら倒せないから大丈夫!」
「ははっ!仲がいいんだな!」
「慧音、隣いいか?」
「ん、妹紅か!ああ、いいよ!」
「ムラサー、ぬえー、ナズー、おいで。みんなで写りましょう」
「おー!」
「咲夜、美鈴、小悪魔、パチェ」
「はい」
「…今更だけど、あの時は本当に申し訳ありませんでした…お嬢様」
「いいわよ別に……気にしてないわ」
「お姉ちゃん!お空!お燐!」
「はい!」
「あらこいし、今日はえらくテンションが高いじゃない」
「そうかな?」
「ええ」
「…久しぶりに、心の底から笑えたから」
「…そっか」
私には家族がいる。
仲間がいる。
友達がいる。
……1人遠ざかってしまった、大親友がいる。
私はそのみんなを守るため……救う為……強くなってみせる。
けど今日は楽しませて
「あと五秒後にフラッシュだ!ちゃんと笑えよ!」
「それじゃあみなさん!」
『merry Xmas‼︎』
「いやー楽しかったねぇ」
「ねえ!あ、ところでなんで屋上に?」
「風に当たると、気持ちが落ち着くんだ」
「へえ、なるほど」
その時だった。
バリィッ!!
という音と同時に、謎のゲートのようなものが現れる。
「ま、まさか奴らが……!」
「急いで紫に!!」
「ええ!」
その時、誰かの声が聞こえてきた。その声は、聞き覚えがあった。
そう、遠ざかってしまった私の親友。
「merry Xmas」
フランドール・スカーレットがそこにいた。




