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三題噺

三題噺 お題 「天井裏」「車」「テレビ」

作者: 葵悠静

「犯人はこの中にいる!」


奴は意気揚々と俺たち四人を順番指すとそう宣言した


「そして僕は、誰が犯人なのか分かってしまったのだよ…」


探偵なのか刑事なのかわからない一番怪しげな奴は感慨深そうに自分の推理を語りはじめた


なぜ、俺たちが疑われているのか、またどうして疑われなければならなくなったのか


それは、4時間前に遡る……


「なぁこのレースさっきからずっと走ってるけど何周走るわけ?」


「46周レースじゃなかったか?」


「げ、運転手もたまったもんじゃないな」


「仕方ないだろ、それが仕事なんだから」


「ただいま~」


「おお!この番組の車の音に混じって全然帰ってくる音聞こえなかったわ」


「ちゃんと言われた通り買ってきたよ、バーベキューの材料」


「サンキュー、サンキュ、じゃあ…俺バーベキューセットとってくるわ!」


そうして、あいつは天井裏に置いてあるバーベキューセットをとりにいった


「じゃあ俺たちも準備しておこうか」


「じゃあ私は材料切っておくね」


こうして各々準備にとりかかって10分後、穏やかな静寂をバーベキューセットをとりにいった男の野太い悲鳴で切り裂かれた


「なに?」


「Gでもでたんじゃないか?」


「やめてよ、気色悪い」


そんな会話をしていると男が真っ青な顔で俺達の方にやってきた


「ひ、人が!ひとが!!人が死んでる!!」


俺は男のパニクった声に女と目を合わせ、三人でバーベキューセットが置いてある天井裏へとむかった


「おいおい……なんだよこれ…」


天井裏には今日のバーベキューに参加するはずだったもう一人の男が血まみれで倒れていた…


「き、救急車だ!いや?警察か!?いや消防?なんでもいいから呼べ!!」


こうして穏やかに終わるはずだった一日は壮絶な一日に変わり果てたのだ……



「……で、あるからにして…」


「おい、探偵さんよ、犯人がわかっているのならさっさといってくれや」


「そうよ、人が死んだこんな薄気味悪い家でいつまでもいたくないわ」


「まぁまぁそう急かしますな…最終確認ですがテレビでは車のレース番組がかかっていたんですね?」


「ああ、50周レースだっけ?」


「いや、46周レースだ」


「これで、犯人は確定しました……犯人は…………あなたです!!」


探偵が指を指した方向には材料を買ってきた女がいた


「な、なんで私なのよ!私じゃないわ!」


「犯人はみんなそういうんです」


「じゃあ…証拠でもあるの!?」


「まさに犯人の台詞ですね、いいでしょう、あなたが犯人だという納得のいく説明をしましょう」


探偵は自信に満ちあふれた顔で近くに椅子に座ると語りはじめた。


「まず、あなたは誰よりも早くこの家についていました。そして、次にあなたが来てあなたは買い物を頼まれ、家から出ていった…間違いありませんね?」


俺と女は記憶をたどりながらうなづいた。


「しかし、あなたはこの家くるまえにすでに材料を買っていたんです!そして、あなたは車を出さず、天井裏に向かい、あらかじめ拘束しておいた被害者をグサッと刺した…そして、裏口から出てあたかも買い物をしてきたかのように玄関から入ってきたのです、つまり、車の音はテレビでかき消されていたのではなく最初からエンジンなんてかかっていなかったのです!」


「私が彼を殺す動機がないじゃない!」


「あなたは今日集まったメンバーのなかで唯一女性ですね、恐らくあなたは先についていた被害者に言い寄られたのでしょう?しかし、あなたは二人のどちらかに想いを寄せていた。だから、しつこく迫る被害者を苛立ちと恐怖のあまり殺してしまったのです」


俺はこの時点でこの探偵は迷探偵だと確信した。

いってることが支離滅裂なのだ


衝動的な殺害なら計画的に天井裏に隠したりするはずがない、その場で刺して終わりだ


「凶器は?凶器はなんなのよ!?」


「そうですね…氷というのは先端が鋭く尖っていれば人を貫くものです、そして、氷は溶けてしまう、完璧な証拠隠滅です」


「衝動的に殺したのだったらどこにそんな都合よく先端がとがった氷なんてあるのよ!バカにするのもいい加減にして!」


「確かに……この推理は矛盾がありすぎますね…」


探偵は立ち上がると熊のようにロビーをうろうろとしはじめた


この探偵は根本的なところに気づいていなかった。この、バーベキューは殺害のために用意されたのだ


いうなれば殺害がメインイベント、バーベキューはそのおまけにすぎないのだ



俺と彼女は五時間前にここについていた。

そして、その三十分後被害者が来たのだ


俺は彼女から男からストーカーをされていると相談を受けていた


あまりにもしつこいので殺してしまいたい

でも一人じゃどうにもならない、と


そこで俺はある交換条件と共に協力を申し出た


そうして、なんの関係もない男が来るまえにストーカー男を二人がかりで拘束し天井裏に隠したのだ


殺さなかったのは二人のアリバイを作るため、俺と男が彼女が買い出しに出掛けたのを確認したため彼女は疑われることなくストーカー男を殺害することができた


そして、俺はわざとテレビの音量をあけ車のレース番組をかけた


彼女の車がたった今帰ってきたように見せかけるためにはどうしてもエンジンの音を消さなければならなかったからだ


エンジンの音がないのに彼女が帰ってきたら彼女はどうやって買い出しにいったのか男に疑問を持たれる可能性がある

スーバーまでは歩くと1時間ほどかかるからだ


だから、分かりにくくするため、車のレース番組である必要があった


だから、レースの放送がある今日でなくてはならなかったのだ


凶器は偶然かそれともちゃんと推理したのか探偵のいう通り前日に氷で作っていた


この探偵はその事にすら気づいていない


せいぜい場をかき回してもらおう


「分かったぞ!犯人は君だな!?」


次に迷探偵が指差した相手は俺だった

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