白い部屋
真っ白な部屋。
辺りはベッドと机と椅子。
カナメは悩ましげに溜め息を吐く。ここ数日は実験で外に出れていないからだ。
『柴草カナメ……アーカイブ番号11番……面談室へ』
無機質な音声が室内に流れ、同時に要塞の様な扉が機械音をあげて開く。
「カナメ君こんにちは」
そこには白衣を着た若い男性が苦笑いを浮かべて立っていた。
「や、やぁ元気かい?カナメ君」
「こんにちわ伊鳥さん、体調的には僕は何も問題ないよ」
カナメは少しブスッとした面持ちでこの目の前に居る伊鳥に答える。
「と言うことは、精神的に来てるんだね……すまなかったね。カナメ君」
伊鳥は少し申し訳なさそうに頭を下げた。
それに対してカナメはいつもの事だと解釈したうえで伊鳥の白衣を軽く叩く。
「で、伊鳥さん?面談室に来いって放送かかっていたけど……僕の初の来客者って誰?」
カナメは今まで此処に来てから外部の人物とは誰とも会ったことはない。
外に出れると言ってもこの研究所の中だけで、外と接する事もなかったカナメには不思議だった。
「え?あ、あぁその事何だけどね。面談室に着いたら話すよ」
カナメが不意を突くように話すと少し、本の少しだが伊鳥から焦りの色が言葉に現れた。
先ほど、アナウンスが流れて知っているはず筈なのに動揺したのだ。
「ま、まぁ行こうかカナメ君」
そのまま疑問だけを引き摺りながらカナメは伊鳥の言葉に従い面談室へと向かった。