小話1:調査員、田崎の憂鬱
短いですが、小話ということでお許しいただければ……。
因みに、私は理事長とは違って細かい設定を作り上げられるような細かさがないため、穴だらけでございます、お許しください。
午後8時過ぎの理事長室では二人の男がソファーで話し合いをしていた。徐に片方が口を開く。
「ああ、また来るのかぁ……転校生。で、今度はどんな感じなの?」
「ええ、今回は少し……いやかなりの自信家なようで。どうしますか、理事長?」
もう一人の男がが申し訳なさそうに相手、理事長の返答を待つ。それに対して理事長室のソファーでくつろいでいる理事長は苦笑した。
「いやー、毎回調べてもらってごめんね、田崎君。まあ、どうもこうもまた生徒会役員には協力してもらって追い出すしかないでしょ……。君が集めた話だと、そういう発言もあったんでしょ?生徒たちを守るのも理事長のつとめだしねぇ。」
そういって理事長室に置いてある、仕事用の重厚な机に歩み寄り、パソコンを立ち上げた。それを見た田崎と呼ばれた男は部屋を出ようとソファーから立ち上がった。それを見た理事長はパソコンを見つめたまま声をかけた。
「……待って。設定のことで相談があるんだけど……。」
それを聞いた田崎は硬直した。理事長の設定は細かい。とにかく細かい。田崎は、きっとこの世界を7日(1日休み含む)で作った神様だってここまで力を入れて(空回りともいう)設定していないんじゃないか、と疑っている。田崎はぎぎぎ……と首をきしませて理事長の方を振り向く。正直言うと付き合いたくない、断りを入れようと振り向くと。
「もちろん、帰る、なんて言わないよね?」
理事長は 満面の笑みを 浮かべた。
田崎は 動けない!
とっさにそんなゲームのような台詞が浮かぶほどに背筋が寒くなる笑顔だった。
これを断れば明日の朝の光は拝めまい、と悟った田崎は、泣きそうになりながら頷く。
「何ですか……。」
「ああ、ここの年間行事のことなんだけどね……?あ、あと涼の髪の色がこれか、これで迷っているんだが……。」
その後3時間ほど話に付き合わされたものの、どれひとつとして田崎には全く違いがわからなかったのだった。