愛する者の死を越えて
今回から第二章スタート!
とりあえず紅魔館&過去編とだけ言っておく。
別れと言うものは、突如として訪れる
予期せぬ別れなどあって当然のことだ
逃げ回って、涙を流して、人は強くなる
そう。別れも強くなるための一環なのだ
別れを乗り越えてこそ、本当の強さがーー
ビリィッ
「……」
こいしは、何故か誰もいない紅魔館の大図書館を歩いていた。
たまたま目に入った”別れ”という本を手に取り、少し読んでいた。
だがそこに書いてあることは、ただただこいしを傷付けるだけだった。
ー『こいし』
フランは……もうこの世にいない。
二度と……名前を呼んでくれない。
ただ一人だけ……無意識状態の時の私に気付いてくれた人……
「……フラン……」
こいしは今、図書館の見回りをしていることを忘れていた。
すっかり感傷に浸っていた。
普通の敵ならここで攻撃してくる。だが、ここはフランがいた場所だ。悲しみは同じで、今の状態のこいしを攻撃するという思い付きはなかった。
しばらく歩いていると、作業机のようなものがある大広間に出た。普段はここでパチュリーが魔法の研究をしているのだろうか……
「……戻ろう。誰もいなかったって…」
こいしが、無意識に机の上の本を見る。
その時、偶然目に入った。
「……フランの……日記……?」
–フランって……日記なんて書いてたんだ……
「……」
そこに書き記されていたのは……
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私の名はフランドール。フランドール・スカーレット。吸血鬼だ。
そして……少し気が触れている。
正確に言えば……私は二重人格者なのだ。
今の状態の私と、荒々しく横暴で殺戮を楽しむ私が存在する。
それに加えて『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』……もし一度暴走すれば、たくさんの人達を殺めてしまう。……私はそれが怖くて仕方ない。
だから、自らの意思で地下牢への幽閉を頼んだ。
外に興味はあった。けど出ようとはしなかった。
紅霧異変後も、私は地下牢にずっといた。
地下牢でも、フォーオブアカインドがあれば修行が出来たりするし、寂しい思いをすることもなかった。……表面上は……
たまにお姉様が会いに来てくれて、私に外の世界のことを色々と教えてくれることがあった。
コンコン
「……誰?どうしたの?」
「私よ。会いに来たわ」
「!……どうぞ」
ガチャ
「では、失礼します…」
「お姉様……会いに来てくれたの?」
「……ええ。大丈夫?精神の方は……」
「今は安定してる。心配いらないよ」
「そう……あ、そうそう!今日はフランにお土産があるのよ!」
「ん?」
「ほら、これ見て!桜の木の枝よ。本で読んだことあるんじゃないかしら?」
「…わあ……綺麗」
「でしょう?私のお気に入りなのよ」
「お姉様のお気に入りか〜……あんまりオススメ出来ないね」ニヤニヤ
「な、何をぅ!?」
「あははは!冗談よ。ありがとう、とっても綺麗だね」
「でしょう?今度は別の物も持ってきてあげる!その間、この木の枝を少し持っていてくれない?」
「桜の木の枝を?」
「そうよ!次にここにきた時、また別のものとその桜の木の枝と合わせて楽しみましょう?」
「ふふ、いい案だね。でも、枯れちゃうんじゃないかな……」
「大丈夫よ!ほら、花瓶用意しておいたわ」
「お姉様、桜の花は木の養分を元にして生きてるんだよ?枝でも出来ないことはないけど、ここじゃあまり意味がないよ」
「え、どうして?水があれば何とかなるんじゃ?」
「日光がなかったら、すぐに枯れちゃうよ」
「あ……そうか……」
「……ふふ、これはお姉様が持っていてくれない?また別の物見つけた時に一緒に持ってきてよ」
「わかったわ。それじゃあ、また今度ね」
「うん」
「……ごめんね……こんな生活させて……」
「はは、まだ言ってる……」
「だって……私が不甲斐ないばかりに……」
「いいの……私が望んでやったことよ?だから、お姉様が罪悪感を感じる必要はないわ」
「フラン……」
「笑ってよ、お姉様。私はお姉様の側にいて笑っているからさ」
「!」
「だからさ……そんな悲しい顔を見せないで……お姉様は、笑っていてくれる方が私は嬉しいな」
「……ふふ、そうね……」
「また近いうちに行くわ。それまでいい子で待ってなさいよ?」
「ふふ……はい、わかりましたお姉様!」
「うむ、よろしい!それじゃあね」
「うん!」
ガチャ バタン
「……」
「…ッ…はあっ……はあっ……!」
「……もうちょっと待ってよ……!まだ……まだ駄目……」
「まだ……まだ暴走しちゃ……駄目……」
私は、毎日のようにもう一人の私に身体を乗っ取られそうになっては抑え、乗っ取られそうになっては抑えの繰り返しだった。食事を運んでくれる妖精メイドにも、咲夜にも、美鈴にも、パチュリーにも、小悪魔にも、お姉様にもバレないように。
「……ッ……!」
「うぐぅ……!」ガッ
頭を掴み、必死に抑えた。今日は一段と激しかった。
やっと治った頃には、私はくたくただった。今また来られたら、少しきついかもしれない。
いつもはそこまでなることなく抑え込むことが出来たのに、何故今日はこんなに激しかったのだろう?
「はあっ……ふぅ……」
「……今日はもう、寝よう」
そう言って私は眠りについた。
その翌日、誰も来ないと思っていた私の部屋に一人の女の子がやってきた。
「……」
–今日も、ここは暗いなぁ……蝋燭の火、またつけなきゃな……
「……」
その時、ドアの方から音が聞こえる。
ギギギギギギ……
「……?」
「…うわっ…暗いなぁ……誰もいないかな……?」
黄色いリボンを巻いた帽子に、少し緑みの銀髪?の髪、黒いフリルのついた黄色いシャツに、腕には黒いフリル付きのリストバンドかな?
緑色の私のとあまり変わらない丈のスカートを履いた私とそんな背は変わらない女の子がドアを開けていた。
「……誰?」
「うひゃ!?」ビクッ
そうとうびっくりされた。私の存在に気付いてなかったのかな?
「え?え??私が見えてるの?」
「……?もちろんよ」
「ほ、本当に?」
「本当よ。……でも、見えてるの?ってどういうこと?」
「私ね、能力が無意識を操る程度の能力なの!」
「へえ……無意識をねぇ……」
「あ、そうだ!名前なんて言うの?」
「……フランドール。フランドール・スカーレットよ。貴女は?」
「古明地こいし!スカーレットと言えば、この館の主さんの名前だね……もしかして肉親?」
「その通り……私はレミリア・スカーレットの妹よ」
「へえ……フランドールはどうしてここに?」
「フランドールって、呼びにくいでしょ。フランでいいわ………私は二重…………」
–いや、この子を私と関わらせちゃ駄目だ……
「…殺戮が大好きなの。簡単に言えば気が触れているのよ」
「気が触れている?」
「ええ、そうよ。だから貴女も気を付けなきゃねぇ……」ニィィ……
「……そんな顔したってちっとも怖くないよ?貴女……本当はすっごく辛いんでしょ?」
「……何言ってんだか……吸血鬼が殺戮を好まないわけがないでしょう?」
「じゃあ何でさっき言葉を詰まらせたの?」
「……ただの言い間違えよ」
「嘘つき。私ね……こう見えても人の心を読むのは得意なんだよ?」
「……古明地って確か……悟り妖怪の……」
「そう……だけど私の場合は心を読めない。眼を閉じちゃったから」
「……そう……」
「ねえ、フラン。ちゃんと理由話してよ。私でよかったら力を貸すよ?」
「……」
–何て優しい子なんだろう……私にもこんな優しさがあれば…違う生き方があったかもしれないのに…………そんなこと考えたって仕方ないな……
嬉しいけど…でも、駄目だ。初対面の子を巻き込むわけにはいかない。
「……そこまで言ってくれるのなら、もう演技をする必要もないかな……」
「え?」
「こいしちゃん……だっけ?私のことを話すよ。けど、聞いたら私の部屋から出て行って」
「ど、どうして⁉︎」
「……私はもう、誰も傷付けたくないんだ……もう、誰もッ…!」
「……!」
「うっ……」ガッ
「!ふ、フラン?大丈夫?」
「だ、大丈夫……それじゃあ、話すよ」
「私は、生まれた時からとても強い魔力を持っていたらしくてね……将来有望だったんだと」
「うんうん」
「それから、美人とも言われたっけ……あの時は私も結構人望があったんだ」
「へぇ〜……確かに言われてみればとっても美人さんだね!可愛い♪」
「どうも!それはいいとして……それからだった」
「……」
「……私は、自身のあることに気付いた。それは、自分ではないもう一人の自分がいることだった」
「……!」
「その日から、私は違和感を感じるようになった。時折、意識が飛んだりするんだ。気がつくと泣きそうな顔でこっちを見てるお母様がいたりした時もあった」
「それで完全に気が付いた……私は、身体をもう一人の私に乗っ取られていることがある……とね」
「……そんな……!」
「そして、普段お姉様と一緒にお父様との稽古に励んでいたせいか……実力がかなりついていたんだ」
「……」
「……そして、ついに私の身体は完全に乗っ取られた。……意識は残っているし、もう一人の私が見ている光景も、触っている感触も、苦しみも喜びも全て私にも伝わってくる」
「……!」
「……私はっ……!お母様やお父様を………!この手で殺してしまったんだ……!」
「!!」
「……お母様は、泣いていた。お父様は、悲しそうに攻撃してきた。お母様を庇って、お父様は私に殺された……お父様が死んでしまったのを見て、お母様は……」
「…もういい…!」
「私はそんなお母様を見て笑っていた……お父様を殺したのを快感に思っていた……!私は……!家族を殺すことを快感に思ってしまっていたんだ……!」
「もういいよ……!」
「……私は……お姉様を絶望の底に叩きつけてしまったんだ……!私は……私はッ……!」
「もういいよ!!!」
「……うぅっ……!」
両手で頭を抱えて、私は大泣きしていた。
スカートが涙でびしょ濡れだった。
「……ごめん……思い出させちゃって……」
「……いいの…こいしちゃんは私のことを考えてくれていた……私にとってはそれだけですごく嬉しいの」
「……!」
「……そんな悲しそうな顔しないで………私の話を聞いてくれてありがとう。今日はもう、帰りなよ」
「……うん……ごめんね……そして辛い思いをしたんだね……ごめん…思い出させちゃって……本当にごめん……」
「……優しいのね、こいしちゃんって」ニコッ
「!」
「ふふ、今日はありがとう。貴女と話せてよかったわ」
「もう……演技はやめてよ!素で喋ってよね!」
「あはは、ごめんごめん!」
「また来るよ!」
「え……?」
「ん?」
「……ごめんけど、駄目」
「ええー?何でよ?」
「私の話、聞いて……ッ……っつぅ…!」ガッ
「ふ、フラン!」
「大…丈夫……こいしちゃん……ここまで話したのは貴女が初めてだったんだ。だからこそわかって欲しいの」
「……?」
「私は…貴女を友達だと思ってる」
「!!」
「たった少しお話しただけだけど……私にとってそれはとても嬉しい時間だったから」
「友達を、傷付けたくないんだ……だから、次は私が遊びに行く!精神を安定させてからね」ニッ
「……わかった!待ってるよ!」
「うん!」
「それじゃあね!またいつか!」
「うん!楽しみにしててね!」
バタンッ
これが、私とこいしの出会いだった。
始めは変わった子だな……と思った。けど私の話を真剣に聞いてくれたり、優しくしてくれたりして……本当に嬉しかった。
友達と呼んだけど……こいしはあの時私のことをどう思っていたんだろう?
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「……」ツー…
こいしの頬に涙が伝う
「……うぅっ……!」ガクッ
–会いたい……!また会いたいよ……!
「フラァァァン……!うわぁあぁぁ……!」
こいしは泣き崩れてしまった。
フランの死は、こいしにはあまりにも辛すぎた。
耐え難い悲しみは、一気に爆発してしまった。
そう。別れも強くなるための一環なのだ
別れを乗り越えてこそ、本当の強さが得られる
涙を流しても構わない。だけど決して心を折ってはならないんだ
強くこころを持って……その悲しみを超えて強くなることが出来る者こそ…真の強者なのだ。
ちなみに過去編こいしの服は半袖で、フランと同じような感じだと思ってください。フランのスカートは膝のあたりまであります。後々のキャラ設定の時に挿絵でも入れて描こうかな。




