足りないものの答えは
とても怖い夢を見た。
ある金髪の少女と仲良く遊んでいると、突然辺りが暗くなって……その子がどんどん、私から遠ざかっていくんだ。
その少女が離れていくが辛くて、寂しくて……必死に追いかけた。
けど、追いつく事ができなかった。
少女は私に、最後にこう言った。
−『さよなら』
「……」
私は、見覚えのあるところで目を覚ました。
私の、部屋である。
「…なぁに、してたんだっけ…!」
、
伸びをしながら起き上がる。
記憶が少し、飛んでいた。
「んー……まあ、いっか。とりあえず朝ご飯だよね」
「今日は味噌汁が余ったからねこまんまを作ったわよ」
「わーい!これ大好きなんですよあたい!」
「……」
「…こいし様今日上の空だね。大丈夫?」
「お、お空って上の空なんて言葉知ってたんだ」
「こいし様、私を馬鹿にしてない!?」
「いやいや、そんな事はないよ?」
「…けど、確かにお空の言う通りよ。どうかしたの?」
「……いや…何か、私の中でもやもやしてるものがあるんだ」
「…?まあ、それは後にしなさい。早く食べないと不味くなるわよ」
「あ、そりゃあてえへんだ!早く食っちまおう!」
「と、突然テンションが上がるのね…もうお姉ちゃん貴女の事がわからないわ」
「でしょ?みんなからよく言われるんだ!」
その後も、結局頭の中のもやもやは取れなかった。
「…んー……」
「こいし、どうしたんだ?今日何か変だよ?」
「いやー、何か…足りないんだ。何かが…」
「足りない?お菓子追加持ってこようか?」
「いや、そーいう事じゃなくてさ……」
「気のせいじゃないの?」
「…んー…」
その日は、結局もやもやの正体は分からなかった。
むしゃくしゃしたので、家に帰ってふて寝した。
それから、数日が経った頃。もやもやの正体は未だに分からなかった。
晩御飯を食べた後、私はこっそりと地霊殿から抜け出した。
「……紅魔館絡みだったはずなんだけど……」
いつの間にか私は、紅魔館の前まで来ていた。
「……レミリアに聞いてみよう」
「実はその事で」
「!!」
「私も貴女に聞きたい事があったのよ」
レミリアが門の上に立ってこちらを見下ろしていた。
「レミリア」
「何かしら?」
「紅魔館の主要人物の名前を、全て言って」
「あら、館の住人全員の名前になるわよ」
「…なら妖精メイド以外」
「…十六夜咲夜、紅美鈴、小悪魔、パチェ…ああ、パチュリー・ノーレッジね。…そして……この私、レミリア・スカーレット」
「……」
「……あと、一人。…よね?」
「…うん…」
「私もそんな感覚がしているの…今日の朝からずっと……ずーっとね」
「誰だかわからない!?何か手がかりは…!」
「…無くは、ないわよ」
「え!?」
「私のアルバムに……知らない子が写っていたわ。金髪の、奇妙な羽を持った私とお揃いの帽子を被った女の子よ」
「……金髪で……奇妙な羽……?」
突然、私の脳裏に奇妙な羽を持つ金髪の少女の後ろ姿が浮かび上がる。
その少女は、私からどんどん遠ざかっていく。
私はこの光景は、知っている。
今日見た夢の事を思い出した。
「……」
「来なさい、見せてあげるから」
「…!う、うん」
容姿を思い出せたのに……顔が思い出せない。
顔さえわかれば、確実に思い出せる。
「これよ」
そう言ってレミリアが見せてきたのは、さっき言った紅魔館の住人達と、レミリアともう一人金髪の少女が写っている写真だった。
「…前から思ってたんだけどさ、吸血鬼って写真に写るんだね」
「そりゃあ写るわよ。そんな伝承あった?」
「あ、いや……まあ、何でもいいや」
私はその少女の顔をじっくりと見つめた。
「……可愛いなぁー……」
「…何処と無く私と似てるわよね。私が可愛いって言ってるわけじゃないけど」
「うん……」
その時、私の頭に電流が走る。
−『こいし!また来てくれたんだ!』
−『これからもよろしくね、こいし』
−『私は貴女を信じるよ……こいし』
−『この戦いが終わったら、また遊ぼうね!』
−『ありがとう、こいし』
−『さよなら』
「……」
「…こいし?」
「…あ……ああ…」
「…!?こいし…!?」
「…どうして……私は…!!」
「どうしたのこいし!どうして泣いているの!」
「わかったんだ…!!この女の子が誰なのか……!!」
「え!?」
「思い出してよレミリア!!誰よりも……誰よりも貴女の事を愛していた人なんだよ!?」
「…えっ…!?」
「…ランドール…!!」
「…えっ…」
「フランドール!!スカーレット!!
貴女の妹だよ!!レミリア!!」
「……あっ…」
−『レミリアお姉ちゃん!遊ぼー!』
−『お姉さまー!朝だよー!起きてー!』
−『私にはお姉様が必要なの!……私のお姉様は……お姉様だけよ……!』
−『…昔は家族以外はみんな敵、ってくらいだったのに……嬉しいよ』
−『今までありがとう……お姉ちゃん』
「……フラン」
「…思い出したんだよね…!?そうだよね!?」
「……そうよ……フランドール・スカーレット……フレア……この子は私の妹の……フランドール・スカーレットよ…!!」
その後、私とレミリアはしばらく泣いていた。
フランの存在が消えてしまった理由を、私は知っている。
レミリアに話した途端、大泣きだった。
私も涙が堪えられなかった。
もう二度と……あの優しい笑顔は見られないんだ。
「…今日は泊まっていきなさい、こいし。…貴女にあの子の過去を……教えてあげるわ」
「…!!うん!」
「…まずは……そうね。あの子の本名からだわ」
「……フレア」
「……そう、その通り。あの子の本名はフレア……フレア・ランドルと言うのよ。私達は義姉妹なの」
「…そうだったんだ」
「ある日、私は人間の街に来ていた。街と言っても、500年も前だからね……今のような都会じみたところではないわ」
「…うん」
「そこで、ヒロトと一緒に並んで歩くフレアと会ったのよ」
「…!ヒロトは、その時からもうエルギオスだったの?」
「ええ、そうよ。いつからエルギオスに乗っ取られていたのかは定かではないけどね。……エルギオスが入っていた子供の名前は、磯崎大翔という名前でね」
「……えっ…!?」
「…?磯崎大翔っていう名前の…」
「…ほ、本当に…!?」
「?え、ええ」
「……それ…私のこの帽子の持ち主の苗字と同じだよ…!!」
「…な、何ですって…!?」
「帽子の持ち主の名前は磯崎大河……私の事を救ってくれた恩人だよ」
「……まさか、子孫…?」
「…大河は外国に吸血鬼を倒しに行って死んでしまったんだ」
「…そうなのね……話を続けても、大丈夫かしら」
「!う、うん!」
その後の話を聞いて、フランのレミリアへの大きな愛の理由がわかった気がした。
私が大河に向けていたのと同じような思いだったのだろう。
…私は恋心だけど。
そして私は、フランが吸血鬼になった理由を知り、とても驚いた。
もう一つ、やはり大河と大翔は無関係ではなさそうだった。
大河の息子の名前も、大翔だったからだ。
まるで、大河がタイムスリップしたかのような……そんな感覚がした。
「……聞かせてくれて、ありがとう。少し屋上に行って涼んでくる」
「ええ、いってらっしゃい。部屋はちゃんと用意してあるから、寝る時になったら私の部屋に来なさい」
「うん」
「……ここに来ると…思い出しちゃうなぁ……」
フランとの思い出が、フラッシャバックのように鮮明に、頭に浮かび上がってくる。
−『風が気持ちいいねーフラン!』
−『そうだね。私は装束越しだけどね』
−『フラン……』
−『よく眠れた?』
「……どうしてあんな事したの……?フラァン…!!」
涙が零れ落ちる。
確かに幻想郷は平和になった。ただ、平和にしてくれて一人の吸血鬼の存在が消えた。
その上での平和なんて、何の意味もないんだ。
「もう一度貴女と……笑い合いたかったのに…!もう二度と、離れたくなかったのに…!!」
「私を置いて遠くへ行かないでよ…フラァァン……!!」
「また貴女に……貴女に会いたいよぉぉ…!」
「うわぁあぁぁあぁあぁああん!!」
その時だった。
バサッ
「…!?」
紅魔館の時計台の方から、何かが飛んでくる音がした。
これまでずっとずっと……大切に思い続けてきた。
掛け替えのない、唯一無二の存在。
冷たい風の吹き抜ける、満月の夜にーーー。
To be continue…
な、何だこの酷い絵は…!何だあの◯ッパキャッスルみたいな紅魔館は…!自分の画力ではあれが限界です。はい
少し漫画チックにしてみました。
セリフが見辛いかもしれないんで一応ここに書いとこう。
フラン「また会えたね、こいし」
こいし「私の親友は、帰ってきてくれた……うぅっ…うぇぇん…!!フラァァーーーン!!大好き大好き!絶対もう離さないんだからーー!!」
フラン「うわっと…!……やれやれ…ふふっ」
フランちゃん妙に大人っぽいなぁ。
フラン「そう?」
あと紅魔館ちっちぇなぁ……フランちゃんがでかいみたく見える……。
こいし「フランはおっぱいもおっきいよ!」
フラン「ちょっ、何急に!それにそんな大きくないし!どっちの意味でも!」
赤面フランちゃん可愛い。
やっぱ女の子って赤面顔が可愛いよね。
…あ、やっべえ何言ってんだ俺。
あと泣き顔って難しいね。
こいし「私の顔はこんなブサイクじゃないよ!自分で言うのもなんだけど!」
お、お許しをー!!
フラン「私が随分と美化されてるよね」
こいし「いや、そんな事はない。むしろあの絵よりももっともっとイケメ…んっんん゛!もっと可愛いよ!」
そんなに責めないでくださいよー?仲良く、仲良く!ね?
こいし「◯ーネージ…!シザァーーッ!!」
ぎょえへぇぇーーッ!!
フラン「◯グナカッコイイよね」
とんだ茶番になりましたがtrue end二話目をお楽しみに…!




