最も親しい友達
更新が少し遅れてしまった…
「グラン!」
「ああ、分かってる!やるぞ!」
「うん!」
『お前らをぶっ潰せば、この身体は完全にこの俺の物となる!さあ、覚悟してもらうぜぇ!!』
「…わかってるとか言ったけど、どうする?」
「何それっ…!…まずは様子見……グランは左から攻めて!私は右からいく」
「OK」
グランが素早く移動して、もう一人の私の左の方へ回り込んだ。
「私も…!」
−もう一人の私の行動パターンも攻撃方法もわからない……だから様子見だ。
「……」(具体的な事聞いとけばよかった……とりあえずこいしに合わせようか)
「……」(グランはきっと、私に合わせてくれるはずだ。なら……)
こいしが帽子を深く被り、姿勢を低くして、所謂陸上競技のクラウチングスタートと同じ体制を取る。
『何するつもりだぁ?』
「さあね…!」
その時、グランは何かに気付いた。
「……」(なるほど。了解)
グランが、まるで姿を消したかのように見えるほどの凄まじいスピードで動いている。
『…速いね……で?これからどうすんだよ』
「こうするんだよ!」
こいしが地面から魔力で作った鎖のようなものを引き抜く。
『!?』(鎖か!?)
−これで奴の注意は自然と足元に集まる!でも実はこの鎖は何の関係もなくて……
本命は、グランの超速斬り!
「もらった…!」
『!』(グランか)
ガッ
「…何…!?」
「…!」
斬りかかったグランの右腕を掴み、不気味な笑みを浮かべる狂こいし。
「ちっ…!」
グランは離れようとするが、力が強く引き剥がさない。
『さあ、まずは腕の一本でも貰っておこうか…!』
「!」
狂こいしが、腕に力をさらに込めていく。
「痛い痛い痛い!洒落にならんぞこれ!マジで腕千切れるって!!」
『そのつもりだよぉ!!ははは!!』
「…ぅがっ…あぁ…!!」
グランの右腕がメキメキと音を立て始める。
『くっくっく…あとちょっとで骨が砕けるぜ?さあ何とかしてみろ………よ!!』
狂こいしがさらに手に力を入れる。
「ぐっ…!?ぎゃあああああ!!!」
『はーっはっはっは!!』
「なぁ〜んてね♡」
『…は?』
グランが不敵な笑みを浮かべる。
「実は今あんたが掴んでるこの右手には謎があります。それは何でしょう?」
『…何?』
「んー?もう降参?つまんないの。んじゃ、正解は……!」
グランが自分の右腕を左手で掴む。
「こういう事!」
グランが自身の腕を切り落とした
……のではなく
『何!?』(こ、これは……人形!?)
実はグランは、いつのまにか人形を作って自分の右腕にくっ付けていた。右腕は服の中に隠し、魔力で人形の腕を操っていた。
さらにその人形の腕の付け根から、地面に向かって鎖が伸びている。
『!!』(まさかこの鎖…!)
「今だこいし!」
「了解グラン!」
グランは人形の腕から伸びている鎖を、こいしは先ほど地面から引き抜いた鎖を、二人が同時にぐいっと引っ張った。
すると地面から鎖が現れ、狂こいしを縛り上げた。
「一奏・魔幻連鎖…一つの大きな鎖で敵を縛り上げる技。本来は魔力で鎖を操作するんだけど、そんな事したらバレちゃうからね」
『…へえ』(この鎖、最初から仕掛けていたのか…それともさっき地面に両手をついた時に仕込んだのか……しかもそれを理解して完璧に合わせたか)
二人の連携力の高さに、狂こいしは少し感心する。
『だがなぁ…!この程度の鎖で俺が縛れると思ったら大間違いだぜ』
「もちろんそんなこと思ってないよ」
こいしが指をパチンと鳴らす。
『…?』
「二奏・幻霊針葬」
地面から多数の巨大な針が飛んでくる。
それは全て狂こいしに刺さった。
『…これが、二奏、ね……結構なダメージ受けたけど……』
「次で最後だから安心して」
パンッ
こいしが手のひらを勢いよく合わせる。
すると、空から何かが降ってきている。
「終奏!天蓋蒼棘!」
空から巨大な棘のような青い弾幕が、狂こいしが拘束されているところに向けて落ちていく。
『…ほお…』
「…?」(抵抗…しないのか?)
狂こいしはただ笑みを浮かべて、それを眺めていた。
天蓋蒼棘は、そのまま狂こいしへと落ちていった。
「…何だ…あの笑みは?」
「こいし!警戒しときなよ!」
「…ええ!わかってる!」
その時
パァンッ
「……は?」
グランの右腕が飛んでいた。
「…!!」
「グラン!!」
狂こいしがグランの背後から現れる。
『まずは一人目……』
おぞましい笑みを浮かべ、狂こいしはそう言った。
そして、魔力刀をグランの首に押し付ける。
「こいし!逃げろ!」
「…な…何言ってんの!!そんな事したらグラン……!」
「私の事はいい!!早く逃げろよ!!」
「嫌だ!」
こいしが狂こいしに向かって走っていく。
「…こいしの馬鹿……!」
『判断力のない奴を味方にするのは苦痛じゃあないか?なあ、グラン?』
「…こいしは私の事を心配してくれてるんだ。それは判断力とは少し違うものだよ」
「グラン!」
「ああ!」
グランの切り飛ばされた右腕から、鎖のようなものが生えてくる。
『…何だと…!?』(あの鎖は…魔幻連鎖か!?)
グランはその鎖を左手で掴み、そしてこいしは鎖の出ている右腕を掴んだ。
「行くぞ!」
「うん!」
『…ちっ…』(早目に殺っておくか…)
狂こいしがグランにとどめを刺そうとした時だった。
「うおおりぃやぁあ!!」
グランが、鎖を思い切り引っ張る。
その勢いで、こいしがグランの方へ寄っていく。
『!?』
「ふん!」
グランが一瞬で狂こいしの背後に回り、鎖を巻き付けていた。
『ぐっ!!』(い、いつのまに…!)
「こいし!」
「うん!」
返事をしたと同時に、こいしが鎖を引っ張った。
その時に、グランも反対側に引っ張る。
『…!?』(う、動けん…!何だ…強大な魔力をこの鎖に…!?馬鹿な…!)
「これが私達の!」
「連携だ!」
『くそっ!!』
こいしとグランが、何かの位置を確かめている。
「この辺りかな?」
「OKそこだ。この位置が…」
「「一番切り刻みやすい角度!!」」
『ぐっ!!』
「「くらえぇぇええい!!」」
二人で同時に魔力刀で狂こいしを切り刻む。
『くぅああぁあ!!』
「よっしゃ!効いてるんじゃないか?」
『…ッあ〜…これは効くね』
狂こいしは全身切り傷だらけだったが、まだまだ平気なようだった。
「…思ったより、タフだね…貴女」
『さーて、ここからは俺の反撃って事でいいな!?』
「どうする?そう簡単には倒せそうにないぞ……」
「だね……どうしようか」
「手伝ってあげようか?」
「「『!?』」」
「ねえ、こいし」
声の聞こえる方を見ると
「…何……で……!?」
「…お、お前…」
『…!?』
「…ふん」
荒野の大岩の上に足をぶら下げて座り、こちらを見ている者がいた。
鮮やかな羽、幼い少女の容姿、赤紫色のローブのような装束、とても澄んだ紅色の瞳、黄金色の頭髪
フランドール・スカーレットだった。
「何で……!?ここは私の……精神世界のはず…!」
「……フラン…!?」
「ああ…これは別に私が来たくて来たわけじゃないからね」
「…!?」
「霊夢さんは人使いが荒いよねぇ……こいしは任せた!とか言われたし……」
「…何で…私の精神世界に入ってこれるの…?」
「…人の精神世界には必ず”穴”がある」
「…え?」
「…あまり話すつもりはない」
「…!」
「…悪い事は言わないよこいし。早くこの世界から出なさい」
「…うん。そうするつもり」
「そっか。それならよかった。あー、でも今はお取り込み中みたいだね」
「……」(なんだろう……今のフランは……)
私のよく知る、昔の優しいフランみたいだ……
『…こいつは驚いた……お前一体どうやって?』
「同じ質問をしないでよ。説明するの……」
フランが座っていた荒野の大岩から消えた。
『…!?』
「面倒だから」
狂こいしの後ろにフランが現れる。
『何ぃ!?』
「そんなびびんなくても……」
『…はっ…!何だかんだいって、お前こいしの事心配してんじゃねえか…!』
「…心配、ねぇ……」
フランが笑みを浮かべてる。
「そんな事全くしていないよ。今こいしと私は敵同士だ……友達でも何でもない」
「…えっ…」
フランがこいしを左手の人さし指で指差して言った。
「もうこいしとの繋がりは断ち切った」
「……嘘…だよね…?」
「…またそれ言うの?毎回同じ事言ってるね」
「……!!」
「正直邪魔だから、さっさとここから出て行って欲しかっただけ。優しい演技したら帰ってくれるかなと思ったけど……邪魔者がいたのか」
『!!』
「お前を倒せばこいしは解放されるんだな?」
『…!!』(何だこいつのこの凄み……!静かに言ってるはずなのに…!!)
「さあて、それじゃあ……お前を倒させてもらおうか」




