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番外7 ハロウィンSP

※注意 今までの番外とは違い、これは本編の世界と同じと思ってくだちい


ちなみに後付けっぽいところが幾つもあります^o^

10月31日


その日はハロウィンと言って、仮装してお菓子を強請るというよく分からない日らしい。

紅魔館当主であるこの私、レミリア・スカーレットは皆が毎年ハロウィンで盛り上がっている姿を見るのがそれなりに楽しみになっていた。

フランもいつもとても楽しそうにしている。

こいしが紅魔館に現れてから三年目の今日。

フランは相変わらずこいしと遊んでいた。

だが今日はいつもと違ったのだ。



「あら、フラン。楽しそうね…私も混ぜてくださる?」


「あっ…!お、お姉様……ごめんね、今日はちょっと……」


「あ、あらそう?それなら別にいいわ。それじゃあね」


「う、うん。ごめんね!」


「え、ええ」


「行くよ、こいし」


「うん!」


「よかったね、バレなくて……!」


「ねー…フラン、次から気をつけよう」


「うん」


「……!!」


−な、何なの…?もしかして二人で私の悪口でも言ってたの……!?


「……まあ、いいや……そんなことないだろうし……」









道行く妖精メイドも、私が通る度に俯き目を合わせようとしなかった。


「……おはよう。今日も掃除は捗ってる?」


「えっ!は、はい!もちろんです!」


「そう。それはよかったわ…サボったら咲夜にチクるからね?」


「は、はい!」


「……」


いつもはこんな反応じゃない。咲夜という名を出しただけで少し慌てる。それが面白くていつも言っていた。けど今日はやはり何処かよそよそしい。


「……はぁ…」








「パチェー、パチェいる?」


「あら、どうかしたの?レミィ」


「別に…暇だったから来ただけよ」


「そう」


そう言うと本に視線を戻した。いつも通りの筈なのだが何故か今日は妙にイライラした。


「…ちょっと、少しくらい話聞いたらどうなのよ」


「…?まあ、いいけど……どうかした?今日ちょっと機嫌悪いんじゃない?」


「……別に?無視されたみたく感じたからさ…」


「……なら、別にそんな食ってかからなくてもいいじゃない……やっぱり機嫌悪いんでしょう?」


そう言ってパチェは私を見つめてきた。


「…まあ、ね」


「話してみなさい?」


「……みんなが妙に素っ気なくて……それでちょっとね」


「……あらそう。なら多分それは当たってるわ」


「え?」


「みんな、何か隠し事でもしてるのかもね。本当はいつも通り接しているつもりでもぎこちなくなってるんだと思うわ」










部屋に戻って、本を読んでいた。

喉が渇いたから、咲夜を呼ぶ事にした。


「咲夜」


「はい、何でしょう」


「紅茶、お願いしていいかしら?」


「承知しました」






「紅茶、お持ちしました」


「ありがとう。それはそうと咲夜……今日はみんな妙にいそいそしてるわね……何でかしら?」


「えっ…いや、その……」


「…何か隠し事してるわね?当主であるこの私に……」


「……」


フッ


「あっ!こら咲夜!!」


無言で消えていった。


「……何なのよ…もう…!」グスッ













その日の夜、私は屋上に自分で持ってきた椅子と机で紅茶を飲んでいた。


「……」


ふと、思い出した……昔の事を。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


これは、私がまだ十歳でフランが八歳だった頃の話だ。

その日もまた、10月の31日……だがこの頃はハロウィンなんて言葉すら知らなかった。









「お姉さまーー!朝だよーー!!」


「どはぁっ!?」


「お!起きた起きた!おはようお姉さま!」


「フ、フラン……おはよう…起こしてくれるのはいいんだけどもうちょっと静かに起こしてくれない?」


「だってお姉さま何したって起きないんだもん!ほっぺたつねったりお胸触ったりしても起きなかったし。お姉さまお胸結構硬かったなー」


「私が寝てる間に何してんの!!それに一言余計だよ!!」


「わはは!お姉さまが怒ったー!」


いつもこうだった。フランは私と同じ部屋で寝ていたんだ。フランは、家族思いで、正義感が強くて、みんなに好かれていた。


「もう!今何時?」


「もう九時だよ!」


「なぁんだってぇ!!」


普段、朝食は遅くとも八時半頃までには取るようにしていた。なのに今日は大寝坊してしまったんだ。


「い、急ごうフラン!」


「私はもう着替えたよ!」


「あ、ごめん!すぐ着替える!」


「あはは!慌てるお姉さまおもしろーい♪」


「もう!早く行くわよ!」


「はーい!」


そして、私達は急いで食堂へ向かった。










「お、遅れてごめんなさい!」


「ごめんなさーい!」


扉を勢いよく開けると、そこにはお父様がいた。


「やっと来たかフランにレミィ……朝食は最低でも八時半までと言ったはずだが?」


お父様が少し機嫌が悪そうにそう言った。


「ご、ごめんなさい」


「ごめんなさい」


フランもこの時は素直に反省していた。


「……まあ、いいだろう。レミィ、お前少しはフランに感謝するんだな……」


「え?」


「お父さま!」


「…ああ、悪いな。何でもない」


「?」


「ね!そんなことより早くご飯食べよ!」


「う、うん」


「あら、おはようフランにレミィ。今日は随分とぐっすり眠ってたのね」クスクス


「あ、お母様!」


「おはようお母さまー!」


「ええおはよう!今日も元気いっぱいね、フラン!」


「うん!にしし」


私達のお母様はとっても優しかった。何をしても味方でいてくれたし、とにかくとっても優しい人だった。

私達はお母様が大好きだった。もちろん、お父様もだ。

お父様は表では厳しく言ってるけど、実は部屋で『これで子供と上手くやっていける!二十の方法』とかいう本を読んでいたりして、私達の事をしっかり考えてくれている。

そして、私の妹のフラン。この子も本当に優しくて、誰からも好かれていた。もちろん、お父様からも。

何でこんなにお父様の事を強調するか?それほど私達はお父様の事を信頼しているという事だ。


「ほら、今日はメイドの十六夜さんが作ってくれたカレーよ!しっかりニンニクという弱点を克服しましょうね〜♪」


「ええ!ニンニク入ってんのこれ!?」


「…言わなければガッツリ食べてたのに…」


フランが苦笑いで言った。

この頃から既に、冷静な今のフランの面影はあった。

だがまだ八年しかこの世に生きておらず、厳しい世界を見た事もない為こんなに明るい性格なのだ。


「ん…美味しい!」


「ほんとだー!さっすが咲夜の料理!」


「ほんと!お母様も顔負けね…」


「そんな事ないよ!お母さまのカレーも咲夜のカレーも私は大好きだよ!」


「あら、ありがとうフラン。嬉しいわ」


「えへへ〜」


お母様がフランの頭を撫でている。それだけでフランはとっても嬉しそうにしている。

因みにフランの言っている咲夜とは、初代咲夜の事である。私も詳しい話は知らないが、自身の名を知らぬ人間がお父様に拾われ、ナイフの使い方と能力の制御法を教えてもらったらしい。

私達の時代の紅魔館にいる咲夜は、二代目なのだ。

私もお父様と同じ事をした。十六夜という事もあり、私はこの初代咲夜の事を思い出した。

だから、咲夜という名をあげたのだ。


「「ごちそうさまでした!」」


「よく食べたわねー!ニンニクはもう大丈夫なんじゃない?」


「案外そうかも…咲夜にお礼言わなきゃね」


「お姉さま!これから行こうよ!」


「それもそうね……これから一時間くらいは自由時間だし」


「それじゃあ、今日もお稽古頑張りなさいね二人共!」


「「はい!」」








私達がハロウィンという言葉を知ったのも今日だった。


「お姉さま!今日ははらうぃんって言って色んなお化粧するんだって!」


「へえ……人間も変わったことをするものね」


私達は、これから数百年後にパチェが使う事になる大図書館で本を読んでいた。

そこには昔から凄まじい種類の本があり、フランはよくここに本を読みに来ていた。


「あ、そうだお姉さま!この魔法見てよ」


「うん?」


パチンッ


そう言うとフランが指を鳴らす。

すると、魔力の人形のようなものが出てくる。


「おお…!」


「そして……!」バッ


フランが人形に向けて右手を翳す。


「ライトニングストライク!」バリバリバリバリ


ドオオオオオオオンッ!!


フランの手から雷が発生し、その雷が光線となって人形に飛んでいった。

威力は、一目瞭然だ


「……!?」


「どう?凄いでしょー?」


周りはフランの張った魔法結界で守られていた。


「……す、凄すぎるわ……」


「えへへー♪」


フランは努力はしていなかった。フランは、魔法を覚えるのを楽しんでいたんだ。

遊び半分。しかし、一発で成功する。それの繰り返し。

ずば抜けた才能と、純粋な心。それがフランをどんどん強くしていった。


パチパチパチパチパチパチ


突然拍手が聞こえた。


「「?」」


「見事。素晴らしい魔法だったぞ、フラン」


「お父さま!」


「お父様」


拍手が聞こえた方を見ると、お父様が立っていた。


「さあ、修行の時間だ。行くぞ」


「「はい!」」








「さて、フラン。お前はレミィより二歳下なんだ……まだ武器を扱うには早いだろう」


「そんな事ないよ?私剣が中々使いやすかったなー」


そう言って取ったのは、今で言う”日本刀”である。


「…!フラン…お前、その武器が気に入ったのか?」


「うん!入れ物もあるし扱いやすいからさ」


「そうか……それは東洋人から奪った代物でな。刀と言うらしい」


「刀、か……この武器私が貰ってもいい?」


「ああ、構わん」


「へえ、そんな使いにくそうなのでいいの?」


「そう?私にとっては使いやすいんだけど…」


「レミィとフランは、色々と違うからな……」


「?」


「私が見るに、レミィ……お前は特攻タイプという印象だ。一度攻めてくれば止める事が難しい……攻めで一気に押し切るタイプだと思う」


「私が?」


「だがフランは、攻めももちろん出来るが中々作戦を立てるのが上手い。事実私は稽古中、フランに一度傷を付けられた事があるしな……」


「あ、あの……本気で来いって言われたから本気で行ったんだ……ごめんね?お父さま」


「ああ、構わん。私も少し楽しかったのでな」


私はお父様に傷を付けるなんて出来た試しはない。

つまり、私よりフランの方が強いのだ。

私はそう解釈した。


「……ッ」


「?お姉さま?どうかしたの?」


「何でもないわよ……早くやろう!お父様!」


「……ああ…だがレミィ、お前は後だ」


「え!?」


「…お父さま?」


「自身の妹に先を越されたのがそんなに悔しいか?」


お父様は分かっていたようだ。


「……」


「…!」


フランが少し驚いた顔をする。


「悔しかったら……それをさらに越せる程強くなればいいだろう!その程度で不貞腐れるようではいつまで経っても強くはなれん!」


お父様は本気で怒っていた。

これは、本来ならとても為になる説教の筈だった。

けどこの時の私の耳にはただただ不快でしかなかった。


「…もういいよ……!二人でやってて」


「あっ…!お姉さま!」


ガチャ バタンッ!


「お姉さ「待てフラン!」ま…!な、何で?」


「そっとしておいてやれ……レミィには必要な説教だった。フラン……お前には才能がある。今から、特別な稽古を行うぞ」


扉の裏で、私はずっとこの会話を聞いていた。


−特別な……稽古……


才能のない私には出来ない、特別な稽古。

私にはそう言われたように聞こえた。


「…わ、分かったよ」


「よし、行くぞ」


「はい!」


その後から、剣を交える音が絶えなかった。

私は不快で不快で仕方なかった。フランに、恨みの感情すら抱く程に……


−フラン……何であんたばっかり……!!







「レミィ、少しは落ち着いたか」


「……」


昼食の時も、私は誰とも口を聞かなかった。


「お姉さま……明日から頑張ればきっと」「うるさいわね!!あんたなんかに同情されても全く嬉しくないのよ!!」


「…!!」


「あんたはいいわよね!!見た目も可愛くて、才能もあって、みんなに好かれていて!!そんな妹を持つ姉の私の気持ち、分かる!?」


私は嫉妬のあまりついカッとなり、フランに向かって怒鳴ってしまった。


「…ごめん、なさい」


「ちょっとレミィ…!今のは言い過ぎよ」


「……ふん」


ガチャ バタンッ


あまりに居心地が悪かったので、食堂を出ていった。


これから三時間程私達は自由時間だ。


フランにきつく言った事は、私は何とも思っていなかった。


その後部屋で休んでいた。色々あったから精神的に疲れていたんだ。

その時、ドアの方から物音が聞こえた。まるで何かを置くかのような音……。


「……」


コツ コツ コツ


気になったのでドアを開けると、急いで走っていくフランを見つけた。そして、ドアの横には昼食が置いてあった。


「……何よあいつ……こんな事で私の機嫌が直ると思ってんのかしら」


この時の私は最低だった、心からそう思う。

私はそのフランが運んで来てくれた食事を食べる気になれなかった。


「……」


しかしやはり、お腹が空いていた為にその昼食を食べた。




それからしばらくして、私はバルコニーに行った。そこには、フランがいた。

私達は、何か嫌な事があったりするといつもここに行っていた。フランが一人でここに来る事はまず見た事がなかった。


「…お姉さま……ごめんね、すぐどくから」


その声はとても悲しそうで、辛そうで、聞いていると心にくる声だった。


「…フ、フラ…」


「それじゃあ、ね」


「あっ……」


そう言って、私の横を駆けて行こうとした。


「ま、待って!」


私の言葉に、フランの足は止まる。


「…どうかした?」


声が、震えていた。さっき、顔がよく見えなかったが……泣いているようだった。


「…!」


私は、フランが泣くところ等今まで一度も見た事がなかった。いつも笑顔を絶やさず、周りに元気を振りまいていたんだ。なのに今は……


「…用が無いなら、私行くよ。…それじゃあね…」


「あっ…!」


フランが駆けて行ってしまった。


「……」


ここで漸く私は自分のした事の愚かさに気付いた。


−フランに、謝らなくちゃ……






紅魔館には、現在と同様昔から大勢の妖精のメイドがいた。

どうやら、フランが泣いているところを目にしたらしい。


廊下を曲がろうとした時、話し声が聞こえてきた。


「フラン様泣いてたよね?何で?」


「わかんない…私フラン様が泣いてるところ初めてみたよ」


「私も……何だか可哀想……あ、そういえばね…レミリア様がフラン様を怒鳴りつけたんだって」


「え、じゃあそれが原因なんじゃない?」


「それにレミリア様、八つ当たりで怒鳴ったらしいの……」


「えぇ…酷くない?」


「可哀想、フラン様……」


「…ここだけの話、私レミリア様あんまり好きじゃないのよね……」


−!!


「分かる……何というかまだ十歳のくせに威張りすぎよね!フラン様とは大違い。あれで本当に姉妹なのかしら」


「それにフラン様の方が美人よね」


「よねー」


「ねぇ、どう?今度レミリアの奴をこそっと拘束してさ……痛めつけてやらない?もし他の誰かに話せばお前の命は無いぞ!って脅してさ」


「あ、いいねそれ!やろやろ!みんな聞いてたよね?あんまり大きな声で言っちゃ駄目よ?明日決行ね」



それを聞いて私はぞっとした。その場から逃げ出した。

怖かった。あのいつもは愛想のいい妖精メイドは、裏はこんなものだったのだ。


ドテッ


「いっ…!」


焦ってこけてしまった。その音に気付いたらしく…


「今のレミリアの声よね?捕まえるわよ!今さっき主様はスカーレット妃とと咲夜さんと一緒に出掛けたから止めるものは何もないし!」


『了解!』


瞬間、走ってくる音が聞こえた。


「ひっ…!」


全速力で逃げた。怖かった……おぞましかった。もし捕まればどうなるか、想像してしまったからだ。



「だ、誰か…助けて…誰か……!」


そして私は、バルコニーの隅の柱の後ろに隠れていた。

体は震え上がり、身動きが取れなかった。

私が危なくなった時はいつも、お父様が助けてくれた。だがそのお父様は不在。さらに妖精メイドは総勢二百名はいる。そんな中、こんな場所に逃げ込んで助かるはずも無かった。


ガチャ


「!!」


びくっと体を震わせる。誰か来たのだ。


コツ コツ コツ コツ


こちらに歩いてくる音がする。完全に気付かれていると分かった。


「……!!」ガタガタガタガタ


震えが止まらなかった。私はこれからどうなるのだろうか……そんな想像をしてしまった。


コツ コツ コツ


足音がもう真後ろにまで聞こえた。


−やだ…!!誰か…誰か!!


「助けっむぐっ……!!んん……!!」


「しーっ、静かに……」


この声には、聞き覚えがあった。


「…!!」(フラン!?)


「付いてきて…」


そう言って、腕を引っ張ってくれた。


「…うん」


安心した。フランが来てくれた事で、私の心は一気に安堵した。




「ここなら見つからないね……」


「ここは……」


私とフランが、秘密に作った隠れ家……というよりは洞穴である。


「懐かしいよね、ここ。私がまだ五歳だった時に作ったよね」


「…ええ。もう三年も前の事ね」


「ははっ、掘ったのに結局全然使わなかったよね!」


「そうそう!使う機会がなかったしね!」


「うんうん!ふふ」


「……あの、さ」


「ん?」


フランが笑いながらこちらを見てきた。


「……どうしてあんな酷い事言った私の事を助けてくれたの?」


「…何だ、そんな事?」


「えっ…?」


「最初はショックだったよ。けど、いつまでも引きずったって仕方ないでしょ?」


その時のフランは何故かとても大人っぽい雰囲気だった。


「私のお姉様なんだから、見捨てるわけにもいかないし……お姉様とは、これからも仲良くしたかったからさ」


「…フラン……本当に、ごめんね……!ありがとう」


「うん」にこっ


その後私達は紅魔館へ帰り、妖精メイド達はフランに可愛らしい説教を受けた。この時、もうあの時の大人っぽいフランではなく、いつものフランだった。

私も、今まで偉そうにしていた事を謝罪した。

みんな、快く受け入れてくれたからよかった。

その日以来、私達はもっと仲良くなっていった。


これからも、ずっとこんな日々が続きますように……私はそう願った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なのに、今の状況は何だ?


−何よ……みんなして私を除け者にして……


「…はぁ…」


「お姉様?」


「い!?」


「あっ、ごめん。驚かせちゃったかな?」


「い、いやいや……そんなことないわ。でも、どうしてここに?」


「うふふ、お姉様が屋上に椅子と机持って行ってるところ見たよ!お姉様って、何か思い詰めてる時は自分で物持っていくからさ…だからね、付いてきちゃった!」


「…あっそ」


「…?お姉様?」


−その思い詰めてる理由が自分でもあるんだとも知らずに……いい気よね……


「…もしかして、私の所為だった?も、もしそうならごめんなさい」


「…あんただけの所為じゃないから……別にいいわよ」


「もしかして、あの時のこと?」


フランがとても申し訳なさそうにこちらを見ている。


「…そうよ」すっ


その顔がちょっと可愛すぎた為、顔を逸らしながら紅茶を飲んだ。


「ご、ごめんね……あの時はその……色々とあってさ……」


「色々と、ねえ」


言い訳をしているように聞こえたから、少し厳しく言ってみた。


「ご、ごめんなさい……お姉様をそんなに悲しませるとは思わなくて……本当に、ごめん……」


ちょっと涙目になっている。あ、やばいこれは私が悪い。ちょっと意地悪しすぎた。


「いいのよもう……そこまで気にしてないわ」


「本当に?」


「ええ」


「よかった……」


フランが胸をなでおろす。……私より大きいのが悔しいわ……なでおろせるくらいあるなんて……


「お姉様、私ね…今日の夜のためにお姉様を避けてたんだ」


「え?」


いきなり何を……


「さ、行こ!」


「あっ…!ちょっ、ちょっと!?」


フランに手を引っ張られて、私は紅魔館へと入っていった。


−『付いてきて…』


あの時の事を思い出した。

フランの手はとても暖かく、心地よかった。

やはり私には……この子が必要だ……





中に入ると、何やらガヤガヤとした声が聞こえる。


「……何?どういうことなの?」


「行けば分かるさ。さあ、行くよ!」


「ちょっ、待ってってば!」


何なんだ…?








「さ、着いたよ」


「……この前の扉は何かしら?」


「開けてのお楽しみ!」にこっ


満面の笑みである。……やばい超可愛い。


はっ…!私は自分の妹に対して変な感情を…!

落ち着け……落ち着くのよ…レミリア……素数を数えて落ち着くのよ……1、2、3、5、7、11、13……


「…開ければいいのね?」


「うんっ」


フランがにししっ、と笑った。

ああ、可愛い。


……落ち着くのよレミリア……17、19、23、29……


「…分かったわよ」


ギィィィ…







「おーい!お菓子くれ〜!!トリックオアトリート!!」


「あんたにやるお菓子はないわよ!」


「お!?それはいたずらしてくださいって言ってんのかな!?」


「ははははは!」


「お化けだぞ〜!」


「ぎゃー!」


「おい、もっと酒をくれ!こんなに楽しい気分も久しぶりなんだ!」


「あんまり飲みすぎないでよ…」


…!?


「これは…?」


「おーいみんなーー!!」


「!?」


フラン!?


みんなが私達の方を向く。


「今日の主役の登場だよ!拍手ー!」


そういうと、辺りから一斉に拍手喝采が舞った。


「な、何?」


「お姉様はさ、今までハロウィンを楽しんだことがないでしょ?だからみんなを集めてパーティーを開こう!って計画を立ててたんだ」


「それじゃあ……みんなが素っ気なかったのは……」


「これを隠すため。ごめんね」


「……!」


「よかったわね、レミィ」


パチェが私にそう言って微笑んだ。


「……うん!」



私は何を考えていたんだろう

私には、必要としてくれる家族がいた。

一緒にいてくれる友達がいた。

可愛くて、正義感が強くて、姉思いの優しい妹がいた。

そうだ……私には居場所がある

ありがとう、フラン、パチェ……それに紅魔館のみんな……大切なことに気付けたわ


「…こほんっ!えー、今日はぱーっと盛り上がって行くわよ!!」


『おおお!!』


そうして、私は最高の10月31日、ハロウィンを過ごした。

みんな色んな仮装をしていた。

喧嘩を売ってるのか、吸血鬼にまで仮装していて正直面白かった。

驚いたことに、子供の何人かはフランの仮装をしていた。話を聞くと地底から遊びに来たらしい。

フランは照れくさそうにそんな子供達と話したり遊んだりしていた。

あの頃のフランを思い出した。八歳だった頃のフラン……常に明るく、周りを明るくしてくれる……

雰囲気は違えど、今も昔もフランは変わっていなかった。ずっと、私達の事を幸せにしてくれた。


「お姉様!早く早く!」


「ええ!」


「よっしゃ、セッティングオッケーだぜ!さあ、後五秒後にフラッシュだ。みんな一斉に”あれ”、言うんだぜ?」


「はーい!」


「五秒前!」


「四!」


「三!」


「二!」


「せーの!」


『Happy Halloween‼︎』


パシャ





これからも……こんな日々が続きますように……

紅魔館に吹き付ける心地よい風を浴びながら……私は空に浮かぶ月に向けて、そう願った。









あくまでSPなのでランキングはお休みです

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