堕ちた英雄
今回は短めです
空は雷雲に覆われ、風は激しく吹いている。
しかし雨は降っておらず、ただただ冷たい風が吹き抜ける。
博麗神社は、不自然に赤く染まっていた。
辺り一面、血の海だったのである。
ピチャ……ピチャ……ピチャ……ピチャ……
「……つまらないものね、こんなあっけなく終わるなんて」
その血の水溜りを、謎の少女が歩いていく。
「…そうだ……この世界だけじゃ物足りない」
「すべての世界は、私という秩序によって支配される」
グシャァッ
少女が、何かを踏んだ。まるで、人間のようなものを。
踏んだものは、少女と似た水色の服を着ていて、濃い桃色の髪の毛に黄色いカチューシャをつけている。
「…未練があるとすれば……これからの素晴らしい世界をお姉ちゃんに見せられなかった事かな。けどまあ……そんな事はどうでもいい……
待っていなさい……貴女達はあの人を復活させるための犠牲よ……」
「…くくくっ、くくくくくくっ……」
黄色いリボンの黒帽子を被っている、緑味のかかった銀髪の少女は博麗神社を後にした。
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ゾクッ
「……」
フランは、とても悍ましい魔力を感じて目覚めた。
とても悍ましいが、何処か覚えのある魔力を感じたのだ。
「……ッアァ〜…ッ…!」
フランが伸びをして、寝間着から普段着に着替え始めた。
その時に、色々と考えていた。
「あ、おはようございますフランさん!」
「おはよう霊夢。よく眠れた?」
「はい!あ、こいしさん起こしに行ってるところですよね?私もついて行っていいですか?」
「…いや、こいしならもう起きてる。私はこれからちょっと用事あるから図書館に行くだけだよ」
「あら、そうでした?なら私は先に食堂行ってます!こいしさんもいますか?」
「うん。こいしも食堂にいるはずだよ」
「そうですかー!それじゃあまた後で!」
「ええ、また」
霊夢が小走りで食堂に向かっていった。
霊夢の姿が見えなくなったのを確認すると、フランは真剣な顔付きになった。
「……」
「…この辺りだったはず」
フランは何か邪悪な魔力を一瞬感じた場所に来ていた。
そこは、地底の前の”あの木”である。
「……お姉様……」
「貴女にとってもここは思い出の場所だったわね」
「!!」
突然、背後から声がした。
それと同時に、先ほど感じた邪悪な魔力を感じた。
「その魔力、只者じゃないわね……何者?……!?」
フランが背後を振り返った時、驚愕した。
「また会ったね……フラン?」
別世界のこいし……即ち基本世界のこいしが立っていた。
こいしからは、黒いオーラが放出され続けている。
目は赤く光っていた。
「……こいし……前見た時よりも随分、怖くなったね」
「あら、酷いわね」
フランとこいしが、お互いを睨み合っている。
「……」(…こんな事考えたくないけど……)
−基本世界の方はきっと……こいしによって壊滅状態になっているだろう。
別世界の私がいなくなった事で、こいしの感情が暴走したんだ。
「…こいし、聞くのは野暮かもしれないけど……基本世界の方はどうしたの?」
「ああ…あのゴミみたいな世界ね……あんな取るに足らない世界、全部壊しちゃったよ」
「……貴女が今まで生きてきた世界を、壊したの?」
「そ。壊した。気に入らなかったからね……フランの……といっても、貴女ではないわ。フランの存在しない世界なんて、もういらないわ」
「……別世界の私は……そんな事は望んでいなかったはずよ」
「そんな事知らないわ……」
こいしが笑いながら言った。
そして、フランを不気味な笑みを浮かべて見つめる。
「…私の目的を果たす為には……貴女の体が必要よ。さあ、その体をもらうわよ」
「…私の体を器に、蘇生魔法で幻想郷全員分の魂を使って別世界の私の魂を復活させて、それを私の体に入れる……ってわけね」
「…!…お見通しなのね……やはり貴女から最初に潰さないと後々厄介だわ」
「…こいし……今の貴女がやっている事はハデスと何も変わらない。貴女が否定した”支配”を貴女がしちゃいけないでしょ?」
「言ったでしょ?そんな事知らないわって………私はあの人の為に全てを捨てる覚悟がある。あの人にまた会えるのなら……!わたしは全てを壊してやる!!」
こいしの顔が、真剣な顔付きとなった。
「……やるしか、ないか」
フランも、レーヴァテインを手に出して構えた。
「貴女と戦うのはあの時以来ね…!!」
「…意識がある状態の話なら、確かに随分前だけどね」
「さあ、始めようか……滅びの手始めが貴女よ、フラン!!」
「…一つ、言っておくよ」
「!?」
「……そんな事をしても、後悔だけしか残らないわ。今からならまだ間に合う……私の蘇生魔法があれば、基本世界のみんなもきっと蘇るはず……希望は捨てないで…!私の知ってるこいしはもっともっと明るくて、希望に満ち溢れている人だった!……だからもう、終わりに……」
「…くくっ、ふふふふっ」
「アーッハハハハハハハハハ!!アハハハハハハハハハ!!」
こいしが不気味な高笑いをあげた。
「くだらない!くだらないよフラン!貴女がそんな愚かな事は言っちゃいけないよ!!」
「…愚か…ですって…!?」
「この世界に希望などありはしないのさ!!貴女だって知っているはずよ!?レミリアを失った時……貴女はどう思った!?生きる意味を見出せた!?無理だよね!!しばらくの間は!!
私はもう気付いたんだ……たとえどんなに夢や希望を掲げようと、それには何の意味もないってね!!」
「……貴女、本当にこいしなの…!?あんなに愛と希望に満ち溢れていた……あの明るいこいしなの!?」
「愛…?希望…!?そんなものはとうに打ち砕かれた!!力がなかったから……私に力がなかったから!!守りたいものを守れず、自身の夢も希望も何もかもを失った!!
愛など不要!!真に必要なものは力のみ!!」
「……そっか……わかったよ」
フランが帽子を深くかぶった。
「私も覚悟を決めなくてはならないね……」
「くくっ、やっとその気になったわね!!」
「貴女の言う余計な物がどれ程のものか……
しかと、その魂に焼き付けな!!」
フランがレーヴァテインを構えた。
今、世界を跨いだ最強の対決が始まろうとしていた。
To be continue…
ここで補足!
並行世界の物語はbad endルートの分でしかやりませんのでご了承を〜…!




