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壊れた心は戻らない

ちなみに並行世界ではフランちゃんは消えてません。

消えたのは基本世界のみです。




「……あれ」


こいしは、地霊殿の自室で目覚めた。

先ほどまでの光景は、鮮明に覚えている。


「……」


−まさか……あの後私は気を失ったの…?


すると、部屋の入り口の扉が開いた。


「こいし、起きなさい。朝ご飯よ」


さとりが入ってきたのだった。


「…お姉ちゃん……!」


「…?どうしたのこいし。私の顔に何かついてる?」


「……ううん、何でもない。すぐ行くよ」





「さとり様ー、何で朝なのにカップラーメン?」


「カップラーメン最高じゃない」


「美味しいですけど朝から食べるものではありませんよ」


「あら、貴女◯ルトに謝ってきなさい」


「バッ…!!さとり様アウト!!」


「…こいし様大丈夫?今日随分と上の空だよ…?」


「…お空……ごめんね、ちょっと眠くてさ……」


「……そっか」


「…こいし様、今お空が上の空って言ったんですよ?あのお空が…!驚かないんですか…!?」


「お燐!私の事馬鹿にしてるでしょ!?」


「え!?い、いや違う!あたいに悪意はなかったんだ!ごめんお空!」


「こらこら…食事中くらい静かになさい。……こいし、大丈夫?」


「…うん……」


「…そういえば今日は友達が遊びに来るんだったわよね。お菓子くらいなら出すわよ」


「…!そうだっけ?」


「ええ、少し変な羽の生えた子だったわよ」


「…!そ、そうなんだ…!あ、あのさ……みんな私の友達の名前一通り言ってみてよ!」


「急にどうしたの?」


「いいじゃんいいじゃん!」


「じゃあ私から!…えーと…あっ、ぬえ!」


「うんうん」


「次、お燐!」


「え、私!?…えーと…!レミリアさん?」


「うんうん」


「…次は私ね。えーと……あの妖精さんの名前…チルノだったかしら?」


「…!う、うん」


「えーと、ルーミア!」


「次!」


「大妖精…で合ってます?」


「つ、次!」


「えーと……霊夢さんは友達かしら?」


「…!!ね、ねえ…何でフランの名前は出さないの…!?」


「……え?」


「…こいし、フランって……誰かしら」


「……!!」


途端に、こいしは立ち上がり部屋を出て行った。


「!?こいし!!」






「…嘘だ…!嘘だ嘘だ…!」


−本当に消えてしまったっていうの…!?フランが!?


「嘘だァァァァ!!」





「フラン…?って誰?」


「嘘でしょぬえ!?嘘って言ってよ!!」


「!?ちょっ、落ち着いてってこいし!」





「んー?フラン…聞かない名ですね。新しく幻想入りした方ですか?」


「射命丸さんはあんなに好いてたじゃんか!!私と一緒で面白いって!!」


「…!?…大丈夫ですか?こいしさん。何か悪い夢でも…!」


「…夢…!?夢なわけない!!フランは実在する人だ!!」






「…何で門番さんがいないの…!あの人なら絶対覚えてるはずなのに…!」


こいしは紅魔館まで足を運んでいた。


「フラン?知らないです」


「フラン……貴女ここの本の夢でも見てたの?」


「お嬢様に姉妹?いないわよ。…しかし、今日お嬢様がそのような事を言っていた気がするわね」





「レミリア!!」


「…こいし…?」


レミリアが部屋で涙を流していた。


「…!?ど、どうしたの?」


「…どうしようこいし…!何故か涙が止まらないの…!何か足りないの……朝食の時、私の席の隣にいないのよ…誰かが……!」


「……!!」


「思い出せない……けど忘れられない……絶対に忘れちゃいけない存在が確かにいた筈なのよ……!!」


「…フランドール」


「……え」


「フランドール・スカーレット。…貴女の妹だよ」


「……フランドール……フランドール……」


−『お姉様』


「…あっ…あぁ……」


レミリアが頭を抱えてうずくまる。


「れ、レミリア!」


「そうよ…フランよ…!フランドール・スカーレット…!私の……私の掛け替えのない唯一無二の姉妹……」


「……覚えてるんだね。レミリア」


「……こいし。多分、これは日に日に記憶が消されていくんだと思うわ」


「……え」


「…私は明日には忘れてしまっているかもしれない。そしてこの世界ではフランが存在しないことになってしまっている」


「……なら、私がまた明日、貴女に伝えるよ。フランの存在を」


「…お願いね…あの子の存在を……絶対忘れたくないの………今日の夜、博麗神社で宴会があるのよ。またその時に会いましょう」


「……うん」




その日は、レミリア以外の全員がフランを忘れてしまっていた事がショックでこいしは地霊殿の自分の部屋で落ち込んでいた。

唯一覚えていたレミリアでさえ、明日には忘れているかもしれないという。


「……私があの時止められていたら……変わっていたのかな……」


−『さよなら』


「……うぅっ……!!」


−何でなの…!?どうして私からフランを奪っていくの…!?

私達が何か悪い事でもしたの…!?


「……もう、いいや」


−全部壊してしまおう。こんな世界、もういらない。


「こんな世界、生きていった所で希望なんてありはしない」


こいしの目の色が、変わった。

綺麗な済んだ薄緑色から、少し黒みのかかった赤色になった。

殺人鬼と化していた時の目と、同じだった。


「……くくくくっ」









「霊夢〜、酒追加〜」


「はいはい、ちょっと待ってなさい」


霊夢が酒を取りに神社の中へ入っていく。

すると、博麗神社の中にこいしが立っていた。


「…あら、こいしじゃない。あんたこんなところにいたの」


「ええ、ずっとここにいたわ。久しぶり、霊夢」


「久しぶりね。あんたの姉さんも宴会を楽しんでるわよ?行ってきなさいよ」


「宴会か……それもいいけど」


こいしが霊夢の隣にまで歩み寄る。


ズドッ


「……っ…!?」


「でももーっと面白い余興があるのよ……」


こいしが右腕で、霊夢の腹部を貫いていた。


「…こい…し……!あんた……!!」


「貴女はエントランスに飾ってあげるわ、霊夢。お気に入りの死体として、ね」


「…私が、ただで死ぬと思う…!?」


「……何かするの?どうぞ」


「スペルカード!!」


「夢想封印、かな?」


「…そうよ…!私の一番強いスペカだからね…!」


「けどこれだと……貴女も巻き込まれるんじゃない?」


「…今だからこそよ…!あんたという悪を捕まえてるからね!」


「悪を倒す為に、心中しようって?博麗の巫女は正義感が強いのね。ただ一つ言っておく事があるわ」


「…!?」


「戦いに悪も正義もない。己の考えを押し付けて敵の考えを寄せ付けない正義を掲げる者同士が戦い合っているだけ……


平和を保とうとする利己的な意思が戦いを起こし、愛を守る為に憎しみが生まれる」


こいしが、怪しい笑みを浮かべながら霊夢に言う。


「本当の平和などありはしないのさ。たとえ平和が訪れても、誰かの犠牲の上で成り立っている仮初めの物に過ぎない。


そしてまた憎しみによる戦いが起こり、正義を掲げる者同士がぶつかる」


「…!?」(スペカが……発動しない!?)


「正義が勝つって?そりゃあそうだよ……


勝者だけが、正義さ」


ブシャアッ





「霊夢遅いなー、ちょっと見てきていい〜?」


「おう、行ってきな萃香」


「酒くらい落ち着いて待ちなさいよ…」


「はっは!まあいいじゃないかパルスィ!」





「…!?霊夢!!」


霊夢が血まみれになって倒れていた。


「霊夢!霊夢!!しっかりしてよ霊夢!!」


「貴女は確か……鬼の伊吹萃香とか言ったかしら」


「!!」


こいしが暗闇の中から現れた。目が、赤く光っている。


「…まさかお前が……!!」


「案外呆気なかったわよ。霊力封じの札使えばね」


「よくも!!」


萃香がこいしに殴りかかる。


「…ほら、こうやってまた戦いが繰り返される」


−この世界に希望などありはしないんだ。







「……萃香の奴、遅くないか」


「おーい!酒切らしたんだ!そっちからもくれないかー!」


魔理沙や紅魔館の者達が、少し離れた場所でそう言った。


「…ああ!酒を取りに行ってくるよ!」


勇儀が立ち上がり、博麗神社の中へと向かっていく。


「…待ちなさい。私も行くわ」


「…!紅魔館の当主さん……助かるよ」


その時、博麗神社の中から何者かが出てくる。


「…!!萃香!」


萃香が現れた。

片腕が切り落とされ、片目は潰され、全身から血が流れ出ている。


「…ゆ、勇…儀……みんな…!今すぐに逃げ…」


ドシュッ


萃香の口から、黄色い魔力の刀のような物が出てくる。


「余計な事を言うんじゃない」


こいしが、後ろから魔力刀を萃香の後頭部に突き刺していた。

それを、上に引き上げる。萃香の顔が、真っ二つになった。


ドシャァッ…


「…萃香…!!」


「……」


こいしが、ゆっくりと勇儀の方へと歩いていく。

その場にいる全員が、唖然としていた。


「…!?こ、こいし……!?」


「…お前さん、まさか霊夢も……」


「…そうだと、言ったら?」


勇儀が目にも留まらぬ速さでこいしに殴りかかった。しかし……


「…え」


勇儀の後ろに、こいしが立っていた。


「弱い」


次の瞬間、勇儀の身体が真っ二つに切り裂かれる。


「…ゆ…


勇儀!!」


「…てめえ……」


その場にいた全員が、戦闘態勢に入った。


「……くくくくくっ」


−やっぱりね……理由を問おうともしない。

まあそりゃあそうだろうね。目の前で仲間を殺されたんだ。私だって聞こうとも思わない。

つまりそういう事だ。世界はそういうところなんだ。

己が正義だと決めつけ、それに従い反発する奴を殺す……。

それが、この世界のルールなんだ。

だったら私もそのルールに従うよ。


「さあ、始めよう……滅びの宴をね」








東方人気投票の裏話(?)


The end……




ルート① 『Bad end』






洒落た感じにしたいけどいまいち上手くできない…笑

やばいな……綺麗に終わらせると言ったばかりなのに…スマン、ありゃウソだった。

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