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MATERIAL FRONTIER ONLINE:スタイリッシュパーリィーの冒険活劇  作者: クマ将軍
『MFO』ダイブスタート! 準備編
8/62

第7話 依頼達成にっ!

満足できるまで何回も書き直しして遅くなりました。

今回は胸糞表現とウザ表現があります。

前回みたいなシリアスを期待された方はごめんなさい。

 スラム街には法がなく、無法の街では力が全てだ。

 力こそ、この街の実質な法だった。


 ――あの男が全てを壊してくれるまでは。


 スラム街に住む住人より。




 ◇




 今俺の前にいるのは先程ドアを蹴飛ばしたガラの悪い三人。

 身長の低い小人みたいな不良に小太りしている不良、そしてヒョロヒョロで細長い身長を持つ不良の三人。彼らの手の中にはそれぞれ棍棒、メリケンサック、鉤爪を持っていた。


「おいおいおい、これは冒険者様かぁ!?」

「マジかよ、こんなゴミみたいな店に冒険者!」

「お前等は一体……」

「キョウ!」


 アリカが俺の台詞を遮る。

 どうやらそこまで俺を巻き込みたくないらしい。


「おいおい、自己紹介するのは人として当然だろ〜?」

「クッ……人として最低の癖に……!」


 苦虫を噛み潰したような顔をするアリカとその横で涙を堪えるサヤ。そんな彼女たちの様子を見て、目の前にいるゴロツキ三人組はその汚らしい顔を歪めて笑っていた。


「おいおい、冒険者様にはちゃんと俺達の事を知ってもらわないとなぁ〜? 自己紹介って礼儀を忘れちゃダメだぜ〜?」


 小太りの男が急に自己紹介を始め、隣にいる男たちが追随するように言葉を発し始めた。


「俺達はここのスラム街を統治している、『赤城の岩壁』という組織のものでな」

「よりここの生活を豊かにするために集金しているんですわ」

「豊かだと……?」


 手を振りまるで演劇のように演出する三人組。俺の露骨なまでの嫌な表情を見てもスルーをするどころかまるで気がついていない様子だ。

 そして俺の隣にいるアリカは不機嫌な様子を隠そうともせず、大きな舌打ちをする。


「何が『豊かにする』よ! 他の人から僅かなお金を奪い取って自分達だけ(らく)しようとしている馬鹿集団の癖に!」

「はっ! お前らスラム街の中でも下層に位置する人間が上層にいる俺たちに奉仕するのが当たり前だろうが!!」


 ひょろ長の男がそう言うとアリカは悔しそうに口を噤んだ。

 彼らの言う下層と上層とはこのスラム街に存在している生まれの番付みたいなものらしく、全部で下層、中層、上層の三つの差別がある。

 アリカは下層に生まれ、サヤは中層。目の前にいる不良どもが上層の生まれらしい。この中で中層と上層までがスラム街から出られ、街中のごく僅かな施設を利用できるらしいというのだ。


 自分の生まれが不良どもより下であることにキレたのかアリカが声を荒げて、不良どもに言い返した。


「……何が下層よ、何が上層よ! 私より上の生まれであるサヤがこんな良い子なのに、上層の貴方達はとんだ最低な性格に育ったのだから、私たちの方が生まれよりも育ちの差は上なようね!!」

「……あ゛ぁ!? テメエ、約束とは関係無しに今すぐにでも犯されたいようだな!」


 そう言ってアリカを掴みかかろうとするチビのゴロツキに俺は二人の間に割り込んだ。


「キョウ!?」

「テメエ、退きやがれ! 冒険者だろうがテメエには関係ないだろ!」

「俺達はこの二人から依頼された冒険者だ! 依頼者に害が及ぼうとしている所に関係ないもクソもねえだろ!!」


 声を張り上げる俺だがその事に怒りを買ったのか急に攻撃しやがった。


「グッ!?」

『キョウ!?』


 チビとは思えないほどの攻撃を受け吹き飛ばされる俺。

 多少呻きながらも俺は、笑みを浮かべる相手を睨む。


 ――やばい、全然反応はできなかった。


 それもそうか、俺は今日初めてこのゲームをやってランクやステータスが低い状態のままなんだ。『この俺(・・・)』じゃあ三人の相手をして勝てる訳が無い。

 プレイヤースキルで補うことも出来るが、先程の攻撃が見切れない時点で先ず地力が違う。コイツ等のステータスは俺よりも高い。


「ハッ! よええ癖に何威張ってんだテメエ!」

「クッ……」


 腹を殴られ思わずその場に倒れ込む俺。

 くそ、ここで妙にリアルな痛みを再現してくれなくても良いじゃないか。しかし最悪、死んでも生き返る俺が盾になって彼女等を逃がすしかない。

 そうプランを練っていたところにサヤが言葉を発した。


「止めてください!! 約束の期限はまだ等分先のはずです! その時にお金を出しますので……か、帰ってください!」


 涙を流し、足が震えて恐怖を感じているはずなのに、サヤはこいつらに向かって勇気を振り絞った。だがそんな彼女の勇気を見ても、彼らは嘲笑していた。


「はぁ? まだ金を稼げると思ってるのか〜?」

「こんな! ボロい内装で! 何が出来るって〜?」

「やめて!!」


 彼らを止める間もなくアリカとサヤが準備して来た内装が壊されていく。


「どうせお前等には金を稼ぐことも出来ん、今からお前等を好きにしても遅いか早いかの違いだけだ」

「や、やめろテメエら!!」


 ゲームの中なのに痛む身体を引きずってゴロツキを静止しようとする俺。もはや俺にはこの出来事に対してゲームの中だとかをそう思うことが出来なくなった。


「うるせえよ!」


 だがそれでも力の差は歴然で再び吹き飛ばされる俺。

 今度こそ力が入らない。


 HCを見ればもうレッドゾーンに突入していた。


「ハハハハ! 死んだクソ婆の夢を継いで店を開くとか何とか知らねえが、女はこんな大した金を稼げない店をやるより俺達の奉仕をしていた方がいいんだよ!!」

「あ、あああ……」

「あ、あんた達! お婆ちゃんの悪口は止めなさいよ!」

「減らず口を叩く、ねえ? でも俺達に奉仕してたらそんなことも叩けなくなるぜ~?」

「や、止めて!? 店長!」

「キャッ!? は、離しなさい!!」


 彼女達が連れてかれようとしている。


 あぁくそ。

 これはゲームのはずだ。それなのにこの膨れ上がる感情はなんだ。彼女達はNPCで、データの塊で、本当はこれもプログラムされた挙動のはずなのに、俺はそれをただのデータであると認識できない。


 今実際に起きているのは紛れも無く本当の出来事で、彼女達は実際に泣いている。そして俺はそれを見ていることしか出来ない。

 どうすればいい。どうすれば彼女達を助けられる。差別と混沌蔓延るこのクソッタレな環境を、どうやって壊せる。


「キョウ……」


 アリカの目は俺に向けている。

 あいつ等に聞こえないように声を上げずに口をパクパクと何かを伝えたいようだった。朦朧となる意識を集中すると彼女が何か言いたいか分かった。


 ――に、

 ――げ、

 ――て。


 逃げてと、彼女は言ったのだ。

 ――自分がこれから酷い目に遭うのに、彼女は未だに俺を逃がそうとしていたのだ。




 ――もう、考えるのは止めた。




「ッ……なんだテメエ?」


 ピコッという音がアリカを連れ出そうとしているゴロツキの頭から鳴った。それは俺が投げたピコピコハンマーがゴロツキの頭に当たった音だ。

 ぶつけられたゴロツキはそのハンマーの能力である『挑発』の効果により血走った目で俺を見る。


「もう、NPCとかゲームとか関係ない……幾らアニメみたいなグラフィックをしても不愉快なものは不愉快だ」


 痛む体を抑えて何とか立ち上がる。

 あぁ、この光景を見て感情が高ぶらない奴はいない。

 俺はもう知らないぞ。こうなったのはお前達のせいだからな。俺に()()()()()()()を燃え上がらせたのは、お前達の責任だからな?


「というわけで、お前らはめでたく死刑になりますニッコリ」

「おいこの野郎!!」

「待て、ファッド!」


 凄い、ピコピコハンマーの効果である『挑発:B』は伊達じゃない。あの超特急ウリ坊に効いた効果がただの豚さんに効かないはずがないのだ。


「さっきまでボロ雑巾だったお前をただの布切れにしてやる!!」

「ぺっ!」

「ぐぁ、唾が!?」

「はっ! たかが唾に怯むお前はティッシュ以下だな!!」

「ぐえ!?」

「ファッドォォォォ!!?」


 顎に下からのアッパーが綺麗にジャストミート!

 その勢いで浮かんだファッドかファットかは知らない小太りな男を蹴りで店外へとシュゥゥ!!


「――HC(ヒットカラー)オールグリーン、超絶好調だぜ」


 傷もない不快感もない、あるのはただ興奮から来る全能感と万能感と森羅万象感。俺の心に一点の曇りなく、あいつらに対する慈悲の心もない。


「さぁ来たまえ君たち。三人がかりで来ればチャンスがあるかもしれない」

「その内の一人をテメェがやったんだろうが!!」

「何だ二人か? なら無理だな、お前達にはチャンスはない」

「ふざけたことを!!」


 ヒョロ男が鉤爪を振るうがその軌道、速度、角度、威力、ありとあらゆる情報を瞬時に読み取れる俺に効くはずが無い。


「く、こいつ俺の鉤爪を避け――」

「一つ、俺のピコハンに攻撃力は無い」

「ぐふぉ!?」

「だが衝撃ぐらいはある模様」


 ピコハンを腹に受けたヒョロ男はそのままファッ()のいる店外へと吹き飛んだ。この場にいるゴロツキはあと一人、チビのゴロツキだけだ。


「な、な、な……」

「おい余所見してる場合か? 先ほどの二人は恐れ知らずにも向かって来たぞ? それとも何か、お前の体格と同じで度胸も小さいか?」

「て、テメ――」

「おーっとここに丁度いい高さのボール、がッ!」

「おぶっ!!」


 俺の腰辺りにあるチビの頭を思いっきりフルスイング。

 また一名、店から出られるようですね。


「き、キョウ……?」

「はい、キョウですよマドモアゼル」

「な、何がどうなって……」

「ありのままLET IT GO(放っておけ)よ、アリカ。お前達はただそこで見ていろ」


 困惑している二人を置いて、俺は店の外へと歩く。そこには今の状況に困惑している三人組と、その周囲には野次馬に来た様子のギャラリー。

 そんな彼らはこの事態を引き越した張本人である俺を見て後ずさりをした。


「さて、ここにいるお前らに言おう。確かにここの法は力だ。無法の街では力こそ全てだ。――素晴らしいじゃないか。力こそパワー。ならこの場にいる力とは、法とは誰だ」


 俺の問いに誰もが目の前に倒れている三人組の方へと目を向けた。

 そんな彼らに俺はこう言ってやる。


「今日この時を持って、この街の力は俺だ」


 ――俺こそが、法だ。


「さぁ法の俺が宣言しよう。お前らのグループ含めて俺ルールに則り死刑に処す――このクソッタレな環境ごと、俺がぶっ壊してやるよ」




 ◇




『再度、脳波に異常を感知しました』


『脳波の異常による影響を解析成功しました』


『全ステータスに10段階のランクアップ補正を受けていることが判明しました』


『ユニークスキルの申請確認中……』

『ユニークスキルの取得、失敗しました』

はっきり言おうこの小説はハッピーエンド主義だ!!のクマ将軍です。


主人公のステータス、用語説明は次回です。

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