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第2話 最近の告白はメールが多い

今回は葉月家の次女、ナナちゃんの視点です。

 私の名前は葉月七海。

 葉月家の次女で、ゲーム上のキャラの名前はナナ。

 種族はエルフで、重火器を扱う遠距離戦闘役(シューター)のロールを担っている元気一杯夢一杯の超絶美少女である。

 

 そんな私だが、いつの日かゲームマスターによってこのゲームの中に囚われてしまった。


 ゲームマスターからプレイヤーに望んだ物はただ一つ。

 それはこのゲームのどこかにいる精霊を探すこと。

 それと引き換えに、私達はこのゲームから出ることができるという。


 でも私が所属しているギルドである『マテリアルフロンティアーズ』が選んだのは、ゲームマスターへの反逆。

 精霊を探し、ゲームマスターと対抗できる力を手に入れるのが私達の旅の目的でもある。

 で、そんな私達がいるのは冒険者の集う国カンレークと和と幻想の国ムラクモの間にあるとある街の中にいた。


「まったく食中毒とか本当に心配したー」

「ま、まぁ……私達も注意しなかったのも悪いですし」


 商店街のような所で私は双子の姉である葉月朱理ちゃんと一緒に歩いていた。

 ゲーム上の名前はライカちゃんと言う、私が尊敬する家族の一人でもある。


 何故私達がこのような所にいるのかというと、つい先程お兄ちゃんのテイムモンスターであるサルちゃんが私とゴマ姉が採取した毒キノコを食べてしまったらしく、お兄ちゃんの親友である神崎直人さんの『状態識別』スキルで食中毒だと判明。

 でも私達の誰もが食中毒を回復するアイテムやスキルを持っていなかったため、食中毒で倒れたサルちゃんをこの街にある診療所で、治療を受けるためにやってきたのだ。


「毒キノコとか外見で分かるものなんだけどねー。見かけによらず食いしん坊キャラなのかなー」

「元はといえば、ナナちゃん達が毒キノコを採取したせいなんですけどね」


 なははー。

 はい、どう考えても私のせいです。


「っとそうです。今回で状態異常回復用のアイテムが必要だと分かりましたから買いに行ってきます。ナナちゃんはどうします?」

「うーん、私はここでダラダラ過ごすよー」

「そうですか。では何かありましたら念話を下さいね」

「はいはーい」


 そう言って私と別れるライカちゃん。

 さて一人になった訳だけど、どうしようかな。


「おい! 早く行くぞ! 手伝いに間に合わなくなるぞ!」

「待ってー!!」

「ちょっと足が速いよー!!」


 数人の子供が街の外に向けて走っていくのが見える。

 どうやら何かのお手伝いらしいんだけど……。


「なんか面白そうだなー」


 よし私も行ってみよー!




 ◇




「お前らまた来たのか」

「手伝えばお小遣い貰えるんでしょ!」

「それはお前らが勝手に手伝ったから、タダ働きじゃあ申し訳ないからだな……」

「それじゃあ僕ここ掘るねー!!」

「あっおい!! ……ったく現実のガキと何も変わらないじゃないか……」


 子供達を追って街の外に出てみれば、そこには中年の姿をしたプレイヤーと地面を複数箇所掘っている子供たちの姿があった。

 周りを見れば、掘られたであろう地面の穴がそこかしこに存在している。


「すいませーん」

「おっ? なんだプレイヤーがここにいるなんて珍しいな」

「何か、オジサンがここで子供達に何やら如何わしい事をやらせているとの事で興味がー」

「如何わしいってなんだ!? 初対面なのに失礼だなぁお前」


 頭が痛むのか、痛みを抑えるようにこめかみに手を当てるオジサン。

 さては日々のストレスかな?


「お前のせいなんだよなぁ」

「所で、お金を対価に子供達の体を使っている事について聞きたいんだけどー」

「言い方が悪い! ったく厄介な奴に絡まれたなぁ」


 そう言ってストレージからシガレット風のアイテムを取り出して、喫煙をするオジサン。

 アニメ調のグラフィックだからか、オジサンのような風貌がタバコを吸う姿は実に渋いと感じる。

 まさかここで私にオジサンフェチの資質が……!?


「何か良からぬ事考えてねーか?」

「私のログには何もありませぬー」


 煙は出ているがタバコ特有の臭いは無い。

 何故かは分からないが、このゲームではシガレット風のアイテムみたいに娯楽物の品物が普及しているらしく、大人達の需要を網羅しているという謎の充実さを誇っている。

 子供に悪影響があるのかと思えば、子供のプレイヤーに対してはちゃんと規制を掛けるという安心安全な仕様とのことだけど、何でこういう物があるんだろう。


「先ずはそうだな……自己紹介でもするか」

「はいはーい! 私の名前はナナー! エルフ族の超絶美少女で遠距離戦闘役(シューター)をやっている元気一杯夢一杯のクールビューティーだよー」

「自己主張激し過ぎだろう。オジサンはここまでコメントに困る自己紹介初めてだよ」


 フッ……これでペースは私の方に転がった……!。

 後は相手のペースを崩して私の有利な展開に持ち込めば!


「やめろよ。オジサン若いもんのテンションに着いて行くのは無理だからな」

「おっけー」

「……はぁ。それじゃオジサンの自己紹介と行きましょうかね……。オジサンの名前はガイ。ロールは一応獲物が短剣の近距離戦闘役(アタッカー)をやっているが……まぁもっぱらここで地面を掘っている」

「地面に穴を開けるフェチに子供達を巻き込まなくてもー……」

「バカ野郎……フェチじゃねーよ」


 ガイと名乗る渋い格好をしているオジサンはそうやってタバコをふかしながら頭をガシガシとかく。

 うーむ一々仕草が渋い……。

 もしや!? そうやって私にオジサンフェチを植え付ける作戦か!?


「知らねーよそんなフェチ。あとお前心の中で思うことは出来ないのか。さっきから全部ダダ漏れだぞ」

「美少女に向かってフェチとかダダ漏れとかオジサン命知らずだねー」

「…………」


 あっ、この人私の事残念美少女とか思っているに違いない。


「自覚があるなら何よりだよ……はぁ」

「そんな事より子供達に穴を掘らせている件について詳しくー」

「ここまで長かったな……まぁあれだよ、オジサンの思い出探しのためにさ」

「なるほど、分からんねー」

「まぁ一から最後までちゃんと話すからよ。お前はそこで黙っててくんないかな」

「…………」

「いきなり黙るとオジサン怖くなるからね?」


 そう言ってガイのオジサンは何故穴を掘るのか、空を見上げながら話を始める。


 それは今から二十年前。

 当時学生だったガイのオジサンは体が弱く、生活の殆どを病院で過ごしていたらしい。

 そんなガイだったが政府が用意したVR学園で、同じ境遇だった学生と一緒に学校の暮らしをしていたという。


「あの時は楽しかった物さ……。同じ境遇の学生がいるからか、皆が皆自分の願いに素直で、純粋で、お互いの願いを尊重して楽しく学園生活を送っていた……」


 だが体が弱い学生を対象にしたVRソフトからなのか、月日が流れると共に次第に現れなくなる生徒がいた。

 手術で快復した生徒。病で亡くなった生徒。

 色んな生徒が月日と共に消えて、また増えて、そうやって学生生活の最後を送っていく。


「そんな学生生活の最後の年だ。俺の所に一人の女子生徒が来たのは……」


 彼女はガイに告白をしたらしい。

 ガイと彼女が出会ったのは一年の頃らしいが、彼女が一目惚れをして告白をしようと思ったが恥ずかしくて告白できなかったとのこと。

 ガイは彼女の願いを受け入れ、それ以来一緒に過ごすことになったという。


「だが卒業をする手前、彼女は俺にこう言った」


 これから手術が始まるとのこと。

 そしてその手術の難易度は高く、生き残れるかどうかも怪しいと。


「だが俺はそれで別れるなんて嫌だと言ったんだ。だってそうだろう? 成功するにしても失敗するにしても、最後にこんな辛い思いをして別れるなんて嫌だろう? 最後でも……最後までは、一緒に過ごしたという思い出に浸りたいんだ」


 翌日、彼女からのメールで学園前の大きな樹の下で彼女の住所などが書かれた情報を埋めたという。

 例え彼女の手術が失敗しても成功しても、現実世界で一目会いたいと思ったのだろう。


「だが俺の方でも容態が悪化して、彼女が埋めた場所を掘り起こすことが出来なかった」


 そしてようやく快復したと思った時、ガイ達がやっているVR学園は次のバージョンのためにサービス終了していたのだ。


「俺と彼女との繋がりは完全に絶たれた……かに思われた」


 それから二十年の月日が流れ、ガイの身体は健康に戻り普通の生活を送れるようになった。

 そんな時にふとした気まぐれで、このマテリアルフロンティアオンラインをプレイして和と幻想の国ムラクモにて目覚めたという。


「それで色んなクエストとかやりながら装備を整えて旅に出たんだがなぁ」


 偶然見つけたこの街の入り口付近にあれを見つけたのだ。


「ほれ、向こうに見える大きな樹が見えるか?」

「まさかー? もしかするともしかしてー?」

「そのまさかかも知れないのさ」


 大樹のある場所や、街の構造。

 地面の大きさや空気の流れ。


「何もかも似てたのさ。あの時暮らしていたVR学園と同じ景色だったんだ」

「じゃあここで穴を掘っているのはもしかしてー……」

「あるのかも知れないんだ。あの時アイツが埋めた物が。あの時絶たれた繋がりがここにあるのかと……」


 現実的に考えれば有り得ない。

 過去にサービス終了したゲームが何らかの形で現在のゲームに出てくることはあるが、それが過去の同じデータではない新しいデータの可能性が高く、また同じデータでも彼女が埋めたという思い出のデータが存在するという可能性は低いのだ。


 それにガイの感覚で同じと言っても、関係ないという可能性もある。


 でも、恐らくガイのオジサンはここでずっと掘り続けるのだろう。

 絶たれた繋がりを求めて、存在しない可能性が高いにも関わらずガイのオジサンは掘り続けるのだろう。


「それで? お前さんはオジサンの美しい思い出話を聞いてどうする?」

「わ、わだじもでづだう! ぐすっ……す、スコップ貸してー!」

「えっお、おう……」


 これを聞いて手伝わない人間はいないよチクショー!!


「グスッ……うおおおおおお待ってろよー! オジサンの思い出は私が掘り起こすぅぅう!!」


 こうしてこの街に滞在する間、私がすべき事は決まったのであった。

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