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MATERIAL FRONTIER ONLINE:スタイリッシュパーリィーの冒険活劇  作者: クマ将軍
『MFO』ダイブスタート! 準備編
15/62

第14話 カジノロワイヤルごっ!

お待たせしました。

 内心笑いが止まらないとはこの事だろうか。

 いや、別に楽しいという感情や面白いという感情は全くない。

 それでは一体何の感情だろうか。


「ロイヤルストレートフラッシュ」


 言うなればこれは絶望という感情だ。

 俺がノーペアを出した瞬間、これで終わりだと言うようにアオギが出したのはポーカーの中で最上級の役だった。


 これまでの勝負はまるでお遊びだと分かるほど本気で俺を殺しに来てると一瞬で伝わった来たのだ。

 俺は心のどこかで油断していたと思う。

 両方同じ役を出しながらもカードに描かれてる数字により僅差で負け続けていたが、内心勝負し続ければいつかは勝てると思っていた。


 だがそれは違っていた。

 

 目の前にいるカジノの王者に面白い遊び相手として俺は生かされていたのだ。

 だが俺は王の期待を裏切り、失敗した。

 所詮俺は基本のルールしか分からない初心者。

 相手との駆け引きも、イカサマも、素人の俺では全く分からない。

 現に俺はアオギのイカサマを対処する術は無く、こうして内心現実逃避気味に笑っている。

 これがマジもんの、天才ギャンブラーの駆け引き。

 どう足掻いても、にわかギャンブラーである俺にはそこまでの才能はない。


 ここまで考えて、俺は悟った。

 俺が負けるのは最早自明の理。

 ならば次は、負けて死ぬより楽しみながら負けた方が良いと。


 所詮は娯楽であり、ゲームでもある。

 

 何故こんなゲームで死ぬような思いを背負わなければならないのか。

 やるからには楽しむ。

 例え負けようがいまいが絶望しながら負けるよりかはいいだろうと。

 そう考えると心は軽くなり、余裕を感じるようになった。


「ククク……」


 でもまぁ……楽しくやるからにはせめて勝つつもりで行かないとな。


 余裕を感じるようになったせいかさっきまでの負けムードはどこにいったのか。

 無意識に溢れた自身の笑いに気付かず、ここから二人の勝負は急変していく。




 ◇




『脳波に異常を感知しました』

『全ステータスのランクが一時的に10段階上がりました』


『ユニークスキルの申請確認中……』

『ユニークスキルの取得、失敗しました』




 ◇




「ククク……」


 アオギがロイヤルストレートフラッシュを出し、これからこの目の前にいる男に地獄を見せようと決意したその時、キョウの口から僅かに漏れた微かな笑いが聞こえた。


「何を笑っている?」


 最早、この絶望的な状況で狂ったのか。

 だがアオギは未だかつて無いほどのプレッシャーを目の前にいる男から感じていた。

 己が初めて目の前にいる男と対面した時に感じた畏怖よりも遥かに強い圧倒的な存在感。


「ん? あぁなんだ、笑ってたのか俺は……」


 アオギが先程やってみせた、注目を引く技術よりも目を釘付けにするオーラといい、一体この男の身に何が起きているのか。


「…………」


 だがそれが一体どうしたのだろうか。

 たかが雰囲気の急変で驚いただけで、今更アオギの本気が収まるわけがない。


 この勝負はアオギがロイヤルストレートフラッシュを出したことでアオギが勝った。

 だがチップを見れば、アオギもキョウもまだまだ残っている。

 これからじわじわと相手のチップを減らし、精神をすり減らしてやると考えたアオギはディーラーに新しいカードを頼んだ。


「分かりました。キョウ様もよろしいですか?」

「あぁいいぜ。なんだか流れが変わってきたような気がするんでな」

(何を世迷言を)


 先程のロイヤルストレートフラッシュで明らかにこの場の流れはアオギの方に向いている。それどころか、これまでの勝負でキョウは一度もアオギに勝ったことはないのだ。


(それを流れが変わっているだと?)


 果てしてこの男は正気なのだろうか。

 もしこれが正気の発言だったらこの男に場の流れを読む才能も、ギャンブラーとしての才能は無に等しいことになる。


 ――許されるものか。


 最早ギャンブラーですらない者にこのカジノの王者の前にいることが許されるはずも無い。

 配られたカードは予想通り、どの役にも当て嵌まっていないバラバラのカードだ。

 例え、ディーラーとカードを交換したとしてもアオギの運では何も揃わないだろう。


「ディーラー、カードを三枚交換だ」


 それでもイカサマだとバレないように、無駄だとしてもカードを交換しないといけない。

 自然に振りまわないとキョウは兎も角カジノ側にバレる可能性があるのだ。


 カジノ側にバレるということは例えカジノランキング一位であるアオギでも地獄に落とされるということ。

 早速、周りに気付かれないように《エクスチェンジ》で手持ちのカードを交換しようとするアオギだが、何やら周りがやけにざわざわしているのに気づく。


「何だ……?」


 ふと、目を己の対面に座っている男に移す。

 そこには……。


「何だと!?」


 配られたカードをテーブルの上に放置して、腕を組ながら不適に笑うキョウの姿だった。


「てめぇ……馬鹿にしているのか? 何故配られたカードを見ない!?」

「えぇ? いいじゃん。俺がどうしようかお前には関係ないし」

「……カードの交換はどうしますか?」

「いいよいいよ。このままで行く」


 配れたカードを見ず、手持ちのカードを交換しない。

 最早、勝ちを諦めていると見ていい。


 だがこれ程までに馬鹿の真似をすると誰が予想できようか。

 確実に頭がイカれているとしか言いようが無い行動だった。


「もういい!! てめぇの頭がイカれていようがいまいがどうだっていい!!」


 アオギにとって、ギャンブルとは刺激が得られる娯楽だ。

 だがそれでも小さい頃から運に見放され、路頭に迷っていたアオギを救ってくれたのは紛れも無くギャンブルという娯楽なのだ。


 ギャンブルとは謂わば、アオギにとって生きていくのに必要な物であり神聖な物だった。

 それをこのキョウという奴は……はっきり言って腸が煮え返りそうだった。


「お前の所持金額と同額のチップをベットだ!!」


 そして手持ちの手札をテーブルに叩き付けるアオギ。


「ロイヤルストレートフラッシュ!!」


 賭ける金額はキョウの手元チップと同額。

 そして出したポーカーの役は最上級のもの。


「これでてめぇは終わりだ……!!」


 ベットするチップはお互い同額で無ければならない。

 そしてアオギが出した役以上の物は存在しない。


 ――キョウが負けるのは必然だった。


 だがそれでも、キョウの顔には焦りが一切無かったのだ。


「いいぜ? 俺は俺の全財産を賭ける」


 そしてこともあろうにキョウは勝負を受けた、受けてしまった。


 目を見開くアオギ。

 最早アオギにも、否この場にいる誰にもキョウの考えている事を理解できなかった。


「それ一枚目……クラブのA」


 まるで答え合わせのように一枚一枚めくるキョウ。

 その表情はまるでこれから起きる事に興奮を隠せない子供のよう。

 だが次の瞬間、カジノにいる全ての人間は驚愕することになる。


「クラブの10、クラブのJ、クラブのK、クラブのQ……おっとこれは~?」


 それは紛れも無い、ポーカーの役で最上級の役。


「ロ、ロイヤルストレートフラッシュだとぉ!?」


 誰も予想し得ない展開に誰もが口を開け、キョウの出した役を凝視する。


「んー? これは奇跡が起きたなぁ~」

(奇跡? 奇跡だと!? 嘘だそんなもの嘘に決まっている!!)


 天運、奇跡、どちらもアオギにとって受け入れがたい言葉。

 己を見放した物が目の前に現れるのは何の皮肉だろうか。


(これはイカサマ……、そうイカサマだ。でなければあのふざけた行動からこんなものが出る筈もない!!)

「両者ロイヤルストレートフラッシュ。引き分けということで俺の首の皮一枚繋がったという訳ですな」

「くっ……ディーラー!! 早くカードを寄越せぇ!!」


 例え、この場を凌げたとしても次もまた勝つとは限らない。

 否、最早キョウは次で負けるしかないのだ。


 アオギが出したロイヤルストレートフラッシュはハートとダイヤの二つ。

 そしてキョウが出したクラブのスートも含めて、三つ。

 残り一つしかないのだスペードのロイヤルストレートフラッシュしか。


 それにこの役自体、出てくるのが相当かなり低い確率を誇る。

 次のラウンドでキョウが出す役に二回連続ロイヤルストレートフラッシュは通常では不可能だ。


 そう考えながらディーラーが交互にカードを配る様子を見るアオギ。


 配られたカードはやはり何も揃っていないバラバラのカード。

 それに加えて不運なことに今のアオギのストレージ内にはロイヤルストレートフラッシュの素材となるカードは残っていなかった。


(だが素材が無いなら無いで他の役を出せば良いだけの話だ!!)


 狙う役は最上級よりも一個下であるストレートフラッシュだ。

 自身のスキルである『エクスチェンジ』で交換している間、アオギはふとキョウの方へと見やる。


「あーディーラーさーん。これと、これ、交換お願いねー」


 これまたふざけた声音で配られたカードを確認しないまま適当にカード二枚をディーラーの方へと弾いていた。


「てめぇ……」

「んー? なーんだい?」


 アオギだけではなくこの場にいる誰もがこう思っているだろう。うざい、と。

 もしかしたらキョウにはギャンブラーの才能ではなく煽りの才能があるのかも知れない。

 そう思えるほど、キョウの態度は完全に舐めきっていたのだ。


「さっきと同じてめぇの所持チップと同額ベット」


 そして前ラウンドよりもカードをテーブルに叩き付けるアオギ。

 その勢いは全カジノ中に響き渡るほどの音を出し、アオギは鼻息を荒くしてキョウを睨む。


「ストレートフラッシュだクソッタレェェェェェェェ!!!!!」

「はい俺はロイヤルストレートフラッシュ~」

『…………は?』

「やったー俺初めて勝ったぞーニヒヒヒ!」


 一人、踊りながら変な歌を歌うキョウを除き、この場にいる誰もが呆然とする。

 二回連続ロイヤルストレートフラッシュという確率的に不可能と思えるほどの圧倒的な難易度。

 それを他でもない、さっきまで危機的状況にいたキョウがやってのけたのだ。


「ひゅーひゅー! やったね、俺チン!」




 ◇SIDE アオギ




 負け、負けそして負け。


 確かにアイツの言うとおり、流れは向こうに向いている。

 あれから、俺は負け続けアイツは勝ち続けている。


 これが天運。

 これぞ奇跡。

 全ての不確定要素がアイツに味方している。


 確かにアイツキョウを俺と同じ天才だと思った。

 それはある意味正解で、ある意味間違いだ。

 間違いなく天才、それも運否天賦を味方にする才能は最早化け物。


 対してギャンブルの才能はまさに素人そのもの。

 恐らく、単なる遊び程度でしかやったことがなくこういう駆け引き等の経験は無に等しい。


「アオギ様……チップは……?」


 気付けば俺は所持しているチップ全てなくなってしまった。

 俺の持ってるイカサマも、裏技も、コイツの豪運の前には何も役に立たなかった。


「ジャックポット。アオギ、俺の勝ちだ」


 そう言うコイツの目に、俺は拍子抜けしていた。

 先程の勝負まであったあの存在感が無くなっていたのだ。


「一体……何なんだテメーは」


 俺の問いに、何も言わないままチップ両替所に行くキョウ。

 その立ち振る舞いはまるで俺を倒した男とは思えないほどのど素人だった。


「俺の所持チップをゴールドに変えてくれ」


 運だけで俺を倒す規格外な存在。

 そう、規格外な存在。

 そう考える不思議と心が落ち着いてくる。


「半分は俺のストレージに、そしてもう半分は……」


 そうだ相手は化け物だったから、負けても仕方が無いのだ。

 人間相手だったら俺が負けるはずもない。

 そのようにちっぽけなプライドを慰めていると、キョウというプレイヤーからとんでもない発言が出てきた。


「あのハンマーと交換してくれ」

『は?』


 その言葉に、カジノ中から困惑の声が轟いた。

 それはそうだろう。俺に勝ったコイツはまさしくカジノで最強の男。つまりカジノランキング一位になった。そして一位になった奴はこの国の大臣からとある依頼を任されることになるのだ。


「待て待て待て!! お前あのハンマーは駄目だ! 絶対駄目だ!!」

「え? な、なんで?」

「あの……アオギ様。キョウ様はもう既にジャックポットで得たゴールドであのハンマーと交換を致しました……」

「……嘘だろ」

「な、何? なんだよ!?」


 カジノランキング一位への依頼。

 それは大臣が大切にしている武器をチャレンジャーから守り、武器を餌にしてこの国を発展させること。それと引き換えにこの国に対する便宜を図って貰えるというのが依頼の内容だ。

 つまりあの武器は集客用の飾りという事だ。

 そしてもし万が一にもそれを手にしてしまった輩がいれば、それは大臣と喧嘩をするという事なのだが……それでも何故コイツはわざわざこのような行為に及んだ?


「お前、自殺志願者か?」

「何故に!?」


 まるで何も知らないような態度だ。本来カジノランキングに登録した時に説明を受けている筈だが……まさかコイツ、説明を受けていないのか?

 実際のところどうなんだ受付の姉さんよ。


「……ポカーン」


 駄目だ受付の姉さんが唖然としている。

 つまり説明したのに話を聞いていなかったのかコイツは。

 俺は、こんな馬鹿な奴に負けたのか……?


「あの、アオギさん?」

「馬鹿、怖い……近付かないでおこ……」

「滅茶苦茶引かれてらっしゃる!?」




『アイテムを手に入れました』


『装備品名:ロキの鉄槌

 装備説明:悪戯を司る精霊ロキが、ふと何を思ったのか、ある日悪戯心も不真面目さをも完全に封じ、真剣に真面目に作ったといわれる精霊遺産マテリアルアーティファクト

 それは持ち主の意思によって伸縮自在に変形し、敵を薙ぎ払うという』


『クエスト:スラム街を発展させよう 資金編

 進展状況:クリア 現在の資金額500億G/500億G

 依頼内容:スラム街の人々のために500億Gを集めよう

 依頼報酬:スラム街施設の拡張』


『一定額、Gの入手を確認しました』

『《称号:億万長者》を手に入れました』


『カジノランキング一位になりました』

『《称号:カジノの頂点》を手に入れました』


精霊遺産マテリアルアーティファクトの入手を確認しました』

『《称号:精霊遺産ゲッター》を手に入れました』


『ロキの鉄槌の入手を確認しました』

『《称号:真面目の証拠》を手に入れました』

一ヶ月という長い期間を経てやっと更新出来ました、クマ将軍です。


様々なアクシデントがあり、かなり遅れましたが私はまだ生きています。

うん……保存はこまめにね……。


そして如何でしたでしょうか。


主人公の持つ『暴走状態』のチートっぷり。

主人公の新しい装備の入手。

そして一回やってみたかったギャンブル回。


完全に長くなりすぎて、内容が意味不明になり大変作りにくかったです。

もう二度とギャンブル回はやりたくないと思いました。


今回Q&Aはお休みです。


次回は掲示板回ですので、早めに投稿できそう(フラグ)

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