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幻想の風に乗って



「…フラン…!?」


「やほ、こいし」


目の前にフランがいる。

嬉しかったが、信じられなかった。確かに消えていたはずなんだ。

誰もフランの事を知らなかったし、いなくても私とレミリア以外はみんないつも通りの生活を送っていたから。


「フラン……フラァァーーーンッ!!」


私はフランに向かって飛んでいった。そして、フランに勢いよく抱きついた。


「うわぁっ!?」


「フランフランフランフラン〜!!」


フランの胸に顔を埋め、私は泣いた。

その時に、少しだけ違和感を覚えたが気にしなかった。


「……思い出してくれて、すっごく嬉しいよ。こいし」


「当たり前だよ!!私がフランを忘れるわけがないじゃんか!!」


「あぁれ、さっきまで忘れてなかったっけぇ」


「い、いやいや!そんな事ないもん!」


「ははは!…思い出してくれただけで、とても嬉しいよ……本当にありがとう」


「…うん!レミリアも思い出してくれたし……きっとその内みんなも思い出してくれるよ!」


……ただ、私は美鈴さんを見ていない。この世界に存在しないとでも言うのか…?

それによくよく考えてみれば、私が何となく覚えていた事も気掛かりだ。何故なんだろう?


「……こいしが今考えてる事は、大体わかるよ。まず美鈴は……エレナの生まれ変わりだったみたいでね」


「……え」


「この世界ではエレナは死んでいない。だから、紅魔館に美鈴が現れる事もなかった。


そして、私という存在がいないからお姉様がヒロト君と会う事もなかった。お姉様はお父様から記憶を消されるような事もなかった。だから、前の世界よりも少し大人びているんだ。私に関係する事に関しては…別だったようだけど」


フランは少し嬉しそうにそう言った。


「次に、こいしやお姉様が何となく私を覚えてくれていた理由。それは私への強い思いが私の破壊の力を上回ったからだよ」


「……フラン。貴女は自分が思ってるよりもずっとずーっと愛されてるんだからね?」


「…そうみたいだね。今回の事でそれが、よーくわかったよ」


フランは、少し涙声になっていた。


「…フラン、今度は二度と、自分を犠牲にしようとなんかしないで。貴女がいなくなって悲しむ人は、たっくさんいるんだから。


私は貴女がいない世界なんて、寂しすぎて死んじゃうよ」


「…うん……ありがとう…!」


「…珍しいね、フランが泣くなんて」


「な、泣いてないもん!」


「その顔で言われても……」


「…そんな事言ってくれた人は……家族以外では貴女が初めてだったんだ。……それから、貴女との思い出を思い出していたの……」


「……!そっか……ところでフランは……どうしてここに帰って来れたの…?」


「…貴女が私を呼んでくれたのよ」


「私が?」


「私への強い思いが、ここに私を呼び寄せた。お姉様のもあるけどね……嬉しかったんだ。貴女が私を思い出してくれた事が。だから、居ても立ってもいられなくなった。だからここへ来たの。


……実は、私は生き返ったわけでもここに存在してるわけでもない。言わば幻のような感じだよ」


「……え」


「だから正確には帰ってきたわけじゃないの。このあと、私はまた消える」


「…そんな…!ど、どうにかならないの!?」


「こればっかりはどうしようもないの……ごめんね」


「…そんな…!」


「だから私は、貴女に伝えたい事を伝えに来たの」


フランは真っ直ぐ私を見つめている。


「私は貴女がそばに居てくれたおかげでここまで成長できたんだ。貴女がいなかったらきっと私は、地下牢に幽閉されたまま、いずれは自殺をしていたと思う。貴女が私を救ってくれたから今の私がいるんだ。


貴女と一緒に遊んで、時には喧嘩もして、泣いて、笑って、色んな遊びをして……弾幕ごっこをしたり、鬼ごっこをしたり、服を取り替えっこしたり、みんなで宴会やパーティーをしたり……本当に、ほんっとうに楽しかった!


今まで私の友達で居てくれて……本当にありがとう!」


笑顔でそう言うフランの顔には、頬に涙が伝っていた。


「……あれっ……おかしいなぁ…!どうしてこんなに……涙がっ……」


「……」


フランと、もう二度と会えない。それなのに、かける言葉が思い付かなかった。

さようなら?そんな事言いたくない。

ありがとう?お礼を言いたいのは確かにそうだ。だけど、こんな形のありがとうなんて辛いだけだ。


このままお別れだなんて嫌だ。


「フラン」


「…えっ…?」


「私はまだまだ、フランと遊びたい。


だから、諦めないで」


「……!」


「私のフランへの思いが、フランをここに呼んだんでしょう?なら……幻想郷みんなの思いが集まれば……貴女はきっと蘇る」


「…あっ……」


フランの目から、涙が大量に出ていた。

レミリア……ありがとう。


「貴女は私の大切な大切な妹。そして……」


その時、私の背後からレミリアの声がした。


「掛け替えのない、幻想郷と言うパズルの一つのピース」


レミリアの背後には、幻想郷の住人達の殆どが来ていた。

いないのは、地獄にいる人達と月人の姉妹くらいだ。

フランがいないと言っていた美鈴もいた。そして、エレナも。

私はエレナの姿は知らないが、あれがエレナなのだろう。美鈴さんにそっくりだから、すぐにわかった。

そして、レミリアに続いて私が言う。


「だから、幻想郷に帰って来て」


『フラン!』


みんなで一斉に、フランの名前を呼んだ。

すると、フランの体が輝きだした。

白い光が、辺りを包む。




光が晴れ、気付いたらフランが私に抱きついていた。


「うわぁあぁああぁあぁああぁあん……!!あぁああぁあああぁあぁああ……!!」


フランは大泣きしていた。

きっと、自分が必要とされている事を知って嬉しかったのだろう。

先ほど感じた違和感は、もう無くなっていた。

間違いなく、フランドール・スカーレットがここに居る。


「これからもずっとずっと……友達でいようね、フラン」


「うん……うん……!大好き……大好きだよこいし…!ほんとにありがとぉ…!!」


「うん…私も大好きだよ、フラン」


フランを優しく抱き返した。フランの体は、とても暖かかった。


「…ありがとう、みんな。フランが帰ってきてくれたわ」


「…何で、さっきまでフランの事を忘れてたんだ…?私達は」


「わからない……けど、私達のフランへの思いがそれを上回ったって事でいいんじゃない?」


「お!霊夢良い事言うぜ!」


「でしょ?」ドヤァ


「あ、やっぱ今の無しで」


「え!?」


「つまり霊夢は!魔理沙わたしにハメられていたんだよ!!(迫真)」


「「「な、何だってーー!!」」」


「あんたら息ぴったりすぎよwww」


「平和が帰ってきましたね、紫様」


「ええ、やっぱり幻想郷ここはこうでなくっちゃね」


「もう遠くに離れないから…!絶対に離れない!!」


「うん……私も絶対にフランを離さないよ……だからこれからもずっとずっと、一緒にいようね」



天国でも、楽園でもなくていい。

たとえどんなところでも、ただ泣いて笑ってすごす日々に、貴女の隣に立っていられる事が……何よりも幸せです。






ある日、二人の少女が友達になった。

その二人はとても仲がよく、いつもいつも行動を共にしていた。

共に遊んだり、共に戦ったり、その二人が争ったり、世界を超えたり、世界を救ったり……。

その二人の歩んだ道は、楽しいだけではなく辛く険しい道でもあった。

二人は今、その道の終わりへと辿り着いた。

天国や楽園のような……幸せな世界、幻想郷に。




これは、吸血鬼の少女と悟り妖怪の少女の

決して切れる事のない、強い絆の物語ーーー。


「やっほー霊夢!」


「あら、こいしにフランじゃない」


「お邪魔してるよー霊夢!」


「お邪魔してるぜー霊夢!」


「おい一人変なの居たぞこら」


「げっ!」


「あんたまた私の煎餅つまむつもりでしょうが!!」


「ち、違うぜ!私はこいしのせいで無意識に取ってしまっているだけだぜ!」


「魔理沙!?」


「嘘でしょうが!!そんなんで私を騙せると思わないでよ!?」


「勘弁してくれ!!」


「あははは!」


今日も、穏やかな風が幻想郷を吹き抜ける。





東方人気投票の裏話(?)


〜THE END〜






最終回じゃないぞよ

もうちっとだけ続くんじゃ

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