目覚める狂気
厨二病的なタイトルを考えるのに苦労してたりする。
内容が残念だけど笑
「……お疲れ様。大図書館に誰かいた?」
「ううん。誰も」
こいしはあれから、数分ほど泣いていた。
今は紅魔館のバルコニーで皆が集まっている。
「……」
レミリアと咲夜は、放心状態だった。
こいしと同じで、紅魔館の見回りをしている際に色々思い出してしまったのだろう。
「……こいし、レミリア、咲夜……気持ちはわかるわ……けど、それじゃあ敵が現れた時どうするのよ……フランも、貴女達には生き残って欲しいはずよ」
「……ええ……」
「……わかって……います……」
「……」
–やはり、悲しみが深いのだろう。何せほんの一日前まで楽しそうに会話をしていたのだから……
「……」
こいしも思い出していた。昔、フランと会った日のことを……
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「うわー、大きなお屋敷!地霊殿より大きいかも〜」
私はその日、いつも通り散歩をしていた。
その時に偶然この紅魔館を見つけ、好奇心で中に入ったんだ。
これが、私とフランを出会わせてくれることとなる。
「ほおー、ここは確か紅魔館ってところだったよね?さっきの門番さん見たことあるし」
私は無意識の状態の為、周りの人たちからは気付かれることはなく、色々なところを見て回れた。
そして、私は、主さんの部屋にとても大事そうに保管してあった鍵を取ってきた。
「どこの鍵だろ?」
地下の方へと行ってみた。すると予想が当たったようで、鍵の紋章と同じ紋章が入ったドアを見つけた。
奇妙な羽に、時計の針を捻じ曲げたようなものがクロスしたような紋章だった。何故か私は、この紋章のことを気に入っていた。
「ここだなー……!よし、開けよう」
ガチャンッ
ギギギギギギ……
中は真っ暗闇で、もはや何も見えないと言っても過言ではないほど暗かった。
「…うわっ…暗いなぁ……誰もいないかな……?」
ま、誰かいても気付かれることはないんだけど……、などと考えていると…
「……誰?」
「うひゃ!?」ビクッ
突然声をかけられ、ものすごい驚いた。
「……?」
そこには、赤いリボンを巻いたナイトキャップに、綺麗な整った少し長い黄金色の髪をサイドテールで結んでいて、白い袖の赤い服、手にはフリル付きのリストバンド。スカートの丈は私のと同じぐらいの格好をした、可愛らしい子がこちらを見ている。背中には、紋章にあった奇妙な羽が生えていた。
「え?え??私が見えてるの?」
「……?もちろんよ」
見えているんだ……!今のこの私が……!
「ほ、本当に?」
「本当よ。……でも、見えてるの?ってどういうこと?」
そうか……理由話さなきゃ訳分からないな。
「私ね、能力が無意識を操る程度の能力なの!」
「へえ……無意識をねぇ……」
「あ、そうだ!名前なんて言うの?」
「……フランドール。フランドール・スカーレットよ。貴女は?」
女の子の名前はフランドールというらしい。スカーレットと言えば……
「古明地こいし!スカーレットと言えば、この館の主さんの名前だね……もしかして肉親?」
「その通り……私はレミリア・スカーレットの妹よ」
「へえ……フランドールはどうしてここに?」
「フランドールって、呼びにくいでしょ。フランでいいわ………私は二重…………」
そこで言葉を詰まらせた。……何かあるんだね……
「…殺戮が大好きなの。簡単に言えば気が触れているのよ」
「気が触れている?」
「ええ、そうよ。だから貴女も気を付けなきゃねぇ……」ニィィ……
「……そんな顔したってちっとも怖くないよ?貴女……本当はすっごく辛いんでしょ?」
「……何言ってんだか……吸血鬼が殺戮を好まないわけがないでしょう?」
「じゃあ何でさっき言葉を詰まらせたの?」
「……ただの言い間違えよ」
「嘘つき。私ね……こう見えても人の心を読むのは得意なんだよ?」
「……古明地って確か……悟り妖怪の……」
「そう……だけど私の場合は心を読めない。眼を閉じちゃったから」
「……そう……」
「ねえ、フラン。ちゃんと理由話してよ。私でよかったら力を貸すよ?」
誰であろうと、悲しそうにしている姿を見るのは好きじゃない。それにこの子には何かと魅かれる。フランの力になってあげたかったんだ。
「……そこまで言ってくれるのなら、もう演技をする必要もないかな……」
「え?」
フランの雰囲気が変わった。どうやら、今までは演技をしていたらしい。
「こいしちゃん……だっけ?私のことを話すよ。けど、聞いたら私の部屋から出て行って」
「ど、どうして⁉︎」
「……私はもう、誰も傷付けたくないんだ……もう、誰もッ…!」
「……!」
「うっ……」ガッ
フランが頭を抑え少し苦しそうにした。
「!ふ、フラン?大丈夫?」
「だ、大丈夫……それじゃあ、話すよ」
「私は、生まれた時からとても強い魔力を持っていたらしくてね……将来有望だったんだと」
「うんうん」
「それから、美人とも言われたっけ……あの時は私も結構人望があったんだ」
「へぇ〜……確かに言われてみればとっても美人さんだね!可愛い♪」
お姉ちゃんと同じくらい好きになれそうだなーフランは!
「どうも!それはいいとして……それからだった」
「……」
急にフランの表情が暗くなった。おそらくここからがここにいる理由の本題なのだろう。
「……私は、自身のあることに気付いた。それは、自分ではないもう一人の自分がいることだった」
「……!」
「その日から、私は違和感を感じるようになった。時折、意識が飛んだりするんだ。気がつくと泣きそうな顔でこっちを見てるお母様がいたりした時もあった」
「それで完全に気が付いた……私は、身体をもう一人の私に乗っ取られていることがある……とね」
「……そんな……!」
「そして、普段お姉様と一緒にお父様との稽古に励んでいたせいか……実力がかなりついていたんだ」
「……」
「……そして、ついに私の身体は完全に乗っ取られた。……意識は残っているし、もう一人の私が見ている光景も、触っている感触も、苦しみも喜びも全て私にも伝わってくる」
「……!」
「……私はっ……!お母様やお父様を………!この手で殺してしまったんだ……!」
「!!」
フランは泣いていた。
「……お母様は、泣いていた。お父様は、悲しそうに攻撃してきた。お母様を庇って、お父様は私に殺された……お父様が死んでしまったのを見て、お母様は……」
フランは、泣きながらも話を続けていた。……こんなの見てられない……!家族を殺した姿は、何故か簡単に想像出来た。何故かはわからない。けど、何故か簡単に想像出来た。
「…もういい…!」
だからこそ、聞いているだけでも辛さが伝わってくるのだ。見ていられなかった。こちらまで泣きそうになってきた。
「私はそんなお母様を見て笑っていた……お父様を殺したのを快感に思っていた……!私は……!家族を殺すことを快感に思ってしまっていたんだ……!」
「もういいよ……!」
「……私は……お姉様を絶望の底に叩きつけてしまったんだ……!私は……私はッ……!」
「もういいよ!!!」
「……うぅっ……!」
フランは大泣きしていた。頭を膝に埋めて、顔を隠すようにして泣いていた。
「……ごめん……思い出させちゃって……」
「……いいの…こいしちゃんは私のことを考えてくれていた……私にとってはそれだけですごく嬉しいの」
「……!」
「……そんな悲しそうな顔しないで………私の話を聞いてくれてありがとう。今日はもう、帰りなよ」
「……うん……ごめんね……そして辛い思いをしたんだね……ごめん…思い出させちゃって……本当にごめん……」
「……優しいのね、こいしちゃんって」ニコッ
「!」
「ふふ、今日はありがとう。貴女と話せてよかったわ」
「もう……演技はやめてよ!素で喋ってよね!」
「あはは、ごめんごめん!」
「また来るよ!」
「え……?」
「ん?」
「……ごめんけど、駄目」
「ええー?何でよ?」
「私の話、聞いて……ッ……っつぅ…!」ガッ
「ふ、フラン!」
「大…丈夫……こいしちゃん……ここまで話したのは貴女が初めてだったんだ。だからこそわかって欲しいの」
「……?」
「私は…貴女を友達だと思ってる」
「!!」
「たった少しお話しただけだけど……私にとってそれはとても嬉しい時間だったから」
「友達を、傷付けたくないんだ……だから、次は私が遊びに行く!精神を安定させてからね」ニッ
「……わかった!待ってるよ!」
「うん!」
「それじゃあね!またいつか!」
「うん!楽しみにしててね!」
バタンッ
待ってるからね、フラン。
だが、後々これがあの日へと繋がることになるのだった。
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「……」
「……まあ、いいわ……誰もいないのなら、中は使えるわね……」
「いや、それは得策じゃない。今日はここで結界を張って寝よう」
「それもそうね……じゃあ、魔理沙、アリス。私達で結界を張るわよ」
「おう」
「ええ」
三人が結界を張った。
こいしは、上からフランの墓を見ていた。
–フラン……
……いつまでも引き摺っても、フランが悲しんでしまうだけだな……頑張るよ。天国から見てて、フラン。
「みんな、結界を張り終えたから……この結界は魔力を弾くように作られてるから、中にいれば安心よ」
「おい霊夢。それフラグだぜ」
「ちょっと自分でも思った……!」
「まあ、とりあえず寝るか。おやすみみんな!」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみー」
「……」
–あの日も……こんな風に星がいっぱい出ていて……暁の日だったな……
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フランと会ってから、二週間程経っただろうか。
フランがここ、地霊殿に来るのを私はずっと楽しみにしていた。
ある日、散歩をするついでに紅魔館の様子を見ていこうと思った。
それが無ければ、レミリアや咲夜さんは死んでしまっていたかもしれない。
「月が紅いなぁ……こんな夜は吸血鬼を思い出す……フランは元気かな?」
紅魔館の前を通った時、何か違和感を感じた。まるで、何かを隠しているかのような、そんなオーラを感じた。
気になったから、中に入った。そして私が見た光景は……
「……何……これ……」
妖精メイドの遺体が大量に転がっていた。
それはまるで”壊された”かのような無残な遺体だった。
一度休めば復活するらしいが、これはあまりに悲惨だった。
そして私はあることに気付いてしまった。
はじめに思ったのは気付かなきゃよかった。
その次に思ったのは、逃げなきゃ死ぬだった。
「……」
「……フラン……⁉︎」
「……ああ……お前か……」
「……⁉︎」
「あの時、お前がフランのことを考えていたかどうかは知らんが……私からしたらあんな同情受けたくはないな」
「……⁉︎」
明らかに様子が違った。前は心優しい可憐な少女という感じだったのに、今は違う。まるで正反対だった。
「あいつは逃げたか……まあいいや…ところでさぁ、お前は強いの?」
「……⁉︎」
訳が分からなかった。どういう状況なんだ?これは夢なのか?とも思った。
「……フランから話は聞いたはずでしょ……」
そう言われて、思い出した。フランは二重人格者だったということを。
「……お前は……もう一人のフラン……?」
「……はっ……鈍い奴……初めっからそう言ってんじゃん」
「……主さん達はどうしたの?」
「殺そうと思ったけど、逃げられた。門番も今から殺りに行こうと思ったんだけど……」
こいつはもうフランじゃない……倒さなきゃ……!
「……!」
そうか……フランは言ってた。今の状態でもフランは意識があるんだ!なら……可能性は……!
「……何考えてるか知らないけど、今の状態の私からフランに戻そうってんなら諦めな」
「え……⁉︎」
「私が眠るまでは、どう足掻いても戦うしかないのさ……質問を戻そうか。お前、強いの?」
「……さあね……試してみれば?」
「……それもそうだな」
負けられない……絶対に勝たなきゃ……!フランの為にも……この館の人達の為にも!
先が気になる終わらせ方をしようと思った結果がこれ。大変残念ですな笑




