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MATERIAL FRONTIER ONLINE:スタイリッシュパーリィーの冒険活劇  作者: クマ将軍
第一章 冒険者の集う国カンレーク
31/62

第1話 VRシステム

本日最後の投稿です。

 マテリアルフロンティアオンライン、通称『MFO』。

 俺がそれを発見したのはαテストが始まっていた頃。その時のゲーム業界はVRシステムを使ったゲームが多く、ファンタジーやSFといった様々なジャンル問わず全てがまるで現実的なグラフィックを誇っていた。


 そんな中見つけた『MFO』というゲームはこれまでのグラフィックから一転、まるでイラストが動いているかのようなセルシェーディングを活かしたゲームだったのだ。


 アニメ調で描かれているためか、スキルのエフェクトや演出が過剰に演出されており、風景の描写は現実以上に幻想的に描かれていた。


 その時の俺は常日頃から『暴走状態バーサクモード』により振り回されていたためか、このゲームに興味を持った。もしかしたら可愛いアニメのイラストから癒しを得たいのかと思ったが調べていくうちに、まるで他のゲームの良い所取りしたようなシステムや自由度に先程の理由とは関係なくのめり込む様になる。


 そしてαテストが終わりβテストの応募開始に俺は応募し、落ちてしまった。


 更に落ち込んだ俺に追い討ちをかけるかのように、親友である神崎がβテストに受かったことで涙目になった。それから来る神崎の自慢話に辟易し、時に期待しながら俺はβテストが終わる三年後、正式サービスに参加することが出来た。


 それが何の因果か俺は普通の人とは違う流れになった。最初にクエストを受けるのは薬草採取だと勝手に決めつけて、受けてみたら何故か高ランククエストに変化し、国の住人に悪い意味で噂されるようになった。

 そいつらを見返そうと金を集め始めたら何故かカジノで大当たりして、大臣が気に入っているハンマーを手にした結果、大臣から指名手配された。


 この時点でもうゲーム止めようかなと思う人もいるだろうが、俺は諦めなかった。何故ならこれまでの出来事は単に俺がというよりも『暴走状態』になった俺が招いた出来事であってゲーム本来の魅力とは言えないのだ。いや自由度で言えば間違いなくこのゲームの魅力だが流石に悪い方向に突き進んでいるのは納得が行かなかっただけだ。


 幸い俺には仲間がいた。先にβテストを始めてSランクプレイヤーになった親友に俺の可愛い妹二人が仲間にいたんだ。俺よりも遥かに頼もしい彼らは俺のために準備を始めた。

 仲間と一緒に敵を倒して連携を深め、俺の問題を解決するために一緒に作戦を練った。仲間には悪いがこの一週間は本当に楽しかった。これが俺が求めていた『MFO』の世界。たった一部だけどそれでも満足した。


 それから城に潜入し、大臣と戦い、俺は漸く問題を解決した……と思う。


 まぁ思うというのは『暴走状態』になった俺が城を半壊してしまった訳だが。そんなこともあったがこれで俺は普通に『MFO』を遊べるのだ。確かにこのときはこう思ったのだ。


「ログアウトが……出来ない……?」


 ログアウトが出来ないという事件が起きるまでは。




 ◇




 貴族街、平民街、スラム街の区画を繋ぐカンレーク国内の中央広場。その場にて、運営から全世界に向けた同時中継を行なうらしい。中継の内容は分からないがその前に起きたログアウトが出来ないという現象を起きているため、多分そのことについて説明を行なうのだろう。

 俺達が中央広場に着いた頃には既に大勢のプレイヤーでごった返していた。その中でまだ時間が来ていないにもかかわらず、いない運営に対して罵声を浴びせるプレイヤーがいた。


「なぁやっぱこれってバグ?」


 聞き耳を立てると誰かの話し合う声がする。誰もがログアウト不能という現象について話し合っていた。


「でもVRシステムが発明されてから二百年間ログアウト不能という現象は起きてなかったぞ?」

「しかもどう考えたってVRシステムでバグが起きるわけねーし」


 誰もがVRシステムでバグが起きる筈がない、例え起きてもログアウト不能という現象は起こらないと誰もが言い、最終的に運営の所為ということで一部のVRシステムについて詳しいプレイヤーが結論する。


 これについて俺の親友である神崎はこう説明した。


 VRシステムというのは使用者の脳波を解析して、使用者の分身をVRシステム上で作り出し、分身を脳波で操作するというシステムだ。その際使用者は睡眠脳波と呼ばれる特殊な脳波で眠りに落ちる。

 これはVR内での行動と現実の行動に支障を来たさないためで、また睡眠時の方がより脳波の送受信が取りやすいという理由らしい。


 VR世界で作り出された分身の行動は使用者の脳波により操作することが出来る。そして使用者に疑似体験させる機能は、VR内での行動には使用者の脳波から使用者の身体の限界を数値化した物、通称『限界数値』と呼ばれる数値が関わってくる。

 分身が取る特定の行動で『限界数値』に設定されている感情感覚パラメーターが変動し、一定の基準値を超えるとシステムが脳に感覚を伝える。

 これによりVRシステム内でも疲労や睡眠などの感覚を味わうことが出来るのだ。そしてそうしたVR世界内で行動した記憶は常に脳へとセーブされる。


 そう、別に精神や意識をVR世界に移すとかでもなく、このVRシステムは夢の中を自分の意思で遊ぶような物なのだ。だからこそ分身が事故に遭っても現実の使用者には何も問題が起こらない。例えバグが起きても緊急装置により強制的に眠りから覚めて何も問題がない。

 それどころかこのVRシステムの方法が発明されて以来、誰もログアウト不能という現象は起きていないしそもそも二百年の積み重ねによりバグ自体もないという安心設計なのだ。


 それなのに何故ログアウト不能という事件が起きるのか。


 VRシステムが異常を検知すると緊急装置が作動して強制的に使用者を目覚めさせる装置がある。それが作動しないということはそもそもVRシステム自体に異常は起きていないということ。

 ログアウトが出来ないということはつまり、運営が意図的にそうしている以外に他ならないのだ。


「時間だ……」


 プレイヤーの誰かがそう言った。


 瞬間、中央広場のど真ん中からプレイヤーを押し出すような結界が発生する。運悪く中央広場の真ん中にいたプレイヤーは周りのプレイヤーを巻き込んで後方へと押し出される。


「お集まりいただきありがとう、プレイヤーの皆様方」


 そこに、男らしき声が辺りに響く。押し出されたプレイヤーの悲鳴があるにもかかわらずはっきりとそう聞こえ、やがてプレイヤーが落ち着き始めるとプレイヤーが押し出された中央広場の真ん中に、頭から黒いローブを着た五人の人がいることに気付く。


「私達はこのゲームのシステム設計者にしてゲームマスターです」


 この声は真ん中の男らしき人型からだ。どうやら彼がGMの代表らしい。彼はゆっくりと周りのプレイヤーを見渡してこう言った。




「それではイベントの内容を説明致しましょう」

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