決着
過去編はこれにて終了。でも二章はまだ終わらないよ!次からはまあ……大体わかると思います笑
「こいし……だったかしら?貴女、中々強いわね。あの状態のフランを一時的とはいえ追い詰めたんだからね……」
「……私の甘さが悪かったんだ……あそこでとどめを刺しておけば……」
「いいのよ……相手はフランなんだから……そりゃあ躊躇うわ」
「次こそ勝つ……!」
「もちろんよ!」
「さあ、行きましょう。妹様を救いに」
「ええ!」
「……」
「屋上にいたのね……」
屋上に、フランが月の方を向いて立っていた。
「……すぐ助けるから……まってて!フラン!」
「……知ってる?吸血鬼は紅い月の出る日は自身の内なる力が解放されるの」
「……?」
「私にはそんなこと起こらないわ。強いて言うなら少し力がます程度よ」
「わからないのか?それがお前の内なる力だと言うことさ」
フランが不敵な笑みを浮かべている。
「私の力というよりは、フランの力と言うべきなんだろうな……」
「言っとくけど、本気出せば私のがフランより強いんだからね?」
「どの口がそれを言う……お姉様よ、今までフランが一度でも本気を出したところを見たことがあるか?」
「何言ってんのよ。あの子自身言ってたわ……前に手合わせした時、私が勝ったのは覚えてるわね?その時に『本気でやってこのざまだったよ』とね」
「……哀れな姉だ……そして、可哀想なフラン……」
「……なんだと?」
「お前は手加減をされていることにさえ気付けない。フランがお前に勝てば、プライドの高いお前はどうなる?」
「……!」
「それがわかっていて、敢えていい勝負に持ち込んで最終的には負ける……ははっ、いい話じゃないか」
「……」(だからあの時…)
−『やっぱり、お姉様は強いや』
「……フラン……」
「今さら後悔してるのか?もっと私がしっかりしていればフランは地下牢に入ることもなかった……もっと私がしっかりしていれば暴走することなんてーー」
「黙れ!!妹様の姿を被った化け物め!!」
「……なんだ人間……お前だってそうだろう?」
「貴様は妹様とお嬢様の苦しみを知っているのか!!いくら妹様の姿をしていようとお嬢様を貶すことは許さない!!」
「……お前、お嬢様お嬢様言ってるけど……本当は心の奥では悩んでるんじゃないのか?」
「な、何を…!」
「おかしいと思わないのか?何故吸血鬼であるお姉様がお前なんぞを従者にしているか……」
「……!?」
「咲夜!耳を傾けては駄目よ!」
「お前の力を信頼しているからか?違うな……お前のことを信頼しているから……それも違う」
「利用した挙句、人間という絶好の餌を側において食料が困ることもなく……そしてそいつは自分に忠誠を誓っているから裏切られようとも信じきれずそのまま殺される……くくく……これほどまでに出来た計算もないな」
「……そ、そんなわけが……!」
「そんなわけがないわ!!咲夜!私を信じなさい!」
「は、はい!わかっております」
「……咲夜……私を信じてくれないの?今の私は……フランだよ?」
「……!?」
「……咲夜がいつも一生懸命、夜遅くでも働いてるところを見てられなかった……だから、少しお姉様を尾行してみたんだ」
「それで聞いたのが今の話よ」
「……妹様…なのですか……?」
「うん……お姉様も、考え直してよ……そんな考えをするなんて……私が知ってるお姉様じゃない……!」
「……本当に…フランなの……?」
「こっちに来て……私の意識があるうちに気絶させて……!」
「……妹…様……」
ザッ ザッ ザッ
咲夜がフランの方へ歩いていく。
「さあ……こっちに……」
「……」(本当にフランなの……?だとしたら……私は……無意識のうちにそんなことを口にして……?)
咲夜がフランの差し伸べた手を握ろうとした時……
「馬鹿がッ…!」ニィィ…
「え?ぐぅっ!?」
咲夜の首をフランが掴む。
「咲夜!!」
「はははっ……お前、本当にフランのことが好きなんだな……今の一瞬で私のことをフランだと思うとは……それほどこの体の持ち主が好きらしい」
「うぅ……!騙したな……!」
「騙した……?お前が勝手に思い込んだだけだろう」
「咲夜!すぐ助けーー」
「動くな」
「!!」ザザッ
レミリアが走ってフランの方へ向かっていこうとするも、咲夜の首に爪を押し付けたフランの言葉で止められた。
「少しでも動いてみろ。咲夜の首が飛ぶぞ?」
「……くっ……!」
「……なんてな。さよなら咲夜……」
フランが爪で咲夜の首を引き裂こうとする。
「!?待て!!やめろ!!」
「……あっ……!」
「死ね!」ブンッ
ブシャアッ
ポタッ……
「……何……だと……?」
「……」
こいしがフランの腕を斬り落としていた。
「ぐっ……!」バサッ
フランが空へ羽ばたく。
「私の存在を無意識に忘れさせた……みんなに掛けなくちゃ出来ないってのが難点だけどね」
「……こいし……貴様ァ……!」
「今の貴女には慈悲の感情すら勿体無い」
こいしの目は、怒りで黒く染まっていた。
「フランを……友達を返してもらうぞ。このクズ野郎」
「……!」ゾクッ
−なんだ……!?さっきまでとは雰囲気が違う……!
「……そうか……貴女も本気じゃなかったんだな」
「……」
「いいね……!貴女との戦いは楽しめそうだ!」
「悪いね……!私は楽しむつもりはないんで!」
こいしが消える。
「……ふふっ……!」
「……」(こいし……)
「お、お嬢様……申し訳ありません……」
「……仕方がないわ……何せ私も騙されたんだから」
「はあっ!」ブンッ
魔力刀でフランの頭に斬りかかる。
「おっと……!」ガキィ
フランはレーヴァテインで受け止める。
「くぐ…く……!」ぐぐぐぐ…
「ッ…ぐぐ……!」ぐぐぐぐ…
「どっちが競り勝つか……それで勝敗は動くね…!」
「競り勝つ……?何の話をしてんだかな……!」
「何……?」
「お前に与えられた選択は……避けるか受けるかの二つのみだ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
フランが魔力を高める。
「……!」
−何かしてくる……!
「禁忌……!」
『レーヴァテイン』
「!?」(spellか⁉︎)
ドオオオオオオオン
「咲夜!」バッ
「うわっ!?」
−間一髪……!ギリギリ避けれた……しかし……
「……なんて……威力……紅魔館が、割れた……!」
「……そんな……!地面まで……⁉︎」
「まだまだ序の口だぞ!フランの力はこんなものじゃない!」
「……フランの力をまるで自分の力のように語るな……!」
レミリアがグングニルを構えている。
「お父様と修行して……!フランが一生懸命努力して得た強さがそれなんだ!!それを……お前が誇らしげに使うなァ!!」
ドオッ
「うおぉあああ!!」
レミリアがフランに突撃していく。
「……お姉様ァ……やっとその気になったなぁ……?」
「さあ来い!!ここがお前の死に場所だ!!」
「私達も援護を……」
「待ちなさいこいし。お嬢様がああなったら……私達が巻き込まれない保証はないわ」
「……!」
ガギィンッ!!
「うあぁあっ!!」ブオンッ!
「ふぅははあ!!」ブンッ!
ガキィンッ! ガキィ ガガガ ガキィンッ!
「ちょっ……二人共速くない?」
「これぞヤ◯チャ視点ね……!」
「◯ムチャ視点言うな!」
ガキィンッ!!
「「!!」」
「はあっ……!はあっ……!」
「はははっ!弱いねえお姉様!あんな大口叩いてた癖になぁ!!」
「黙れ!!それ以上フランの姿で喋るなァ!!」
ブオンッ ガキィンッ!
ピシッ
「……何……!?」
グングニルに罅が入っていた。
「ふん!」ブオンッ!
「!くぅっ!」バッ
グングニルを盾にする。
しかし……
バキィンッ!
「……え……?」
ズバァンッ!!
グングニルはレーヴァテインに割られてしまった。
そして、レミリアは右肩の部分から胸のあたりまで切られてしまった。
「……がっ……!」
「お嬢様!」
「咲夜はレミリアを!私がフランとやるから!」
「はははっ!さあとどめ……!」
「させるか!」ブンッ!
ガキィンッ!
「……邪魔するなよ……この虫けらが……!」
「その虫けらに時間を稼がれてるってことは……あんたも虫けらかな?」
こいしが割れたグングニルの槍の方を持ち、レーヴァテインを抑えていた。
「減らず口を……!」ぐぐぐぐ……
「……ッ……!」
「ははは……!やっぱり口だけね……!」ぐぐぐぐ……
「どうだろうね……!貴女が私の無意識を破れる……!?」ぐぐぐぐ……
スゥー……
ドゴォンッ!
「……また消えた……」
−奴は以前のこともあって私を警戒しているはず……無意識状態になっても奴はもう私の力を警戒し、認識してるから近付いたら気付かれるはず……。
だったら、それを利用して……!
「……」
ヒュン
「!」ブンッ
「ぐっ!」ガキィンッ!
こいしが後ろから攻撃しようとするも、フランに気付かれレーヴァテインで攻撃された。
「ふん……」ぐぐぐぐ……
「……」ぐぐぐぐ……
スゥー……
ブンッ!
「……またか……」
ヒュン
「……だから……!」
「無駄だと言ってるんだ!!」ブオンッ!
「くっ!?」
ガキィンッ!
バキィッ
ドッ
「なぁ……!?」
フランがレーヴァテインを全力で振るった。それはグングニルを砕き、こいしの腹部を捉えた。
「さようなら」ニヤッ
「なんーー」
ドゴオオオオンッ!!
「こいしィィーー!!」
パサッ
こいしの帽子がフランの足元に落ちてくる。
「……消し飛んだか……」ニィィ……
「……そんな……!二人共……負けるなんて……!」
「……咲…夜……逃げなさい……」
レミリアが、立ち上がった。
「お嬢様!!おやめください!本当に死んでしまいます!!」
「死ぬ……?それが何よ……!妹も……従者も守れずに生き延びるぐらいなら……死んだ方がマシだわ」
「お嬢様……!」
「死が怖くて……!戦いには望めないわ……」
フラッ
「ぐっ……!」
レミリアが体制を崩した。
「お嬢様!」
「……動いてよ……!私の身体……!」
「無様なものね……最強の吸血鬼も私の前では無力か……ああ、最強は私だったな……」
「……ぐぅっ……!」
「妹様……!自分を取り戻してください!!」
「さあて、どっちから殺そうか……!?」
フランの動きが止まる。
「な、なん……だ……?体の動きが……!」
「漸く効いた……」スタッ
「「「!!」」」
こいしが空から降りてくる。
「攻撃に体の神経の動きを止める魔針を仕込んだ……目に見えないから、刺さっていることに気付かなかったようだけど……」ぱっ ぱっ
こいしが帽子を拾い、埃を払う。
「貴女の体には……無数の魔針が刺さってる」ぽすっ
こいしが帽子を被る。
「……!」(か、体が……全く動かない……!)
「私の能力で無意識にグングニルに警戒心を向けさせた……だから、グングニルが割られた時咲夜も貴女もレミリアも、みんなグングニルのことを意識していたのさ」ザッ ザッ ザッ ザッ
「くっ……!」(こんな……ことが……!まさか……初めからこれを狙って……!)
「……ねえ、貴女ってさ。どうしてさっきから攻撃に当たらないように”必死”なの?」
「……!!」
「まるで……その体を守ってるみたいだよね」
「……攻撃に当たらないように必死なのは……当たり前のことだろう!?」
「……本当にそうかな?」
「何が言いたい!!」
「……フランを……守ってるんでしょ?」
「黙れ!!」
「……こいし……」
「……」(そうか……奴も……フランの優しさに触れて……)
「……なら、何でそんなに焦ってるの?貴女なら攻撃を受けても再生するだろうし……大して影響はないはずなのに……」
「そ、それ……は……」
「やっぱり貴女も……フランを守りたいんだね」
「……」
「……」(凄い……こいしは……心を動かすことも得意なんだ……)
「……だってさ……!」
「?」
「あんな……あんな酷いことした私を……!庇ってくれたんだもん……!」
「!」
フランは涙を流していた。
「お母様を殺して、お父様も殺して……体の自由まで奪って……友達を困らせて……自分のことを蝕まれて……それなのにフランは私のことを庇ってくれた……!」
「今までそんなこと……されたことなかったから……嬉しくて嬉しくて……!」
「だからフランは……これ以上傷付いて欲しくないんだ……!」
「……」
「ごめんね……フラン……今まで本当に……ごめんね……」
『怒ってなんかないよ』
「……え?」
『貴女は私の為に戦ってくれた。それだけで充分よ』
「……!」
『だから……自分を責めないで。私達は二人で一人でしょ?』
「……うん……!」
『私こそごめんね……今まで貴女に何もしてあげられなくて』
「そんな……!フランが謝る必要なんてない!私がフランから全てを奪ったんだ……フランが謝る必要なんて……」
『いいの……謝らせて……私が無力なばっかりに貴女には苦しい想いをさせてしまったんだから』
「……」
−ありがとう……フラン
「……どういたしまして」
「……!フラン!」
目が、澄んだ綺麗な紅色の目に戻っていた。
「……ごめんみんな……私…」
「いいのよ……無事でよかった……!」
「……お姉様……そんなにまでなって……本当にごめんなさい……」
「大丈夫よこれくらい……なんたって私は吸血鬼。この程度なんともないわ」
「妹様……!」
「……咲夜……心配かけたね……ごめんなさい。そしてありがとう」
「はい!」
「よかった……フラン」
「……ありがとうこいし。貴女の言葉……もう一人の私によく響いていたよ」
「うん……でも、本当のことだったから。あいつもあいつで……必死だったんだろうなぁ」
「……ふふ、そうね……」
「……はぁ〜…終わったと同時にどっと疲れが来た……」
「ご、ごめんなさい三人とも……大丈夫?」
「ええ……大丈夫よ」
「心配は不要ですわ」
「その通りだよ。私達なら大丈夫だから」
「……そっかぁ……よかっ……た……」
ドサッ
フランが倒れた。
「!!妹様!!」
「フラン!」
「……」
−相当疲れが溜まってるはずだ……
「大丈…夫……それより……早く館のみんなを……」
「……!はい!」
「……フラン、貴女もお疲れ様……私達より本当はフランが一番苦しかったはずだよね……」
「……そんなこと……」
「レミリア斬った時、貴女の手、震えてたもの」
「……」
「……お疲れ様……フラン」
「……うん……」
その後、フランは二日ほど眠っていた。私はずっと看病していた。
お姉ちゃん達にはもう、連絡はしてある。というより咲夜がしてくれた。
フランはまだ、目を覚まさない。
「……フラン……あれから三日経つよ……よほど疲れてたんだね……」
「……スー……スー……」
「……」
あの日以来、妖精メイドの者達はフランを恐怖するようになってしまった。
レミリアがフランの愚痴を聞く度にぶち切れて咲夜に止められてるのを何度も見た。
気持ちがものすごいわかるから困るなぁ。
「……ん……」
「!フラン?」
「……こいし……?」
「フラン!よかった!やっと起きた!何かいる?紅茶淹れてこようか?」
「……ああ……ありがとう……でも、このままでいいよ……」
「え?」
「……このままの方が……落ち着く」
「……わかった」
そういい私は微笑んだ。
そう、これは私がフランと大親友になったきっかけの物語ーー
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「……」
目を覚ますと、霊夢達はまだ寝ていた。
起きているのは私だけだった。
「……もう、朝かぁ……!」
伸びをして、そのまま起き上がる。
バルコニーから庭を見ていると、フランの墓が見えた。
「……フラン……私、頑張るよ」
−頑張って
「……!!」
振り返るも、そこにはみんなが寝ているだけだった。
きっと、フランが言ってくれたんだ。
ありがとう……フラン。私、貴女の分まで生き抜いてみせるよ。
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「ただいま戻りました……紫様」
「……おかえり……
幽香」




