第9話 目的
大変お待たせしました!
あとメリークリスマス!
『お主の身体から、我らが持つ精霊の力と同じ感覚がするのだ』
「……は?」
そのアウルムの言葉に、今この場にいる全員の動きが止まった。
現状、俺達に精霊に関する知識が無い中、唯一精霊と関わりのある存在といえば精霊眷属と呼ばれる存在だけだ。
だがその精霊眷属自身、ただ分かっていることは悪霊と呼ばれる存在を滅ぼすという使命を帯びているということだけ。
それがよりにもよって、一般プレイヤーである俺から精霊と同じ力を感じるだって?
「一体どういうことなんだ? 確かに時々、非常識で頭がおかしい性格があるキョウだが、こうも偶然に精霊に関する手掛かりがあるというのか?」
「……何気に酷いなお前」
『うーむ……だが確かに感じるぞ……微弱なものだが我らと同じ精霊の力が』
「兄さん……?」
ライカが困惑顔で見つめてくるがそんな目で見つめられても俺が困る。
俺自身もよく分かっていないし、そもそもアウルムの言う精霊の力というものも全然分からないのだ。
「なぁアウルム……その、本当に本当なんだな?」
『我が主は心配性だな。だがこれほどの微弱な物だとこれは最早、痕跡に近い』
「痕跡?」
『そう、痕跡だ。現状から分かることは、精霊の力がキョウの身体に干渉していた痕跡があるということだな』
その言葉にゴストは一瞬考え込み、俺に尋ねる。
「なぁキョウ、何でもいい。とにかくこれまでの事でこう……不思議な体験とかは無かったか?」
「不思議な体験って……『暴走状態』以上の不思議ってあるわけ……」
瞬間、俺は大臣と戦っていた時に現れたログを思い出した。
「あるんだな?」
念を押すように言うゴストの顔が怖い。
だがそれ以外の心当たりだと残念ながら俺には思い至らないのが現実だ。
あのログのお陰か、もしくはその所為か。
確かあの時に、俺はユニークスキルを手に入れたのだ。
いつもと違うログの画面。途切れ途切れの文字。
それが一体何の意味をするのか分からない。
しかし、それを調べようとも当時のログは何故か記録されていないため見ることが出来ない。
ユニークスキルについて、その効果について。
俺の『暴走状態』に関わる情報を、果たして皆に言ってみてもいいのだろうか。
なにせ、現実世界で『暴走状態』の被害を受けまくった彼らだ。心当たりを話した瞬間何されるかも分からない。
だがコイツらは俺の仲間で俺の親友だ。一瞬の逡巡をした後、俺は彼らに心当たりであるユニークスキルの事を話した。
◇
「嘘だろ……条件をクリアすると『暴走状態』に近付いていくユニークスキル……!?」
そう呟きながら絶望したかのように膝をつくゴストに、俺は冷ややかな目で見る。
「なぁお前、オーバーリアクション過ぎるだろ」
一瞬でも親友と思った俺が馬鹿みたいだ。
そんな俺達に対し、ナナはふと何を思ったのか俺に尋ねる。
「ねぇ兄者ー。疑問なんだけどさ、今の兄者の段階ってどこら辺?」
そのナナの疑問に俺は一瞬言葉を詰まらせた。
お前の兄は既に常識を捨てて第一段階に到達した、なんて果たして言えるのだろうか。
いや、ナナの場合なら多分問題ないと思うが他の奴等は頭を抱えるだろう。
そう思っていると、ゴストからスキルを唱える言葉が聞こえた。
「『状態識別』」
「え!? ちょっと待って!?」
状態識別というスキル。その名の通り、他人の状態を識別するスキルである。
このゲームでは他人の状態を確認するには、全部で四種類の方法がある。
一つ目は状態の特徴から推測をすること。
毒なら、皮膚の表面に出ている色の具合。
麻痺なら身体の痙攣といった具合にだ。
二つ目は、相手から直接聞くこと。
余程の理由が無い限り基本的にデバフはデメリットしかないため、ちゃんと答えるだろう。
だが前者の場合、稀に特徴が表れない厄介な物もあるし、後者の場合、相手側の意識が無い状態や言葉を話せない状態があるため、先程言った二つの方法は使えない。
その場合は、専門の医者に見せるなど医療施設を使うのが三つ目の方法だ。
だが今回ゴストが俺に対して使った方法といえば、プレイヤーがプレイヤーの状態を識別する、主に広範囲支援役で使われている四つ目の方法。スキルでの識別だ。
つまりどういうことかというと。
「馬鹿な……状態異常、第一段階中……だと!? お、おいキョウどういうことだ! 何か状態説明に常識を捨ててるとかお前……お前ーッ!?」
このように今の俺の状態が分かるようになるっていうことです。
「まぁまぁ落ち着いて……って異常!? これ状態異常なの!?」
よりにもよって一段階に移行したあの時の決意をバッドステータス扱いだと!?
どういうことだ運営! あっ運営、敵側じゃねーか。
「しかし皆さん。これで私のアップデートされた知識や、アウルムさんが感じた精霊の力、そして精霊に関する謎は解けましたよ」
『何? それは本当か大臣よ?』
その言葉に、アウルムが先に反応する。
「ええ。寧ろこの謎はこの世界の真実を知っている私だからこそ辿り着けた答えです」
そう言った大臣の顔は、確信に満ちた表情をしていた。
その自信に、先程までの騒がしさは消え、皆が皆一言一句大臣の言葉を聞き逃さないように注意をする。
「本来、プレイヤーが持っているスキルシステムに干渉出来る存在は、開発も兼ねている運営側……つまりGMの人たちです」
自分で作った物を修正、改造出来ない開発者はいない。
しかしそれでは何故、後に敵対するプレイヤーにユニークスキルを与えるのだろうか。
「そこですよ」
「……どこー?」
「私達は、システムに干渉できる存在は運営側だけ……そう思っていました。ですがそれがもし間違いだったとすれば?」
「俺にユニークスキルを与えたのは運営じゃない……?」
そこで、俺はまるで全てが繋がったかのような感覚を得た。
悪霊を倒すという精霊の使命を帯びた精霊眷属。
その悪霊と繋がっていると思われる運営。
そしてその運営は、精霊を求めている。
「システムを干渉できるのは運営だけではない……」
「精霊という存在も、このシステムに干渉できる存在なんですね……!」
「このログアウト不能という事件……これは精霊と悪霊、そしてその悪霊に手を貸している運営の戦いということになります」
「だとすれば、その精霊という存在はプレイヤーの味方……だと考えればいいわけだな?」
「ええ。実際、この世界のプレイヤーは精霊から加護を与えられた加護者という設定ですし、プレイヤーであるキョウさんにユニークスキルを与えた経緯があります。それに精霊眷属という存在も見て、先ず間違いなくプレイヤー側の味方でしょう」
そして大臣は自分のこめかみに指でトントンと叩き、こう言った。
「そして私みたいな各国の権力者に、真実をインストールした存在も……精霊ということになります」
全ては悪霊と運営に対抗するため。
そのためには、プレイヤーという存在が不可欠で、彼らを手助けするために精霊は権力者にアップデートを施したという訳だ。
「運営側はどういう訳か精霊を見つけることが出来ない。だからその精霊から加護を受けたプレイヤーに探し出させ、それを横から掠め取るという算段だろう」
「だけど私達が何も行動しないと、一生このゲームに囚われることになるということになるしー」
「ええ、ですから貴方達は精霊を見つけ出し、運営の強奪を阻止する必要があるということになります」
「うわー難易度高いなー」
そう言いながらも、ナナの表情は不適に笑っていた。
「さて、これで話は一通り終わりましたね」
「あぁ、大臣ありがとうな。これで俺達のやるべきことが分かったよ」
「お礼には及びませんよ。私がこれまで仕出かしたことを考えれば足りないぐらいです」
「……そうか」
そう言って、話を切り上げようとした瞬間、一人の兵士がこの部屋に入ってきた。
「お話の途中、申し訳ございません」
「いえ、丁度区切りがついた所です。どうしましたか?」
「実は――」
その兵士が報告した内容に俺は、驚愕することになった。
何故なら、その内容とは……。
「三番街の住民が、独立に向けて行動を始めました」
大学が忙しかったため、執筆する時間が無かったんですすみません!
お礼に何でもしますから!




