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MATERIAL FRONTIER ONLINE:スタイリッシュパーリィーの冒険活劇  作者: クマ将軍
『MFO』ダイブスタート! 準備編
6/62

第5話 薬草依頼!

 早速依頼を受けようとするが依頼の受け方が分からない。ということで俺の登録を担当した受付のお兄さんに質問した。


「依頼受注の仕方ですね。先ず、依頼を受けるにはギルドの奥にある依頼掲示板に行きます。そこで冒険者様のランクに合わせた依頼が区分けされていますので、そこでやりたい依頼を見つけましたらここの隣に設置してあるクエスト用受付カウンターに持ってきてください。そこで依頼の手続きをします」

「ありがとうございました」


 俺は受付の人の言うとおりに依頼掲示板に行くと、そこには依頼を受けるために掲示板に群がる冒険者たちの光景があった。


「これは、一苦労しそうだな……」


 初となる記念すべき依頼を受けるにはあの群れに飛び込むしかないらしい。まるでバーゲンセールで商品を取り合うご婦人方のようだ。


『ああっ!! また依頼を取り損ねた!』

『やったぜ! これで新しい武器代ゲットだ!』

『おっ! その依頼いいな! 俺とパーティ組もうぜ!』


 それでもそこに鬼気迫る迫力というものはなく、冒険者達はこの状況すらも楽しんでいる様子だ。まぁ今日は待ちに待った正式サービスの日だ。俺もこの状況を楽しむとしよう。


「と言っても最初は何にしようかな……」


 群れに飛び込む前に俺はなんの依頼を受けるかその場で考える。

 候補としては討伐依頼か採取依頼の二つだろうか。他にも護衛依頼というものがあるが明らかに実力が伴っていないし、ゲームを始めたばかりで街の探索を済んでいない今、護衛依頼はなしだ。


「……なら地理の把握も兼ねて採取依頼にしようかな」


 討伐依頼も地理の把握は出来るが、あの理不尽な死に戻りチュートリアルが終わったばかりなんだ。もう当分魔物の討伐はいいや……。

 

「よし、そうと決まれば!!」

「あの〜冒険者様?」

「あ、はい、なんでしょう?」

「採取依頼は向こうの空いている掲示板で受けられますよ?」


「え? あ、はい」


 どうやら依頼の種別ごとに掲示板が違うようである。

 因みに採取依頼はガラガラでした。




 ◇




 受けた採取依頼はこれだ。


『クエスト:アオバ草を10個採取して欲しい

 進展状況:進行中

 依頼内容:回復薬を作るために使う材料であるアオバ草が足りません。

 冒険者の皆様方是非私達を助けてください。三番街の道具屋より。

 依頼報酬:回復薬3個+100G』


 採取するのはアオバ草という回復薬の素となる薬草だ。

 日当たりがいい場所で尚且つ風通しの良い場所でしか生えないらしく、春の森の並木道付近でしか採れない薬草という。

 丁度いい事にゲーム内季節で春の季節だからこの薬草を採取できそうだ。いや春からだからこそこういう依頼が来たのか。


「場所は東門から行ける『繋ぎの森』ってところか」


 事前に調べた情報ではその森にある整理された道の脇に生えているという。季節という採取タイミングはあるが、他の薬草と比較して採りやすい部類にある薬草だ。

 さて、ここから東門に行くにはかなり歩かなくちゃいけない。

 その間に俺はヘルプとかで色々ゲームの仕様を確認しようか。そう思って俺は冒険者登録の時に支給された冒険者手帳のヘルプのページを開いた。因みに先ほどの薬草情報もこの手帳から仕入れてきたものだ。


「通貨は(ゴールド)で……日本円に換算すると1G=1円になるのか」


 つまり、今回の依頼の報酬は回復薬に100円相当のGが貰えるということか。相場としてはどうなんだろうか。

 まぁ今回の依頼は報酬ではなく、周辺の地形の把握を目的としているから気にはしないが。


「おぉ凄いなこの冒険者手帳。色々な情報が盛り沢山じゃないか……」

「おいおい、ながら歩きは危ないぞ」

「え、あっ、すみません……」


 おっと夢中だったのか誰かとぶつかったようだ。

 手帳から目を離して前を見ると鎧の格好をしたおじさんがいた。そして周りを見るとどうやら俺は気付かぬうちに東門についたようだ。

 このおじさんは恐らくこの門を警備している兵士の一人だろう。


「本当にすみません……」

「いいってことよ。それよりお前さん見ない顔だな? もしかして新しく来た加護持ち(プロテクター)か?」

「あ、はいそうです」

「あぁ緊張しないでくれ、別に取って食おうって訳じゃないんだ。お前さんは依頼でここに来たのか?」

「そうですよ。実は初めての依頼でワクワクしてるんです」

「そうかそうか! でもここから先は魔物がいるんだ、さっきみたいな行動は危ないから気をつけろよ?」


 なるほど。ここは仮想世界とはいえ魔物が蔓延る異世界だ。この目の前のおじさんは現実世界みたいにながら歩きだと魔物にやられてしまう可能性がある事を俺に教えてくれたんだ。


「親切にありがとうございます! それじゃ頑張っていきます!」

「あぁ気を付けろよ!」




 ◇




「アオバ草の採取場所は……あの森がそうかな?」


 冒険者手帳を見ながら俺は採取場所である『繋ぎの森』にやってきた。それにしてもこの冒険者手帳、ゲーム的な仕様を除きゲーム内の設定が網羅されてる攻略本みたいなアイテムみたいだ。

 何かメモをするために必要な空白のページは勿論、冒険者ギルドに関する規約、困った時のトラブルシューター、果てには様々な素材や魔物に関する説明がある大百科的なページもあった。

 手の平大のサイズしかないのに中身のページ数は無限にあるという不思議道具だ。

 俺はこの冒険者手帳の凄さに感心しながら、大百科に載っている薬草のカテゴリにあるアオバ草の特徴を見ながら周辺を探す。

 すると森の入り口から数分歩いて行くと整理された道の横で見つけたのだ。


「おっ、あったあった」


 しかも運がいいのか十分依頼を達成できるほど大量にあった。


「おぉラッキーだな!」


 これだけあれば依頼人の分と俺の分も揃えられるな。しかしそんな幸運な状況とは裏腹に、突如足が揺れる程の地響きが俺を襲う。


「う、うぉ……なんだ? 地震か? いや、何か声も聞こえるぞ?」


 微かだが女性のような声が聞こえる。

 俺はその声を聞くためそっと聞き耳を立てる。


「けて……だれか……誰か、助けてーっ!!」

「えっ?」


 森の奥から徐々に大きくなってくる助けを求める声。

 ……って、おい待て!?


「なんじゃこりゃあ!?」


 猛スピードで此方に向かってくる少女らしき冒険者の後ろに、猪みたいな魔物の群れが追ってきていたのだ。あれは確か、死に戻りチュートリアルで戦った魔物の中にいた『ビッグボア』じゃないか!?

 不味いな……俺の装備はダメージのないピコハンだけだ。


「こ、これは見てみぬフリをするしか……」

「あっ! そこの貴方! この状況を何とかして〜っ!!」

『モォッ!? モォォォォォオオオオオオ!!!』


 おっとその女の人の声でビッグボアのヘイトが俺の方にも来たようだ。 


 ヘイトとは日本語に訳すと敵意という意味だ。

 ゲームに置けるヘイトとは特定の行動によって敵の意識がこちらに向けられている状態の事を指し、敵に向けられるヘイトが高ければ高いほどそのプレイヤーは敵に攻撃されやすくなるという効果がある。

 つまり猪のヘイトが俺に向けられているということは……。


「俺も逃げるしかねぇじゃねぇかぁぁぁぁ!!」

「うわぁぁぁぁぁん!!」

「俺も泣きたいわぁぁぁぁ!!」


 クソ何故こんな目に……先ずはこの状況を解決するしかないな。


 ビッグボアは確か突進攻撃しか攻撃手段がない魔物だ。ということはこのまま森を抜けて遮蔽物の無い平原に逃げるのは無しだな。人間の身体能力は猪の追跡を抜けられるほど高くないからな。

 ゲームだからスキルかなんかで逃げ切れると思うが、序盤のステータスでは土台無理な話だ。

 なら木々が生えているこの森の中の方が生存率が高いと思うだろう。だがそれでも二手に分かれて数を減らさないと撒くのは夢のまた夢。

 そのことを一緒に逃げてる少女に言うが……。


「おい! 二手に分かれて森の中に逃げるぞ!」

「無理無理無理無理!!」


 はいこれで作戦の最初の段階は破綻しました。

 あーもう、面倒くさいなぁ。


「な、何をするの!?」


 俺がピコピコハンマーを取り出すのを見た少女がそう叫ぶ。

 俺は初心者だが、一応ナガレの時のチュートリアルで戦闘系らしきスキルを持っている。それに使うのは癪だが俺には『暴走状態』がある。俺には最終的に『暴走状態』に頼ってこの場を切り抜けられる自信があるのだ。


 いや、興奮すればの話だがそこは未来の俺に期待しよう。


 話を元に戻すがこの少女の場合は分からない。

 ゲーム始めたばかりの俺も堂々とは言えないが、少女の装備はどう見ても初心者に見える。そんな少女があのビッグボアの大群から生き残れるのか、いや出来ない!反語!


「お前名前は!?」

「えっ!?」

「いいから名前は!?」

「あ、アンジュ!!」

「よしじゃあアンジュ! 俺一人で引き付けるからお前は後で俺に奢れよ!」


 この場を切り抜けられるのなら、例え危険でも行うべきである。

 俺は切り抜けられる自信はある。

 だが少女にはない。

 だから俺はこの猪どもを引きつけて少女を安全に逃げさせる事に決めた。少女はこれで逃げられて、俺は少女から貸しを作る。

 ゲームのプレイヤー同士が交流するのはその方がゲームを進む上で効率的だからだ。他のプレイヤーに貸しを作るのは今後の冒険に何か役立つはずだ。

 かなりゲスな考えだがそれはそれ、これはこれ。

 打算抜きに人は行動しない。俺もそうである。

 というよりも、こちらを巻き込んだ責任は向こうにあるのだ。


 ということで俺は後ろの猪共に向かって全力でピコピコハンマーを投げる!


「それじゃあな!」

「あっちょっと!?」


 ピコピコハンマーがあの猪に当たる前に俺は急いで少女から離れ、木々の隙間に入る。入った瞬間、後方からあのピコピコハンマー独特の音が連続で鳴った。


『ブモォォォォォッ!!!』


 あぁ、これで俺はもう逃げられなくなった。

 それにしても流石あのナガレ特注ピコピコハンマー、挑発スキルBの効果は伊達ではなかったな。作成者の煽り性能をそのまま効果にしたような感じだ。

 そう考えていると俺の右手にピコピコハンマーが戻って来た。

 このゲームは投げナイフなどの一部のアイテムを除いて、基本的に所持者が完全に手放すことを考えない限り幾ら投げても戻ってくる仕様である。ご都合主義? ノンノンこれは詐欺対策である。装備見してと聞かれ、装備を手渡したらそのまま逃げるのを防ぐための仕様なのだ。

 さてこの分厚い木々の中、あいつ等は迂闊に突進してこないだろう。


 そんなことを考えていた時期が僕にもありました。


『モ゛ア゛ア゛ァァァァァァ!!!』

「マジかよ……」


 アイツ等、木の遮蔽物が目の前にあるにも拘らず突進してきやがったのだ。


『モ゛ッ!? モ゛ッ!?』


 当然木にぶつかった猪はその場で目を回すが、後方にいる猪はお構いなしに突っ込んでくる。しかも直線でしか突進してこず、いきなり曲がれないため味方諸共木に激突するしかないのだ。

 そんな光景に呆然としていると何かが折れる音が聞こえる。


「本日二度目のマジかよ……」


 あの分厚い木々が折れようとしていたのだ。

 ジーザス、なんて執念なんだ。例え仲間が死体になろうともそれらを踏み越えて地の果てまで追い付こうとする覚悟さえ感じる。

 あぁしかし、なんてこった。


「先生……武器の攻撃力がありませんっ……!」


 余裕に聞こえているかもしれないが滅茶苦茶余裕ないです。

 そう言葉の通り俺の持ってるピコピコハンマーには攻撃力が存在しなかったのだ。まぁピコピコハンマーに攻撃力が存在していたらそれは最早ピコピコハンマーですらないのだが。

 あの執念深さだ。

 当然俺のスタミナがなくなるまで追いかけ回されるだろう。今持っている武器に攻撃力があれば迎撃という手段を取れるがこのピコハンだ。このピコハンに一体何を期待すればいいのだろうか。

 採取依頼だからって武器を買わなかったツケがここに来たか。一応素手での攻撃は通るようだけど、あの群れ相手に素手は自殺しに行くようなものだ。


「これは一回死に戻るほうが吉……か?」


 だがあの死に戻りチュートリアルにデスペナルティが無かったが今回は違う。

 全ステータスのランクが二段階ダウン、所持金半減、アイテムランダムロスト等結構重いデスペナがこのゲームにはあるのだ。

 だから俺はあの少女を助けたのだ。切り抜けられる自信が当時あった俺だからデスペナは怖くなかった。だがあの少女は確実に死ぬだろう。そして初心者の内に最悪なデスペナでこのゲームから離れるという事があるかもしれない。

 誰だよ切り抜けられる自信があるって言った奴。俺ですね。あのぉ自信があったのは当時ですよ当時。当時は確かに自信がありました。今? そんな自信ねぇよ。

 アカン、HCヒットカラーが激しく点滅していた。

 これが激しく点滅しているということはスタミナがもう直ぐ切れるということだ。心臓の鼓動と共に点滅していて、ゲームの中なのに走る気力が無くなっていくのが感じる。


 そこに、


『一定の走行距離を確認しました』

『パッシブスキル《持久走》を入手しました』


『パッシブスキル《軽業》のランクがEになりました』


 スキルのアナウンスありがとうございます。

 よっしゃあああああ!若干だが身体が軽くなったぞ。


 見ればHCの点滅が若干だが緩やかになっていくのが分かる。


「よし! これで一時しのぎに……」


 後方を見る。

 猪が三匹。


「TAKE2。……よし! これで一時しのぎに……」


 後方を再度見る。

 猪は変わらずに三匹。

 あれれ~?おかしいなぁ~?あの大群が残り三匹に見えるぞぉ~?

 ……いや幻覚じゃねえわ。


 更に後方を見ると猪の死体がいっぱいあったわ。


 どうやら次々と木やら仲間やらと激突して自滅したらしい。コイツ等馬鹿だ。いやそうさせるこのピコピコハンマーのヘイト能力が凄いのか?

 だがこれはまたとないチャンスだ。幾ら俺の武器に攻撃力が無くとも俺には自慢の素手がある。たった三匹の猪、それも瀕死状態ならばなおさらだ!

 速度を緩めず、弱った相手へとUターン!


「ヒャッハー!! 俺の時代が来たぜよ!!」




 ◇




『近接格闘を確認しました』

『パッシブスタイル《インファイタースタイル》を入手しました』


『再度、脳波に異常を感知しました』

『ユニークスキルの申請確認中……』


『ユニークスキルの取得、失敗しました』

【現在の『キョウ』のステータス】


NAME:キョウ

RANK:E-

ROLE:アタッカー

TRIBE:ヒューマン

HC:グリーン

MC:ブルー

STR:D-(D+)

DEX:D-(D)

VIT:D-(D+)

INT:D-

AGI:D-(D+)

MND:D-

LUK:D+


()内はスキルによる補正


【称号】

《初心者》《ハンマービギナー》《案内人を泣かせた男》

《インファイトルーキー》


【パッシブスタイル】

《ハンマースタイル:E-》

 ハンマー使用による戦闘で、PLはステータス補正を受ける。

《インファイタースタイル:E-》

 近距離格闘による戦闘で、PLはステータス補正を受ける。


【スキル】

『パッシブ』

《跳躍:E-》《軽業:E》《持久走:E》NEW!

『アクティブ』

《ハンマースロー:E-》《アイアンフォール:E-》《ドラムハンマー:E-》


【装備】

右手:ナガレ特注ピコピコハンマー

左手:-

防具:初心者用皮装備一式

装飾:-


【所持金:5000G】


以下用語説明。


ビッグボア

成人男性一人分の巨体とその大きな牙が特徴。

攻撃方法は突撃のみ。普段は群れから逸れており普通に戦闘する場合は一体の場合が多い。

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