決戦!六桜花 第三花弁 パチュリー・ノーレッジ 〜絶望の真実〜
今回から急展開です
何というかもうちょい伸ばしたかった感はあるけど案が思いつかなんだ
「お姉ちゃん……下がってて。私がやる」
「……二人で行くわよ……私がバックアップするわ」
「……!了解!」にっ
こいしが、嬉しそうに笑う。
「……随分ご機嫌ね……」
「お姉ちゃんと共闘だなんて……嬉しいからさ」
「……そう。なら……その興奮が冷めぬ内にかかってくるといい」
「ええ……言われなくても!」
パチュリーに突撃していくこいし。
「……」
パチュリーは、椅子から立ち上がる事なくそれをじっと見ていた。
「いよっ!」ブンッ
こいしが、回し蹴りを繰り出す。
しかし、パチュリーは椅子に座ったまま動こうとしなかった。
「!」(何を考えてるんだ?)
ドガァッ
「……え?」
こいしの繰り出した回し蹴りは、パチュリーの体に当たる事はなかった。
「なっ…!?」
椅子から、パチュリーが消えていた。
こいしが蹴ったのは、椅子だった。
先程までパチュリーが座っていた玉座のような椅子が砕ける。
「ど、どこに……」
さとりも、同じく見失っていた。
「バックアップすると言っていたわね……」
「!?」
パチュリーの声が、さとりの背後から聞こえる。
「やめておいた方がいいわよ……貴女では足手まといだわ」
パチュリーが、さとりの後ろに立っていた。
「ぐっ!」ザッ
さとりが後ずさる。
「お姉ちゃん!大丈夫だった?」
「……ええ、大丈夫よ……けど、何て速さなの……!見えなかったわ」
「私は…まあ見えたけど……想像以上にパチュリーは強いのかもしれないね」
「……随分余裕そうに見えるけどね……古明地こいし」
「そうでもないよ……ただ……」
−何だろうな……フランとの修行の時に感じたのと同じ……。
「何でか知らないけど……ワクワクしてる」にっ
そう言って、こいしは笑った。
「……貴女、妹様に似てるわね。立場も、性格も、考えてる事も、家族思いな所も」
パチュリーが少し悲しげな声でそう言った。
「……?」
「……貴女を見ていると、妹様を思い出すわ……優しく、強く、気高かったあの子をね」
「……パチュリーも、実はフランの事大好きだったんだね」
「実は、か。そうでもないわ……私は結構表に出してたわよ」
「……こんな会話、してる暇はなかったね……行くよ」
「……ええ」
「……お姉ちゃん。やっぱり下がってて……パチュリーとは、真剣勝負をしたい」
「……分かったわ」
さとりが、部屋の入り口付近にまで下がった。
「……」
「……」
二人が見合う。
「…シュッ…!」ブンッ
こいしが素早く手刀でパチュリーを攻撃する。
「フッ」ガッ
しかし、それを軽く受け止めるパチュリー。
「でぃっ…!」ブンッ
「……!」ヒュッ
こいしがさらに手刀で横向に攻撃するも、パチュリーはしゃがんで躱す。
「私は接近戦は得意ではないのよね……だから……」
ボボボォ……
「エルファイア」
パチュリーの掌から、炎の玉が出てくる。
「!」
「くらえ……!」
ブンッ
パチュリーは、その掌の炎の玉をこいしに向けて投げる。
−ほぼ零距離!!
ドオオオオオオオンッ!!
「あっぶな……!」
こいしはギリギリでそれを躱していた。
「よく避けたわね」
パチュリーが薄ら笑いを浮かべている。
「何…?今の」
「魔法よ」
「……ああ…なるほど」
「さて、次は……」
パチュリーが、左手をこいしに向けて翳す。
「!」
「ライトニングスラッシュ」コオオオ…
そうパチュリーが唱えた瞬間
「!!」(速っ…)
ズバァンッ!
こいしの後ろの壁に切れ込みが入る。
こいしは、飛び上がってそれを躱していた。
「!!」(もうこっちに手を…!)
パチュリーは、右手をこいしに向けて翳していた。
「アイスバレット」コオオオ…
今度は、巨大な氷麗のようなものがパチュリーの右手から発生する。
ドドドドドドドドドド
「うわぁっ!」
−やばっ…!ひとつひとつが正確に私を狙ってる……!躱しづらい……!
「ギガサンダー」バリバリバリバリ
巨大な雷の球が飛んでくる。
「うおわぁっ!!」
こいしは、それをしゃがんで避ける。
バリィッ!!
ドオオオオオオオンッ!
壁にぶつかると同時に雷鳴が轟き、大爆発が起きた。
「避けるわね……」
「へへん!」
「ならこれでどう?」バッ
パチュリーが、こいしに左手を翳す。
「レイザーブリザード」コオオオ…
「!?」(ブリザード!?まさか……)
−青いレーザー光線!?
こいしが子供のように目を輝かせる。
「こいしー!目を輝かせてる場合じゃないわよ!!」
「はっ!!」
「面白い子ね」ドオオオオオオオンッ!!
パチュリーが、凄まじい威力の青いレーザー光線を放ってきた。
こいしは、それを軽く避ける。レイザーブリザードが被弾した場所が、凍りついた。
「!?」
軽く避けられた事にパチュリーは驚いていた。
−何だ……!?軽く避けられた……今のは私の中でもかなり速い方の魔法なのに…
「うおぉー!!青い光線だ!すげぇ!」
「何で貴女はそんなに青色が好きなのよ!!」
「だってお姉ちゃん!青い薔薇は綺麗でしょ!?」
「いや確かにそうだけど!それとこれとは関係ないでしょう!?」
その時、パチュリーが魔法弾を放つ。
「!」バシィッ
こいしはそれを左腕で弾き飛ばした。
「何…!?」
「甘いねパチュリー」ニヤッ
スゥー…
こいしが消える。
「……!」
−馬鹿な……腕一本で私の魔法弾を……!
「油断大敵……」
こいしがパチュリーの真上に現れる。
「くっ!?」
「くらえ!」
表現『弾幕パラノイア』
「!!」
−紫色の……ナイフ?ばらついて襲ってくる……!
「さあ、どう避ける!?」
「……子供騙しね……こんなもの……」
パチュリーが少しずつ右に逸れて、弾幕を躱している。
「紫色のナイフに惑わされさえしなければどうと言う事はないわ」
「私はちゃんと忠告はしたよ?」
「……?」
ヒュッ
ズバァンッ!
「……がっ……!?」
パチュリーの右腕が切り落とされる。
「油断大敵……ってね」
こいしが、魔力刀を作ってパチュリーの右腕を切り落としていた。
「さあ、これで使える魔法は減った……ここからは私が有利だよ」
「……」
「……何か抵抗しなよ……このままじゃ貴女、負けるよ?」
「……」
パチュリーは、その場から動こうとせずただ呆然とこいしを見ていた。
「……諦めたのかな?それなら……斬る」
こいしが刀を構える。
「終わりだ!!」ダッ
「待ちなさいこいし!!」
さとりがこいしを呼び止める。
「え!?」ザザザァ!
「パチュリーはまだ力を隠してるわ!不用意にとどめを刺しに行っては駄目よ!」
「……わかった!けど……その情報どこで……!」
「……何故か、心が読めるの」
「!?でも能力は紫に……」
「……ええ……私はこの戦いの始めから違和感だらけだったわ……もしかしたら、よ」
「……」
「……何の話をしているか知らないけど……とっとと構えなさい」
パチュリーが、不機嫌そうにこちらを睨んでいる。
「……隠してる力、見せなよ」
こいしが余裕の表情で言う。
「……その表情が気に入らないわね……」
その時
「きゃあああああああああああああああ!!!」
「「「!?」」」
妖夢の絶叫が聞こえる。
「な、何だ!?妖夢に何か…!」
「こいし!急いで決着をつけなさい!」
「……了解!」
「……悪いけど、そう簡単にはやられないわよ」
パチュリーの左手のひらに、何かの紋章が浮かぶ。
「……~~~」
「…?」
パチュリーが何か、呪文を言っている。
「……」
「……」
一秒程、静寂が続く。
「『覚醒儀式』」
「!?」
パチュリーがそう言った瞬間、パチュリーを中心に爆発が起きる。
「な、何だ…!?」
「貴女、英語苦手かしら。凄くシンプルに名付けたつもりなのだけど」
少しずつ、煙が晴れていく。
「覚醒の儀式のようなものよ……私の力の全てを無理やり引き出す魔法…とでも思いなさい」
煙が全て晴れた時、こいしは驚愕した。
パチュリーの周りに、青色の小さな水の刃が徘徊していた。
その数は、数十万程はある。
「…!?」
「『千之水刃』……」
「……」(あいっかわらず厨二なネーミングだなぁ……ちょっと笑いそう)
「この周りに飛んでいるのは水の刃……一つ一つの刃の切れ味は妹様のレーヴァテインと並ぶ程のものよ」
「…フランの……レーヴァテインと……!?」
−紅魔館すら一刀両断したあれと……同等の切れ味……ん?威力じゃなくて切れ味?大した事なくね?
「終わりよ……私をここまで本気にさせたんだから……貴女にもう勝ち目はないわ」
「くっ…!」(と、とりあえず動揺しとこ)
数千の水の刃が一つに固まり、こいしに襲いかかってくる。
「うわっ!」
−思ったより速い…
ドオオオッ
水の刃が通った地面は、まるで抉り取られたかのように跡形も無くなくなっていた。
「……!!」
「当たれば即死……貴女はこの数十万の刃から逃れられるかしら?」
「確かに攻撃力は凄いね……けどそのスピードじゃ私はやれないよ!」
「減らず口を叩くのはこれをどうにかしてからにしなさい」
千之水刃がこいしに向かっていく。
「っと……!」
飛び上がって躱すこいし。
しかし、千之水刃はそれを追尾してくる。
「!!」
ヒュッ
高速移動で避けようとするも……
ズバァンッ!!
「……ッ…」
少し遅く、左腕が千之水刃に飲まれ、抉り取られてしまった。
「!」
「まだよ」
千之水刃が、さらにこいしを追う。
「……本能『イドの解放』」
ドドドドドドドドドドドドドドドッ
千之水刃は、全て消えていた。しかし…
バシャアッ!!
パチュリーの周りに、また千之水刃が発生する。
「無駄な事よ……どうせまたすぐ発生するわ」
「…!」
「分かったかしら?貴女にはもう希望はないわ」
「……」
「…そろそろ本気で殺しに行くわよ」
−…ねえ、貴女ならこの状況どうする?
『……本気出すかな。勿体ぶってたら殺られる可能性もある』
−…そうだよね……
「…ふっ…」すっ…
「…?」
薄ら笑いを浮かべ、帽子を深く被るこいし。
「私もそのつもりだった!」ニヤッ
「!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
瞬間、パチュリーのいた場所から一直線に爆発が起こる。
「くっ…!」
パチュリーは、間一髪避けていた。
−な、何だ今のは……!まさか本当にまだ本気を出して…
「やっほー!」ヒュッ
「!!?」
こいしがパチュリーの目の前に現れる。
目が、狂こいしの目になっていた。
「!?」(何だこの目は!?)
「そぉれ!!」ブンッ!
ドゴォッ
「ぐはっ!?」
こいしがパチュリーの腹部に、思い切りパンチを入れていた。
「からの〜!」『嫌われ者のフィロソフィー』
「!?」
ドオオオオオオオンッ!
大爆発が起こった。
「っと…!これで少しは効いたでしょ…」
「ハーッ…!ハーッ…!」
「……お、思ったより、効いてる」
「いけるわよこいし!パチュリーにもう手立てはないわ!」
「…了解!……パチュリー…終わりにしよう。貴女の、負けだよ」
「…負けて…たまるか…!」
−負けられるか……!私は……!
形は違えど……私はレミィを……”フラン”を……!
「私は負けるわけにはいかないんだ!!」
パチュリーが、凄まじい魔力を出す。
「…ここに来て魔力が上がるとはね…」
「私は……負けられないのよ!何があっても…!!レミィの為にも……フラ……妹様の為にも!!」
「…!」(今……フランと呼ぼうとした……)
こいしが、右手に魔力を溜めている。
パチュリーは、左手に魔力を溜めている。
「……」
「…パチュリー、何を背負ってるの?」
「……あの子達との、平和な日々」ニッ
パチュリーが笑みを浮かべる。
「……重すぎだよ……!」
こいしが、笑いながらとても寂しそうな声で言った。
ダンッ!!
二人が同時に突進していく。
「うおおおおおあああああ!!!」
「はああああああああああ!!!」
バリィッ!!
二人の右手と左手がぶつかり合う。
バリバリバリバリバリバリバリバリッ!!
強大な魔力のぶつかり合いで、周りには稲妻が走っていた。
そして……
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……
超大爆発が起こる。
「…!」
−こいし……!
さとりが、遠くからそれをじっと見ていた。
−『ねえ、パチュリー』
−『はい?何でしょうか妹様』
−『もう…やめてよ妹様、なんて。フランでいいわ』
−『いや……そういう訳にも……』
−『いいのよ!私がいいって言ったんだから』
−『は、はあ……』
−『お姉様は最近どう?元気かな?』
−『はい、元気ですよ』
−『…敬語使わなくていいのに……』
−『…こればっかりはどうしようもないです。レミィの妹とはいえ、レミィと貴女は別なので』
−『…そっか。わかった』
−『あ、レミィはちゃんと貴女の事を考えていましたよ。幽閉はいつ解こうか、とか、あの子に何かしてあげられないか、とか……色々と私に相談してきましたし』
−『…へえ……お姉様が……』
その時のあの子の顔は何処か寂し気で…見ているこっちが辛くなった。
−『…そんな寂しそうな顔しないでくださいよ。レミィが悲しみますよ?』
−『…うん。そうだね』
−『……』(…二人の過去を知っているからこそ……私もここまで辛くなるのね)
−『…ねえ、話戻すんだけどさ』
−『はい?』
−『私と二人っきりの時は敬語も無し、妹様呼びも無しで喋ってくれない?』
−『え、ええ?でも……』
−『…お願い』
−『…分かり、ました』
−『ありがとう。…ごめんね、パチュリー』
−『…昔なにかあったのですか?』
−『……まあ、ちょっと、ね』
−『……話したくないならそれでいいわ……でももし耐えられなくなったら誰でもいい……誰かに相談するのよ?』
−『……!!うん!ありがとうパチュリー!』
−『ええ!』
敬語を使わなかっただけで、凄く嬉しそうに喋ったり……レミィや私、そして紅魔館のみんなの事を大切にする優しい心
私は……この子のそんなところに魅かれた。
−『今日はありがとう、パチュリー。地下室じゃおもてなしも出来ないけど…よかったらまた来てね』
−『ええ、また』
−『お姉様やみんなに……よろしくね』
−『……ええ、任せなさい』
−『ありがとう』
こんな戦い終わらせて……また、あの子達と……。
「……」
「…パチュリーは、無事なの?」
「大丈夫…殺していないから……行こう、お姉ちゃん」
「…ええ」
「……妖夢が心配だから、戻る?」
「いや、ここは先に行くべきよ……みんなを信じましょう」
「…分かった」
「そんな……大天狗様……!」
「…大したことないんだな……大天狗ってのも」
「ぐっ…!」
大天狗が勇儀に敗れ、倒れている。
「くそっ……!」
「今から逃げれば見逃してやる……どうする?」
「……椛……お前だけでも逃げろ」
「そ、そんな!!嫌です!」
「いいから早く逃げろ!!」
「…!!絶対……死なないでください!!」
「…ああ!」
椛が走り去っていった。
「逃げれば見逃すって言ったのに何で逃げないのかねえ」
「逃げたら……他の仲間を殺しに行くだろう?」
「……ご名答……で?あんたはこれからどうするんだ」
勇儀が、大天狗に問いかける。
「…何も。出来るだけ時間を稼ぐことしか考えてないな」
「…そうかい……そいつは残念だったな。
一瞬で終わる」
勇儀が、大天狗の背後に一瞬で移動する。
「!!?」
「終わりだ」ブンッ!!
パァンッ
「…?」
「…!?」
刹那、勇儀の左腕が飛んだ。
「…なっ…にぃ…!?」
「…!?」
「何だ…こりゃあ…!?」
パァンッ
「がっ…!!」
勇儀の胸部に、大穴が開いていた。
「くっ…そぉ……」
ドサッ
勇儀が倒れた。
「…!?」
大天狗は訳が分からず、ただただ戸惑っていた。
「お疲れ様ー。もういいわよ」
「!?」
声が聞こえた方を振り返ろうとした瞬間
ヒュッ
「!!?」
何かが飛んできたが、大天狗はそれを躱す。
「へえ、避けたか。凄いじゃない」
「……比那名居、天子…!?」
「やっほー。今のを避けたのは凄いわ。ご褒美に逃がしてあげる。早く紫んところ行きなさい」
「な、何だと…!?」
「あー、後さっきの白狼天狗の子?には手を出していないから安心なさい」
「…!」
「わかったら早く行く!面倒くさいわね」
「…!」ダッ
大天狗が、扉を開けて走って行った。
「…まさか、ここまで上手くいくとはねぇ……流石あいつが考えた計画なだけはあるわ」
「さて、私は先回りしよっと」
ヒュッ
「……何で…!!一体何が……!!」
「…馬鹿な……まさか私の予想が本当に!?」
「何で紫が……死んでるの!?」
玉座に座ったまま、紫は死んでいた。
「……!!」
「と、とにかく連絡を…!ここからならレミリアさん達が一番近いわ」
「う、うん」
「待ちなさーい」
「「!!」」
「やっほー」
天子が部屋の扉の前に立ち、こいし達を見ていた。
「天子……!」
「もう少し待ってなさい。そうすれば何でそうなったかが分かるからさ」
「なっ…!どういう意味!?」
「まあだから待ってなさいって」
天子が不敵な笑みを浮かべる。
「貴女達にとっては、あまり受け入れたくないものかもしれないけど」ニヤッ
「…!?」
−『ねえ咲夜。お姉様は最近どう?元気なの?』
−『はい、元気ですわ』
−『そっか。よかった』
−『…ふふ、妹様は地下室に誰か来るといつもそれを聞きますね』
−『え、そうかな?』
−『はい』
−『…お姉様には、内緒ね』
−『あらまぁ…赤くなって……可愛らしいですわ妹様』
−『も、もう!やめてよ咲夜』
−『ふふふ…』
ああ…妹様……愛おしゅうございます……貴女方姉妹は私がお守りします……
「咲夜!咲夜!起きなさい!」
「んっ…?」
「よかった…咲夜、どうしてこんなところで倒れていたの?」
「…あれ?私は……何を?」
「…覚えていないのね……それならいいわ。急ぎましょう!妖夢が心配だわ!」
「…はっ!そうでした!もう目の前なんです!あの分かれ道は…!」
「…!本当ね。どうしてここで倒れて…」
「眠らされたのよ」
突然、分かれ道の方から声がする。
「「!?」」
「だ、誰!?」
「私よ…レミリアも咲夜も無事でよかったわ」
そこには霊夢が立っていた。
「れ、霊夢……よかった、貴女も無事だったのね」
「ええ」
「…?」
−何かおかしい……何で分かれ道のところで待機していたんだ?霊夢は……それに……
「となりにいる赤紫色の装束を着た子は誰?」
「この子?この子は私達に協力してくれた子よ」
「…よろしく」
赤紫色の装束を着た少女が、お辞儀をする。
「…ああそう」
「…ところで、妖夢は?」
−咲夜……探りを入れてるのよ……気付きなさいよ……余計なことは……
「…お嬢様?何故そんなに疑心暗鬼に…」
「!!」
−咲夜ァ…!
「……だって、戦ってた奴らを倒したんなら誰かの援護に行くものでしょ?」
「……」
先程まで爽やかに笑っていた霊夢が、不気味な笑みを浮かべる。
「れ、霊夢?」
「……?」
−向こうに転がってるのは……何?
「…!?」
レミリアは、向こう側に転がっている何かが何なのかに気付いた。
ヒュンッ
「妖夢…妹紅…!!」
「…え!?」
咲夜も気付いたようで、すぐにそこに駆け付けた。
「な、何で…!?」
「……あんたらが、やったのか……!霊夢!!」
「ああ…ごめんなさいね……気付かないように粉々に切り刻んでおくべきだったかしら」
霊夢が、不気味な笑みを浮かべたままそう言った。
「……霊夢……まさかあんたがはじめから……!」
「……」
「咲夜……下がってなさい……貴女を巻き込まない自信はないわ」
「は、はい……」
−本当に……本当に霊夢が裏切ったのか……?そんな馬鹿な……じゃあ今までのは全部演技とでも…?
−『よっしゃ!明日から修行頑張って行こうじゃないの!』
−『これ以上犠牲が増えるのは嫌だもの。終わらせてやりましょう』
「……!」
「ああ、そうそう……私って馬鹿よね。能力取ったの自分なのにさとりに読まれないようにわざわざ本気でこの一ヶ月間貴女達の事を仲間だと思い込むようにしていたなんて」
「…は?」
「あら、分からない?」
霊夢が嘲笑うような目で咲夜を見ながら言った。
「私が……この異変の真犯人よ」ニヤッ
「!!」ドクンッ
レミリアは、それを聞いた瞬間頭に血が昇るのを感じた。
「貴女達はとても頑張っていたと思うわよ?みんな一生懸命生き残ろうと必死だったものね。私だって仲間だったんだから……気持ちは分かるわよ」
「黙れ…!」
「……」
「なら何だ……?お前は今まで、ずっと演技であんな事を言っていたのか?私の知っている仲間思いだったお前は全部演技だったと言うのか!?」
「…残念ながら、それは錯覚よ。レミリア」
霊夢が不気味な笑みを浮かべて、こう続けた。
「貴女の知る博麗霊夢など……初めからどこにも居はしない」
「…〜ッ!!貴様ァ!!」
レミリアがグングニルを構えて突撃していく。
「……ふっ…」ニヤッ
「……嘘……でしょ……」
レミリアは、左胸から肩にかけて霊夢が持っている刀に切り裂かれていた。
ドサッ
「お嬢様!!」
「……この刀ねぇ…魔力を封じる程度の能力持っててね。レミリアは再生が出来ないのよ」
「なっ…!」
「このままほっといたら死ぬわね」
「よくも…!」
「丁度いいわ……貴女も連れて行こうかしらね」
「何…!?」
「さて……”フラン”」
「はい」
「…え?」
フランと呼ばれた少女は、何やら魔法陣を張る。
「テレポート」
パッ
「お、来た来た」
「…古明地姉妹…!無事だったか!」
「だ、大天狗様…!椛は?」
「分かれ道に戻った…!今頃博麗の巫女達と……」
「椛ならここにいるわ」
「!?」
天子がそういうと、指をパチンッと鳴らす。
すると、天井に穴が開き、腕を縛られた椛が落ちてくる。
「うわっ!」
「解いてあげなさい」
「椛!」
「だ、大天狗様!よかった…生きていたのですね!」
「ああ!」
「…さて、そろそろ出てきなさい……水橋パルスィ?」
天子が、部屋の隅の柱に向かってそう言った。
「……」
すると、パルスィが柱の裏から現れる。
「パルスィ!」
「こいし…!」
「よかった…!無事だったんだね!こいつ倒してすぐ助けるから待ってて!」
「だーかーらー、待ちなさいって言ってるでしょ。そろそろ、来るから」
「…何だと?」
「ほら、噂をすれば……」
「……!?」
上位十位軍
生存者 7名
死者 4名
裏切り者 2名




