第4話 レッツパァァリィィィィ!
『冒険者の集う国カンレーク』から東にある繋ぎの森、深部。
整備された道から外れ、森の中を歩くこと約二時間。
そこでゴブリンが集落を作っている所を発見した。
そして現在、俺達は集落から少し離れて作戦会議をしていた。
『クエスト:ゴブリンの集落を壊滅せよ
進展状況:進行中 0/3
依頼内容:定期討伐です。増えてきたゴブリンの集落を三つ壊滅してください。冒険者ギルドより
推奨ランク:Cランク相当の6人パーティ推奨
依頼報酬:一人当たり5000Gの報酬』
これがゴッドストレートスマッシュが受けた依頼だ。
依頼内容にもツッコみたいが先ず、この推奨ランクの所を見て欲しい。
そう、Cランク相当って書いてあるだろう?
「あの……今の俺のランク、E−なんですけど……」
「まぁいいんじゃないか? ギルドランクなんて依頼を受けるための目安みたいなもんだし」
曰くこれは難易度の指標みたいな物で、プレイヤーのクエストクリア状況を参考に、ギルドカード更新時にギルドがプレイヤーのランクを決めるらしい。
それでそのランクと依頼に出されているランクの二前後が、プレイヤーの対処できる依頼の難易度という。
「キョウはあまりクエストこなしてないし、ましてやギルドカードを更新できる状況じゃないからな」
「そうなのか……」
恐らく大臣の件を終わらせるまで俺はずっとE−のままだろうな。
「それはそうと、戦闘をする前に皆どんなロールなのか確認してもいいか?」
「ロール?」
「何だ? それもギルドから聞いてないのか?」
「いや、確か聞いたことあるな」
でもその時のロールの項目には何も書かれていなかった。
これは戦闘を繰り返せば自然にロールが決められていく訳だが、今はどうなんだろうか。そう思って俺は自分のギルドカードを見るとそこには、
【冒険者ギルド所属:キョウ】
RANK:E−
ROLE:アタッカー
TRIBE:ヒューマン
「おぉ! アタッカーって書いてあるぞ!」
「アタッカーか。まぁ予想通りだ」
「予想通りですね」
「予想通りだー」
「なんでだよ……」
「いいか? アタッカーというロールは主に近距離戦闘を担う役割だ。子供の頃から一緒にいて、お前の行動を見てきた俺たちだ。それを予想出来ない訳ないだろう」
「……そうかい」
なんか妙に気恥ずかしいようで、まるで俺が脳筋とでも言いたげな理由で釈然としないような。
「一応説明するがロールってのはパーティプレイで発揮するゲームシステムの一つだ。各々の役割を理解して行動すれば、パーティ戦に置けるこちらの戦力は何倍にも跳ね上がるからな」
「はい、そしてこれが私達のギルドカードです」
そう言って各々自分のギルドカードを相手に見せていく。それで分かったみんなのロールは以下の通りだ。
【冒険者ギルド所属:ライカ】
RANK:D+
ROLE:ディフェンダー
TRIBE:ドワーフ
【冒険者ギルド所属:ナナ】
RANK:D+
ROLE:シューター
TRIBE:エルフ
【冒険者ギルド所属:ゴッドストレートスマッシュ】
RANK:S
ROLE:アシスタント
TRIBE:ヒューマン
「ロールは四種類、近距離戦闘役であるアタッカー、防御特化役のディフェンダー、遠距離戦闘役のシューター、そして広範囲支援役のアシスタントだ」
「見た感じ私たちはそれぞれのロールを担ってるねー」
「つまり思ったより俺たちのパーティはバランスがいいという事だ」
「なるほどな……」
しかし弱点があるとすれば、ロール被りのない四人という少数パーティな所だろうか。つまり誰か一人欠けたらそれをフォローするロールがいない訳で、敵はそこを突いて突破してくる可能性が高いと。
「だがその点は心配ないだろう」
「どうしてだ?」
「何年一緒にいると思ってるんだ? お前たちがどれぐらい強いかだなんて分かり切ってるからな」
「ゴスト……」
「ゴッドストレートスマッシュだ」
そのネーミングが無ければパーフェクトなのに。
「よし皆の担当する役を確認したところだし」
「おー早速戦闘っすかー?」
「気が早いぞナナ。先ずは支援魔法を掛けてからだ」
そう言ってゴストが取り出したのは一枚のG。
「1G取り出してどうするつもりなんだ?」
「これはアシスタントである俺が生み出した俺専用のスキル流派、『我流・金剛金塊』の技の一つ」
「ちょ、ちょっと待ってお前何言ってるの!? 我流って何!? 技の一つって何!?」
「あーはいはい、ちゃんと最後まで説明するから」
「何かめっちゃめんどくさいなって顔してたんですが」
「このゲームをやって流派というトレーニングシステムを習ったことがある奴も分かる通り、道場で習うのはスキルだけではなく、構えや武器の扱い方など本格的な物ばかりだ。そしてこれらを全て習得するとステータス欄に自身が習った流派の名前が載るようになる、そこまでは分かるな?」
妹達が肯定している事から、おそらくゴストの言っていることは本当なのだろう。まぁ流派を一度も習得したことがない俺からすれば何を言っているのか理解出来ないが。
「だけどなこの流派というシステム、実は別に道場に通わなくても流派を得られる方法があるんだ」
「それがさっき言ってた我流って奴なのか?」
「そうだ。我流を得られる方法は二つ。一つは既存の流派をアレンジすること、そして持っている技術を組み合わせて自分に合う流れを作ることだ」
自分に合う流れを作る。
何故かは分からないがその言葉がはっきりと脳に染み込んで、何かが掴めそうな予感がした。
「そしてこれが俺の我流。『我流・金剛金塊』の技の一つ。1Gを消費し、コイントスの内容によって支援魔法の内容が決まるスキル!」
ゴッドストレートスマッシュの言葉と共に徐々に光る手の平の1G。
「その支援の内容は、表は味方の全ステータスを3分間だけ3段階アップ、裏は敵の全ステータスを3分間だけ3段階ダウン。その名も『金剛金塊・投資一つ目、課金支援』!!」
「有り難みが無いなその支援!?」
そうして勢い良く弾かれる1G。
淡い光の粒子を出しながら飛んでいくその1Gは……。
「あっやべ」
『…………』
明後日の方向に飛んで行き、消えていった。
◇BATTLE PART
ゴブリンとはファンタジー物に出て来る定番の魔物である。
緑色の体表を持ち、腰巻一枚だけ着け、その手にある棍棒で獲物を狩る小人の魔物。繁殖力は高く、群れを成して襲い掛かってくるため巷では魔物界のGと呼ばれている。
『グギャ!?』
そのゴブリンは今、正体不明の危機を迎えていた。
木から木へと飛び回る死神に翻弄され一匹、更に一匹と叩き潰されていた。
「ヒャッハー!!!」
そんな奇声を上げる死神の正体。
それは皆さんご存知我らが主人公キョウ。しかもご丁寧に『暴走状態』の姿である。
彼の持つパッシブスキルである『跳躍』と『軽業』、『暴走状態』とゴッドストレートスマッシュの施した支援魔法により尋常ではない速さを発揮し、更に打撃系最強武器であるハンマーと圧倒的なSTRによって地面を叩き割る勢いでゴブリンを圧殺したのだ。
圧倒的、理不尽な暴力。
例え逃げてもすぐさまに回り込まれ死へと誘う悪夢の権化。
せめて仲間諸共死ぬより、一人だけでも生存できるように散り散りに行動するゴブリンだが悪夢は一つだけではなかった。
「はぁ!!」
逃げた先にいたのは、両腕の盾を使い、まるで合気道のようにゴブリンを転ばし、時に柔道のように投げ、空手のように打撃を叩き込むドワーフの少女、ライカであった。
変幻自在にゴブリンの統率を乱れさせ、相手の身動きを完封するその動きはまさに激流。
そしてその激流が流れる先は先程の悪夢。
「兄さん!!」
「OK牧場!」
そう、ライカがゴブリンを投げ飛ばした先は圧倒的な馬鹿力を持つキョウ。ライカによって動きを翻弄され、処刑場に誘うそれは正しく渦潮の如く流れ。
ゴブリンは今まさに己の運命を悟り始めた。
「《伸びろ、鉄槌》!!」
そう発した次の瞬間。
死神の持つ鉄槌の柄が伸び、周りにいるゴブリンを薙ぎ払う。
『グ、グギギ……』
そこで未だに意識があるゴブリンは運がいいのか悪いのか。
いや言うまでも無く悪いのだろう。何せ先ほどの一撃で死んでおけば良かったのに、生きていたことで更に追い討ちを掛けられるのだから。
『ギャ?』
一瞬の風きり音が鳴り、生き残ってしまったゴブリンは今度こそ死に倒れていく。それをやったのはこのゴブリン集落よりも遥か後方。
「対象全滅、つぎー」
ニヤリと口角を上げながら、両手に持つ二丁の拳銃でゴブリンの生存者を討伐していくエルフの少女ナナがそこにいた。
「ひっさーつ《カーブバレット》ってねー」
そう言いながら彼女はスキルを発動し、手首のスナップを利かせる。これはこの動作を行うことによって銃の弾道が曲がるスキルであり、彼女はこのスキルを使って岩の陰に隠れているゴブリンを当てていた。
その命中率、驚異の百発百中である。
『三人とも、まだまだ来るぜ』
念話で伝わるゴッドストレートスマッシュの声。
そんな彼の頭上には数え切れない程のGが浮いていた。
「さて『金剛金塊・投資八つ目、課金遠視』によるとキョウのいる地点から西方向、あと15分で新しい団体さんが来るぜ。もうとっくに依頼は完了しているがそいつ等を片付けば更に追加報酬だ、気張っていけよ?」
『了解ってな!』
この返事と共に終わりへと収束していくゴブリンの未来。
ここに、史上最強のパーティが結成されたのだ。
「そういやこのパーティの名前はどうするんだ?」
「荒れるから後で考えようよー」
「そんなら俺が考えても……」
「自身にゴッドストレートスマッシュと名付けた人に任せられません」
扁桃腺炎になりましたが無事治りました、クマ将軍です。
さて如何でしたでしょうか。
実は今回の章は日常パートはコメディ要素が多い一人称視点で進めて、
戦闘パートは迫力ある三人称視点で進めようかなと思います。
まだまだ執筆に不慣れで試行錯誤しながらやっていきますのでご了承ください。
そしてたくさんのブックマーク登録ありがとうございます。
感想、誤字脱字等ありましたら指摘お願いします。
それではまた次回お楽しみに!




