第4話 スキルアップグレード
お待たせしました。
※結成編、登場人物紹介のキョウのステータスに称号の入れ忘れがあったため追加しました。追加した称号《ウィザードアパランティス》。
行き当たりばったりな設定でごめんなさい。
◇SIDE キョウ
「うっ……ここは……?」
気が付けばフカフカなベッドの上で寝ていた。
だが直後に香る太陽の香りが身体を包み込み、俺をまた夢の世界へと誘う。ここ最近硬くてカビ臭いベッドで寝ていたから俺にとってこのベッドは超高級品と同等の代物だった。部屋もカビ臭くなく埃っぽくない。実に最高だ。壁も綺麗で天井に吊るしている明かりも壊れておらず、どこぞの道具屋にある部屋とは何もかもが違う。
「いやナチュラルに寝床を提供した恩人ディスってんじゃねーよ俺」
そう言って起き上がろうとするも、頭が痛い。
うんもう動きたくない。よし寝よう。
「……いや待てよ」
第一ここはどこだ。何故俺はこんな高級そうな(※主観)部屋で寝ているんだ。
揺れる頭を何とか抑えて俺は上体だけ起こす。
「…………何か見覚えがあるな」
いや、よく見ればここは俺がチュートリアルで死んだ際に寝ていた冒険者会館の一室じゃねーか。
だが疑問なのは何故俺はここに戻ってきているんだ?
そう思って足をベッドから降ろすと足の裏にザラザラとした感覚が襲った。
違和感を感じて足元を見るとそこには何も履いていない足があった。
「は、裸足? なんで裸足?」
大臣と戦う前に低コストでありながら初心者用皮装備一式よりもマシな防御力を持つ皮装備一式を買ったが、現在は足の部分が無くなっていたのだ。
「えっ何で、どっか失くし――」
とそこで俺は思い出した。
俺はあの決闘で負けて、死に戻りをした。
その結果がこのデスペナルティのアイテムランダムロスト。
「…………」
俺はベッドに横たわり、何気なく天井を見る。
脳裏に浮かぶのは決闘の内容。
結果は完敗。途中までは互角に戦っていたと思っていたが結局は相手が本気を出していなかっただけで本気を出した次の瞬間、俺は何も出来ずに死んだ。
あの青い炎。何故かは分からないがあれを見た瞬間、恐怖が襲い掛かってきた。恐怖により身体が思うように動けなかった。いや、動こうとする余裕が無かった。
それでもまだ良い。
もしあれがスキルの効果だとしたら必ず対処法があるはずだろう。
問題はその後。アラキとか言うGMが俺の胸を貫く瞬間が見えなかったのだ。
見えなかったということはそれほどまでにアイツとの実力に差がありすぎるということ。
それがステータスでも、プレイヤースキルでも、とにかく今の俺では本気のGMに敵わないことが分かった。
ふと、俺は自分のステータスがどれぐらいなのか気になった。
「……ステータス」
何も無い所に指を下にスライドさせると目の前にホロウィンドウが現れた。
NAME:キョウ
RANK:E-
ROLE:アタッカー
TRIBE:ヒューマン
HC:グリーン
MC:ブルー
STR:SS-
DEX:C-
VIT:B+
INT:C+
AGI:S-
MND:C-
LUK:D+
【流派】
《我流・変幻爆砕》
【流派スキル】
《幻惑の槌》
【称号】
《初心者》《ハンマービギナー》《案内人を泣かせた男》
《インファイトルーキー》《スラム街の救世主》
《億万長者》《カジノの頂点》《精霊遺産ゲッター》
《真面目の証拠》《ジェノサイダー》《流派開祖》
《ウィザードアパランティス》《GMからの期待》NEW!
【パッシブスタイル】
《ハンマースタイル:S+》★
《インファイタースタイル:S+》★
《ウィザードスタイル:C+》
【スキル】
『パッシブ』
《パルクール:B-》
《センスマジック:C+》
『アクティブ』
《ハンマースロー:S+》★《アイアンフォール:S-》《ドラムハンマー:E-》
《威圧:S》《フルスイング:A》《挑発:A》《サラマンドラの業火:D+》
《アースクエイク:C-》NEW!《デンプシーロール:C-》NEW!
『ユニークスキル:???』
【装備】
右手:ナガレ特注ピコピコハンマー
左手:ロキの鉄槌
防具:皮装備(足:なし)
装飾:-
【所持金:50,000,002,100G】
「なにこれ!?」
ランクはいつも通りE-とかいう最低値だが他のステータスが件並み高くなってる!?
特にSTR。確かに俺は精霊遺産の中でハンマーという高威力そうな打撃武器を手に入れたけれどもオメー、SS-とかオメー。あとVIT(生命力)もAGI(素早さ)も高くなってまぁ、俺いつの間に脳筋キャラになってたんだ。
次に称号。他はまぁ納得できるとしてこれだよ。
《GMからの期待》という称号。
「……『中々面白い物を見させてもらった。我らGM一同、お前に期待しているぞ』……だって?」
これがこの称号の説明である。説明ってかこれ説明じゃないやん。
手紙にしたためて送って下さいよ。何で手紙代わりに称号送るの? ねえ。
もう本当に勘弁してくださいよぉ。お前ら一体何に期待してるの?
負けた俺に対しての慰めですか? いや待ってこれ本当に怖いんだけど。
四六時中ずっと監視されてる感が半端ないんですけど。
「…………」
よしスルーしよう。
どう足掻いても無理だ、俺にプライベートなんてなかった。
次を見てみると、所々★マークがあるのに気付いた。
「これは……《パルクール》を手に入れた時に現れた★マークじゃないか」
パッシブスキル《パルクール》とは《軽業》《跳躍》《持久走》《登攀》の計四つのスキルをBランク以上にして、合成されたスキルだ。
当時俺はゴストからおすすめのスキルという物を教わり、冒険する上で必要な超高性能移動スキルである《パルクール》を覚えたのだ。
その時の事を俺は覚えている。《パルクール》を覚える際に移動系の四つのスキルをBランク以上に上げた時にステータスのスキル欄で★マークが現れ、合成を実行したんだ。
★マークの事を詳しく調べるためにヘルプを念じて、指を左にスライドすると今見ているステータスの画面が左にスライドされ、右からヘルプの画面が出てきた。そしてそこにはこう書かれてあった。
◇
『★マークについて』
『習得したスキルが一定のランクに到達するとスキル名の横に★マークが現れることがあります』
『★マークが現れたスキルは所謂、現時点での最高ランクに到達したということです』
『ゲームの最高ランクはSSS+CSですが、アップグレードしていないスキルの最高ランクはS+です』
『ランクS+に到達したスキルには★マークが現れ、晴れて次の段階へと強化させることが出来ます』
『また他のスキルにも同じ★マークが現れた場合、条件が達成していればそのスキルと合成させることが出来、複数のスキルが一つになるというデメリットがありますが効果がより強力な物になります』
『合成するスキルの数は無限で、必ずしも二つだけとは限りません』
『また★マークが現れるのは必ずしもスキルや一定のランクに到達することではありません』
『★マークが現れるのはスキルの他に称号、武器装備に現れ、プレイヤーの行動により最高ランクに到達していなくとも★マークが現れることがあります』
『★マークが現れた際は積極的に強化・合成していきましょう』
◇
「そうか……俺はまだまだ強くなれるのか……」
今の俺の状態はゲームを始めた初心者も初心者。
今まで俺が低ランク、低装備でも強敵相手に渡り合えてきたのは、運によって序盤に手に入れた強力な武器と『暴走状態』による所謂反則能力のお陰だ。
だが俺自身の強さは対して強くない。
俺自身を幾ら強くしても結局はゲームの中での強さ。
対して相手は何でもアリなGMだ。
ならどうすればいいのか。
答えは決まってる。
相手が何でもアリならこっちもこの『反則能力』に頼るんだ。
だが本気のGMと渡り合うのは先ず、この俺自身が強くならないといけない。
俺自身が強くなれば戦闘による選択肢の幅が広がる。
選択の幅が広がれば『暴走状態』の強さの幅が広がる。
「好き嫌いで、この先やっていけるかよ」
俺はこの能力が好きではなかった。
実際この『暴走状態』のお陰で俺は色んな面倒事に遭わされたんだ。だけど俺はこの『暴走状態』を制御しようとは思わなかった。どう『暴走状態』にならないかだけ自分の感情を抑えてたんだ。
でも幾ら面倒事に遭わされたからって結局は内心、楽しんでいた。感情に流されてみると爽快な気持ちで面倒事を解決していく『暴走状態』に気付けば頼っていた時期もあった。
おかしいよな。いざとなれば頼るのに、面倒事を嫌って俺が一方的に『もう一人の俺』を嫌っていただけなんだ。
「いい加減向き合う時だな」
これまでの行動で今更な気もするけど、素の状態で言ってやろう。
もう自重しない。
「俺はもう自重しないぞ! 〇ョ〇ョーーッ!!」
……ふぅ、何て心地良い言葉なんだ。
胸のつかえが取れていくようだ。
さし当たっては★マークが出ている諸々の部分を強化しよう。
先ずは君達パッシブスタイルの部分からだ。
今俺のパッシブスタイルには《ハンマースタイル》と《インファイタースタイル》の二つに星マークが付いている。今更だがパッシブスタイルとはそのプレイヤーが持つ戦い方を表すスキルだ。
このスタイルを持っていて、それに対応した武器で戦うと動きに補正が掛かるというスキルで、習得するのにはプレイヤーが武器を持って、システムが初心者レベルの技量と判断した場合入手できるというわけだ。
よって「全部のパッシブスタイルを入手できれば俺強くねwww?」と考えた奴は全ての武器に対する基礎レベルの技量を身につける必要がある訳で、全部習得するぐらいなら一つに絞ったほうが良いと言われている程。
えっ俺? いや俺はまぁその、その時は既に『暴走状態』になっていたから習得するのに安易だった訳ですよ、はい。
まぁそこは置いといて俺はそのスキルを指で押した。
するとそのスキルの説明が出てきた。
『ハンマースタイル:S+
ハンマーで戦うプレイヤーのスタイル。
ハンマー使用時に補正が掛かる。
圧倒的な攻撃力で敵を叩き潰せ』『★』
なるほど、これがハンマースタイルの説明か。
確かに説明欄の他に★マークの欄があるな。
俺はその欄に指を押した。
『パッシブスタイル:ハンマースタイルが一定のランクに到達しました』
『合成条件に一致し、一定のランクに到達したスキルを確認しました』
『《ハンマースタイル》を《クラッシャースタイル》に強化させますか?』
『《ハンマースタイル》と《インファイタースタイル》を合成しますか?』
今、俺の目の前に浮いている画面は二つ。
一つは強化させるという画面と合成させるという画面。
どちらを選ぶのかという思考は無い。俺は即、より強力になる合成の欄を押した。
『《ハンマースタイル》と《インファイタースタイル》を合成します』
『《ハンマースタイル》と《インファイタースタイル》は《ストームスタイル》になりました』
『ストームスタイル:E-
ハンマーと格闘能力同時に補正を掛けるスタイル
格闘能力の高い肉体で威力が高いハンマーを用い嵐の如く敵を叩きのめせ』
『特定スタイルの入手を確認しました』
『《称号:ストームスターター》を手に入れました』
「これが……俺の新しいスタイル……」
スキルを確認した俺は次に★マークがある《ハンマースロー》を強化する。
『《ハンマースロー》を《ハンマーシュート》に強化しました』
『スキルの強化を確認しました』
『《称号:アップグレーダー》を手に入れました』
「これで★マークは大体終わったか……」
だがこれで終わったわけじゃない。
むしろようやく来たかって感じだ。
「このユニークスキルって……一体なんだ?」
大臣戦の時からずっと気になっていたが確認する前に事件が起こり続けて見るタイミングを失ってしまったスキル。
ヘルプによるとプレイヤー個人が持つ唯一のスキルとだけ書かれており、その効果や入手方法とかは完全に個人の資質次第とのこと。
そして唯一と書かれている通り、ユニークスキルは絶対に重複しないだそうだ。
「それにしても何だこのハテナだらけの名前は……?」
ユニークスキル:???って完全に名称不明になっていますやん。
スキルの説明を見ようにも文字化けだらけで解読不能だし。
だがユニークスキルの欄をボーっと見てみると俺はとあるログを思い出した。
そう、大臣戦の時に聞こえたログ。
「あれは確か……」
――『『????』がプレイヤーネーム『キョウ』のアバターシステムに組み込まれました』――
「そんな感じだった……ような」
――『『????』がユニークスキルに変化しました』――
「その後に『暴走状態』が発動して……」
――『ユニークスキル『????』を発動します』――
「――っ!?」
まさか、このユニークスキルは……。
「『暴走状態』をベースにしている……?」
皆さん、ご一緒に。
な、なんだってー!?(棒)




