物書きの心得
あなたはなぜ、小説を書くのか?
この疑問は、世界中の作家が必ず一度は考え込む代物ではないかと思います。ここ『小説家になろう』は基本的にはデビュー前のアマチュア作家が活動するサイトとなっていますが、同様ではないでしょうか。
皆さんにとって『執筆』とは、どんな理由で行うものですか?
作家という職業の根っこにあって揺るがないこの話題に関連して、このサイトを回っていてよく自分が感じる点について、思い付くままに少し書いてみたいと思います。
識字率九割九分九厘のここ日本では、文章を書いたことがないという人は限りなくゼロと言っても決して過言ではないでしょう。
文章を書く理由とは、何でしょうか。例えば仕事の時のように、必要に迫られているから。例えば落書きのように、書くという行為そのものに意味があって文章そのものはどうでもいいから。色々浮かびますね。
これらの中でも、小説はいささか例外に当たると思います。というのも小説は、様々な理由で書かれるからです。以下に、よく見られる理由をいくつか書き出してみました。
・自分の思いや熱意を誰かに届けたいから
・ミリオンセラー小説家になれば生涯楽して暮らせるから
・常日頃から溜まりまくりの妄想の断片をどうにかしたいから
・他の作家の作品を読んで、自分ならもっと面白いものが書けると感じたから
こうして列挙してみると、これらの理由にはある共通点が見えてきます。
それは、『欲望』です。
“届けたい”、“楽して暮らしたい”、“どうにかしたい”、“越えたい”……。これらは全て欲望、言い換えれば煩悩です。
ノンフィクションや歴史モノを除けば、小説の多くは架空の世界観を描いています。ですので読む側も、必要があるから読むといった事態は起こらないはずです。つまり読み手も欲望で読んでいることになります。小説というのは読み手と書き手の利害が全く一致しているという、不思議な文章なのですね。
しかし欲望と見なしてしまえば同じでも、そこには大きな差異があったりします。同じ『読ませたい』という理由でも、人によっては“読ませてあげたい”かもしれませんし、またある人によっては“読ませてやろうじゃないか”かもしれません。何が違うのか分かりにくいと思いますが、後者は前者と比較してもかなり態度が高飛車なのです。『俺はお前らに読ませてやってるんだ、感謝しろ』といったニュアンスで伝わってしまいかねません。本人は、そうした意思ではないつもりなのかもしれませんが。
欲望と欲望が噛み合って初めて成立する以上、あまり作者側の態度が尊大だと読者の態度も硬化します。もしそれで文章力や構成力に欠陥でも見つかろうものなら、『お前何様だよ』と叩かれてもおかしくはないでしょう。顔が見えない以上、表現は適切にすることが肝要です。
したがって、あなたがどんな理由で書いているにせよ、小説の後書きや宣伝ページ(活動報告)の文句は控え目に、謙虚にを意識することを薦めます。一例を挙げるとすれば『お読みいただきありがとうございました』などでしょう。こうすれば読者の側も気持ちが素直になり、続きを読んでくれる可能性もきっと上がるはずです。
そもそもよほどの有名作家でもない限りは、読んでもらえることそのものが有り難いことなのです。先に感謝するのはむしろ作家の側であるべきですから、これはある意味当然かもしれませんね。
以上、深夜のノリでつらつらと書いてみました(※このエッセイは深夜に書いています)。
自分の場合、小説を書こうと思い立ったきっかけは音楽でした。音楽を聞いていて、ああ、この歌にはこんな物語が似合うな、なんて妄想していたのを、文字に書き起こそうとしたのが始まりです。ボーカロイドの曲でも最近、こうした小説は多く出ていますね。評価はさておき。
かく言う自分も、まだまだ駆け出しの域を出ない若輩者です。拙い文と中身で読者の方を呆れさせる事しかできません。ですからこのエッセイを読んで『こいつ偉そうだな』と思われた方もいらっしゃるでしょうが、どうか切にご容赦を。
前述の通り、小説とは作者と読者の利害の一致によって成立するものです。恋愛と同じで、どちらかの欲が重くなりすぎるとバランスが悪くなってしまいます。これを読んでいる方の多くは作者の方だと思いますが、少なくとも作品以外の部分では読者に対して熱意や興奮、欲望をぶつけすぎないことを心がけてみてはいかがでしょうか。あなたが読者の側に回ることだってあるのですから、その時に自分がどう感じるかを覚えておくとよいでしょう。
小説を書く理由は、様々です。
しかしながら、必要性があって書いている人などどこにもいません。それを生業とする専業作家も含めて、小説というのは単なる趣味の延長に過ぎません。たかが趣味程度のことで不必要に一喜一憂したり、憤りを覚えるなんて馬鹿らしいじゃないですか。
ここ『小説家になろう』が、今よりもっと気持ちよく書けて、気持ちよく読めるようなサイトになっていくことを、願います。
偉そうに語ってすみませんでした……。
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