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3:保健室にて

ながながと空けていてすみません。まだ忙しいので、投稿はあまり出来ませんが、息抜きもかねて。

長いので分けました。しばしお付き合い下さい。

実はあれだけ嫌われるのは心当たりが無いわけではない。転校生ちゃんの転校当日に色々と失敗した記憶がある。そんなわけで少し話を昔に戻すことにする。これは転校当日のはなしだ。




さあさあさあ、今日は転校生が学園に転校してくる日だ。憎みたくなるくらいの晴天だ。季節外れの台風をこの近辺だけ突然発生させてくれればいいのに。もしくは竜巻でも許そう。


私は重いため息をつくと、学園のどう考えても、え?これ身長5メートルの人が通る用ですか?みたいな大きくて重たい鉄製の門をくぐった。今回の改装は相当豪華な感じになったようだ。


転校生ちゃんに対する設定のために、大幅な改装が行われたのだ。このレベルの工事を3日でやらせるところが理事長クオリティだよね。


転校生ちゃんがどのクラスに入るかは事前に知らされている。今回はなんと一緒のクラスなのだ。理事長の顔を踏みつけにするしかないなと考える程度には辛い。


「はよー。いつもより早いじゃん。珍しー」

校門を潜ったところで話しかけてきたのは颯天だ。

髪が黒から見事な赤に変わっていた。仕方ないと分かっているものの、肩が震えるのを止められない。すると颯天はぎろりと睨んで、ばしり、と私の頭をはたいた後、

「そろそろ時間だから戻る。たしか俺と転校生が会うのって昼休みだしな」

と言って去っていった。


教室はこれまた豪華になっていた。友人が気を利かせて声をかけてくれたお陰でフリーズしていたのが5分ほどで済んだのだから友人にはアイスを奢ってあげるとしよう。


チャイムがなった。先生は当たり前かのように変更されていて、ゆずせんせになっていた。


「よー、みんなおはよう。今日は転校生が……」

ゆずせんせが言い終わらないうちに私は席から立ち上がる。


「先生!私……お腹がいたくて……」

しかし私が一生懸命考えた言い訳は、ゆずせんせのお前だけ楽させるか……!と言う目によって打ち砕かれた。


「そんな見え透いた嘘信じられるかっ。……おい、嘘だよな?」

なんだかんだ言ってゆずせんせは私たちの事を心配してくれる。思わずにやけそうになったがここは堪えて一言。

「嘘です」


先生はふっ、と笑った後、静かな声で私の隣の席の子に告げた。

「あぁ、そこの席空けてくれるか?隣に転校生座らせてやろうと思って」

私が即座に謝ったのは間違っていなかったはずだ。先生はまあ元々そういう予定じゃないしな。と言って、転校生に入って来るように言った。


「あー、こいつが転校生だ。みんな仲良くしてやってくれ。それと、一時間目のHRは自己紹介やったら終わりだから各自静かにしとくように」

ゆずせんせは当たり前のようにそういって教室を出ていった。

私は転校生ちゃんが自己紹介を始める前にさりげなく立って教室を出た。


向かうのは知っている人がいるのか?っていうくらい人気がない保健室だ。この学校には保健室が2つある。第一保健室は人気がない上に、先生が滅多にいないと噂される。そんな保健室に行くのはもう最近は私しかいないようで、保健室前の廊下は少し奥まったところにあることも影響してか、電気すらついていない。ドアをゆっくりと開けると、本来生徒が寝ているはずのベッドには保健室の先生がすやすやと寝ていた。私はゆっくりと近寄ると、目の前で待機する。勿論驚かせるためである。


「つづせーんせっ」

少し大きめの声でいきおいをつけて名前を呼ぶと、ゆっくりと目を開いたつづせんせは一瞬だけ顔を顰めた後、ばっ、と音がしそうな程勢いよく起きた。

「てっ、敵襲だぁぁぁあ!であえ、であえぇぇえ!……あれ、玲か。びっくりさせるなよ」


……むしろ私の方が驚いた。さっきまでなんの夢を見ていたのか知りたいような、知りたくないような。いややっぱり話が長そうなので知りたくない方向で。


「で、授業にも出ずにどうしたんだ?ん?」

そういってわしゃわしゃと私の頭を撫でてくれるつづせんせは包容力のある大人だと思う。つづせんせこと藤堂綴はダークブラウンに染めた髪と包容力と声の良さもあいまって大人の色気漂うイケメンである。そして結構な面倒くさがりなので、大抵自分専用になりつつある保健室からしか入れない準備室でいないふりをしつつさぼ……寛いでいる。


「ただ単に転校生ちゃんの自己紹介聴くだけだったから抜けてきた。どうせ大したこと言わないと思うし。」

「そうかそうか。それは確かに面倒だよなぁ。……誰か来るな。準備室に行こうぜ、手当てなんざ押し付けられるのは御免だ。そういや今日は準備室の冷蔵庫に、学園の前の通りにあるケーキ屋の限定10個のケーキがあるんだ。苦労して買ってきたから一緒に食べよう。」

そういって準備室に入ってドアを閉めた途端、保健室のドアが開いた。毎度の事ながらどうやって感知しているのだろうか。


「あー、これは面倒だな。部屋の鍵閉めてくれ。多分転校生だな、こんなところ知らずに来るとかそれくらいしかいないだろ、見たことないし。」

「はーい。つづせんせは保健室の中、モニターしててね。つづせんせは生徒は私と他数人しか見たことないでしょ。」


そう言うと、つづせんせは肩を竦めて同意を示した。私が鍵を閉めてせんせが見ているモニターを覗き込むと確かに映っていた、転校生ちゃんが。こちらの音は準備室が防音なので聴こえないだろうが、モニターから彼女の声は丸聞こえである。


「なんなのここ!?先生もいないとか……。あー、ここが使われていないっていう第一保健室な訳ね。……あれこのドア何?」

目線の先には私たちのいる部屋が。あらら……これは困った。開かないけれども、流石に近づかれると磨りガラス越しでも分かるかもしれないので部屋の奥に避難することにした。


「誰かいませんかぁ?……ここに男の先生がたまにいるって隣の席の子が言ってたのになぁ。まあまた通えばいっか。ではお邪魔しましたーっと。」


そういって出ていった転校生ちゃんにつづせんせはため息をついて、肩を落とした。

「……困った。面倒事がまた増える。」



私は冷蔵庫から出したケーキをつづせんせの前に並べてあげることしか出来なかった。

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