禁忌と無意識
「行くよ、フラン!」
「ええ、こいし!」
ハデスが地面に降り立つ。
「……」(あの羽がある方のガキ……フランが厄介だ……フランに注意しとかねえとな…あのこいしとかいうガキは注意する必要も……)
ヒュンッ
「!?」
こいしとフランが目の前に現れる。
そして、こいしは左手で、フランは右手で同時にハデスに殴りかかった。
「ぐっ!!」
ハデスは両手を使ってそれを防ぐ。
直後、こいしが足払いをした。そして、フランが回し蹴りを入れる。
「ちっ…!」
回し蹴りによってハデスが吹き飛ばされる。
「…!!」
こいしとフランが凄まじいスピードで並走しながらハデスに向かっていく。
フランが一気に加速してハデスに右手で殴りかかった。
ハデスは、それを左手で受け止める。
その時、こいしがフランの後ろから現れ右足でハデスの顔を蹴る。
ハデスは少し後ろに後退し、手を合わせた。
「炎獄剣…!!」
赤い炎の剣のようなものを出そうとする。しかし……
ヒュンッ
「!!」
フランがハデスの左腕に蹴りを入れた。
そして、刀状のレーヴァテインを様々な持ち方に変えて攻撃する。
ハデスはその剣撃を全て躱している。
ドゴォンッ
「!!」
一瞬の隙をついてフランを右手で殴り飛ばす。
フランはすぐさま受け身を取った。
その直後にこいしがハデスの右側に現れ、ハデスの頭に裏拳を入れた。
「かっ…!」
その衝撃でハデスがふらついた。その時にフランがハデスにタックルをした。
そのままゴロゴロと何回か転がった後、フランが馬乗り状態でハデスに乗っていた。レーヴァテインで攻撃しようとする。
ドガァッ!
「ッ!」
刀を蹴り飛ばされ、フランも殴り飛ばされる。
ガッ
「!!」
しかし、その飛ばされたレーヴァテインをこいしが受け止め、ハデスに切りかかる。
フランは後ろで受け身を取り、その様子を見ている。全くダメージは入っていないようだった。
ガキィンッ!!
「!」
ハデスは赤い炎の剣でそれを防ぐ。周りから大量のその赤い炎の剣が出てきてこいしに向かっていく。
こいしはそれをバックステップで躱した。
しかし、その赤い剣が爆発を起こす。
爆風によりこいしが吹き飛ばされて行くが、フランがこいしの右手を左手で掴み、ハデスに向かってこいしを投げ飛ばした。
こいしがレーヴァテインでハデスに切りかかり、その後ろからフランが続く。
「…!」(こいつら……!!)
−何の合図も無しにここまでの連携を…!!
ガキィンッ ガキィッ キィンッ
こいしとハデスが斬り合っている。
ヒュンッ
「!!」
ドガァッ!!
「ぐおっ!!」
フランがハデスの足元に現れ、左足による邪翼崩天刃でハデスを高く高く蹴り上げる。
「さてと…!」
「やりますか!」
フランとこいしが同時に飛び上がる。
「ぐっ…!!」
ヒュンッ
「!?」
ドゴォッ!!
こいしがハデスの目の前に現れ、右手でハデスを地面から大きく盛り上がっている岩場の方に向かって殴り飛ばす。
「ぐおぉっ…!!…!?」
ヒュンッ
フランがハデスの吹き飛ばされているスピードよりも速く移動し、ハデスの後ろに回り込んだ。
そして、踵落としをハデスの腹部に入れる。
ドゴォンッ!!
ハデスが岩場の中に叩き込んだ
その衝撃でハデスが叩き込まれたところを境に岩場の岩が真っ二つに裂ける。
フランの踵落としによってどんどん下に落ちていくハデス。
こいしとフランが、裂けた岩の壁を並走しながら向かってくる。そのままハデスに追撃をしようとする。
「ウロボロス!!」
「!」
フランがウロボロスの鎖に捕まり、そのまま岩場の外にまで飛ばされる。
「フラン!!」
「オラァッ!!」
「!!」
こいしがハデスに腹部を殴られ、岩場の壁に叩きつけられた。
「鳳閃・壱」
ハデスが岩場から飛び出した。
「そこでしばらく寝てな!!」
ハデスが手を合わせると、裂けていた岩場の右側と左側が寄っていく。
そのままこいしを潰す気のようだった。
ドゴォンッ!!
岩場がくっついた。ハデスはフランの飛んでいった方を見ていた。
ズバァンッ!
「…!」
フランがウロボロスを切り裂き、地面に着地する。
その時に、岩場の様子を見て状況を察した。
「……」
ブンッ
「ん!?」
ドオオオオオオオンッ!
フランが地面に手を当てると、その地面の一定範囲に亀裂が入り爆発が起きた。そして、煙が発生する。
その煙の中からフランが凄まじいスピードで出てきて、ハデスに向かっていく。
「ふん…!」
ハデスが手を上にあげる。
すると、フランの走っている地面から大量のウロボロスが飛び出してくる。
フランはそれを全て切り裂きながら、ハデスに向かっていく。
「やっぱり貴様はあいつとは別格か……!!」
ハデスが手を合わせる。
バキッ
「!」ザザザァ…
フランは、自身の少し先の地面に罅が入った事に気付き立ち止まった。
その地面の罅から、マグマのような物質が出てくる。
「おっと…!」
フランが後ろに後退した。その時、ハデスが空からフランの目の前に高速で降りてくる。
「オォラッ!!」
ブンッ
赤い剣を振るう。しかしフランは飛び上がってそれを躱した。
その際に、赤い剣の欠片をフランの周りに飛ばしていた。
「!!」
その赤い剣の欠片が大きくなり、フランを包む。
「熱ッ…!!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオ……
フランのいた場所に、大爆発が起きた。
「フラン!!」
ぬえと魔理沙、そして並行美鈴が遠目でそれを見ていた。
「…次はあいつらだな…」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
「!?」
その時、岩場から大爆発が起こり、碧い光が放たれた。
「…こいしか…!?」
こいしの纏っていた碧いオーラが、かなり大きくなっていた。
「よくもフランを…!!」
「…ちっ…うざってえ!!」
ハデスから黒いオーラが発生する。
そのオーラがどんどん大きくなり、それが巨大な悪魔のような形を成した。その悪魔の頭部に、ハデスがいた。
「…で、でかすぎるだろ…!」
魔理沙やぬえが恐怖していた。
「…あれを相手にするのは、ちょっと厳しいかな…!」
その時、こいしの肩を何者かが叩いた。
「…フラン…!」
「ん」
フランが指を四本立て、親指と人差し指の間にスペルカードを挟んでいた。
「…なーるほどね」
「行くよ」
「うん!」
フランの紅いオーラとこいしの碧いオーラが混ざり合って、大きくなっていく。
「……何だ、ありゃあ…!?」
「…綺麗…」
そのオーラが、碧い不死鳥のような形を成した。
その鳥は、虹色の輝きを放っていた。
「…それが、どうしたぁ!!」
巨大な悪魔のようなオーラが、その不死鳥に殴りかかる。
不死鳥がその巨大な悪魔の頭へと向かっていく。
不死鳥が、その悪魔の右腕を消しとばした。
「なっ…!!」
「行こう、フラン!」
「ええ、こいし!」
不死鳥が悪魔の頭部に到達した。
その時に、不死鳥のオーラからこいしとフランが飛び出した。
二人の周りには、虹色のオーラが纏われていた。
ハデスのもとへと突撃していく。
「…!!」(ありえん……!!この俺が……この俺が負けるわけがない!!)
−何なんだこいつらは!?
こいしは左手に碧いオーラを、フランは右手に紅いオーラを纏い、ハデスに向けてその手で攻撃をする。
「「うおおおおおお!!」」
「くそがァァァァッ!!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオ……
二人の魔力とハデスの魔力が激突する。
それが、凄まじい衝撃波となっていた。
「ウオオオオオオオオオオッ!!」
「…ッ…ぐ…!!」
「ぐっ…ぐぐッ…!!」
二人が押され気味だった。
「ハッハーー!!所詮は無駄な足掻き!!てめえらは俺には勝てねえんだよ!!」
「……」
フランはふと、横を見た。
こいしの顔が、目に映った。
−……こいしは、私を救ってくれた人。
お姉ちゃんとや紅魔館のみんなと同じくらい、大事な人。
−『フラーン!遊びに来たよ!』
とても明るい笑顔で、私の部屋に遊びに来てくれた。
−『フラン……フラァン……!本当に……本当にフランなの?本当に?』
私と再会した時、泣いて喜んでくれた。
−『私が……絶対助けてみせるから』
……。
「……」
こいしはふと、横を見た。
フランの顔が、目に映った。
−……フランは私をたくさん救ってくれた人。
お姉ちゃんや地霊殿のみんな同じくらい、大事な人。
−『こいし!またきてくれたんだ!』
とても優しい笑顔で、私を部屋に迎えてくれた。
−『……ただいま……こいし』
私と再会した時、優しく抱きしめてくれた。
−『助けに来たよ、親友さん』
……。
私は貴女にたくさん救われてきた。
私は貴女にたくさん救って貰った。
だから、今度は私にも貴女の事を救わせて!
−レミリアお姉ちゃん…みんな…!
−さとりお姉ちゃん…みんな…!
私に力を貸して!!
「「うおおおおおおおお!!」」
二人のオーラが大きくなり、ハデスの魔力を押していく。
「……何なんだ…!!何なんだてめえらァ!!何故俺に従わねえ!!何故俺に逆らう!!何故それほどに強い!!」
「何者にもとらわれず、誰もが幸せに自由に暮らす……」
「それが私達の恋した……」
「「幻想郷だ!!」」
カッ
三人のぶつかり合っている場所が、光に包まれた。
光が晴れた。
こいしとフランが、ハデスの体を貫いていた。
「……馬鹿な……こんな……こんな事が……!!」
ハデスの体が、消滅していく。
「……かっ……!!」
「勝った……!!」
ぬえ達が喜びに満ちた表情をしていた。
「やったぁーーーッ!!」
「フラン達がついにやってくれたんだ!!」
「世界は…幻想郷は!!守られたんだーー!!」
フランとこいしは、手を繋いでいた。
「……ありがとう、こいし」
「……こちらこそ、フラン」
二人は、そのまま地面に落ちていく。
「!!二人の様子、おかしくないか…!?」
「…気を失ってる…!?」
二人の落ちていく先には、湖があったのだった。
「や、やばいぞ!!誰か急いで二人を助けるんだ!!」
その時だった。
バサッ
炎の翼を持つ者と
ダンッ
九本の尾を持つ狐が現れた。
「…よく頑張ったな、二人共」
「何もしてやれなくてすまなかった……」
妹紅と藍が、二人を助けていた。
「……このまま、死んでたまるか……!」
−全員道連れにしてやる!!
「よかった!!ありがとう藍さん!妹紅!」
「これまでなにもしてやれなかったんだ……これくらいしないとなぁ」
「……ん…」
「!フラン!起きた!お疲れ様!本当にありがとう!」
「……私達、勝ったんだよね……?」
「そう!勝ったんだよ!フランとこいしのおかげで!ありがとう!」
「……うん……」
その後、二人は妹紅の再生の炎により傷を癒してもらった。
「……ん…?」
「こいし!おはよう!どう?気分は」
「…ぬえ…?……!!フランは!?」
「ここだよこいし。私なら大丈夫」
こいしの少し後ろの岩にフランが座っていた。
「…ほっ……」
「お前達のおかげで、この幻想郷は救われた。…犠牲は多かったが……仕方のない事だ」
「……その事なんだけどさ……私が死んだという事象そのものを壊しちゃえば生き返らせられるんだ」
「……い、今何て?」
「え?死んだ事象そのものを壊しちゃえば生き返らせられるんだって……」
「本当か!?本当に紫様を……みんなを生き返らせられるのか!?」
「う、うん。たぶんね」
「よし!なら頼む!やってくれ!!」
「うん、わかった。けどその前に、閻魔様に許しを得ないと……」
その時だった。
ドッ
「え」
「……美…鈴…?」
並行美鈴の心臓部に、黒い何かが刺さっていた。
「ゔっ」
並行美鈴が口から大量の血を吐いて倒れた。
「な、何…こ」ドスッ
今度は、ぬえにその黒い何かが刺さった。
ぬえは、心臓部ではなく胸の真ん中辺りを貫かれていた。
「ぬえ!!」
「ごふっ」
「何だ一体!!」
妹紅が後ろを振り返る。
妹紅の目に映ったものは……。
「……おい、あれは…何だ」
黒い巨大なサードアイのような何かから、大量の触手が生えてきていた。
さっき刺さった黒い何かは、触手だった。
「…ハデスの魔力を感じる…!まだ生きてるんだ!みんな気をつけて!!」
「!!妹紅!あぶなっ…!」
「!?」
妹紅の後ろから触手が現れ、刺そうとする。
「ちぃっ!」
炎を飛ばして触手を焼いた。
「藍!気をつけろ!多分この触手、地面からも…………」
藍の方を見た時、妹紅は驚愕した。
「……」
藍は、地面から生えてきた無数の触手に体のあちこちを貫かれていた。
「!!こいし!!」
「え!?」
フランがこいしを押し飛ばした。
「ぐぅっ…!」
フランの体を、三本の触手が掠めた。
「フラン!!」
「…ぐっ……!こいし…!ぬえを連れて、逃げて…!」
「…えっ…?えっ…!?」
「何、してるの……!早く…ぬえを、連れて……逃げ……」
「かっ……けふっ……はっ…ぁ…」
「嫌……!!嫌ぁあぁぁあ!!ぬえ…!!フラン!!嫌だよ二人共!!起きてよぬえ!!フランは一緒に逃げようよ!!」
「ハッハハハハ……!!殺してやる…殺してやるぜぇ…!!
てめえら全員、皆殺しだァ…!!」
To be continue…
わかると思いますがいよいよクライマックスです
何か、強い敵ほど潔いキャラが多いんですけどね。
この小説は違います。はい




