楽しいひと時
挿絵を追加しました
相変わらず下手い
二日しかないと言いつつも、これまでずっと修行で疲労は溜まりっぱなしだ。それは良くないと考えたフランの提案で前日はゆっくり休むということにした。
それが、今日である。
「ゆっくり休むといってもなぁ……」
これまでずっと修行ばかりだったから、もうそんな気分でもないし……
「とりあえずみんなに会いに行こう……きっと、食堂で話してるはず」
実を言うと寝坊したのだ。いつもは八時頃に起きるのに対し今日は九時半。一時間以上寝坊している。
「もう朝ご飯食べちゃったかな……!」
急いで着替えて、食堂に向かった。
ガチャ
「誰もいないかなぁ……?」
「おはよう、こいし」
「!」
食堂には、フランが居た。私もフランと会いたい気分だったから嬉しかった。
「おはよう!何でフランはここに?」
「んー、図書館に居るとどうもパチュリーの事を思い出しちゃうからさ……ここで本を読んでたんだ。てっきり誰も来ないものだと思ってたけどね」
「あ、そのー…す、すいません」
「はははっ!いいよいいよ。ところでこいし、今日は朝ご飯の時寝てたね。余程疲れてたんだね」
「いやぁ……やっぱり修行三昧だと精神的にも肉体的にも辛くて……だからつい爆睡しちゃったんだよね」
「はは、分かる分かる」
他愛のない話をして盛り上がる。
こんなの久しぶりだな……前までフランと遊んだ時はいつもこうだった。……ひと時だけとはいえ、少し嬉しいな。昔に戻ったみたいだ
「それでさ、お姉ちゃんの絵が面白くて面白くて。絵心があるが故にさ……」
「はは、さとりらしい。さとりって人に悪戯するの好きだよね」
「お姉ちゃんは悪意があるよねぇ」
「あ、そうそう、私が前にお姉様の恥ずかしい写真見つけた時があったんだけどさ……」
「うんうん」
その後もたくさん話をした。フランの話はどれも面白くて、聞き飽きることはなかった。フランは私の話は全部興味を持ってくれるし、笑ってくれる。フランとは話しててとっても楽しいな。
「あ、こいし。朝ご飯、まだ残ってるから食べなよ」
「え、まだあったの?てっきり魔理沙に食べられたのかと……」
「はは、察しがいいね……魔理沙は私が言い止めたから、ちゃんと残ってるよ。おいで、注いであげる」
「ん、ありがとう!」
やっぱり、フランと居るのは最高だ!お姉ちゃんと居るのにも負けず劣らず楽しい!
こんな時間がずっと続けばよかったのに……。
「んー、美味しい!流石は咲夜さんの料理だ〜」
「でしょ?咲夜の料理はとっても美味しいよね!」
「うん!フランも確か、お菓子作りとか料理とか教えてもらってなかった?」
「うん。おかげで色々作れるようになったよ」
「へぇ〜!今度色々作ってみてよ!」
「分かった。……この戦いが終わったら……一緒に作らない?二人でさ……」
「……うん!」
私達は勝つ……絶対に!
「風が気持ちいいねーフラン!」
「そうだね。私は装束越しだけどね」
「日傘は?」
「私の日傘は、幽香と戦ったあの日に消し飛んじゃったんだよね」
「えぇ……それは悪いことを聞いたよ。ごめん」
「ははっ、いいよ気にしなくて。ところでこいし、何で帽子を取ってるの?」
「それを言ったらフランこそ。食堂に居た時にはもう付けてなかったじゃん」
「……今日は、お母様の命日なんだ。だから、外にあるお母様のお墓に置いてあるよ」
「……そう、なんだ……」
確かフランって、お母様を……
「……ごめん、また悪いことを聞いちゃった」
「……うん……」ぐっ
フランがフードを深く被った。……ごめんね、フラン
「……そうだ、こいしはどうして外してるの?」
「……実は私もなんだ。私もある人から貰った帽子でね……その人の、命日なんだ」
「……そうなんだ……ごめん」
「ははっ、いいよ。私だって聞いたし」
……そうだ……久しぶりに……
「フラン、ちょっとこの辺り散歩しない?」
「散歩?」
「うん。長いこと散歩とかしてなかったじゃん?」
「……確かに、そうだね。行こっか」
「うん」
「懐かしいな、ここ。こいしと服を換えっこした時に鬼ごっこした平原。あの木の下で二人で寝ちゃった時もあったね」
「うん!今思えばよく風引かなかったよね」
「ふふ、ほんと」
「それ、誰の日傘?」
「お姉様の。少し借りたんだ」
「へえ、だから装束脱いでたんだ」
「うん。あ、見てよこいし。鳥の群れだよ」
「あ、本当だ!何だか綺麗だね」
「そうだね。あ、そうだ!こいし、ずっと渡したかったものがあるの」
「ん?」
「目、瞑っててよ」
「?うん」
すると、首に何かかけられたような感覚がした。
「はい、もう目を開けていいよ」
「……これ……ネックレス?」
「そ!スカーレット家に代々伝わる特別なネックレスだよ」
「え!?そ、そんな大事なものを私にあげちゃって大丈夫なの!?」
「そのネックレスは『自分の愛する者、守りたい者に授けよ』と伝わっている物でね」
「…!」
「渡すべき人は決まってる……私の大好きなお友達、こいし。貴女にあげるよ」
「……フラン……!」
「これからもよろしくね、こいし」
「……うん!」
やっぱり私は、フランの事が大好きだ!
このネックレス、一生大事にしよう
ありがとう、私の大好きなお友達、フラン
「いやー楽しかった!久しぶりだったねこんなこと!」
「そうだね!今まで戦い通しだったからなぁー」
「あ、そうだ!私の部屋に来てよ。そこでお話ししよう?」
「ん、分かった。でも、ちょっと寄っていきたい場所があるんだ。いい?こいし」
「うん?分かった。いいよ」
「ありがとう」
「……ここって……」
「紅魔館の墓場……かな。紅魔館と離れた場所にある理由は私は知らないんだけどね」
「へぇ……」
たくさんの墓があるな……。
フランがとある墓の前で止まる。
「……誰の、お墓なの?」
「……エレナ……私に前に仕えてくれていた優しい女の子の妖怪だよ。私がまだこいしと会う前だね……地下牢に居た頃の事」
「美鈴と似たような感じであの子も何の妖怪か分からなくてね……とりあえず私のメイドになってくれたんだ」
「……へぇ……」
「とても健気で優しい子だったよ。可愛かったし、みんなにも好かれていた」
「けどある日……紅魔館にヴァンパイアハンターなる者が襲撃してきてね」
「その際に……あの子は一人で囮となり私達を逃がしてくれた」
「……そう、なんだ……」
「その後私達は紅魔館を取り返した。ハンター達を皆殺しにして、ね」
「……!」
「私が見つけた頃には……あの子は……エレナは既に息絶えていた。少し、遅かったんだ」
「……そうなんだ……」
「あの時のことはまだ鮮明に覚えてる……私は信じられなかったし、信じようともしなかった。あの子の気持ちが今となって分かるよ……あの子の気持ちを踏み躙る事をたくさんしてしまったな。悲しいよ」
「……そんな事ないよ。フランは、みんなを助けてくれてるし、フランが居るだけでみんなが自然と笑顔になっているもの」
「こいし……」
「踏み躙るような事はなに一つしてない。きっとエレナも喜んでるよ。フランがみんなに囲まれている姿を見るだけで、きっと嬉しいんだと思うよ」
「……ふふ、そうなのかもね。ありがとう、こいし……気が楽になったよ」
「うん」
フランは、手を合わせて頭を下げた。
「ありがとう、エレナ……貴女の事は一生忘れない」
そう言うとフランは立ち上がった。
「……こいしは先に帰っててもいいよ。お母様のお墓も詣りに行くから」
「いいよ。ついていく」
「……そっか」
そのあと私達は紅魔館へ帰った。
みんなは其々色々な事をしていたらしい。
明日が決戦であるということを忘れるくらい平和だった。
あの日までは、いつもこうだった。けど、突然始まったサバイバルの所為で……
悔やんでも仕方ない……勝ってこの日々を取り戻すんだ。
私達は勝つ……絶対に負けない
終わりにしよう……全部
決戦まで、後【一日】
ネタ切れ感が……
ということで完全に思い浮かんでる決戦篇に無理矢理持っていく笑




